「クリティカル」には「危機的。病状が重い」と「批判的」という2つの意味があります。「危機的」から転じて「将来を左右するほど重大な」という意味でも使います。また、「批判的」から転じて「批判力のある」というプラスの意味もあり「クリティカルシンキング」などと使います。
カタカナ語「クリティカル」の基本的な意味は「危機的」と「批判的」の2つです。 「危機的」は「状況があやうい」という意味でも使いますし、「病状があぶない」つまり「危篤。重態」という意味でも使います。 「危機的」の意から転じて、「将来を左右するほど重大な。決定的な」という意味もあります。 「批判的」は「あら探しをする」というネガティブな意味です。 「批判的」の意から転じて、「健全な批評ができる」「検討を重ねて正しい評価ができる」というポジティブな意味で使うこともあります。 このように「クリティカル」は細分化すると、5つほど意味がありますので、状況に応じて使い分ける必要があります。
「クリティカル」の語源は英語「critical」です。 英語「critical」の語源はラテン語の「criticus」で、「批判」という意味です。 「critical」の原義は「相手の欠点を見つける」というネガティブな意味の「批判」です。 「critic」で「批評家」、「critique」で「批評する」の意味ですが、これらも同じ語源です。 「批判をしなければならない状況」から「危機的な」という意味が生まれました。 「危機」を英語で「crisis」といいますが、これもまた同語源です。
ビジネスシーンで「クリティカル」といった場合、「(ここで間違った決断をすると将来的に大きな損失をもたらすほど)重大な」という意味合いで使います。 例えば、「クリティカルな問題」ならば、「直ちに解決しなければ将来的に害を及ぼしかねない問題」であり、油断が全くできない緊張感を連想させます。 ポジティブに「大切な、重要な」という意味では使うことはしません。 例えば、「それはクリティカルな発想だね」などと人を褒める時などには使うことは不可です。 また、「クリティカル」のみで「極めて重大」「とても決定的」という意味になるので、「とてもクリティカル」「大変クリティカル」「すごくクリティカル」などと副詞で強調するのは厳密には二重表現になり誤用です。
「クリティカル」の例文
「クリティカル」をビジネスシーンでは「検討を加え、評価するさま」という意味でも使います。 「文句を言う」という意味ではありません。 「クリティカルな態度で臨む」「クリティカルに思考する」などと使います。 ビジネスにおいて何か問題が発生した時にその場しのぎではなく、状況を把握した上で検討を重ねて、正しい決断をするさまをいいます。 「クリティカルシンキング」という言葉がよく使われますので、下記で解説していきます。
「クリティカル」の例文
「クリティカルシンキング」は「批判的思考」とも言われていますが、これは物事を批判的に捉えるということではありません。 「客観性を持たせるための思考プロセス」のことで、主観的な判断や感情に流されて物事を判断しない手法です。 教育現場や、ビジネスシーンでも用いられています。 自分の意見や考えに対し「本当に正しいのか」という批判的な視点を持ち続けることで、客観的に物事を見て判断することが出来ます。 ここでいう「批判」は「否定」とは違うので注意しましょう。 あくまで「間違っているかも」「これでいいのか」「なぜこれなのか」「どうしてそう思うのか」と、自分自身に対して疑問を忘れないでいるということです。
「クリティカルパス」は全体のスケジュールを左右する作業経路のことです。 要するにプロジェクトを進めていくにあたり、クリティカルパス内の作業が遅れると全体が遅れてしまうということです。どんなに他の作業を短縮しても、クリティカルパスが遅れていたらプロジェクト全体が遅れます。 そのためプロジェクトを行う際はスケジュール管理をするにあたってクリティカルパスを把握しておくことが大事です。どの工程が遅れたらプロジェクトに影響が出るのかをまず考えましょう。
