通夜や葬儀などに参列できない方の香典を預かって代理で渡すことはマナー違反ではありません。代理である旨を受付で伝え、芳名帳には依頼人の名前や住所を記入します。配偶者の代理は「内」、その他の人の代理は「代」と名前の下に書きます。上司の名刺を預かった時は名刺に「弔」と記入し渡します。
「香典」の読み方は「こうでん」です。 「香典」の意味は「香の代わりに死者の霊前に供える金品」です。 「香典」は「香奠」と書くのが正式ですが、「奠」は常用漢字ではないため「香典」と代用して書くのが一般的です。 「香」には「仏前で焚く香料」という意味が、「奠」には「神仏などへの供え物」という意味があります。
「香典」は元々仏教用語です。仏教以外でも「香典」といいますが、正式には「不祝儀(ぶしゅうぎ)」といいます。 しかし「香典」の方が広く知られているため、仏教以外の宗教でも便宜上「香典」を用いることが多いのです。 弔事で使用する封筒のことを「不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)」と言います。「香典袋」と言うこともあります。 また「香典」は通夜・葬儀・告別式にお供えする金品のみのことを指します。 初七日や四十九日などの法要でお供えする金品は「供物(品物の場合)」「供物料(現金の場合)」と言います。
基本的に香典は、通夜・葬儀・告別式に参列する際に渡します。 しかし遠方住み、心身的な不調、仕事の都合など様々な理由で通夜などに参列できないこともあると思います。 そういう場合に参列できない人の分の香典を預かって代理でお供えすることはマナー違反ではありません。 預かった香典を代理で渡す時のマナーや注意点をご紹介します。
職場代表としてなど、1人ではなく複数人から代理を依頼されることもあると思います。 複数人から香典を預かることはマナー違反ではありません。 ただし預かる人数が多いと芳名帳の記入に時間がかかってしまいます。 香典を預かる時に出席できない人の名刺も一緒にもらい、受付で提出することで時間と手間が省けます。 また事前に依頼人の名前や住所、金額などをリストにまとめておいて受付で提出するのも良いでしょう。
通夜や葬儀に参列し代理で香典を渡す場合でも、喪服を身につけるのがマナーです。 正式には、通夜には略礼装、葬儀・告別式には準礼装を着用しますが、最近は通夜でも喪服で参列することが多くなっています。 略礼装の場合、濃いグレーや濃紺などのダークカラーのスーツを身に着けます。 準礼装の場合は、黒のスーツやワンビース、アンサンブルなどを着用します。 男性の場合、ワイシャツは白無地でネクタイや靴下、靴などの小物類は黒で統一します。 女性の場合、ストッキングは黒で靴はシンプルな黒のものにします。 男女ともに結婚指輪は着用可です。 女性がネックレスをつける場合、一重のもののみにします。(二連は不幸が重なるという意味になるため)
香典をお供えする際は、香典を代理で預かった旨を必ず伝えましょう。 依頼人が喪主や遺族に代理人に預けることを事前に伝えていることもありますが、当日改めて伝えるとトラブル防止にもなります。 「○○さんから香典をお預かりしてまいりました」などと一言添えてお供えしましょう。
香典を預かった場合、会場までは袱紗に包んで持参します。香典が汚れたり折れたりするのを防ぐためです。 自身も香典を持参する場合は、合わせて1枚の袱紗に包んでかまいません。 ただし香典をお供えする際は必ず袱紗から取り出します。 相手から袱紗が返ってくることを「不幸が返ってくる」として捉えられるためです。 受付での香典(不祝儀)の渡し方は下記の通りです。
受付がない場合は、焼香の際に霊前にお供えするか遺族に直接渡します。 遺族に手渡しする時も相手に表書きの正面を向け、「ご霊前にお供えください」などと述べ両手で渡します。
受付での芳名帳への記帳の仕方をご紹介します。 代理で預かった分の香典に関しては、芳名帳には依頼人の情報を記載します。 事前にもらった情報をもとに、依頼人の名前や住所などを記入しましょう。 代理であることが一目でわかるよう、名前の下に「(内)」や「(代)」と書くことも忘れないようにしてください。 配偶者の代理の場合は「(内)」、それ以外の人の代理は「(代)」となります。
