「お布施」とは仏式の謝礼の一つで僧侶の読経に対して渡す金品のことを指します。現在は現金を包んで渡すことが多いです。通夜や法要など仏事を行う度にお渡しする必要があります。お布施の金額は10〜50万円とされていますが、地域や寺院によって差がありますので必ず事前に僧侶に相談をして金額を明確にしましょう。
「お布施」とは仏式の謝礼の一つです。読み方は「おふせ」です。 主に読経いただいく際に僧侶に差し上げるお礼のことを指します。 「布施」という言葉に接頭語の「お」「御」がついた言葉です。 お布施を渡す際に封筒に書く表書きは「御布施」と書くことが多いです。
「お布施」の語源は仏教の修行に由来します。 仏教信者が実践すべき6種の修行項目を「六波羅蜜(ろくはらみつ)」といいます。
上記の「布施波羅蜜」を略して「布施」となります。 布施は身を清めるための大切な修行の一つとされていて、民衆に対して恐怖を取り除く「無畏施(むいせ)」という布施をしなさいという決まりがあります。 本来は僧侶が一般民衆に施すことを「お布施」といっていましたが、この意が転じて他人に施しを与えることとなり、現在では一般民衆が僧侶に渡す金品などの謝礼という意味で使われています。 布施にはほどこしの気持ちで僧侶に金銭や物品を渡す「財施」と、僧侶が信者から食べ物の施しを受けそのお返しに仏教の教えを説く「法施」があります。 「財施」としては現金を包んで渡すことが多いです。
「お布施」のことを心付け(こころづけ)という人がいますが、お布施に対して心付けは使いません。 心付けは「祝儀」と同義で、感謝の気持ちを示すために贈る金品のことを指します。 基本的には祝い事のみに使う言葉ですので、葬儀や法要などの弔事では使用しません。 ただし葬儀や法要の運営を手伝ってくれた方に対して渡す謝礼を「心づけ」ということもあります。
お布施とよく混同される言葉に「香典」や「お供え」がありますがこれらは全く違う意味を持ちます。 「香典」とは、仏教の通夜や葬儀で霊前にお供えする金品のことを指します。 「お供え」とは、神仏へ物をお供えすること、またその物のことを指します。 「お布施」は上記で説明した通り、僧侶に対するお礼の金品のことを指します。
お布施は仏教に限ったしきたりですが、他の宗教でも謝礼を渡す習慣があります。 神道(神式)では、神官へのお礼を「御榊料(おさかきだい)」として渡します。 表書きを「御礼」「御祭祀料(おさいしりょう)」「御玉串料(おんたまぐしりょう)」「御神饌料(ごしんせんりょう)」「御祈祷料(ごきとうりょう)」などとすることもあります。 斎場へのお礼は「御席料」や「御礼」として渡します。 キリスト教のお礼の呼び方(書き方)はカトリックとプロテスタントで異ります。 例えばカトリックは神父へのお礼を「御ミサ料」として、プロテスタントは牧師へのお礼を「記念献金」として渡します。 その他はオルガン奏者、聖歌隊のお礼は「献金」「御礼・お礼」「御禮(おんれい)」となります。 教会へのお礼(式場の使用料)は「献金」「御禮(おんれい)」「御花料」です。
僧侶は通夜や葬儀・告別式で読経をしますので、当日もしくは翌日にお布施を渡します。 御布施単体の金額相場は10〜50万円程度と言われています。 戒名料・御車代・御膳料などを包む場合の金額相場は30〜60万円というデータもあります。 お布施以外のお礼については下記で詳しく解説しています。
通夜や葬儀・告別式後に行われる法要時にもお布施は必要です。 四十九日や一周忌、三回忌、七回忌などの法要で僧侶は読経をしますので、法要当日もしくは翌日に渡します。 お布施の金額相場は1周忌法要までは3〜5万円、以降の法要(三回忌や七回忌など)は1〜5万円が目安です。 通夜や葬儀・告別式の時と同様に、お布施以外のお礼を渡すこともあります。
納骨式の際も僧侶は墓場でお経をあげますので、納骨式でもお布施を用意します。 納骨時のお布施の金額相場は1〜5万円が目安です。 納骨式は四十九日法要と合わせて行うことが多いので、その際はまとめて包むこともあります。 納骨式の際は別途「卒塔婆供養料」などを渡す場合もあります。卒塔婆供養料については後ほどご紹介します。
四十九日法要が終わって初めて迎えるお盆のことを初盆(ういぼん、はつぼん)や新盆(にいぼん、あらぼん)といいます。 初盆は親戚や知人なども参列し、僧侶にお経をあげて丁寧に供養してもらいます。 初盆(新盆)で渡すお布施の金額相場は3〜5万円が目安です。
