「モラル」の意味と使い方を解説していきます。「モラル」は英語「moral」が語源で、日本語では「道徳」を意味します。「倫理」と訳される場合もありますが、微妙に意味が違いますので注意が必要です。類語「マナー」「常識」との違いも解説していきます。
「モラル」の意味は「道徳」です。 「道徳」とは「人のふみ行うべき道」「人間が社会生活を営む上で守るべき行為の基準」「社会における善悪の判断基準」を指します。 「道徳」という言葉は「道」と「徳」から成ります。 「道」とは、人として守らなければならない筋道、つなわち道理を指します。 「徳」とは、道を体得した状態のことです。人から慕われ好まれる人格を指します。 「モラル」は、外的な影響は受けるものの強制力はなく、内面的かつ自発的な原理を指します。
「モラル」の語源は英語「moral」です。 英語「moral」の語源はラテン語「moralis」で「風俗習慣」という意味で、「ある社会の日常生活において、広く一般に行われているしきたりやならわし、行事、風習」を指していました。 英語「moral」の品詞には形容詞と名詞があります。 形容詞では「道徳上の」「礼儀のよい」「善悪の区別ができる」「教訓的な」「精神的な」など様々な意味合いで使います。 単数名詞では「道徳」「教訓」、複数名詞「morals」では「品行。素行」などの意味になります。 カタカナ語の「モラル」は単に「道徳」という意味で理解しておけばよいでしょう。
「モラリティー」という言葉がありますが、これは「モラル」と同義語です。 上述した通り、英語「moral」は形容詞の場合もあるため、それと区別するために名詞を「morality」とする場合があります。 これをカタカナにしたのが「モラリティー」です。日本語では基本的に「モラル」が使用されます。
「道徳」を意味する「moral」に、「〜をする人」を意味する「-ist」がついて、「moralist(モラリスト)」という言葉があります。 「モラリスト」の意味は2つあります。
です。 2つ目の意味が少し分かりづらいと思いますが、「モラル」を単なる社会規範ではなく、自己の生き方と密着させて具象化したことろから生まれる思想と捉えて、それを学問として研究する人を指します。 特に16世紀から18世紀において活躍したフランス語圏の思想家を指すことが多いです。
「モラル」の類似語に「モラール」があります。 「モラール」は英語「morale」に由来する別の意味の言葉です。 「モラール」とは「軍隊や会社など組織・集団における士気。風紀。やる気。労働意欲」を示します。
「モーラル」とすると化学用語になります。 「モーラル」は「質量モル濃度の単位」を示します。 「質量モル濃度」とは、溶媒1(kg)の中に溶質がどれほどの量とけているのか(mol)を示したものです。 かなり専門的な言葉なので、こんな言葉があるんだと知っておけばOKです。
モラルを保持していることを
「モラル」の例文
逆にモラルを保持していない状態、道徳心がない状態のことを、
などと表現します。
「モラル」の例文
「モラルの問題」は文字通り「道徳に関する問題」意味ですが、「法的な問題ではなくて、社会規範に照らして問題があるかどうか」ということを示しています。 「モラルを疑う」は他人の言動をうけて、その人の社会的な善悪の判断基準に疑問をもつ、という意味です。
「モラル」の例文
「モラル」の似た言葉に「マナー」があります。 「マナー」とは「態度。礼儀。礼儀作法。行儀。作法」などを意味する言葉です。 「マナー」は「テーブルマナー」「運転マナー」などと使い、「モラル」よりも具体的な行為を指します。 「マナー」は「社会における善悪の判断基準」ではなく「公共に対する気遣い」を指します。 ちなみに「マナーモード」「ビジネスマナー」は和製英語です。 「マナーモード」の正しい英語は「silent mode」もしくは「airplane mode」といいます。 「ビジネスマナー」は「work etiquette(ワークエチケット)」といいます。 「etiquette(エチケット)」は「manner(マナー)」とは違い、「特定の相手に対する礼儀」を指します。 「ビジネスマナー」とは本来、上司や取引先など特定の人を配慮することなので、「etiquette(エチケット)」が適切です。 また「business(ビジネス)」が事業全体を指すのに対して、「work(ワーク)」はより具体的な仕事、作業、労働を指します。 よって、具体的な仕事における特定の人への礼儀なので「work etiquette」が正しいということになります。 また「マナー」と似た言葉に「ルール」がありますが、「ルール」は「規則。決まり」という違う意味になります。
「モラル」と似た言葉には「常識」もあります。 「常識」は「一般人として持っておくべき知識と分別」です。 専門知識ではない一般知識に加えて、理解力・判断力なども含みます。 英語「common sense」の訳語です。 「道徳」は「社会生活の秩序を成立させるために個人が守るべき規範」という意味です。 「常識」がなくても社会で生きてはいけますが(他人に迷惑をかける可能性は大)、「道徳」がなければ社会で生きていくことはできません。
「モラル(道徳)」とよく混同される言葉に「倫理」があります。「倫理」の語源は英語「ethics(エシックス)」です。 「倫理」も辞書で調べると「人がふみ行うべき行為の規範」などと書いてあり、「道徳」と同義語の扱いがされています。 しかし厳密には「モラル(道徳)」と「エシックス(倫理)」には意味に違いがあります。 「道徳」は社会全体における善悪の判断基準を指すのに対して、「倫理」は特定の集団や職業における善悪の判断基準を指します。 また「道徳」は個人の内的な自発性を重視するのに対して、「倫理」は客観性を重視します。 「社会道徳」「公衆道徳」「交通道徳」などの熟語も社会的に個人が法律などの外的圧力なしに、ふみ行うべき行為の規範を示しています。 一方「職業倫理」「政治倫理」などは職業的に個人がふみ行うべき行為で、守らなければ罪に問われる可能性があります。 例えば、医師が患者から家族に自分の病気のことを伝えないでくれと言われた場合、「真実を伝える」という道徳的な正しさよりも、「患者のプライバシーを守る」という倫理的な正しさを優先させるでしょう。 このように、道徳と倫理は必ずしも一致するわけではありません。
「モラル」を「モラルを疑う」というフレーズで使う場合、どこか「デリカシー」と似ているような感じがします。 しかし「デリカシー」は「モラル」とは全く違う意味で「感受性の細やかさ」となります。 「デリカシーがないこと」よりも「モラルがないこと」の方が断然深刻です。
「モラル」の類語には、
などがあります。 「道義」「徳行」は「道徳」と同義語です。 「善徳」は「道徳にあった行い」という意味です。 「人道」も「人が守るべき道」という意味で「道徳」と同じ意味です。
例文
「モラル」の対義語には、
「モラルハザード」とは企業が倫理性を欠如するあまり、不正な利益追求に走ることを指します。 「モラルハザード」は「倫理崩壊」と和訳されることがあります。 日本では「モラルリスク」ということもあるが、これは和製英語です。
「モラルハラスメント」は和製英語です。 家庭内で夫が妻に対して言葉や態度で精神的な嫌がらせ・虐待をすることを指します。 略して「モラハラ」です。
「モラルジレンマ」とは、ある行為を行っても行わなくても、関係する社会的規範のどれかに反してしまうために起きる道徳的葛藤を指します。 「モラルジレンマ」について詳しく知りたい方は、マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』がおすすめです。
「モラル」とは英語「moral」が語源で、「道徳」という意味です。 「社会生活を営む上で守らなければならない行動規範」という意味合いです。 「モラール」だと「組織における士気」という意味になるので注意です。