「クリティカルマス」は商品やサービスの普及率が跳ね上がる分岐点のことです。 これはアメリカの社会学者エベレット・M・ロジャースが提唱したイノベーター理論において、市場普及率16%が「クリティカルマス」です。 市場において消費者は5つに分類されます。 1つ目が「イノベーター」であり「革新的採用者」と言われます。 これは新商品をいち早く購入する消費者のことで、商品の良し悪し関係なく新しさや革新性に価値を感じる人たちです。市場全体の2.5%を占めます。 2つ目が「アーリーアダプター」であり「初期採用者」と言われます。 これは流行に敏感な消費者で、普及しそうな商品から良いと判断したものを購入します。 発信力があり昨今では「インフルエンサー」とも言われ、市場全体の13.5%を占めます。 この「イノベーター」と「アーリーアダプター」の2つを合わせて16%となり、そこが「クリティカルマス」となります。 さらに3つ目が「アーリーマジョリティ」であり「前記追随者」と言われます。 すでに話題になっているものを購入する消費者のことで、新商品に対しては慎重ながらも流行に乗り遅れることは恐れているため比較的早く購入します。市場全体の34%を占めます。 4つ目が「レイトマジョリティ」であり「後期追随者」と言われます。 周囲の人たちからの評判を聞いてから購入を検討する消費者で、新商品の購入には消極的です。 アーリーマジョリティと同じで市場全体の34%を占めます。 最後は「ラガード」であり「採用遅滞者」と言われます。 新商品に関心がないだけでなく、受け入れたくないとすら考えている、最も保守的な消費者のことです。 市場全体の16%を占めています。
「クリティカルポイント」は物事などが限界に達する時点や段階の比喩として使われています。 「事業継続上のクリティカルポイント」などと使われ、この場合はクリティカルポイントを超えると事業が継続できないことを表します。 「クリティカルポイント」の元々の意味は「臨界点」のことで「臨界温度下において、気体が液化する瞬間の圧力と体積を示す点」です。 「クリティカル」は数学・物理学では「臨界」という意味になります。 「臨界」とは「物質が物理的・化学的な変化を起こしある状態から別の状態に移っていく境目」のことです。 「臨界数」「臨界圧」「臨界温度」「宇宙進化の臨界段階」「(原子力)臨界に達する」などと使います。
「クリティカルケア」は医療・介護用語で、「生命が危機的状態である重症患者に行うケア」のことです。 主にICU(集中治療室)で行われることが多いですが、必ずしもICUだけではなく一般病棟や在宅療養の場に及びます。 医療技術や看護ケアによって生命を救い回復を支援します。
「クリティカルヒット」はゲーム用語で「通常より大きなダメージを与える攻撃」のことです。 主にTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)などの戦闘ゲームで出てくるもので、低確率で出る攻撃で本来の攻撃力の何倍ものダメージになったり相手の防御力を無視したりする致命的な攻撃です。 一部のゲームでは「即死攻撃」という意味で使われます。
「クリティカルエラー」「クリティカルアクティビティ」はIT用語です。 「クリティカルエラー」は、致命的なエラーのことでコンピュータが動作し続けられない状態やソフトウェアなどが修復不可能な状態であることを指します。 「クリティカルアクティビティ」は
「クリティカルイレブンミニッツ」は航空において使われる用語で「魔の11分」とも言われています。 これは「航空機事故が起こりやすい時間帯」であり、航空機が離陸してからの3分間と、着陸するまでの8分間を合わせた11分間のことです。 この時間帯は低空域での飛行で、雷・突風・バードストライクといった現象が起こる可能性が高くなっています。 特に着陸時は自動操縦から手動操縦に切り替わるため人的ミスも発生しやすくなっています。
「クリティカルデート」は法律用語で、「当事者の請求に基づく法律関係の存否を決定するために参照される期日」のことを表します。日本語では「決定的期日」とも言われています。 特に国際法上で「紛争において当事国間に存在する法的状態を決めるにあたり基準となる期日」として用いられています。
「クリティカル運用」はロケット用語で「打ち上げられた人工衛星の初期動作を確認すること」を指します。 初期動作には軌道投入の成否や正常な姿勢制御などがあり、一連の確認を行います。
「クリティカル」の意味は「状況があやうい」「病状があぶない」です。転じて「将来を左右するほど重大な。決定的な」という意味もあります。 「批判的。あら探しをする」という意味もあります。転じて、「健全な批評ができる。検討を重ねて正しい評価ができる」というポジティブな意味で使います。