「破竹の勢い(はちくのいきおい)」とは「止めようとしても止まらないほど猛烈な勢い」を表します。成長する会社やスポーツなどに対して使います。一節目が割れると一気に割れる竹の性質を三国志の武将が軍の勢いに例えて使ったのが由来です。
「破竹の勢い」の読み方は「はちくのいきおい」です。 「破」は音読みで「ハ」、「竹」は音読みで「チク」、「勢」は訓読みで「いきおい」と読みます。
「破竹の勢い」は「はげしくとどめがたい勢い」」という意味です。 止めようとしても止まらないほど猛烈な勢いを言い表します。 「破竹」とは「竹を割ること」です。 竹の一度破れ目が入ると、あとは一気に割れるという特徴が由来です。
「破竹の勢い」は四字熟語にすると「破竹之勢」となります。 「破竹之勢」で「はちくのいきおい」と読みます。
「破竹の勢い」は、三国志にも登場する中国の西晋(せいしん)時代の武将、「杜 預(と よ)」の逸話にあります。 杜 預が、呉(ご)を攻撃する作戦会議を開いたときに、将の一人が「今はちょうど病気が発生しやすいし、攻撃は冬にしよう」と提案をしました。 しかし、杜 預は「今、我軍の士気は大に上がっている。たとえるなら竹割るようなもので、節を割ってしまえばあとは力を入れなくても一人で割れて手を施す必要もない」と言って、そのまま呉を一気に攻めて勝利をおさめました。 この杜 預の「竹を割るようなもので...」というたとえ話が語源で「破竹の勢い」という言葉が使われるようになったといわれています。
「爆竹の勢い」は誤用です。 「爆竹」は、「小さな紙筒や竹筒に火薬を詰めて多数つないだもの」です。 その端に点火して、次々に爆発させて鳴らします。 上述したように「破竹」は「竹が割れること」です。 「爆竹の勢い」という言葉はありませんので注意しましょう。
「淡竹」は「はちく」と読みます。 「淡竹」は「竹の一種」です。 日本でも各地でよく植栽される竹の一つです。 「淡竹」には「竹が割れる」という意味はないため、「淡竹の勢い」では意味が通じなくなってしまいます。 「破竹」と「淡竹」は同音異義語なので誤用も多いですが注意しましょう。
「破竹の勢い」は、ビジネスでは成長する会社に対して使います。 例えばベンチャー企業に対してなど、急激に業績を伸ばしていて誰にも止められない勢いで成長しているというポジティブな意味で使用されます。 あっという間に出世するなど勢いよく成長する個人に対しても使用するも可能です。 よく使用される言い回しは「破竹の勢いの○○」「破竹の勢いだ/である」「破竹の勢いで」などです。
例文
「破竹の勢い」は三国志が語源ということもあり、ビジネスやスポーツなど競争に対して使います。 例えば、リーグ戦において一戦も負けることなく勝ち進んでいるチームに対して「破竹の勢いで勝ち進む」などと使用することができます。 「破竹の勢い」は「猛烈な勢い」という意味があるので、「順調に勝ち進んでいる」というよりは、「周りとは圧倒的な差をつけて勝ち進んでいる」というニュアンスになります。
例文
「飛ぶ鳥を落とす勢い」は「とぶとりをおとすいきおい」と読みます。 「飛ぶ鳥を落とす勢い」の意味は「権力や威勢が盛んなこと」です。 「飛んでいる鳥を撃ち落とす」ということではなく、飛んでる鳥さえも落ちてくるほどに権勢の盛んなことのたとえです。 「飛ぶ鳥も落つ」ともいいます。 「飛ぶ鳥を落とす勢い」も勢いがあることを言い表しているので、「破竹の勢い」と同義であるといえます。
「破竹の勢い」以外の「勢い」を含む慣用句で意味が同じものには「決河の勢い」「旭日昇天の勢い」があります。 「決河の勢い」は「けっかのいきおい」と読みます。 「決河の勢い」の意味は「猛烈な勢い」です。 堤防が切れて河水が流水するような、勢いの激しいことをたとえた言葉です。 「旭日昇天の勢い」は「きょくじつしょうてんのいきおい」と読みます。 「旭日昇天の勢い」の意味は「勢いが盛んなこと」です。 「旭日昇天」は「朝日が天に昇ること」という意味です。 転じて、天にのぼる朝日のように勢いが盛んなことを言い表す言葉として「旭日昇天の勢い」といわれるようになりました。
