「候」の2つの読み方と意味、語尾での使い方を例文つきで解説
「候」には「こう」「そうろう」の2つの読み方があります。「候(こう)」は「季節」、「候(そうろう)」は「ある・おる」の丁重語、「ある」の丁寧語として使用されます。今回は「候」の正しい意味と使い方を紹介します。「候」を含む熟語も合せて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「候(こう)」の意味と使い方
「候」の読み方①は「こう」
「候」の一つ目の読み方は「こう」です。
「候」は音読みで「コウ」と読みます。
「候(こう)」の意味は「季節」
「候(こう)」の意味は「季節。時季」です。
暑さ寒さなどから見た時節のことをいいます。
「季節」の言い換えと認識するとわかりやすいです。
例えば、「○○の候」で「○○の季節」という意味になります。
「候(こう)」は挨拶文で使う
「候(こう)」は、挨拶文で使用されます。
目上の人に手紙や書面のお知らせを送る場合には、礼儀として文頭や文末に季節の挨拶をいれます。
季節の挨拶は、手紙を出す季節にあったものを使用する必要があります。
季節ごとの挨拶文を紹介しますので参考にしてください。
1月
上旬
- 新春の候(しんしゅんのこう)
- 初春の候(しょしゅうのこう)
中旬
- 寒風の候(かんぷのこう)
- 寒中の候(かんちゅうのこう)
下旬
- 厳寒の候(げんかんのこう)
- 大寒の候(だいかんのこう)
1月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 新春の候、皆様におかれましては穏やかなお正月を迎えられたことと存じます。
- 初春の候、春の子はかすかにも聞こえませんがお変わりないですか。
2月
上旬
- 晩冬の候(ばんとうのこう)
- 立春の候(りっしゅんのこう)
中旬
- 余寒の候(よかんのこう)
- 梅花の候(ばいかのこう)
下旬
- 春寒の候(しゅんかんのこう)
- 向春の候(こうしゅんのこう)
2月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 余寒の候、平素より格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
- 春寒の候、皆様のご健康をお祈り申し上げます。
3月
上旬
早春の候(そうしゅうんのこう)
浅春の候(せんしゅんのこう)
中旬
- 仲春の候(ちゅうしゅんのこう)
- 春色の候(しゅんしょくのこう)
下旬
春分の候(しゅんぶんのこう)
春暖の候(しゅんだんのこう)
3月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 春色の候、貴社のおかれましてはご隆昌のこととお慶び申し上げます。
- 春分の候、お風邪など召しませぬようご自愛ください。
4月
上旬
- 陽春の候(ようしゅんのこう)
- 桜花の候(おうかのこう)
中旬
- 陽春の候(ようしゅんのこう)
- 春風の候(しゅんぷうのこう)
下旬
- 薫風の候(くんぷうのこう)
- 青葉の候(あおばのこう)
4月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 春暖の候、○○様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
- 陽春の候、季節の変わり目ゆえどうぞご自愛くださいますように。
5月
上旬
- 新緑の候(しんりょくのこう)
- 立夏の候(りっかのこう)
中旬
- 新緑の候(しんりょくのこう)
- 薫風の候(くんぷうのこう)
下旬
- 薫風の候(くんぷうのこう)
- 青葉の候(あおばのこう)
5月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 薫風の候、平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
- 青葉の候、皆様にはいよいよお健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。
6月
上旬
- 初夏の候(しょかのこう)
- 青葉の候(あおばのこう)
中旬
- 新緑の候(しんりょくのこう)
- 向暑の候(こうしょのこう)
下旬
- 梅雨の候(つゆのこう)
- 向暑の候(こうしょのこう)
6月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 向暑の候、○○様にはお元気でお過ごしの由、お慶び申し上げます。
- 梅雨の候、うっとしい毎日が続きますが、ご自愛のほどお祈りいたします。
7月
上旬
