「為念」は「ねんのため」「ためねん」と読みます。「為念」の意味は「確認のため」「万が一に備えて」です。ネットスラングだと思っている人も多いかと思いますが、漢文が語源になっている表現です。今回は「為念」について解説します。ビジネスシーンで使用するときの正しい使い方や注意点も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「為念」の読み方は「ねんのため」「ためねん」です。 「為」は訓読みで「ため」と読み、「念」は音読みで「ネン」と読みます。 「いねん」とは読みませんので注意してください。 時々インターネット上の文章で、「念のため」の意味で隠語のように使われますがネットスラングではありません。 「念為」の語源は漢文で、本来は「為」と「念」の間にレ点を入れます。 レ点は「返り点」といい、レ点の次の一文字を先に読んでから後ろに戻るというルールがあります。 「為」と「念」の間にレ点が入ると、「念」を先に読んで「為」を読みます。 なので、漢文に倣って「ねんのため」と読む人もいますし、そのまま上から読んで「ためねん」と読む人もいます。
「為念」には、
の2つの意味があり、注意をうながしたり確認をするときに使用される言葉です。 「為念」は、日立用語でもあります。 「日立用語」とは日本の電機メーカー「日立グループ」の中核企業である「日立製作所」で使われていた独自の言葉で、「念為」以外にも例えば「〜をお願いしたく存じます」を「〜をお願いしたく。」と省略した表現にするなど、日立用語は沢山あります。 三菱でも以前使用されていましたが、これは日立をマネたわけではありません。 「為念」の語源は漢文であり、昔の企業は漢文で言い表すことを好む傾向がありました。 三菱が「為念」を使っていたのも、漢文を元にした表現を多く使っていたからであると考えられます。
現代では「念のため」とするのが一般的です。 「念のため」の「ため(為)」は”形式名詞”と呼ばれます。 ”形式名詞”とはそれ自身では実質的意味を表さず、連体修飾語を受けて名詞としての機能を果たす語のことです。例えば、「日記をつけることにする」の「こと」、「今から出掛けるところだ」の「ところ」が”形式名詞”に当たります。 ”形式名詞”はひらがなで表記するのが、通例となっています。 ですので、「為」と漢字にせずに「念のため」と表記しましょう。 ただ、「念のため」も避けるべきで、その理由は「念のため」は「一応」という曖昧な意味合いでも使用される言葉だからです。使い方によっては失礼にあたることもありますので、注意しましょう。
「念のため」は敬語ではありませんが、目上の相手に使うことができます。 ただ、「念のため」に続く文章を敬語にする必要があります。
例文
「念のためですが」は丁寧語になります。 目上の人に使う場合、より丁寧な表現になります。 また「念のため〜ですが」と使うこともできます。
例文
「一応」の意味は「ひととおり」「ひとまず」「とりあえず」、「とりあえず」の意味は「まず」「今のところ」「さしあたって」です。 ただ、この2つはビジネスシーンには適していません。 特に目上の人に対して「一応」や「とりあえず」ですることはありません。 「一応ご連絡します」とは使わずに「念のためご連絡します」と使いましょう。 上司など目上の人が「一応これもやっておいて」「とりあえず○○から済ませておいて」と使うことはありますが、この場合でも「念のため」を使うととても丁寧になります。
「念のため」は主に口語で使います。 改まったビジネス文書やビジネスメールで使用するのは避けましょう。
「念のため」には曖昧表現の「一応〜やってみます」と、「念押ししてやっておく」の2つの意味があります。 そのため、「念押ししてもう一度しっかりと確認するため」と言った意味で「念のため」と使っても、相手に「一応やってみる」といった意味で伝わってしまうと、仕事を「とりあえず」やっていると誤解されてしまうことがあります。
相手に対して「念のため」を多用すると、相手を信用していない印象を与える可能性があります。 たとえば相手に対して「念のためもう一度確認します」と言った場合「念のために確認されなくてもちゃんとやっているよ」と思われてしまうことがあります。 自分自身が忘れていないか入念に確認する場合で使い、相手に対して多用しないよう注意しましょう。
「念のため」は「念のために◯◯する」といった形で使います。 社内連絡や報告をするときは、「念のため」がよく使われます。 特にビジネスメール内で、業務の進捗状況や取引先との話し合いで出た事柄について、連絡もしくは報告するときに使います。 「とりあえずご報告まで」「取り急ぎご報告まで」の代わりに、「念のためご報告まで」とします。 必ず伝えなければいけない事柄ではないけれど、上司の耳に入れておきたい内容を伝えるときにも用います。
例文
「念のためご確認〜」という場合は、自分以外の人にも確認をしておいて貰う場合や、一度確認したことを繰り返し確認する際に使用します。 また、送ったメールや書類が相手に届いているかなど、相手からの報告がない場合に確認をするときにも用います。 「念のため」を用いることで、「確認しなくても良いことですが」と相手が報告していないことを指摘しているわけではないと伝えることができます。
例文
送ったメールなどに相手から返事がなかった場合に「念のため」を用いて、相手に返信や対応の催促をすることもできます。 直接的に催促するのではなく、メールの誤解や不調があった可能性を考慮して「念のために再送します」といったように使われます。
例文
体調不良の治りかけや、風邪の引き始めの時に「念のためお休みさせていただきます」を使います。 相手にうつしてしまう可能性がある場合や、悪化してしまう可能性がある場合に用いられています。
例文
「とりあえず」の意味は、「たちまちに」「まず」です。 「本来とるべき対応は後に回して、今現在できることを最優先にすること」を表しますが「できることだけをしておく」といったニュアンスもあります。 そのため「とりあえずやっておきます」などと使うと「やるはやるけど、ちゃんとはやらない」と伝わってしまうことがあります。 ビジネスシーンでは使わないようにしましょう。
例文
「一応」の意味は「ひととおり、ひとまず」です。 十分とは言えないものの、最低限の条件は満たしているさまを表しています。 「一応」は「いい加減」というニュアンスが含まれているため、ビジネスシーンでは使いません。 目上の人に向かって「一応確認しました」などと言ってしまうと、「テキトーに確認した」と捉えられる可能性があります。
例文
「さしあたって」の意味は、「先のことはともかく今のところ」「当面」「とりあえず」です。 「変わる可能性はあるが、今は」といったニュアンスです。 すでに結論が出ている事柄であったり、物事の方向性が決まっている事に対しては使いません。 ビジネスシーンでも使われますが、結論を避けるためや直接的な返事を避けるために使われることも多く、ネガティブな印象を与えてしまいます。
例文
「万一のため」意味は「何か重大な事態のために備えるさま」です。 万一とは、「万の中に一つくらいめったにないこと」といった意味で「何かあったときのために」といったニュアンスで使われています。
例文
「万が一に備えて」の意味は「不測の事態に備えて準備しておくさま」です。 「万が一」と「万一」は同義です。
例文
「念押しして」の意味は「年を押すこと、注意して確かめること」です。 「念を押す」とも使います。
例文
「念のため」「念のため確認ですが」などの英語表現を見ていきましょう。
などと表現します。
Just to be sure, why don't we buy one more.
念のため、もう一つ買っておきましょう。
I'll take my jacket too, just in case.
念のため私もジャケット持っていきます。
いかがでしたか? 「為念」について理解を深めていただけたでしょうか。 「為念」について簡単にまとめると、
となります