「ご提供いただきたく存じます」は、提供してもらいたく思うという意味です。ビジネスメールで物品や情報を提供してほしいと依頼をするときなどに使います。
「ご提供」は「ごていきょう」と読みます。 「ご提供」には「他人の役に立てるために、自分の持っている資料・物品・設備や労力・技能などを与えたり使用させたりすること」という意味があります。 「提供」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。
接頭辞「ご(お)」敬語の種類は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。
この場合の接頭辞「ご」は、相手の動作に対してつけているので尊敬語ですが「ご〜いただく」で一つの謙譲語と解釈する場合もあります。
「いただきたく」は、「してもらいたい」という意味です。 「いただきたく」は、「もらう」の謙譲語に願望を表す助動詞「たい」をつけた敬語表現です。 「ご提供いただきたく」で、「提供してもらいたく」という意味になります。 「いただく」は、漢字で「頂く」と書きます。 ただし、「頂く」と漢字で表記するのは、「食べる」「飲む」という意味で使う場合と、「(物などを)もらう」の謙譲語として使う場合です。 「いただきたく存じます」の場合の「いただく」は補助動詞なので平仮名で書くのが正しいです。
「存じます」は、「ぞんじます」と読みます。 「存じます」の意味は「思う」です。 「存ずる」は、「思う」の丁重語です。 丁重語とは、謙譲語Ⅱともいわれ、へりくだることで相手に敬意を示すという点で通常の謙譲語と同じですが、動作の対象ではなく聞き手・読み手に敬意を示す敬語です。 「存じます」の「ます」は、丁寧語です。 したがって「ご提供いただきたく存じます」で「提供してもらいたいと思う」という意味になります。
「ご提供いただきたく存じます」は、ビジネスメールで相手に物品や情報の提供を依頼するときに使います。 例えば、取引先に商品の情報を教えてほしいとお願いをするときなどです。
【件名】 資料ご提供のお願い 【本文】 総務部 長谷川様 お疲れ様です。 広報部の瀧本です。 次回の社内報にこれまで発売してきた商品を掲載したいと考えております。 そこで歴代の商品資料をご提供いただきたく存じます。 今週中に資料室にお伺いしたいのですが、ご都合いかがでしょうか。 お忙しい中恐縮ですがご返答いただきますようお願い申し上げます。 瀧本
【件名】 情報提供のお願い 【本文】 営業部各位 お疲れ様です。 商品開発部の森本です。 先日発売された「△△△」の評判はいかがでしょうか。 売上げだけではなく、実際に商品を手にとったお客様の生の声をお聞きしたくご連絡差し上げました。 営業するにあたって感じた個人的な感想でもかまいません。 お忙しい中恐縮ですが、ご意見をご提供いただきたく存じます。 いただいたご意見は今後の商品開発の参考にさせていただきます。 よろしくお願い申し上げます。 森本
【件名】 イベント開催における場所提供のお願い 【本文】 緑谷市役所 ご担当者様 平素よりお世話になっております。 株式会社EVENT 企画運営部の小林です。 この度神奈川県の委託により、神奈川県各圏域にて「エコライフ・フェア」を開催いたします。 そこでイベント開催場所として緑谷市地域交流センターをご提供いただきたく存じます。 なお、イベントの詳細は添付ファイルをご覧ください。 ご不明な点などがあれば、小林までお気軽にご連絡くださいませ。 ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。 小林
【件名】 サンプルご送付のお願い 【本文】 株式会社花束堂 営業部 花垣様 お世話になっております。 株式会社PRESENTの松山です。 先日御社の新製品のカタログを拝見させていただきました。 社内でも評判がよく、ぜひ弊社でも取り扱い商品に組み入れたいと考えております。 つきましては、御社カタログP15の「△△△」のサンプルをご提供いただきたく存じます。 サンプル貸し出し料が発生する場合は、請求書を同封していただければ幸いです。 送付先 〒111-2222 東京都△△区△△町3-45 株式会社PRESENT 松山優子宛 お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。 松山
「ご提供いただきたく存じます」と似た敬語表現に「ご提供いただければと存じます」があります。 「いただきたく存じます」は、上述したように「もらう」の謙譲語「いただく」に、「思う」の丁重語「存じる」と丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければと存じます」は、「もうら」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「れば」と接続助詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければ〜」は、「〜してもらえたら嬉しい・ありがたい」という願望を表す丁寧な言い回し です。 「ご提供いただきたく存じます」と「ご提供いただければと存じます」は、どちらも謙譲語、丁重語、丁寧語を使用した敬語表現であり丁寧の度合いは同じですが、「いただければと存じます」のほうが仮定のニュアンスが強く謙虚な響きがあります。
「ご提供いただきたく存じます」は、「ご提供いただけたらと存じます」ということもできます。 「いただけたらと存じます」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「たら」と接続詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただけたらと存じます」で、「してもらえたらと思う」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 「ご提供いただきたく存じます」と「ご提供いただけたらと存じます」は、どちらも謙譲語、丁重語、丁寧語を使った敬語表現なので丁寧の度合は同じですが、「いただけたらと存じます」の方が仮定の意が強く控えめな響きがやや大きいです。
