「拝読ください」は誤った敬語表現です。今回は「拝読ください」について解説します。正しい言い換え表現なども併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「拝読ください」は誤りです。 「拝読ください」は「はいどくください」と読みます。 「拝読ください」は「拝読」に相手に「~してくれ」を要望・懇願する敬語表現の「ください」をつけています。 「拝読」は「読むこと」の謙譲語です。 謙譲語は自分の動作をへりくだって敬意を示す敬語です。 よって「拝読ください」は、相手の動作に対して謙譲語を使っているので誤用です。 相手の動作に対しては、相手の動作を高めて敬意を示す尊敬語を使います。
「ください」は漢字で「下さい」と書きます。 しかし、漢字で表記するのは「物をもらう」のように本動詞で使う場合であり、補助動詞で使う場合は平仮名で表記する決まりがあります。 例えば「お水がほしい」とお願いをする場合は、本動詞なので「お水を下さい」と表記することができます。 「お読みください」など「~してほしい」と懇願・要望する場合の「ください」は補助動詞なので平仮名で表記するのが正しいです。
「ご拝読ください」としても誤りです。 「ご拝読」は「拝読」に接頭辞「ご」をつけています。 接頭辞「ご(お)」は尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。 相手の動作に対して使う場合の接頭辞は尊敬語になりますが、「拝読」が「読むこと」の謙譲語なので、尊敬語の接頭辞をつけることはできません。
「お読みください」は「およみください」と読みます。 「お読みください」は「読んでくれ」という意味の敬語表現です。 「お読みください」は品詞分解すると「お」+「読む」+「ください」となります。 「読む」についている「お」は尊敬を表す接頭辞です。 この場合の接頭辞は相手の動作に対してつけているので尊敬語になります。 「ください」は「くれ」の尊敬語です。 「お(ご)~ください」の形で、相手に~してくれと懇願・要望することについて相手を高めることができます。 「お読みください」は接頭辞「お」と「ください」で尊敬語を二つ使用していますが、二重敬語ではありません。 二重敬語とは、一つの語に対して同じ種類の敬語を重ねて使用してしまうことをいいます。 この場合は、「ご~ください」で一つの尊敬語と解釈することができるので二重敬語ではなく正しい敬語表現です。
「ご一読ください」は「ごいちどくください」と読みます。 「ご一読ください」の意味は「一通り読んでくれ」です。 「ご一読ください」は「一読」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた依頼表現です。 「一読」には「ひととおりざっと読む」という意味があります。 「ざっと読んでほしい」というそのままの意味ではなく、相手の時間を使わせてしまうことに対して謙遜した表現として使われます。
「ご覧ください」は「ごらんください」と読みます。 「ご覧ください」は「見てくれ」という意味の敬語表現です。 「ご覧」は「見ること」の尊敬語です。 「ご覧ください」は「ご覧になってください」の省略形です。 省略形は、省略していない形よりも敬意の度合いが落ちます。 本来であれば「ご覧になってください」を使うべきですが、「ご覧ください」は慣用的に使われており、ビジネスシーンで使用しても問題はありません。 しかし、ビジネスメールなど文章で使う場合は省略しない形を使うのが望ましいです。
「ご参照ください」は「ごさんしょうください」と読みます。 「ご参照ください」の意味は「参照してくれ」です。 「ご参照ください」は「参照」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 「参照」には「他の物を照らし合わせて参考にすること」という意味があります。 例えば、商品の紹介をするときに説明と合わせて渡した資料を見てもらうときなどに使います。 照らし合わせる対象がない場合は使えないので注意してください。
「ください」は依頼表現で使うことができます。 しかし、「ください」は命令形「くれ」の尊敬語なので命令文になてしまいます。 社内の親しい上司に対してや同等の立場の人間に使うのは問題ありませんが、親しくない上司や社外の人に対して使うのは上から目線なので避けたほうが良いです。 「ください」より丁寧な敬語表現は下記の通りです。
「ください」を「くださいませ」とすると、柔らかい印象になります。 「くださいませ」は、「くれ」の尊敬語「ください」と「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」は、柔らかい響きがあるので男性は使えないと認識している人も多いですが、男性も使うことができます。 どうしても気になる人は「~いただきますようお願いいたします」などの敬語表現を使いましょう。
「いただけますか」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「~ください」では丁寧さに欠けますが、「~してもらえますか?」と疑問形にすることで、柔らかい依頼の表現になります。
「していただきたく存じます」は「してもらう」の謙譲語「していただく」と「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 丁重語とは謙譲語Ⅱとも言われ、自分をへりくだることで相手に敬意を示という点で同じですが、通常の謙譲語とは異なり、聞き手・読み手に敬意を示す敬語です。 「~していただきたく存じます」で、「~してもらいたいと思う」と柔らかくお願いをする表現になります。 「~していただければと存じます」とするとより丁寧です。 「いただければ」は、「してもらえたら〜」という仮定の表現で願望を表す丁寧な依頼表現です。
「~いただけますと幸です」は「~してもらえると嬉しい」という意味です。 「いただけますと幸いです」の「いただけますと」は、「もらう」の謙譲語「いただく」にさらに丁寧語「ます」をつけた丁寧な敬語表現です。 「幸いです」は、そうしてもらえれると嬉しいという気持ちを表します。 「~いただければ幸いです」とすると仮定のニュアンスが加わり柔らかい表現になります。 「いただければ〜」の「れば」は仮定を表し、「してもらえれば嬉しい」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 また、「幸いです」は「幸甚です(こうじんです)」とすることもできます。 「幸甚」は、この上なく嬉しい気持ちやありがたく思っている気持ちを表すかしこまった表現です。
「~くださいますようお願いいたします」は、「~くれるようお願いする」という意味です。 「くださいますよう」は、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語で、動作の対象を敬う接頭辞です。 「いたす」は丁重語、「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」の「いたす」も補助動詞なので「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「~いただきますようお願い申し上げます」は「~してもらうようお願いする」という意味です。 「いただきますよう」は、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語の「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「いただきますよう〜」で、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「くださいますよう」と「いただきますよう」は、言い方が違うだけで意味は同じです。 また、「くださいますよう」は尊敬語+丁寧語、「いただきますよう」は謙譲語+丁寧語という敬語の違いもありますが、尊敬語と謙譲語の敬意の度合いは同じです。 しかし、「ください」が命令形「くれ」の尊敬語であるという点で、「もらう」の謙譲語「いただく」を使った「いただきますよう」のほうが丁寧で謙虚な響きが強いです。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の丁寧の度合いはどちらも同じですが、「お願い申し上げます」の方が意味的に謙虚で、やや丁寧です。 そのため、ビジネスシーンなどでは「お願い申し上げます」が使われる傾向があります。