お布施の金額は偶数や奇数などを気にする必要はありません。「4」は「死」、「9」は「苦」と不吉なことを連想させるため避ける方が良いでしょう。お布施の金額は書かずに渡しても問題ありませんが、書いて渡す方がより親切です。金額を書く時は大字(旧字体)で書き、漢数字は使いません。
「お布施」とは仏式の謝礼の一つです。読み方は「おふせ」です。 主に読経いただいく際に僧侶に差し上げるお礼の金品のことを指します。お布施の金額に戒名料(戒名の謝礼)が含まれる場合もあります。 「布施」という言葉に接頭語の「お」「御」がついた言葉です。 お布施以外にも僧侶に渡す謝礼はありますので、後ほど詳しくご紹介します。
お布施は通夜や告別式時に一度だけ渡せば良いというものではなく、儀式ごとにお渡しします。 初七日や四十九日法要などで「お通夜で渡したから今回は渡さなくて良い」となるのはマナー違反となりますので注意しましょう。 経済的にお布施をお渡しするのがどうしても難しい場合は、事前に僧侶に相談をしましょう。
お布施は仏教の呼び方ですが、他の宗教でも謝礼を渡す習慣があります。 神道(神式)では、神官へのお礼を「御榊料(おさかきだい)」として渡します。 表書きを「御礼」「御祭祀料(おさいしりょう)」「御玉串料(おんたまぐしりょう)」「御神饌料(ごしんせんりょう)」「御祈祷料(ごきとうりょう)」などとすることもあります。 斎場へのお礼は「御席料」や「御礼」として渡します。 キリスト教のお礼の呼び方(書き方)はカトリックとプロテスタントで異ります。 例えばカトリックは神父へのお礼を「御ミサ料」として、プロテスタントは牧師へのお礼を「記念献金」として渡します。 その他はオルガン奏者、聖歌隊のお礼は「献金」「御礼・お礼」「御禮(おんれい)」となります。 教会へのお礼(式場の使用料)は「献金」「御禮(おんれい)」「御花料」です。 無宗教の場合で僧侶を呼ばない場合は、お布施を渡す必要はありません。
お布施を包む際に、金額や包むお札の枚数は偶数でも良いのかと悩む人は多いのではないでしょうか。 偶数は「数が割り切れる=縁が切れる」と連想させるため、慶弔では避けるべきと言われています。 しかしお布施に関しては偶数や奇数など数字を気にする必要はないです。 上記でご紹介したように、お布施は僧侶への謝礼です。 僧侶に不幸があったわけではないですし、数字よりも大切なのは感謝の気持ちです。 そのため、お布施を包む際に偶数や奇数などの心配は不要です。
基本的に慶弔では「4」や「9」を含む数字は避けるべきだといわれています。 なぜならこれらの数字は「死」や「苦」を連想させ、縁起が悪いとされているためです。 お布施に関しての厳密なルールはありませんが、お布施でも「4」や「9」を含む金額は避ける方が無難でしょう。 しかし最近では数字をあまり気にしない人も多くいるので、相手や状況に応じて判断をするか、周囲に相談しましょう。
通夜や葬儀で渡す香典や、法事で渡す供物料では金額の明記は必須です。(喪主(施主側)が香典や供物料に対する御礼を送るため) しかし、お布施を包む封筒(紙)に金額を書くこと自体は必須ではありません。 読経や戒名に対する「代金」というものは存在せず、あくまでお布施は感謝の気持ちを表すものとなります。 金額はそこまで重要ではないことから金額を書かずに渡しても問題ありませんが、書く方がより親切という考え方もあります。
基本的に弔事で渡す香典などは薄墨で書くのがマナーとされています。 薄墨とは文字通り「薄くすった墨」のことです。通常よりも墨を少なくし、水で薄めて使用します。 弔事で薄墨を使う理由や背景として、「悲しみの涙で墨が薄れる」「突然のことで墨をする時間がない」などの意味合いが込められています。 よって香典やお供え物などの表書きや名前は薄墨で書きます。 しかし、お布施に関しては違います。 お布施は僧侶や寺院に対するお礼ですので、薄墨ではなく通常の濃さの毛筆や筆ペンで書きます。 金額を含め、表書き、名前、住所、電話番号の全てを通常の黒色で書きます。 ボールペンやマジックペンは避ける方が無難です。(中袋はボールペンで書いても良いとされています。)
