一周忌法要の香典の表書きは「御仏前」と書くのが一般的です。「御霊前」の表書きは一周忌では使用しません。表書きの下には香典を包む人の名前をフルネームで記入します。金額は大字(旧字体)で「金 壱萬圓」などと書きます。水引きの色は黒白もしくは双銀のものを使用します。
一周忌とは仏教の追善供養の一つです。 故人の死から満1年後の命日、またその法要(法事)のことを指します。 一年忌や小祥(しょうしょう)忌、地方では「むかわり(とむらい)」ということもあります。 仏教では初七日から百回忌まで全18回の法要があります。 初七日から百か日までの法要を追悼(忌日)法要、一周忌から百回忌までの法要を年忌法要といいます。 仏教の法要(法事)は下記の表で解説しています。 年忌法要の中で混同されやすいのが「一周忌」と「三回忌」以降の違いです。 「一周忌」は「満」で数えるため、故人が死亡した翌年の祥月命日に行います。 「三回忌」からは死亡した年を含め「数え年」で数えます。 一周忌の次の法要は一周忌の翌年の三回忌となり、七回忌は6年目、十三回忌は12年目の祥月命日に行います。
「香典」は香の代わりに死者の霊前に供える金品のことを指します。仏教用語ですが、仏教以外の宗教でも便宜上「香典」を用いることが多いです。 「香奠」が正しい漢字ですが、「奠」は常用漢字ではないため「香典」と代用して書くのが一般的です。 「香」には「仏前で焚く香料」という意味が、「奠」には「神仏などへの供え物」という意味があります。 一周忌の法要でお供えする金品を「香典」という人がいますが、これは誤りです。「香典」はお通夜や葬儀で渡す金品のみを指します。 正しくは品物を「供物(くもつ、そなえもの)」、現金を「供物料(くもつりょう)」とよびます。 「供物」には「神や仏に供養のために供えるもの」という意味があります。 「供物」や「供物料」は仏教用語ではないため、神道(神式)でも使います。キリスト教には「供物」という概念がないため使いません。
香典袋は基本的に薄墨を使って書くのが正式なマナーです。 なぜなら薄墨には「悲しみの涙で墨が薄れる、突然のことで墨をする時間がない」という意味が込められているからです。 法要で持参する供物料の香典袋(不祝儀袋)も薄墨で書くのが基本ですが、一周忌は忌明け後の法要であるため墨の濃さは通常の黒で構いません。 香典袋の全ての記入事項を毛筆や筆ペンで書きますが、金額や住所は正しく伝えるためにボールペンで書くことも可能です。 表書きや名前は手書きするのがマナーとされていますが、最近では印刷やハンコを使用する人も増えています。 遺族によっては良い印象を持たない人もいるため注意が必要です。
供物料で包む金額は大字と旧字体で書きます。 大字とは漢数字の「一・二・三」などの代わりに用いる「壱・弐・参」などの漢字のことで、主に改ざんを防ぐ目的で使われる漢字です。 金額を漢数字を使って書く人もいるようですが、厳密にはマナー違反になりますので注意しましょう。 金額の詳しい書き方は後ほどご紹介します。
香典袋には表書きや名前、金額、住所などを記載しますが、使用する袋によって書く場所が異なります。 供物料を包む際は中袋もしくは奉書紙に包んだ現金を香典袋(外袋)に包むことが多いです。 つまり封筒(袋)を2枚使って包む方法です。 袋が重なることが「不幸が重なる」と縁起の悪いこととして捉えられている地域や家庭は中袋を使用しません。 中袋なしの場合の香典袋の書き方は、中袋ありの場合の書き方と異なります。 中袋あり・なしのそれぞれの香典袋の書き方を、次で詳しくご紹介します。
表書き、名前、金額、住所の書き方をご紹介します。 中袋なしの場合の書き方は最後に解説します。