「怒涛の如し」「堰を切ったような」「草木も靡く」も類義語にあたります。 「怒涛の如し」は「どとうのごとし」と読みます。 「怒涛の如し」の意味は「極めて激しい様子」です。 「怒涛」の意味は「激しく荒れる大波」です。 転じて、「激しい勢いで押し寄せる様子のたとえ」として使用されます。 「如し」は「〜ように」という意味です。 「怒涛の如く」という使い方をすることもあります。 「堰を切ったような」は「せきをきったような」と読みます。 「堰を切ったような」の意味は「感情などが一気に動き出すこと」です。 おさえられていたものが、どっとあふれでることを言い表します。 「堰」は、水量調節のために川の途中や流水口に設けて流れをせき止める構造物のことです。 堰を壊すと川の水が溢れ出ることから「堰を切ったように」とたとえて使用されます。 「草木も靡く」は「くさきもなびく」と読みます。 「草木も靡く」の意味は「勢力が盛んで、多くの人がそれに従うこと」です。 草木が風の勢いに従って横に倒れるように揺れ動く様子にたとえたことわざです。 「草木も靡く勢いだ」などと言い合わすことができますが、「周りの人も従う」という意味があるという点で「破竹の勢い」とは異なります。
「騎虎の勢い」は「きこのいきおい」と読みます。 「騎虎の勢い」の意味は「行きがかり上途中でやめることができなくなること」です。 「騎虎」は「虎の背に乗ること」です。 疾走する虎の背にまたがった者は、振り落とされれば虎に食い殺されてしまうことから振り落とされないようにしがみついているしかないということから、「騎虎の勢い」というようになりました。 「破竹の勢い」とは異なり、単に「勢いがある」「勢いに乗る」という意味ではないので注意しましょう。
「向かうところ敵なし」は「むかうところてきなし」と読みます。 「向かうところ敵なし」の意味は「向かい進むところに抵抗するものがいない」です。 とびぬけて強く、どんな相手にも負けない様子を言い表す慣用句です。 「破竹の勢い」も誰にも止められないほどの勢いがあることを言い表す言葉なので、類語であるといえます。
会社が成長するスピードを形容するのであれば、シンプルに「fast」「quickly」「rapidly」などが使えます。 強調するために「very fast」「very quickly」などとするとよりニュアンスが近いです。 「carry everything before it」で「向かうところ敵なし」という意味です。
Her startup is growing very fast and carried everything before it.
彼女のベンチャー企業は破竹の勢いで成長しており、向かうところ敵なしだ。
The company was not a first mover, but expanded very quickly and monopolized the market.
その会社は後発だったか、破竹の勢いで拡大し、市場を独占した。
「止められない」というニュアンスから「unstoppable」を使うことができます。 「sweep to victory」で「圧勝する」という意味です。 「sweep to power」という表現もあります。 「破竹の勢い」の訳では「He is ready to leap over nine hedges.(彼は生垣を九つも跳び越えんばかりの勢いだ)」がよく紹介されますが、このような表現を使うネイティブはまずいませんし、通じないので使用しない方がよいでしょう。
The team was simply unstoppable and swept to victory.
そのチームは破竹の勢いで、圧勝した。
「破竹の勢い」は「激しく止めることができない勢い」という意味です。 竹は節があるため簡単には割れませんが、刃物で一節目に割れ目を入れれば、次々に割れていく性質があります。 この性質を、三国志に登場する晋の武将・杜預(とよ)が軍の勢いに例えて使ったのが由来です。