職場の上司などに代理を頼まれた時に名刺を預かった場合は、受付で記帳をする際に香典と合わせて渡します。 依頼人の名刺には「弔」、代理人の名刺も渡す場合は「代」と書きます。 名刺が縦書きの場合は右上に、横書きの場合は左上に記載します。
通夜や葬儀、告別式への参列の御礼として、遺族から会葬返礼品が贈られます。 また香典への御礼として香典返しを通夜や葬儀の当日に贈られることもあります。 会場で渡された会葬返礼品や香典返しは、直接手渡しをするか郵送で依頼人に渡すようにしましょう。
香典を預ける以外の方法の一つに、後日に弔問するという選択肢もあります。 葬儀後に弔問を希望する場合は、必ず事前に日程調整を行いましょう。 葬儀直後は後片付け等があるため、葬儀2、3日後〜四十九日(仏教の場合)までの間に弔問をするのが一般的です。 四十九日までの間に伺うことが難しい場合は、香典を郵送する方が良いでしょう。 後日弔問する際の服装は喪服ではなく黒やグレーなどの地味な色のスーツやワンピース、アンサンブルを身に着けましょう。 私服や派手な色・柄の服装は避け、アクセサリーは結婚指輪のみなど最小限にします。
香典を郵送するという方法もります。 必ず現金書留で送ります。現金書留以外で現金を郵送することは郵便法で禁じられていますので注意しましょう。 香典(不祝儀)はまず香典袋(不祝儀袋)に入れてから現金書留用の封筒に入れて郵送します。 現金を直接現金書留用の封筒に入れたり、香典袋(不祝儀袋)ではなく普通の封筒に入れるのはマナー違反となります。 現金書留用の封筒は郵便局でのみ購入可能です。コンビニ等では販売されていません。 封筒のサイズは2種類あり、現金書留用封筒の料金はどちらのサイズも21円です。別途基本料金と書留の加算料金が発生します。 手紙を添えて送るとより丁寧です。 手紙を書く際は白無地の便箋に薄墨か濃紺の筆ペンなどで書きし、一重の封筒を使います。(二重の封筒は「不幸が重なる」と捉えられるため) 忌み言葉(繰り返す、重ね重ね、たびたび、さらに、皆々様、死亡、四、九 など)や「追伸」(悲しみが重ならないように)は使わないように注意しましょう。 お悔やみの手紙の文例は下記の通りです。
<お悔やみの手紙例> お父様の突然の訃報に接し、ただただ驚いております。 ご家族の皆様の悲嘆いかばかりかと心中拝察申し上げ、心よりご冥福をお祈り申し上げます。 お力落としとは存じますが、お体を損なわれることのないよう、どうぞご自愛くださいませ。 本来なら何をおいても参上してお焼香させていただくべきところですが、やむを得ない事情によりお伺いすることができず、誠に申し訳ございません。 いずれ機会を見てご挨拶に参りたいと考えております。 とり急ぎ書中をもって、お悔やみ申し上げます。 合掌
<お悔やみの手紙例:一筆箋の場合>
香典を預ける人がいない場合、葬儀会社が行っている香典の代行サービスを使うことも可能です。 葬儀会社のホームページ等から代行依頼申請をします。 香典金額とは別に手数料(香典袋代含)で1,000円程度が必要となることが多いです。 代行サービスを利用する際は、申し込み期限などを事前に確認し、確実に葬儀に間に合うように手配しましょう。
通夜や葬儀、告別式に参列できないことがわかったらすぐに代理人を探しましょう。 家族、職場の人、友人、隣人などで通夜や葬儀に参列する人に預けます。 香典を預ける時は代理人に参列できない旨を伝え、香典を代理でお供えしてもらうことは可能かを確認しましょう。 香典を預けることが決定したら、自身の名前や住所などの情報を伝えます。(受付の記帳で必要になるため)
香典を預ける時は、現金をそのまま渡すのではなく香典袋に入れた状態(代理人がそのままお供えできる状態)で渡します。 香典袋の用意がどうしてもできない場合はその旨を伝え、香典袋代も添えて渡すと良いでしょう。 香典を直接預ける場合は、汚れたり折れたりしないように袱紗(ふくさ)に包んで渡します。 預ける香典を郵送する場合は必ず現金書留で送ります。