一周忌の供物料(香典)の表書きは「御仏前」が一般的です。旧字体で「御佛前」とも書きます。 御仏前以外には「御供物料」や「御香料」などの表書きもあります。 「御仏前」と「御霊前」の違いですが、仏教では四十九日法要までは「御霊前」、四十九日法要後は「御仏前(御佛前)」の表書きを使うのが一般的です。 故人の死から49日間はまだ御霊としてこの世にいらっしゃるという考えがあり、四十九日法要にて成仏すると考えられているためです。 ただし浄土真宗や曹洞宗では、亡くなった人はすぐ仏様になるという考えから通夜や葬儀、告別式から「御霊前」は使わず「御仏前(御佛前)」を使用します。 ちなみに神道の「一年祭」での表書きは「御榊料」「御玉串料」「御神前」「御霊前」と書きます。 キリスト教ではお供え物という概念がないため供物や供物料は必須ではありませんが、持参する場合はカトリックは「御ミサ料」、プロテスタントは「忌慰料」などと書きます。 無宗教の場合は「御霊前」や「御供物料」などと書くのが一般的です。
香典袋(不祝儀袋)に書く名前は、香典を包む人の名前です。送り先の名前(宛名)は書きません。 名前は表書きよりもやや小さい字で書きます。基本的にはフルネームで記載します。 名前を書く場所は香典袋(表書きの下)と中袋の裏面の二箇所です。 親子や職場関係の人などと複数人で包む場合の連名は最大3名程度にしましょう。 氏名を並べる順番は、目上の人が一番右側です。特に上下の区別がない場合は五十音順で右から左へと記載します。 連名が4名以上の場合は上包みに代表者のみ氏名を記載し、左側に「外一同」と書き添えます。 全員の氏名は白無地紙(半紙や奉書紙など)に目上の人順に右側から書き中包み(中袋)に入れます。 夫婦連名の場合は香典袋中心の右寄りに夫の氏名を、その左に妻の名のみを記載します。 旧姓で書く場合は、上包み(外袋)に現在の氏名を書き左側に(旧姓 ○○)と記載するか、上包み(外袋)には現在の氏名を書き中包み(内袋)には旧姓で氏名を書くという方法があります。 代理で供物料を渡す場合は、受付で代理で来た旨を伝え、芳名帳には依頼人の氏名を記載します。氏名の下に配偶者の代理の場合は「(内)」、それ以外の人の代理は「(代)」と書きます。 名刺を渡すときは依頼人の名刺に「弔」、代理人の名刺に「代」と書きます。名刺が縦書きの場合は右上に、横書きの場合は左上に記載します。
上記でご紹介したように、金額は大字と旧字体を使って書きます。 金額を書く場所は、中袋裏面右側の上か下に金額を書きます。 基本的な書き方は「お金」という意味を持つ「金」を添えて「金 ○○圓」という形です。 例えば、
というように書きます。大字をまとめましたので下記の表を参考にしてください。 金額を横書きする場合は、算用数字を用いても構いません。例えば「1万円」は「10,000圓(円)」と書きます。 また金額を書く際に「也(なり)」をつけることがありますが、現代では不要です。 「也」は銭単位のお金を使っていた時代にそれ以下の端数のないことを表す際に使われていたものです。
漢数字 | 大字 |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
四 | 肆 |
五 | 伍 |
六 | 陸 |
七 | 漆・質 |
八 | 捌 |
九 | 玖 |
十 | 拾 |
百 | 陌・佰 |
千 | 仟・阡 |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
住所は供物料を包む人のものを記入します。余白があれば電話番号も添えるとより丁寧です。 住所を書く場所は、中袋裏面の左半分です。封筒の中央寄りに書きます。 住所の次に名前、そして最後に電話番号を記入します。(電話番号が封筒の左端にくるように書きます。) 上記でもご紹介したように毛筆や筆ペンを使って書くのが一般的ですが、中袋に書く住所や電話番号などに関してはボールペンでも可能です(正しい情報を間違いなく伝えるため)。 郵便番号は算用数字を用いて横書きする場合と、漢数字で縦書きする場合があります。 また「〒」の記号は使っても使わなくても良いです。 住所が長く一行に収まらない場合は二行で書いても構いません。 故人と同郷の場合は都道府県名は省略することもあります。