初盆(新盆)以外のお盆でも、自宅に僧侶を迎えて読経してもらう場合はお布施を包む必要があります。 また菩提寺での合同供養の場合もお布施を包んでお渡しするのがマナーです。 通常のお盆で渡すお布施の金額の目安は5千〜2万円といわれています。
お彼岸とは春分の日を中日に前後3日ずつの合計7日間の期間のことを指します。 お彼岸はあの世とこの世が近づく期間といわれており、ご先祖に会いに行くためにお墓参りをします。 その際に僧侶を招いてお経をあげてもらう場合はお布施が必要です。 お彼岸のお布施の金額は3千〜1万円(寺院での合同供養)、3〜5万円(自宅供養)が目安です。
開眼供養とは、新しく仏壇や本位牌(ほんいはい)を購入した場合にのみ執り行われる儀式です。 位牌とは死者の霊を祭るために、戒名(かいみょう:僧侶が故人につける名前)を記した長方形の木牌のことを指します。 僧侶が仏壇や本位牌に魂を入れることで、仏の魂を迎えることができます。 開眼供養時のお布施の金額の目安は1〜3万円です。 開眼供養時のお礼は「お布施」ではなく「開眼供養料」とすることもあります。 またお墓を閉じたり別の場所に移動する際に行う閉眼供養(墓じまい)時もお布施が必要です。
基本的に弔事で渡す金品は薄墨で書くのがマナーとされています。 薄墨とは文字通り「薄くすった墨」のことです。通常よりも墨を少なくし、水で薄めて使用します。 弔事で薄墨を使う理由や背景として、「悲しみの涙で墨が薄れる」「突然のことで墨をする時間がない」などの意味合いが込められています。 よって香典やお供え物などの表書きや名前は薄墨で書きます。 しかしお布施に関しては、僧侶や寺院に対するお礼ですので、薄墨ではなく通常の濃さの毛筆や筆ペンで書きます。
お布施の封筒は手書きするのが一般的です。 しかし最近では表書きや氏名などを印刷したり、スタンプを使ったりする人も増えているようです。 また封筒に表書きが印刷された状態で販売されていることも多いです。 毛筆や筆ペンを使って書くのが苦手などの場合ははんこやゴム印を使うことも可能です。 ただし遺族によっては良い印象を持たない人もいるため注意が必要です。
お布施の表書きは「御布施」と書きます。封筒の上部中央に書きます。 お布施は読経や戒名に対するお礼ですが、あくまで感謝の気持ちで包むもので読経や戒名には対価はありません。そのため「読経料」や戒名料と書くことは避けましょう。 また「御布施」が最も一般的な表書きですが、「御回(廻)向料(ごえこうりょう)」と書くこともあります。
「志(こころざし)」という表書きもありますが、お布施の代わりとしては使用しません。 「志」は基本的に通夜や告別式などを手伝ってくださった方に対してお礼を渡す時の表書きとなります。 僧侶に対するお礼には使いませんので注意が必要です。
表書きの下部にお布施の送り主の名前を書きます。 基本的には施主の名前を記入することが多いです。 施主のフルネームもしくは姓のみを書きます。
包んだ金額を書く際は大字(旧字体)で書きます。 大字とは漢数字の「一・二・三」などの代わりに用いる「壱・弐・参」などの漢字のことで、主に改ざんを防ぐ目的で使われる漢字です。 金額は「お金」という意味を持つ「金」を添えて「金 ○○圓」という形で書きます。 例えば「10万円」は「金 壱拾萬圓」となります。 金額を書く場所は、中袋がある場合は中袋の表面に書きます。 中袋がない場合は、封筒(外袋)の裏面に直接書くか金額は書かずにお渡しします。
漢数字 | 大字 |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
四 | 肆 |
五 | 伍 |
六 | 陸 |
七 | 漆・質 |
八 | 捌 |
九 | 玖 |
十 | 拾 |
百 | 陌・佰 |
千 | 仟・阡 |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
お布施を包む際、住所や電話番号を添えて書くとより丁寧です。 住所を書く場所は封筒の裏面です。中袋がある場合は中袋の裏面に、中袋なしの場合は封筒の裏面に書きます。 住所は封筒の裏面左半分に記入します。 封筒の中央寄りに住所を書き、中袋の場合は名前も書きます。 基本的には縦書きで番地や電話番号を書く際は漢数字を使っても構いません。 封筒に記入欄がある場合は、欄に沿って記入します。
