「可愛い子には旅をさせよ」は「子供が可愛いならば、世の中の辛さを経験させよ」という意味のことわざです。女児に対して使うことが多いが、男児にも使えます。今回は「可愛い子には旅をさせよ」の正しい意味と使い方を由来と合わせて解説します。類語や対義語も紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「可愛い子には旅をさせよ」は「かわいいこにはたびをさせよ」と読みます。 「可愛い子には旅をさせよ」は、「我が子を甘やかして旅をさせてやる」という文字通りの意味ではありません。 例えば「可愛い子には旅をさせよというので、ハワイ旅行の費用を出した」という使い方は、意味の変化ではなく誤用です。 また、このことわざに続きもこのような内容はありません。
「可愛い子には旅をさせよ」の本当の意味は、「子供が可愛いならば、世の中の辛さを経験させよ」です。 「本当に子供がかわいいなら、甘やかすのではなく世の中の辛くて苦しい現実をつぶさに体験させたほうがよい」という児童観が反映されたことわざです。 女児に対して使うことが多いが、男児にも使えます。 厳密に何歳から旅をさせてよいか、という話ではありません。 「旅」は比喩で「苦難の人生」のことです。 「いとしき子には旅をさせよ」「可愛い子は棒で育てよ」ともいいます。
「可愛い子には旅をさせよ」の由来は、昔の旅が過酷だったことにあります。 現代のように電車や飛行機などの交通の便がなく、足だけが頼りだった昔の旅はひたすらに辛く厳しいもので、旅立つ時には水杯(みずさかずき)を交わすほどでした。 「水杯」とは、二度と会えないかもしれないほどの別れのときに、お酒の代わりに水をついて杯を交わすことをいいます。 そこから、「旅」を「苦難の人生」にたとえて「子供を一人前に育てたいのなら、一時的にでも他人の家にやって違った起居・生活を通じて世間の実情を体験させたほうがよい」という意味で「可愛い子には旅をさせよ」といわれるようになったのが、由来です。
「可愛い子には旅をさせよ」は、「可愛いからこそ世間の苦労や困難を経験させて、成長させる」という子供の教育方針を言い表すときに使用します。 「可愛い子には旅をさせよだ」と断定したり、「可愛い子には旅をさせよというが」などと引用する形で使用されることが多いです。
例文
「可愛い子には旅をさせよ」はまれに部下や後輩に使用することもあります。 立派になってほしいと思っている部下や後輩だからこそ、あえて厳しい環境に身をおいて成長してほしいという指導方針をもっている人もいるでしょう。 ただし、女性の部下に「可愛い子」と使うと、あくまでも慣用句だが少し不快な思いをする方もいるかもしれないので注意しましょう。 基本的に部下や後輩には使わず、子供に対して使用する言葉です。
「獅子の子落とし」は「ししのこおとし」と読みます。 「獅子の子落とし」の意味は「自分の子を苦難の環境において、その器量を試すこと」です。 獅子は子を生むと、子を千刄の谷に投げこみ、生き残ったものばかりを教育するという言い伝えから、我が子に苦しい試練を与えて立派な人間い育てようとすることをたとえて「獅子の子落とし」というようになりました。
「憎まれっ子世にはばかる」は「にくまれっこよにはばかる」と読みます。 「憎まれっ子世にはばかる」の意味は「人から憎まれるような人が世間ではかえって幅をきかせる」という意味です。 「はばかる」は漢字で「憚る」と書きます。 「憚る」の意味は「はばをきかせる。のさばる」です。 「憎まれっ子世にはびこる」ともいいます。
「捨て子は世に出る」は「すてごはよにでる」と読みます。 「捨て子は世に出る」の意味は「親に見捨てられるような人間のほうがたくましく育つ」です。 親に見捨てられた子供は、厳しい環境で育つ分、鍛えられて強くなり出世する人が多いという意味です 。 親の元を離れたほうが成長に繋がるという意味では「可愛い子には旅をさせよ」と類語であるといえます。
「親の甘いは子に毒薬」の読み方は「おやのあまいはこにどくやく」です 「親の甘い子に毒薬」は「親の甘やかしは子供にとっては毒になる」という意味です。 子供の将来を考えると、親が甘やかして育てるとかえってよくない結果になってしまうという意味で使用されます。 子供を甘やかして育てることを否定している言葉なので、「可愛い子には旅をさせよ」の類語であるといえます。
「手塩にかける」は「てしおにかける」と読みます。 「手塩にかける」の意味は「みずから世話をして大切に育てる」です。 「手塩」は、昔それぞれの食膳に添えていた少量の塩のことです。 各自でその塩で自習に料理に味を調節していたことから、「自分で面倒を見る」という意味で使用されるようになったと言われています。 漢字表記は「手塩に掛ける」ですが、「かける」は平仮名表記が多いです。 「手塩をかける」は誤用です。
「箱入り娘」は「はこいりむすめ」と読みます。 「箱入り娘」の意味は「大切に育てられた娘」です。 箱に大事にしまってめったに見せないように、外出もさせないほど大切に育てられた娘のことをいいます。 「世間知らず」という嫌味で使用されることもあります。 外に出さずに大切に自分の元に置いていくという意味なので、「可愛い子には旅をさせよ」の対義語にあたります。
「乳母日傘」は「おんばひがさ」と読みます。 「乳母日傘」の意味は「子供を大事に守り育てること」です。 「おんば」は「おうば」から転じたもので、その昔大家では子どもたちには乳母(母親に代わって子育てをする女性)がつけられ大切に教育されていたことから、大事に育てられていることを言い表す言葉として使用されるようになりました。 「おんばひからかさ」ともいいます。 「おんぶ日傘」は、いい気になって人に頼るという意味の「おんぶに抱っこ」と混合された誤用です。
英語の諺に「Spare the rod and spoil the child. 」があります。 「罰を与えなければ子供は駄目になる」という意味です。 「spare」は「与えない」という意味で、「rod」は「棒」という意味です。
「可愛い子には旅をさせよ」を直訳すれば、「If you love your child, send her out into the world.」となります。 この表現はことわざではないので、人によっては「?」となる可能性があるので注意しましょう。