ここまでは中袋ありの場合の香典袋の書き方をご紹介しました。 では、中袋を使用しない場合の香典袋はどのように書くのでしょうか。 まず表書きと表書きの下に書く名前に関しては、中袋ありの場合と同じように書きます。 表書きは「御仏前」、名前はフルネームで書くのが基本です。 中袋ありの場合に中袋に記載する住所や金額を書く場所が変わります。 金額と金額は香典袋(外袋)の裏面左側に書きます。 書き方は中袋ありの時と同様です。
包む金額が少額などの場合でお返しを辞退する場合は、中袋の裏面もしくは一筆箋にその旨を記載します。
一周忌の供物料を包む香典袋(不祝儀袋)は故人の宗教や宗派に合わせたものを用意しましょう。 選ぶポイントは①上包み(外袋)の柄と②水引きの色です。 仏教の場合は菊の花や蓮の花、もしくは無地の封筒を使います。 これら以外の柄は仏教以外の宗教のものになりますので注意が必要です。 神道は無地、キリスト教では百合の花や十字架が印刷された香典袋(不祝儀袋)を使用します。 水引きの色は黒白もしくは双銀のものを選びましょう。 包む金額が3万円までの場合は黒白、それ以上は双銀の水引きを使うのが一般的です。 関西地域などでは黄白の水引きを使う場合もあります。 水引きは封筒に印刷されているタイプと紐タイプの水引きが付いているタイプの2種類があります。(これらの使い分けは次に解説しています。)
包む金額に見合った香典袋(不祝儀袋)を選ぶことも大切です。 香典袋(不祝儀袋)は大きく分けると2つの種類があり、水引きが印刷されている「印刷多当」タイプと、水引きが印刷でなく付属されている「金封」タイプがあります。金封タイプには4種類があり、違いは袋の大きさ、水引きの種類や色、そして包む金額です。 金額が1万円以下の場合は印刷多当を、1万円以上の場合は金封の袋を使用します
「熨斗( のし)」とは、贈答品につける飾り物のことを指します。 結婚などの慶事のみに使い、弔事では不要です。 熨斗には「伸ばす」という言葉を重ね相手の繁栄を祝うという意味合いがあります。 「悲しみを引き伸ばす」ということになってしまうため、供物や供物料に熨斗は付けません。
一般的に供物料を持参する際は袱紗(ふくさ)を使用します。 袱紗とは、祝儀袋や不祝儀袋を包む布のことを指します。 弔事の場合はグレーや紺、濃い緑などの寒色系の袱紗を使用します。 紫は慶事・弔事兼用です。赤やピンクなどの暖色系は慶事専用の袱紗となります。 袱紗が無い場合は小さい風呂敷でも代用が可能です。その場合も寒色系のものを使うようにしましょう。 袱紗を使った香典袋(不祝儀袋)の包み方は後ほどご紹介します。
基本的に法要などの弔事では新札は使いません。新札だと前々から用意をされていたようで失礼な印象を与えるからです。 よって供物料では汚れやシワが目立たない古いお札を包むのが正式なマナーとされています。 しかし法要は予め日程がわかっているという点や新札の方が清潔で失礼がないという点から新札を使用する人も増えつつあります。 新札を使う場合はわざと折り目を入れて包むと良いでしょう。 供物料を包む時、「4」や「9」を含む金額は避けましょう。「死」や「苦」などを連想させるからです。 またかつては「奇数は吉、偶数は凶(数が割り切れることが縁が切れると連想させるため)」といわれていたため、金額やお札の枚数を偶数にするのも避けるべきです。 しかし最近では数字をあまり気にしない人も多くいるので、相手や状況に応じて判断しましょう。
お札は人物の肖像画が印刷されている面が表とされています。 弔事では「顔を伏せる」ように入れるのが一般的です。 お札の人物像を伏せるように入れることで、故人に対する悲しみやお悔やみなどの気持ちを表します。 封筒の「表」に対してお札が「裏」を向くように入れますが、その際人物の顔が底を向くように入れます。 中包みや中袋を使わない場合は上包み(香典袋)に直接お札を包みます。 複数枚お札がある場合は、お札の向きを全て揃えて入れます。 遺族の手間を考え、中包みや上包みは糊付け(のりづけ)したり「〆」のシールを使って封を閉じる必要はありません。 奉書紙や半紙などでの包み方は下のイラストを参考にしてください。 弔事では包んだ紙の三角の部分が右下にくるようにするのがポイントです。