お布施の封筒は手書きするのが一般的です。 しかし最近では表書きや氏名などを印刷したり、スタンプを使ったりする人も増えているようです。 また封筒に表書きが印刷された状態で販売されていることも多いです。 毛筆や筆ペンを使って書くのが苦手などの場合ははんこやゴム印を使うことも可能です。 ただし遺族によっては良い印象を持たない人もいるため注意が必要です。
お布施の金額を書く際は大字(旧字体)で書きます。 大字とは漢数字の「一・二・三」などの代わりに用いる「壱・弐・参」などの漢字のことで、主に改ざんを防ぐ目的で使われる漢字です。 金額は「お金」という意味を持つ「金」を添えて「金 ○○圓」という形で書きます。 例えば、
というように書きます。 金額を横書きする場合は、算用数字を用いても構いません。例えば「1万円」は「10,000圓(円)」と書きます。 下記に大字をまとめましたので参考にしてください。
漢数字 | 大字 |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
四 | 肆 |
五 | 伍 |
六 | 陸 |
七 | 漆・質 |
八 | 捌 |
九 | 玖 |
十 | 拾 |
百 | 陌・佰 |
千 | 仟・阡 |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
金額を書く際に「金 壱萬圓 也」などと「也(なり)」をつける人がいますが、「也」は必ずつけなくてはいけないというものではありません。 「也」は円以下に銭(せん)や厘(りん)というお金の単位があった時代に、それ以下の端数のないことを示す際に使われていたものです。 現在では円以下の単位はないので「也」はつけなくても問題ないのです。
金額を書く場所は、お布施を包む際に使用する袋によって異なります。 お布施を包む際は中袋を使用せず、白封筒または奉書紙のみを使うのが最も一般的な方法です。 地域や宗派、家庭によってはお布施を包む際に不祝儀袋(香典袋)を使うこともあります。 その場合は、中袋と外袋の2枚の封筒(紙)を使用します。 封筒か中袋つきの不祝儀袋(香典袋)のどちらかを使うかによって書く場所が変わります。 中袋なし(白封筒)の場合は、金額は封筒の裏面に書きます。裏面の右側に書くのが一般的です。 中袋ありの場合は、金額は中袋の表面の中央に書きます。
お布施の表書きは「御布施」と書きます。「御回(廻)向料(ごえこうりょう)」と書くこともあります。 お布施は読経や戒名に対するお礼ですが、あくまで感謝の気持ちで包むもので読経や戒名には対価はありません。 そのため「読経料」や戒名料と書くことは避けましょう。 表書きを書く場所は、中袋なし(白封筒)の場合は封筒の表面、上部中央に書きます。 中袋ありの場合は、封筒(外袋)の表面、上部中央に書きます。
喪主(施主)の名前を書くのが基本です。文字は表書きよりも小さく書きます。 フルネームもしくは苗字のみを記入します。 名前を書く場所は、表書きの下になります。 中袋なしの場合は、白封筒の表面、下部中央です。 中袋ありの場合は、封筒(外袋)の表面、下部中央に書きます。 喪主(施主)の名前を書くのが一般的ですが、場合によっては連名で包むこともあります。 連名は最大3名までで、4名以上になる場合は代表者のみの名前を封筒に書き、全員分は別紙に記入します。
お布施を包む際、住所を添えて書くとより丁寧です。 基本的には縦書きで番地や電話番号を書く際は漢数字を使っても構いません。 封筒に記入欄がある場合は、欄に沿って記入します。 住所を書く場所は、中袋なしの場合は封筒の裏面、左側です。 中袋がある場合は中袋の裏面、左側に書きます。 封筒の中央寄りに住所を書き、中袋の場合は名前も書きます。
