「梗概(こうがい)」とは「物事のあらすじ」を意味する言葉で、論文や小説などに対して使います。「梗概を提出してください」などと大学や会社で突然言われたら焦ってしまいますよね。論文などでの「梗概」の具体的な書き方や、類語「概要」「要旨」との違いも解説していきます。
「梗概」の読み方は「こうがい」です。 「梗概」の意味は「物語などの大体の筋の運び、あらすじ、大略」です。 「梗」と「概」にはそれぞれに「おおよそ、あらまし」という意味があります。 「概」を使った熟語には他に「概観」「概算」「概説」などがあります。
「梗概」は小説や映画、劇、そして論文などで用いられることが多いです。 小説などの「梗概」はコンクールなどに作品を応募する際に提出を求められます。 同じように論文やレポートの「梗概」は教授などに論文を提出する際に合わせて提出します。 なぜ「梗概」が必要かというと、文章量の多い本文の内容を短時間で把握し評価するためです。 「梗概」という熟語は、
などの形で使うことが一般的です。 「梗概集」とは複数の小説や論文の梗概をまとめた冊子のことです。 梗概集は論文発表会の進行をスムーズに行うため、そして論文の全体像を素早く把握するために作成され参加者に配布されます。
「梗概」は英語で「outline」「summary」「synopsis」「digest」などと表現します。 「outline」は文章ではなく要点を箇条書きやリストにまとめたもののことを指します。 「summary」は本文の内容を短い文章でまとめたものことを指します。 「synopsis」は主に小説や映画、劇などのあらすじのことを指します。 上記の「outline」や「summary」よりも形式ばった表現です。 「digest」は日本語で「ダイジェスト映像」などとして使われていますが、名詞で「要約、摘要、あらすじ」という意味があります 動詞では「(食物を)消化する」「要約する」などの意味があります。
「概要」は「梗概」の同義語にあたります。 上記でもご紹介したように、「概」には「あらまし、おおよそ」という意味があります。 「要」には「 物事の大事な部分」という意味があります。 「梗概」と「概要」の違いですが、「梗概」の方が使われるシチュエーションが限定的です。 「概要」はビジネスシーンでもよく使いますが、「梗概」に関しては映画や小説などの芸術作品や論文などの学問の分野でのみ使います。
「梗概」の類語に「要約」があります。 意味は「話や文章などの要点をまとめて短く表現すること」です。 「要」には「物語の大切な部分」、「約」には「短くしたもの」という意味があります。 また「要約」には「約束を結ぶこと、契約をすること」という意味もあります。
「要旨」の意味は「講演や論文などで述べられることの主要な内容」です。 「ようし」と読みます。 「旨」には「話の主、中心とすること」という意味があります。 ちなみに「うまい」と訓読みすると「美味しい」という全く異なる意味合いになります。 上記でご紹介した「要約」と「要旨」の違いですが、
です。
「論旨」の意味は「その議論や文章の中心となる事柄、内容」です。 「ろんし」と読みます。 「論旨」はビジネスシーンにおいて使われることが多いです。 特に、論文やプレゼンテーションに対して使われます。論文を作成したり、会議を行う際は論旨を明らかにしておくことが大切です。 「論旨」を用いた四字熟語に「論旨明快」という言葉があります。 意味は「議論の趣旨が明らかでしっかりしていること」です。
「摘要」の意味は「話の大切な箇所を抜き出して記すこと」です。 「てきよう」と読みます。 「摘」には「選び取る」という意味合いがあります。 「摘要」と混同されやすい言葉に「抜粋」がありますが意味は全く異なります。 「抜粋」の意味は「必要な部分を抜き出すこと」となります。
「レジュメ」は英語の「resume」に由来する言葉です。 元々要約・概要といった意味があります。 特に研究発表・講演などの要点をまとめてを印刷したものといったニュアンスを含んで使われています。 また最近は外資系企業の影響もあって、履歴書や職務経歴書のことを「レジュメ」と呼ぶこともあります。 「レジュメ」は「レジメ」と表記する場合もあります。
「梗概」と似た言葉に「序論」があります。 「序論」は論文などの最初に述べるもので、本論への導入部として置かれる文章です。 「序論」は本論の内容を大まかにまとめたものです。 「序論」は「経済学序論」など「梗概」の意味でも用いられることがあります。 英語に訳すと「Introduction」となります。