弔事の水引きの本数は「凶」とされる偶数(2、4、6)本と決まっていましたが、最近では慶事兼用で「吉凶」とされる5本が主流となっています。 水引きの結び方には主に「結び切り」と「蝶結び」の2種類があります。 弔事など一度切りで二度と起こってほしくないことには「結び切り」を使います。 結び切りには「淡路結び(あわじ結び)」や「老いの波」などの応用編があります。 淡路結びは慶弔どちらにも使うことができますが、基本の真結びを使用することが多いです。 水引きの色が2色の場合、右に濃い色、左に薄い色がくるように結びます。 なお最近では、予め結ばれた状態で封筒にくぐらせるだけのタイプが販売されていることも多く、その場合は淡路結びタイプが多いです。
上包みの折り方は慶事と弔事で異なります。 弔事では「悲しくてうつむいている」という意味で、上の折返しが上面にきます。(上の折返しを最後に折ります) 結婚などの慶事では「幸せがたくさん入ってくるように」という意味で、下の折返しが上面にきます。(下の折返しを最後に折ります) 折返しの向きを外から見て「喜びは上向きに、悲しみは下向きに」と覚えておくと便利です。
上記でご紹介したように、供物料を持参する際は袱紗(ふくさ)という1枚の布を使います。 袱紗が無い場合に風呂敷を代用する時も折り順は同じです。 袱紗の折り方は、弔事は右→下→上→左の順番で折ります。 袱紗につめが付いている場合は、つめが左側にくるように広げます。 ポケット(台付き)タイプの袱紗の場合は、左開きの状態で香典袋(不祝儀袋)を入れます。
一周忌法要でお供えする供物や供物料は法要が始まる前に施主に渡すのが基本です。 受付が設けられている場合は受付時に係に渡します。自身で直接仏壇にお供えする場合もあります。 供物や供物料をお供えする際、袱紗に包んだまま渡すのはNGです。相手から袱紗が返ってくることを「不幸が返ってくる」として捉えられるためです。 必ず袱紗から取り出して渡すようにしましょう。 供物料の渡し方は下記の通りです。
一周忌法要に参列できない場合の供物や供物料は、後日直接遺族にお渡しするか郵送で送ります。 欠席の理由、お詫びの言葉を添えた手紙を同封するのがマナーです。 郵送で香典(不祝儀)を送る際の注意点は下記の通りです。
供物や供物料を手渡しする場合でも、先に手紙を送るとより丁寧です。
受付係や施主、遺族が参列者から供物・供物料を受け取る時の挨拶の例は以下の通りです。 弔事ですので「ありがとうございます」と直接的な言葉の使用は避けましょう。(不謹慎な表現になってしまうため)
故人の意向などの理由で供物や供物料の受け取りを遺族が辞退することもあります。 その場合は無理に渡すのは控えるべきです。 それでも故人や遺族に気持ちを伝えたい場合は、供物料以外の形でお供えをする(供花や供物など)という方法があります。 しかし遺族がこれらの受け取りも辞退するようであれば、無理に贈らないようにしましょう。
一周忌で包む香典(供物、供物料)の金額相場は、通夜・葬儀で持参した香典の約半額といわれています。 故人との関係者や立場によっても異なりますが、通夜・葬儀で包んだ香典の金額よりも低い額を包みます。 特徴として、故人との関係が近いほど包む金額は高いという点があります。 香典(供物、供物料)について、遺族から「心配は無用」との申し出を受けたら、香典の約2〜3割の額を包むと良いでしょう。
故人が親、祖父母、孫、いとこなどの親族の場合の金額相場は1〜5万円といわれています。 自身と関係が近い親や兄弟には遠い親戚よりも多めに包みます。 供物料を包む人が学生や20代など比較的若い場合は、包む金額が1万円未満になっても構いません。 おおよその金額目安は下記の通りです。
故人が友人や知人、そして職場関係の人の場合の供物料の金額目安は3千〜1万円といわれています。 上記でご紹介した親戚に包む金額よりも少ないのが特徴です。 親族以外でも親交が深かった場合は多く包むこともあります。
いかがでしたか? 今回は一周忌に持参する香典袋の書き方を始め、香典(供物・供物料)に関する知識をご紹介しました。 記事の主な内容は下記の通りです。