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「享年」と「行年」の意味の違いと使い分け【完全版】

「享年(きょうねん)」は、天から享(う)けた年数という意味で、数え年で考えます。生まれた時を1歳とし、元旦に年齢を加算します。「行年(ぎょうねん)」は、この世に生まれて何歳まで修行したかを意味する満年齢です。私たちが日常的に使用しているのが満年齢で、生まれた時点を0歳とし、誕生日を迎えるごとに年齢を加算する数え方です。

「享年」と「行年」の違い

「享年」と「行年」は意味は違うが内容は同じ

「享年」と「行年」は意味は違いますが、表している内容は同じです。 「享年」は「天から享(う)けた年数」という意味で「死んだ者がこの世に生きた年数」を表します。宇宙から授かった人生の長さを表します。 「行年」は「娑婆(しゃば)で修行を何歳まで積んだか」を表します。自ら人生を歩み何歳まで到達したかを意味します 簡単に言い換えると、 「享年」=「死人が何年間生きたか」 「行年」=「死人が何歳まで生きたか」 です。 「享年」と「行年」は意味は違いますが、いってる内容は全く同じであることが分かります。 一般的に「享年」には「歳」が付かず、「行年」には「歳」が付くのですが、その理由はこの意味の違いからです。 「何年間生きたんですか?」という質問に対して「80歳です」と答えるのが文法的に間違っているのと同じです。 「享年」にあえて単位を付けるとしたら、「歳」ではなく「年」または「年間」ですが、このように単位を付けることはしません。 「行年」の同義語には「没年(ぼつねん)」があります。 「没年」は「行年」と同じく「死んだ時の年齢」という意味です。

「享年」と「行年」は数え方が違う

「享年」と「行年」は、表している内容は同じなのにもかからわず、数え方が違います。 「享年」は「数え年」という数え方を採用しています。 「数え年」とは、生まれた時を1歳とし、1月1日を迎えると年齢が加算されます。 お隣韓国では今でも「数え年」が日常的に使用されています。 「行年」は「満年齢」という数え方を採用しています。 「満年齢」は、生まれた時を0歳とし、誕生日を迎えると年齢が加算されます。 現在日本で使われているのは、「満年齢」です。 例えば、数え年では、2020年10月1日に生まれた赤ちゃんは、2021年1月1日にはもう2歳になることになります。満年齢ではまだ0歳です。 つまり、「数え年」と「満年齢」では最大で2歳の差が生じることになります。 2020年10月1日生まれの人が2101年1月1日に亡くなった場合は、「享年82」または「行年80歳」とするのが正しいです。

「享年」を「行年」の数え方で使ってるのが日本

「享年」と「行年」の本来の意味と使い方を今まで解説してきました。 しかしながら、現代の日本では「行年」という言葉をあまり使わず、「享年」を「行年」の数え方である「満年齢」を採用して使っています。(ここが混乱する原因!) どの国でもそうですが日本も例外なく、長寿であることに重きが置かれています。 そのため「行年」よりも数字が大きくなる「享年」がこの好まれて使用されてきました。 今でも日常的「行年」よりも「享年」が使われているのはそれが理由です。 しかし、日本では1950年に「年齢のとなえ方に関する法律」が制定され、数え年は基本的に廃止され満年齢が採用されることになりました。 数え年もあった時代の名残で、市役所などの公式な書類には今でも「満年齢」とわざわざ表記されていることがあります。 「享年」という言葉を使っているのに、「満年齢」を採用しているのが日本の現状です。 そのため、2020年10月1日生まれの人が2101年1月1日に亡くなった場合でも「享年80歳」と表記することが多いのです。 慣例的にこの表記方法は現代においては許容であり、誤用とはいえません。むしろこのように書くことの方が多くなってきています。

「享年」はお位牌や寺院の墓、「行年」は寺院以外の墓に使われる

現在ではお墓では「行年」を使う場合も増えてきています。霊園などにある一般的なお墓ではよく見かけます。 満年齢で亡くなった歳を書くには「行年」が本来正しい書き方である点も理由の一つですが、単に画数が少なく石に彫りやすいというのもあります。 現在では霊園にお墓を所有している人も多いかと思いますが、昔はお墓は主に寺院の中に建てられていました。 昔は今よりも長寿であることに重きが置かれており、寺院のお墓には「享年」が使われていました。 その名残で現在でも寺にあるお墓には「享年」がよく使われます。 また「享年」はお位牌でも使用されます。 お位牌(おいはい)とは、故人の戒名(法名、法号)と没年月日、俗名、行年(享年)の記された木の札のこと、通常は自宅の仏壇やお寺の位牌壇に安置し、故人の霊をお祀りします。

「享年」と「行年」の例文

「享年」を用いた例文

  • 私の曽祖母は昨年亡くなりました。享年101でした。
  • 父は享年48という若さで生涯を終えました。
  • 田中会長が死去、享年84歳だった。
  • 急死した政治家・田中一郎(享年84)

「行年」を用いた例文

  • 行年97歳。
  • 行年七十二で亡くなった祖父の墓参りに行くことにした。
  • 彼が亡くなったのはもう10年以上も前だ。行年20歳だった。

まとめ

「享年(きょうねん)」は、天から享(う)けた年数という意味で、数え年で考えます。 生まれた時に1歳とし、元旦に年齢を加算します。 「行年(ぎょうねん)」は、この世に生まれて何歳まで修行したかを意味する満年齢です。 私たちが日常的に使用しているのが満年齢で、生まれた時点を0歳とし、誕生日を迎えるごとに年齢を加算する数え方です。

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