「ご提供いただきたく存じます」は、「ご提供いただきたく思います」ということもできます。 「存ずる」は、「思う」の丁重語なので「ご承諾いただきたく思います」としても意味は同じです。 しかし、「思います」は「思う」に「ます」をつけた丁寧語です。 丁寧語は、文末につけることで文章全体を丁寧にするためにつける敬語であり、相手に対して敬意を示すことはできません。 よって、「ご提供いただきたく思います」よりも丁重語と丁寧語を使っている「ご提供いただきたく存じます」のほうが丁寧です。
「ご提供ください」は、「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」と、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 正しい敬語表現ですが命令文なのでやや上から目線で、目下の人や同等の立場の人に対して使うのは問題ありませんが、親しくない上司や社外の人に対して使うのは避けた方がよいでしょう。 「ご提供くださいませ」とすると柔らかいニュアンスになります。 「くださいませ」は、「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「ご提供いただけますか」は、「提供」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「ご提供ください」では丁寧さに欠けますが、「提供してもらえますか?」と疑問形にすることで、柔らかい依頼の表現になります。 「ご提供いただくことは可能でしょうか」という敬語表現もあります。 「ご提供いただくことは可能でしょうか」は、「提供してらうことはできるだろうか?」と可否を確認する表現で、依頼をするときに使用される正しい敬語表現です。 しかし、やや強意的であるためビジネスシーンでは使用を避ける人もいます。
「ご提供願います」は、「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」と、「願う」に丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「ご提供願います」も正しい敬語表現ではありますが、「願います」が「願う」という言葉の丁寧語であるという点で丁寧さに欠ける(謙虚な態度が感じられない)表現であるため、親しくない上司や社外の人に対して使うは避けた方が無難です。 上司や社外の人に使用する場合は、「お願いいたします」などより丁寧な敬語表現を使用しましょう。
「ご提供をお願いします」は、「提供をお願いする」という意味です。 「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「願う」に謙譲語の接頭辞「お」と丁寧語「ます」をつけています。 「ご提供をお願いします」でも十分丁寧な敬語表現ですが、社外の人に使う場合などは「ご提供をお願いいたします」「ご提供をお願い申し上げます」などより丁寧な敬語表現を使うことが多いです。
「ご提供のほど」は、「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」と、断定を避ける表現の「ほど」を使った敬語表現です。 「〜のほど」を用いることで相手に強制することなくお願いをすることができます。 「ほど」は漢字で書くと「程」ですが、漢字にはしません。 「程」の本来の意味は、「物事の経過に伴う様子、程度」です。 そこから転じて断定を避ける表現として用いられています。 このように、本来の意味とは違う使い方をする場合は、漢字ではなくひらがな表記にします。
「ご提供くださいますようお願い申し上げます」は、「提供してくれるようお願いする」という意味です。 「ご提供くださいますよう」は、「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「申し上げる」も補助動詞なので、本来は「お願いもうしあげます」と書くのが正しいですが、慣例的に「お願い申し上げます」と漢字で書くことが多いです。 「ご提供くださいますよう〜」は「ご提供いただきますよう」と言い換えることもできます。 「ご提供いただきますよう」は、「提供してもらうよう」という意味です。 「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。
「ご提供いただけると幸いです」は、「提供」に尊敬を表す接頭辞「ご」と「もらうと」の謙譲語「いただけると」と、「幸い」に丁寧語「です」をつけた敬語表現です。 「幸いです」は、そうしてもらえれると幸せですという気持ちを表します。 よって「ご提供いただけると幸いです」は、「提供してもらえると嬉しい」という意味の丁寧な表現になります。 「ご提供いただけますと幸いです」としても意味は同じですが、より丁寧になります。 「いただけますと」は、「もらう」の謙譲語「いただく」にさらに丁寧語「ます」をつけた丁寧な敬語表現です。 「ご提供いいただければ幸いです」とすると仮定のニュアンスが加わり柔らかい表現になります。 「いただければ〜」の「れば」は仮定を表し、「してもらえれば嬉しい」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 また、「幸いです」は「幸甚です(こうじんです)」とすることもできます。 「幸甚」は、この上なく嬉しい気持ちやありがたく思っている気持ちを表すかしこまった表現です。
「ご提供賜りますようお願い申し上げます」は、非常に丁寧な依頼表現です。 「賜りますよう」は、「もらう」の謙譲語に丁寧語「ます」と婉曲表現の「よう」をつけた敬語表現です。 「賜る」は、「もらう」の謙譲語、「与える」の尊敬語の二つの意味がありますが、この場合は相手から何かをしてもらうという動作について、相手を高めるために使用されている謙譲語です。 「ご提供賜りますようお願い申し上げます」で、「提供してもらうようお願いする」という意味になり、丁寧にお願いをすることができます。 「ご提供を賜りますようお願い申し上げます」とすることもできます。 ちなみに、「賜れますよう」は誤用です。 「賜れますよう」の「れ」は助動詞「れる」の連用形です。 助動詞「れる」の意味は主に尊敬・可能で使います。 「賜る」が、敬語なので敬語の助動詞を使うのは不適切です。 「れる」が可能の意味ならば「してもらうことができますように・・・」という意味になります。 無理矢理、可能の意味で捉えることもできますが、このような使い方は一般的ではりません。