香典を代理人に預ける際は、喪主や遺族へその旨を事前に伝えておきましょう。 通夜や葬儀、告別式に参列できないことのお詫び、お悔やみの言葉、そして香典を代理人に預ける旨を電話やメールなどで伝えます。 また香典とは別に弔電や供物、供花を贈ると良いです。ただし受取辞退の場合もあるため必ず事前に喪主や遺族に確認をしましょう。
香典を預ける時は、故人の宗教や宗教に合った香典袋(不祝儀袋)を準備します。 香典袋(不祝儀袋)を選ぶ際の主なポイントは①袋の柄、②水引きの色、③表書き(印字されている場合)です。 仏教の香典袋は菊か蓮の花が印刷されており、黒白か双銀の水引きが付いているものを使います。 表書きが印字されている場合は、「御霊前」や「御香典」などを選びます。 神道の香典袋は無地で水引きは白、黒白、双銀のいずれかのものを使います。 キリスト教の香典袋の柄は百合の花か十字架で、水引きはなしです。 香典は弔事で渡すものですので、熨斗(のし)は不要です。 「熨斗( のし)」とは、贈答品につける飾り物のことを指し結婚などの慶事のみに使います。 熨斗には「伸ばす」という言葉を重ね相手の繁栄を祝うという意味合いがあります。「悲しみを引き伸ばす」ということになってしまうため、香典には付けません。
基本的に弔事では新札は使いません。新札だと前々から用意をされていたようで失礼な印象を与えるからです。 したがって香典では汚れやシワが目立たない古いお札を包むのが正式なマナーとされています。新札の方が清潔で失礼がないという点から新札を使用する人も増えつつあります。 新札を使う場合はわざと折り目を入れて包むと良いでしょう。 香典を包む時、「4」や「9」を含む金額は避けましょう。「死」や「苦」などを連想させるからです。 またかつては「奇数は吉、偶数は凶(数が割り切れることが縁が切れると連想させるため)」といわれていたため、金額やお札の枚数を偶数にするのも避けるべきです。 中袋へのお札の入れ方は、弔事では「顔を伏せる」ように入れるのが一般的とされています。 故人に対する悲しみやお悔やみなどの気持ちを表す意味で、封筒の「表」に対してお札が「裏」を向くように入れ、その際人物の顔が底を向くように入れます。 奉書紙や半紙などでの包む場合は、弔事では包んだ紙の三角の部分が右下にくるようにするのがポイントです。 上包み(外袋)の折り方は「悲しくてうつむいている」という意味で弔事では上の折返しが上面にきます。(上の折返しを最後に折ります) 水引きの結び方は「結びきり」の基本の真結びです。水引きの色が2色の場合、右に濃い色、左に薄い色がくるように結びます。
「表書き」とは、上包み(外の封筒)の表面に書く「御霊前」などの言葉です。 表書きは故人の宗教や宗派に合わせて書く必要があるため、事前に遺族に確認を取りましょう。 預ける香典の表書きは「御霊前」と書くのが一般的です。 他の宗教では「御供料」「御花料」と書くこともあります。 故人の宗教や宗派が不明な場合は、宗派を問わない「御花料」と書くと良いでしょう。 「御悔(おくやみ)」という表書きもありますが、あまり一般的ではないので避ける方が良いでしょう。 表書きを表にまとめましたのでご参考にしてください。
宗教・宗派 | 表書き |
---|---|
共通 | 御花料・御供料・御霊前(浄土真宗を除く) |
仏式 | 御香典・御霊前・御香料・御供料・御仏前(御佛前)
※「御仏前」は浄土真宗のみ、「御霊前」は使わない |
仏式(浄土真宗) | 御仏前(御佛前)・御香料 |
神式 | 御榊料・御玉串料・御神撰料・供物料・御神前・御霊前 |
キリスト教共通 | 御花料(お花料)・御白花料 |
キリスト教(カトリック) | 御ミサ料・御霊前 |
キリスト教(プロテスタント) | 忌慰料 |
無宗教 | 御霊前・御供物料、御花料、志 ※「志」は会費制の場合に用いる |
※仏式では四十九日法要までは「御霊前」、それ以降に「御仏前(御佛前)」を使う。
※浄土真宗では、亡くなった人はすぐ仏様になるという考えから「御霊前」は使わず「御仏前(御佛前)」を使う。
