「ご教授いただきたく存じます(ごきょうじゅいただきたくぞんじます)」は、教えてもらいたいと思いますという意味です。学問・技術・技能などを教えてほしいと依頼するときに「お忙しいところ恐縮ですが、ご教授いただきたく存じます」などと使います。
「ご教授」は「ごきょうじゅ」と読みます。 「ご教授」の意味は「学問・技術・技能などを教えること」です。 「教授」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。
接頭辞「ご(お)」敬語の種類は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。
この場合の接頭辞「ご」は、相手が教授することに対してつけているので尊敬語になりますが「ご〜いただく」で一つの謙譲表現と解釈する場合もあります。
「いただきたく」は、「してもらいたい」という意味です。 「いただきたく」は、「もらう」の謙譲語に願望を表す助動詞「たい」をつけた敬語表現です。 「ご教授いただきたく」で、「教授してもらいたく」という意味になります。 「いただく」は、漢字で「頂く」と書きます。 ただし、「頂く」と漢字で表記するのは、「食べる」「飲む」という意味で使う場合と、「(物などを)もらう」の謙譲語として使う場合です。 「いただきたく存じます」の場合の「いただく」は補助動詞なので平仮名で書くのが正しいです。
「存じます」は、「ぞんじます」と読みます。 「存じます」の意味は「思います」です。 「存ずる」は、「思う」の丁重語です。 丁重語とは、謙譲語Ⅱともいわれ、へりくだることで相手に敬意を示すという点で通常の謙譲語と同じですが、動作の対象ではなく聞き手・読み手に敬意を示す敬語です。 「存じます」の「ます」は、丁寧語です。 したがって「ご教授いただきたく存じます」は、「教授してもらいたいと思います」という意味で、学問・技術・技能などを教えてほしいと依頼をするときに使います。
「ご教授いただきたく存じます」は、ビジネスメールなどで専門的な知識や技術を教え授けてほしいとお願いをするときに使います。 例えば、ビジネスシーンでは技術者やマーケターなど専門性の高い人に質問するときに使います。 「ご教授」では短時間で教えられる内容を聞く場合には使用できないので注意しましょう。 「ご教示いただきたく存じます」は依頼をするときの文中で使われることがほとんどですが、「ご教授いただきたく存じます。よろしくお願いいたします」などと、文末に結びの言葉として使うこともあります。
【件名】 研究室訪問のお願い 【本文】 ○○大学海洋生物学部海洋生物学科 斎藤先生 突然のご連絡、大変失礼いたします。 株式会社PETにて商品開発をしております深田雅美と申します。 弊社では、海水魚の飼育に関する商品開発を実地しているのですが、本分野における知識をさらにつけ商品開発に活かしたいと考えております。 そこで、本分野の専門家である斎藤先生にご教授いただきたく存じます。 よろしければ、一度お時間をいただけないでしょうか。 お忙しい中恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。 株式会社PET 〒111-222 東京都渋谷区123-123 深田雅美
【件名】 講師のご依頼 【本文】 株式会社ABC 営業部長 高橋様 突然のご連絡失礼します。 私はAAA株式会社 営業部の長谷川と申します。 この度は、高橋様に弊社営業部のご指導をお願いしたく、ご連絡をいたしました。 弊社では、毎月営業技術を磨くために、営業部を対象とした講習会を毎月実施しております。 つきましては、AAA株式会社営業部長として働く傍らその道のプロとしてテレビ番組へのご出演や執筆と幅広くご活躍されている高橋様に、講師をお願いできないでしょうか。 貴社で培われたノウハウをご教授いただきたく存じます。 お忙しいとは存じますが、ご検討のうえご返信くださいますようお願い申し上げます。 長谷川
【件名】 データ分析のご依頼 【本文】 静岡研究所 峯田涼子様 お世話になっております。 株式会社あいうえお開発部の竹本です。 先日お話させていただきました通り、気温変化についての実験結果をデータ資料にまとめましたので、添付いたします。 本件について何かお気づきの点がありましたら、ご教授いただきたく存じます。 ご多忙の折大変恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。 竹本
「ご教授いただきたく存じます」と似た敬語表現に「ご教授いただければと存じます」があります。 「いただきたく存じます」は、上述したように「もらう」の謙譲語「いただく」に、「思う」の丁重語「存じる」と丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければと存じます」は、「もうら」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「れば」と接続助詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければ〜」は、「〜してもらえたら嬉しい・ありがたい」という願望を表す丁寧な言い回し です。 「ご教授いただきたく存じます」と「ご教授いただければと存じます」は、どちらも謙譲語、丁重語、丁寧語を使用した敬語表現であり丁寧の度合いは同じですが、「いただければと存じます」のほうが仮定のニュアンスが強く謙虚な響きがあります。
「ご教授いただきたく存じます」は、「ご教授いただけたらと存じます」ということもできます。 「いただけたらと存じます」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「たら」と接続詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただけたらと存じます」で、「してもらえたらと思う」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 「ご教授いただきたく存じます」と「ご教授いただけたらと存じます」は、どちらも謙譲語、丁重語、丁寧語を使った敬語表現なので丁寧の度合は同じですが、「いただけたらと存じます」の方が仮定の意が強く控えめな響きがやや大きいです。
「賜りたく存じます」は、「もらう」の謙譲語「賜る(たまわる)」に、願望を表す「たく」と、接続助詞「と」、思うの丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「賜りたく存じます」で、「してもらいたいと思います」と依頼をする丁寧な表現になります。 「ご教授いただきたく存じます」と「ご教授賜りたく存じます」は、どちらも謙譲語と丁重語、丁寧語を使った敬語表現ですが、「賜る」が、「いただく」より一段と恐れ多いという気持ちを込めた謙譲語として用いられるため、「ご教授賜りたく存じます」のほうが丁寧でよりかしこまった表現です。