梗概の構成は小説や論文など文章の種類に応じて異なります。 まず、論文やレポートなどの梗概の主な構成は下記の通りです。 1. 目的 2. 方法 3. 結果 4. 考察 5. 結論 6. 引用文献 次に、小説や劇などの梗概の主な構成は下記の通りとなります。
論文の梗概は「1.目的」から順番に書いて行くのに対し、小説などの梗概は上記の内容を含めば順番に特に決まりはありません。 梗概の文字数は、卒論の場合は400〜800文字、小説などの場合は800〜1,000文字程度が一般的ですが、正式な決まりはありません。 教授や出版社などに応じて求められる文字数は異なります。
上記で論文の梗概の構成をご紹介しましたが、梗概の書き方は人それぞれです。 そのため梗概を書く際は、提出先の指示に沿って進めていきましょう。 梗概の書き方を明確に示してくれる人もいれば、特に決まりはなく自由に書くように指示する人もいるでしょう。 梗概の書き方に自信が無い方は、テンプレートを使ったり、過去の論文の梗概を参考にしてみましょう。 上記でもお伝えしましたが、指導教員は大量の論文を短時間で確認し、内容に対して適切なフィードバックをすることが求められています。 論文に興味を示してもらえるように、また正当に評価をしてもらえるように、わかりやすくまとまっている梗概を書くことを意識しましょう。
小説や映画、劇などの梗概は「物語の要約」のような役割を果たします。 小説などの本に載っている「あらすじ」とは違い、物事の全体像がつかめるように書く必要があります。 「あらすじ」はよく本や映画などの説明文として用いられていて、読者に対して興味を持ってもらうためにあえて結末を含まないことが多いです。 一方で「梗概」は作品を評価する人に対して書くものなので、物語の結末まで書くことが鉄則となります。 ネタバレしてしまうのではないかと思う人もいるかもしれませんが、作品の全体像を掴むという目的から見ても梗概に結末を書くことは必須です。 つまり小説本編と梗概とは同価なものなのです。
特に論文やコンテストなど正式な場においては梗概に対する決まりが設けていることがあります。 例えば
などの規格がある場合は、それらを厳守することは必須です。 これらの規格を違反した場合、再提出を求められたり、本文を確認してくれなかったりします。 また当たり前のことにはなりますが、提出期限を守ることも重要です。
梗概を書く際に最も意識したいことが内容のわかりやすさです。 数百文字という限られた枠の中で話の全体像を伝える必要があるため、常に簡潔で明快な文章を意識しましょう。 長い文章やぼんやりとした文章だと、読者に本文の良さが伝わりません。 言葉の使い方には十分注意しましょう。 また梗概で必要なことは物事の描写ではなく説明です。 特に小説などの作品は描写表現も多く含みますが、梗概に関しては避けるべきです。
梗概は限られた文字数の中で正確に話の内容をまとめることが重要です。 上記でご紹介した構成を意識し、本文の内容に沿った梗概を書くようにしましょう。 また梗概を書く際、起承転結のバランスを考慮する必要があります。 比重が偏らないように文字数を調整しながら書き進めていきましょう。
梗概は本文に興味を持ってもらうためにあるとご紹介しましたが、だからと言って本文に記載のないことを含むのは避けましょう。 アピールポイントや宣伝文など、本文に関係のないことを書いてはいけません。 梗概はあくまで話の全体像を把握するためにあるもので、梗概を使ってPRをするものではありません。 本来の梗概の存在意義を忘れないようにしましょう。
梗概では話全体を要約する必要がありますが、かといって詳しく書きすぎるのは避けましょう。 梗概が詳しすぎるとメインポイントが掴みにくくなり、「結局何を一番伝えたいの?」と読み手に悪い印象を与えてしまうことになります。 例えば梗概の中でデータの細かな数値を全て羅列する必要はなく、データが表していることは何かを簡潔に述べることが大切です。 文字数の制限がある中でいかに話の流れをまんべんなく入り込められるかが重要になります。
いかがでしたか? 「梗概」についての理解は深まりましたでしょうか? 「梗概」の読み方は「こうがい」です。 「梗概」の意味は「話の大体の筋、あらすじ」です。 主に学問の世界や芸術の世界で使われる言葉で論文や小説などの説明文として使います。 「梗概」は英語で「outline」「summary」「digest」などと表現します。