基本的には弔事で包むお金では新札は使いません。 なぜなら、新札だと前々から用意をされていたようで失礼な印象を与えるからです。 しかし、お布施に関しては異なります。 僧侶に対する謝礼ですので、包むお札は古札ではなく新札が好ましいです。 事前に新札の用意をしておきましょう。
お布施を包む際は、白封筒もしくは奉書紙を使います。 白封筒は郵便番号や電話番号などの印字が一切ない無地の一重の封筒を使います。(二重の封筒は不幸が重なることを連想させるため避ける) 奉書紙とは、厚手で純白の和紙のことです。半紙やコピー用紙での代用も可能です。 白封筒以外に不祝儀袋(香典袋)を使う地域や宗派、家庭もあります。 封筒でもポチ袋はNGですので注意しましょう。
「熨斗( のし)」とは、贈答品につける飾り物のことを指します。 結婚などの慶事のみに使い、弔事では不要です。 熨斗には「伸ばす」という言葉を重ね相手の繁栄を祝うという意味合いがあります。 「悲しみを引き伸ばす」ということになってしまうため、お布施を包む紙や封筒に熨斗はつけません。
水引きとは、封筒や掛け紙と一緒に使うヒモのようなものです。 通夜や葬儀で渡す香典や、法要で渡す供物料を包む際は水引きを使いますが、お布施の場合は使わないのが一般的です。 ただし地域や家庭によっては黒白、黄白、双銀の水引きを使う場合もあるので、事前に確認を行いましょう。
お札の向きは、人物の肖像画が印刷されている面が「表」とされています。 お布施を包むときは、お札の向きに注意しましょう。香典などのお札の入れ方とは異なります。 基本的に、表書きや名前などを書く紙や封筒の表面にお札の肖像画の面が向くように入れるのがマナーです。 そして肖像画が上を向くように入れます。
お布施を持参する際は袱紗(ふくさ)という1枚の布を使います。 汚れたり折れるのを防ぐためです。 袱紗の折り方には決まりがあり、弔事の場合は「右→下→上→左」の順番で布を折ります。 袱紗が無い場合に風呂敷やハンカチを代用する時も折り順は同じです。 袱紗につめが付いている場合は、つめが左側にくるように広げます。 ポケット(台付き)タイプの袱紗の場合は、左開きの状態で不祝儀袋(香典袋)を入れます。
会場までは袱紗に包んで持参しますが、袱紗に包んだまま渡すのはNGです。 相手から袱紗が返ってくることを「不幸が返ってくる」として捉えられるためです。 必ず袱紗から取り出して渡すようにしましょう。 袱紗からお布施をすばやく取り出し袱紗を手早く畳みます。 畳んだ袱紗の上にお布施を乗せ、表書きの正面を僧侶に向けて渡します。
切手盆とは、黒塗りのお盆のことで冠婚葬祭で祝儀や不祝儀を渡す際に袋を乗せる台として使います。 正式には、お布施を切手盆にのせて僧侶に渡すのがマナーとされています。 切手盆が手元にない場合は、上記でご紹介した袱紗を切手盆の代わりとして使います。 また菓子折りと一緒に渡す場合は、菓子折りの上に切手盆にのせたお布施を置いて渡します。
お布施を渡すタイミング主なタイミングは、儀式の当日もしくは翌日以降です。 当日は僧侶も忙しく動いているため、日を改めて寺院を訪ねお布施を渡すことがあります。 その際は、儀式からあまり日を空けないことがポイントです。 最近では儀式当日に渡すことが多いようです。 儀式が始まる前に渡すのが基本で、施主が僧侶に挨拶をする際に手渡しします。 儀式の前で僧侶が準備に追われている場合は、儀式の後に渡しても問題ありません。
お布施を渡す際は、一言挨拶を添えます。 挨拶の例は下記の通りです。
お布施を渡す際の顔の表情に迷う人がいると思います。 無理に笑顔を作る必要はありません。 言葉で感謝の気持ちを伝えられれば問題ないでしょう。
お布施は郵送しても良いのでしょうか? 基本的には直接僧侶に手渡しするのがマナーですが、僧侶や遺族の都合で郵送する場合もあります。 郵送する際の注意点ですが、現金の郵送は必ず現金書留で行います。 現金書留用の封筒は郵便局の窓口で販売されています。 通常通り奉書紙や白封筒に現金を包んだ上で現金書留用の封筒に入れます。 お布施を郵送する際は、挨拶状を添えましょう。
ここでは、お布施以外の僧侶への謝礼と金額目安をご紹介します。
僧侶の送迎を主催側がしない場合(僧侶が自らの足で会場に来た場合)には、「御車代(おくるまだい)」を包みます。 御車代の金額目安は5千〜1万円といわれています。
僧侶が会食に参加しないまた会食を設けない場合には食事代として「御膳料(ごぜんりょう)」をお渡しします。 御膳料の金額の目安は5千〜1万円です。