「ご教授いただきたく存じます」は、「ご教授いただきたく思います」ということもできます。 「存ずる」は、「思う」の丁重語なので「ご教授いただきたく思います」としても意味は同じです。 しかし、「思います」は「思う」に「ます」をつけた丁寧語です。 丁寧語は、文末につけることで文章全体を丁寧にするためにつける敬語であり、相手に対して敬意を示すことはできません。 よって、「ご教授いただきたく思います」よりも丁重語と丁寧語を使っている「ご教授いただきたく存じます」のほうが丁寧です。
「ご教授いただきたく存じます」は、クッション言葉を併用することでより丁寧になります。 クッション言葉とは、相手に何かを依頼したり、お断りをする場合などに言葉の前に添えて使用する言葉のことです。ビジネスシーンでは様々な状況で使われます。 クッション言葉を使うことで直接的な表現をさせることができ、丁寧で柔らかい印象を与えることができます。 クッション言葉には、
などがあります。
「ご教授ください」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞「ご」と、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 正しい敬語表現ですが命令文なのでやや上から目線で、目下の人や同等の立場の人に対して使うのは問題ありませんが、親しくない上司や社外の人に対して使うのは避けた方がよいでしょう。 「ご教授くださいませ」とすると柔らかいニュアンスになります。 「くださいませ」は、「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「ご教授いただけますか」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞「ご」と、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「ご教授ください」では丁寧さに欠けますが、「教授してもらえますか」と疑問形にすることで、柔らかい依頼の表現になります。 「ご教授いただくことは可能でしょうか」は、「教授してもらうことはできるだろうか?」と可否を確認する表現で、依頼をするときに使用される正しい敬語表現です。 しかし、やや強意的であるためビジネスシーンでは使用を避ける人もいます。
「ご教授願います」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞「ご」と、「願う」に丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「ご教授願います」も正しい敬語表現ではありますが、「願います」が「願う」という言葉の丁寧語であるという点で丁寧さに欠ける(謙虚な態度が感じられない)表現であるため、親しくない上司や社外の人に対して使うは避けた方が無難です。 上司や社外の人に使用する場合は、「お願いいたします」などより丁寧な敬語表現を使用しましょう。
「ご教授のほど」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、婉曲表現の「ほど」をつけています。 「ほど」は、断定を避ける表現です。 「ご教授のほどよろしくお願いいたします」で、相手に強制することなくお願いをすることができます。 「ほど」は漢字で書くと「程」ですが、漢字にはしません。 「程」の本来の意味は、「物事の経過に伴う様子、程度」です。 そこから転じて断定を避ける表現として用いられています。 このように、本来の意味とは違う使い方をする場合は、漢字ではなくひらがな表記にします。 「お願いいたします」は「お願いする」という意味の依頼表現です。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語で、動作の対象を敬う接頭辞です。 「いたす」は丁重語で、聞き手・読み手を敬う補助動詞です。 「お願いいたします」の「ます」は丁寧語です。 「いたす」は漢字で「致す」と書きますが、補助動詞は平仮名で表記するという決まりがあるので、「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「ご教授くださいますようお願い申し上げます」の「ご教授くださいますよう」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願い申し上げます」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「申し上げる」も補助動詞なので「お願いもうしあげます」と書くのが正しいですが、慣用的に「お願い申し上げます」と漢字で書かれることが多いです。 「ご教授いただきますようお願い申し上げます」とすることもできます。 「いただきますよう」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語の「ます」と婉曲表現の「よう」をつけています。
「ご教授いただけると幸いです」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞「ご」と「もらうと」の謙譲語「いただけると」と、「幸い」に丁寧語「です」をつけた敬語表現です。 「幸いです」は、そうしてもらえれると幸せですという気持ちを表します。 よって「ご教授いただけると幸いです」は、「教授してもらえると嬉しいです」という意味の丁寧な表現になります。 「ご教授いただければ幸いです」としても、意味は同じです。 「いただければ〜」には仮定のニュアンスがあり、「してもらえれば嬉しい」という謙虚な言い回しになります。 「ご教授いただけますと幸いです」も、「もらう」の謙譲語「いただく」にさらに丁寧語「ます」をつけた丁寧な敬語表現です。 また、「幸いです」は「幸甚です(こうじんです)」とすることもできます。 「幸甚」は、この上なく嬉しい気持ちやありがたく思っている気持ちを表すかしこまった表現 です。
「ご教授賜りますようお願い申し上げます」は、非常に丁寧な依頼表現です。 「賜りますよう」は、「もらう」の謙譲語に丁寧語「ます」と婉曲表現の「よう」をつけた敬語表現です。 「ご教授賜りますようお願い申し上げます」で、「教授してもらうようお願いします」という意味になり、丁寧にお願いをすることができます。 ちなみに、「賜れますよう」は誤用です。 「賜れますよう」の「れ」は助動詞「れる」の連用形です。 助動詞「れる」の意味は主に尊敬・可能で使います。 「賜る」が、敬語なので敬語の助動詞を使うのは不適切です。 「れる」が可能の意味ならば「してもらうことができますように・・・」という意味になります。 無理矢理、可能の意味で捉えることもできますが、このような使い方は一般的ではりません。