- 盛夏の候(せいかのこう)
- 小暑の候(しょうしょのこう)
中旬
下旬
7月の挨拶文で使用する「候」の例文
- 小暑の候、お元気でお過ごしでしょうか。
- 大暑の候、海や山の恋しい季節となりましたがお元気でいらっしゃいますか。
8月
- 立秋の候(りっしゅんのこう)
- 晩夏の候(ばんかのこう)
中旬
下旬
8月の挨拶文で使用する「候」
- 立秋の候のまだまだ暑い毎日ですがいかがお過ごしですか。
- 残暑の候、ますますご壮健のこととお慶び申し上げます。
9月
上旬
- 初秋の候(しょしゅうのこう)
- 新涼の候(しんりょうのこう)
中旬
- 爽秋の候(そうしゅうのこう)
- 涼風の候(りょうふうのこう)
下旬
- 秋涼の候(しゅうりょうのこう)
- 秋色の候(しゅうしょくのこう)
9月の挨拶文で使用する「候」
- 初秋の候、秋とは名ばかりでまだまだ暑さが続いていますがお元気でしょうか。
- 秋色の候、涼やかな秋風の下いかがお過ごしでしょうか。
10月
上旬
中旬
- 秋麗の候(しゅれいのこう)
- 紅葉の候(こうようのこう)
下旬
10月の挨拶文で使用する「候」
- 秋晴の候、お変わりなくお過ごしのことと存じます。
- 秋冷の候、体調など崩さないようくれぐれもご自愛ください。
11月
上旬
中旬
- 落葉の候(おちばのこう)
- 向寒の候(こうかんのこう)
下旬
11月の挨拶文で使用する「候」
- 晩秋の候、皆様お元気でしょうか。
- 霜秋の候、ご健康にはこれぐれもお気をつけください。
12月
12月の挨拶文で使用する「候」
- 冬晴れが心地よい師走の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 忘年会多き師走の候、お健やかにお過ごしでいらっしゃいますか。
「候(そうろう)」の意味と使い方
「候」の読み方②は「そうろう」
「候」の2つ目の読み方は「そうろう」です。
「候」は訓読みで「そうろう」と読みます。
この読み方をする「候」は古語です。
現代では使用されません。
「候ふ(う)」とも書く
「候(そうろう)」は、「候ふ(う)」とも書きます。
「候」の元の形は「さぶろう」です。
「さぶろう」が変化して、中世初期頃から「候ふ(う)」というようになりました。
終止形・連体形では慣用的に「候」と送りがなをつけないことが多いです。
「候(そうろう)」の意味①「ある・おる」の丁重語
「候(そうろう)」の一つ目の意味は「ある・おる」の丁重語です。
「丁重語」とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用される敬語表現です。
例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している「丁重語」になります。
丁重語は自分の動作をへりくだることで相手に敬意を示す「謙譲語」と同じ種類の敬語で、「謙譲語Ⅱ」ともいわれますが、厳密には謙譲語とは別の種類の敬語です。
例えば「こちらにあります」を、「こちらに候」とすることで敬語表現になります。
「候(そうろう)」の意味②「ある」の丁寧語
「候(そうろう)」は、形容詞の連用形を受けて「ある」の丁寧語になります。
例えば「ご帰宅された次第に候」は、「帰宅された次第であります」という意味です。
また、動詞の連用形について「です」「ます」のように文章全体を丁寧にします。
例えば、「光栄に存じ候」は「光栄に思います」という意味です。
「候」を含む熟語
候補(こうほ)
「候補」の意味は、
- ある地位や身分を得る資格があるものとして、選択の対象になること。
- また、その人や物・場所など
- 選挙に立候補した人。「候補者」の略です。
「候補」の「候」の意味は「持つ」で、「補」の意味は「その地位につく」です。
満たしていると関係者から推奨され、また関係者以外の人にそのように見られていることをいいます。
もっと広い意味では、自分自身や自分にかかわりのある者から推薦することにもいいます。
居候(いそうろう)
「居候」の意味は「他人の家に住んで養ってもらうこと」です。
他人の家に住み着く無能なやっかい者をさすこともあります。
「居候」の「居」は、「いる」という意味で、「候」の意味は「ある」の丁重語です。
「居ります」という言葉が語源で「居候」という言葉ができました。
伺候(しこう)
「伺候」の意味は「貴人のそば近くに仕えること」です。
また、貴人のご機嫌伺いに参上することをいいます。
この場合の「候」は「身分の高い人の側にいる」という意味で使用されています。
候文(そうろうぶん)
「候文」は、丁寧語の「候」を使ってかく文章のことです。
文末に「ます」を使う部分に「候」を使った文章を「候文」といいます。
手紙や公用文などで使う文語文です。