名前は表書きよりもやや小さい字で書きます。基本的にはフルネームで記載します。 香典袋(不祝儀袋)を旧姓で書く場合は、上包み(外袋)に現在の氏名を書き、左側に(旧姓 ○○)と記載するか、上包み(外袋)には現在の氏名を書き中包み(内袋)には旧姓で氏名を書くという方法があります。 連名は最大3名程度にしましょう。 氏名を並べる順番は、目上の人が一番右側です。特に上下の区別がない場合は五十音順で右から左へと記載します。 夫婦連名の場合は中心より右寄りに夫の氏名を、その左に妻の名のみを記載します。 連名が4名以上の場合は上包みに代表者のみ氏名を記載し、左側に「外一同」と書き添えます。 全員の氏名は白無地紙(半紙や奉書紙など)に目上の人順に右側から書き中包み(内袋)に入れます。 会社名を添える場合は、封筒の中心より右寄りに会社名を、中心に氏名を記載します。会社名は氏名よりも小さめに書きます。
金額は大字(だいじ)・旧字体で書くのが正式なマナーです。 大字とは漢数字の「一・二・三」などの代わりに用いる「壱・弐・参」などの主に改ざんを防ぐ目的で使われる漢字です。 最近は漢数字を使って書く人もいるようですが、厳密にはマナー違反になりますので注意しましょう。 例えば10,000円は「金 壱萬圓」と書きます。 また金額を書く際に「也(なり)」をつける必要はありません。 「也」は銭単位のお金を使っていた時代に、それ以下の端数のないことを表す際に使われていたものです。 現在は円以下の単位はないので「也」は不要です。 金額は中包み(中袋・内袋)の裏面右側(上か下)に縦書きします。 薄墨の毛筆や筆ペンを使って書くのが一般的ですが、ボールペンなどでも可能です。
漢数字 | 大字 |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
四 | 肆 |
五 | 伍 |
六 | 陸 |
七 | 漆・質 |
八 | 捌 |
九 | 玖 |
十 | 拾 |
百 | 陌・佰 |
千 | 仟・阡 |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
中包み(中袋・内袋)の裏面に金額とあわせて住所や電話番号も添えるとより丁寧です。 封筒裏面の左型に住所、名前、電話番号を記入します。 名前は外側の袋(香典袋)にも書きますが、会計ミスなどのトラブル防止のために中袋にも書きます。 郵便番号や電話番号は漢数字で縦書きします。封筒に記入欄がある場合は、欄に沿って記載していきます。 金額と同様に、薄墨の毛筆か筆ペン、もしくはボールペンで記入します。 中包みを使用しない場合は、上包み裏面の縦左半分の中央寄りに住所を、そして住所の左側に金額を書きます。
香典(不祝儀)の金額が少額などの理由で香典返し(香典のお礼として遺族が弔問者に贈る品物)を辞退する場合は、中包みの裏面もしくは一筆箋にその旨を記載します。
などと一言添えれば問題ありません。
葬儀後に渡す香典の金額は、通夜・葬儀・告別式で渡す際の香典の金額と同額であることが一般的です。 通夜や葬儀に参列しないからと、香典の金額が少なくなることはありません。 下記でご紹介する香典の金額相場を参考にしてください。
香典(不祝儀)の金額は故人との関係性や立場、自身の年齢によって決まります。 特徴としては、自身の年齢が上がるにつれて、また血縁関係が近いほど香典(不祝儀)の金額が高くなります。 金額に迷う時は自分と同じような立場の人と相談して決めると良いでしょう。 次のような場合は、想定していた金額よりも多めに出した方が無難でしょう。
贈り先 | 金額相場 |
---|---|
祖父母 | 1万〜3万円 |
親 | 5万〜10万円 |
子供 | 10万円前後 |
兄弟姉妹 | 1万〜5万円 |
子供の配偶者の親 | 3万〜5万円 |
孫 | 1万〜3万円 |
おじ・おば | 1万〜3万円 |
いとこ | 1万〜3万円 |
上記以外の親戚 | 5千円〜2万円 |
職場関係(上司、同僚、取引先) | 5千円〜1万円 |
友人・知人 | 3千円〜1万円 |
隣人 | 2千円〜1万円 |
いかがでしたか? 今回は代理で香典を渡す場合のマナーや注意点についてご紹介しました。 主な内容は下記の通りです。
上記以外にも香典の基本知識をご紹介しましたのでぜひ参考にしてください。