必須ではありませんが、封筒に余白があれば電話番号も合わせて記入すると良いでしょう。 何かあった場合に僧侶がすぐに連絡できるからです。 電話番号も基本は縦書きで漢数字で書きます。 電話番号は住所の次に書きます。
上記でご紹介したように、お布施は儀式ごとに包む必要があります。 お布施の金額相場は儀式によって異なります。 主な儀式ごとのお布施の金額相場は下記の通りです。
これらの金額はあくまで目安で地域や寺院によってばらつきがあります。宗派、寺の格式、地域、儀式の規模による差もあります。 またお布施の内訳として、お布施のみの場合と戒名料を含む場合があります。 そのため必ず寺院や僧侶に相談することをおすすめします。
葬儀でお布施を包む際は、白封筒もしくは奉書紙を使います。 白封筒を使うのが最も一般的です。封筒の表面に郵便番号欄などの印字がない無地のものを使います。 また不幸は一度きりということを示すため二重の白封筒は避け一重の白封筒を用います。 奉書紙とは、厚手で純白の和紙のことです。半紙やコピー用紙での代用も可能です。 奉書紙は文具店などで、白封筒はコンビニや100円ショップなどで購入可能です。 白封筒以外に、不祝儀袋(香典袋)を使う地域や宗派もあります。 封筒でもポチ袋はNGですので注意しましょう。 お布施の場合、熨斗(のし)や水引きは不要です。 地域や宗派によっては水引きを使用する場合があり、その場合は黒白、黄白、双銀の水引きを使う場合もあるので事前に確認を行いましょう。
基本的には弔事で包むお金で新札は使いません。新札だと前々から用意をされていたようで失礼な印象を与えるからです。 しかしお布施に関しては異なります。お布施は僧侶に対する謝礼ですので、包むお札は古札ではなく新札が好ましいです。 お布施に関しては偶数や奇数などを気にする必要はありませんが、「4」や「9」など不吉なことを連想させる数字は避ける方が良いでしょう。 お布施を包むときはお札の向きに注意しましょう。香典などのお札の入れ方とは異なります。 表書きや名前などを書く紙や封筒の表面にお札の肖像画の面が向き、肖像画が封筒の上を向くように入れるのがマナーです。 お布施を持参する際は汚れたり折れるのを防ぐため袱紗(ふくさ)という1枚の布を使います。 袱紗の折り方には決まりがあり、弔事の場合は「右→下→上→左」の順番で布を折ります。 袱紗が無い場合に風呂敷やハンカチを代用する時も折り順は同じです。
お布施は会場まで袱紗に包んで持参しますが、袱紗に包んだまま渡すのはNGです。 相手から袱紗が返ってくることを「不幸が返ってくる」として捉えられるためです。 正式にはお布施を切手盆にのせて僧侶に渡すのがマナーとされています。 切手盆が手元にない場合は、袱紗を切手盆の代わりとして使います。 菓子折りを一緒に渡す場合は、お布施を切手盆にのせ、切手盆を菓子折りの上に置きます。 お布施を渡す主なタイミングは、儀式の当日もしくは翌日以降です。最近では儀式当日に渡すことが多いようです。 儀式が始まる前に渡すのが基本で、施主が僧侶に挨拶をする際に手渡しします。儀式の前で僧侶が準備に追われている場合は、儀式の後に渡しても問題ありません。 お布施を渡す際は、「本日はお世話になります。」「昨日はありがとうございました。」などと一言挨拶を添えます。 お布施を渡す際に無理に笑顔を作る必要はなく、言葉で感謝の気持ちを伝えられれば問題ありません。 基本的には直接僧侶に手渡しするのがマナーですが、僧侶や遺族の都合で郵送する場合もあります。 郵送する際は必ず現金書留で行います。通常通り奉書紙や白封筒に現金を包んだ上で挨拶状を添えて現金書留用の封筒に入れます。
お布施以外の僧侶への謝礼と金額目安をご紹介します。
いかがでしたか? 今回はお布施を包む際の金額の注意点などをご紹介しました。
金額以外にもお布施のマナーをご紹介しましたので、ぜひ参考にしてみてください。