戒名とは、僧侶が死者につける名前のことです。 宗派によって法名(浄土真宗)や法号(日蓮宗)とよぶこともあります。 名付けていだたいたお礼として戒名料をお渡しします。一般的には通夜や葬儀、告別式の際に渡します。 戒名料はお布施の代金に含まれる場合とそうでない場合がありますので、事前に寺院に相談しはっきりさせておくべきです。 戒名料の金額は、戒名のランクや寺院によってかなり差があります。 2万円など比較的安価な価格から100万円以上の場合もありますので、正確な金額を菩提寺に確認しましょう。
卒塔婆(そとば)とは墓の後ろに立てる長い板のことで、僧侶が戒名や経文を書き込みます。 四十九日や納骨式などの儀式の際に卒塔婆供養をする場合は、「卒塔婆料」が必要です。「御塔婆料」ともいいます。 金額の目安は1本3千円程度といわれています。 こちらも正確な金額は僧侶に直接確認をしましょう。
御布施と供養料には違いがあります。 御布施は僧侶に感謝の気持ちで渡すお礼で、供養料は供養にかかる費用のことです。 遺族に代わって寺院に供養をしてもらう「永代供養料」として支払うことが多いです。 上記でご紹介したように御布施は仏事のたびに渡す必要がありますが、供養料は基本的には1回のみとなります。 供養料は御布施とよく混同されますが、供養料は厳密にいうと謝礼ではありませんので注意が必要です。
通夜や告別式、法事などでは僧侶以外にもお礼を渡しますのでご紹介します。
通夜や告別式などを手伝ってくださった方にもしっかりとお礼をする必要があります。 世話役や弔辞を読んでくださった方、会場スタッフなどが該当者です。 金額相場は1人2千〜1万円が目安です。世話役には1〜2万円と多めにお渡しします。 現金以外にもプリペイドカードや商品券をお渡しすることもあります。 この場合の表書きは「御礼」もしくは「志」とします。
通夜や告別式、また法要などに参加してくださった弔問客にもお礼を渡します。 通夜や葬儀、告別式に参列してくださった方に渡すお礼を「会葬返礼品」といいます。 儀式の当日にハンカチ、お茶、のり、プリペイドカード、商品券などをお渡しします。 通夜や葬儀、告別式で香典をいただいた方に当日もしくは後日渡すお礼を「香典返し」といいます。 香典返しはいただいた香典の約半額の金品を贈るのが一般的です。 四十九日などの法要で香典(供物料)や供物をいただいた方に渡すお礼を「引き出物」といいます。 引き出物は供物料の金額に関わらず、一律の品物を用意します。 高額の御供物料をいただいた場合は、別途お礼の品を用意します。
上記でお布施の金額目安をご紹介しましたが、これらはあくまで目安であって地域や寺院によってばらつきがあります。 宗派、寺の格式、地域、儀式の規模による差もあります。 そのため必ず寺院や僧侶に相談することをおすすめします。
お布施は僧侶に対する謝礼ですが、僧侶にお世話になるたびにお渡しするのがマナーです。 通夜や告別式時に一度だけ渡せば良いというものではなく、儀式ごとにお渡しします。 初七日や四十九日法要などで「お通夜で渡したから今回は渡さなくて良い」となるのはマナー違反となりますので注意しましょう。 経済的にお布施をお渡しするのがどうしても難しい場合は、事前に僧侶に相談をしましょう。
お布施などの謝礼は相続財産の控除対象となります。 相続税の申告手続きが必要な場合は、領収書を持参して僧侶から印鑑やサインをもらいましょう。 領収書にはお布施などの金額を予め書き込んでおくとスムーズです。
お布施は現金でお渡しするのがこれまでのしきたりでしたが、最近はクレジットカード払いや銀行振込に対応してる寺院も増えています。 クレジットカード、銀行振込、Paypay、Suicaなど現金以外の方法で納めることが可能になりました。 現金以外でお布施を納めることができるかどうかは、直接僧侶に確認をしましょう。
儀式の規模などによっては、僧侶が複数名で読経する場合があります。 一般的に一番位の高い僧侶が儀式を取り仕切り、その他の僧侶は補助役になります。 その場合のお布施は、一番位が高い僧侶にまとめてお渡しします。 金額は、最も位の高い僧侶を一人分とし補助役はその半額と考え、補助についた人数分を上乗せします。
●お布施とは?
●お布施が必要な時と金額相場
●お布施の書き方
●お布施の入れ方・包み方
●お布施の渡し方
●お布施以外の僧侶への謝礼
●僧侶以外へのお礼
●お布施に関するその他のマナー