「お時間をいただきたく存じます」は「時間をもらいたく思う」という意味の敬語表現です。今回は「お時間をいただきたく存じます」の意味や敬語、使い方、類似表現との違いなどを解説します。
「お時間を」は「おじかんを」と読みます。 「お時間」は「時間」に接頭辞「お」をつけています。 接頭辞「お(ご)」は尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。 この場合は、「時間」を丁寧にするためにつけている丁寧語(美化語)と解釈されることが多いです。 しかし、尊敬語は相手の動作だけではなく相手の持ち物に対してもつけることができます。 この場合は、相手の時間に対して使っているので尊敬語と解釈することができます。
「いただきたく」は「してもらいたい」という意味です。 「いただきたく」は、謙譲語「いただく」に希望を表す助動詞「たい」をつけた敬語表現です。 「いただく」は、本動詞の場合は「もらう」、補助動詞の場合は「〜してもらいたい」という意味の謙譲語になります。 この場合は、本動詞として使われています。 自分の動作をへりくだり、相手に敬意を示します。 「いただく」は、漢字で「頂く」と書きます。 「いただく」を本動詞で使う場合は漢字、補助動詞で使う場合は平仮名で表記するという決まりがあります。 この場合は本動詞として使われているので「お時間を頂きたく」と書くのが正しいですが、慣例的に平仮名で表記されることも多いです。
「存じます」は、「ぞんじます」と読みます。 「存じます」の意味は「思う」です。 「存ずる」は、「思う」の丁重語です。 丁重語とは、謙譲語Ⅱともいわれ、へりくだることで相手に敬意を示すという点で通常の謙譲語と同じですが、動作の対象ではなく聞き手・読み手に敬意を示す敬語です。 「ます」は、丁寧語です。 したがって「お時間をいただきたく存じます」で「時間をもらいたいと思う」という意味の正しい敬語表現です。 目上の人に対して使うことができます。
「お時間をいただきたく存じます」は、ビジネスメールで相手に時間をもらえないかと依頼をするときに使います。 例えば、上司に業務に関する相談をしたいときや、社外の人と会う約束をするときなどです。
など、クッション言葉と併用して使うとより丁寧です。 クッション言葉とは、相手に何かを依頼したり、お断りをする場合などに言葉の前に添えて使用する言葉のことです。クッション言葉を使うことで直接的な表現をさせることができ、丁寧で柔らかい印象を与えることができます。 「お時間をいただきたく存じます」は文中で使われることが多いですが、「お時間をいただきたく存じます。よろしくお願い申し上げます」などの形で文末で使うこともできます。
【件名】 弊社製品に関するご説明に関して 【本文】 タチツテト株式会社営業部 三ツ谷様 いつもお世話になっております。 株式会社マミムメモ物産営業部の麗日です。 この度は弊社製品に関するお問い合わせをいただき誠にありがとうございます。 ご要望いただいた通り、弊社製品の取り扱いについて私どもから直接ご説明いたします。 つきましては、下記の日程でお時間をいただきたく存じます。 9月8日(水)11:00〜12:00 9月10日(木)14:00〜15:00 9月15日(水)14:00〜15:00 上記日程で差し障りがございましたら、お手数ですがご都合の良い日程をお知らせいただければ幸いです。 ご多忙の折恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。 麗日
【件名】 ご面談のお願い 【本文】 株式会社AAA 企画部 小林茉優様 平素よりお世話になっております。 森山商事の竹沢です。 このたびはプロジェクト「△△△」にご協力いただけるとのこと、誠にありがとうございます。 さっそくではございますが、ご挨拶かたがたご面談のお時間をいただきたく存じます。 日時:12月5日(月)14:00〜15:00 先日ご了解を頂いた日にち、時間で設定いたしましたが、ご都合が悪い場合はお知らせください。 お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。 竹沢
【件名】 プロジェクト「X」に関するご相談 【本文】 野原課長 お疲れ様です。営業部の八百万です。 標題の件ですがプロジェクト「X」について、ご報告ならびにご相談したい事項があり、お忙しい中恐縮ですが、今週のどこかで30分ほどお時間をいただきたく存じます。 下記の日程でご都合いかがでしょうか。 ・12月1日(月)13時〜 ・12月3日(水)14時〜 ・12月4日(木)13時〜 ご面倒をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。 八百万
【件名】 お問い合わせの件 【本文】 株式会社あいうえお 営業部家入様 平素よりお世話になっております。 株式会社かきくけこの照屋です。 この度は弊社製品についてお問い合わせをいただきありがとうございます。 今回お問い合わせいただいた件は、只今調査中で回答にお時間をいただきたく存じます。 本日中に製造担当の者から直接回答をお伝えいたします。 ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。 よろしくお願い申し上げます。 照屋
「お時間をいただきたく存じます」と似た敬語表現に「お時間をいただければと存じます」があります。 「いただければと存じます」は、「もうら」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「れば」と接続助詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければ〜」は、「〜してもらえたら嬉しい・ありがたい」という願望を表す丁寧な言い回し です。 「お時間をいただきたく存じます」と「お時間をいただければと存じます」は、どちらも尊敬語、謙譲語、丁重語、丁寧語を使用した敬語表現であり丁寧の度合いは同じですが、「いただければと存じます」のほうが仮定のニュアンスが強く謙虚な響きがあります。
「お時間をいただきたく存じます」は、「お時間をいただけたらと存じます」ということもできます。 「いただけたらと存じます」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「たら」と接続詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただけたらと存じます」で、「してもらえたらと思う」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 「お時間をいただきたく存じます」と「お時間をいただけたらと存じます」は、どちらも尊敬語、謙譲語、丁重語、丁寧語を使った敬語表現なので丁寧の度合は同じですが、「いただけたらと存じます」の方が仮定の意が強く控えめな響きがやや大きいです。
「お時間をいただきたく存じます」は「お時間を頂戴したく存じます」としても意味は同じです。 「頂戴したく」は謙譲語「頂戴」に希望を表す「たい」をつけた敬語表現です。 「お時間をいただきたく」の「いただく」と「お時間を頂戴したく」の「頂戴」はどちらも謙譲語です。 どちらを使っても問題ありませんが、「頂戴」を使うとより堅い表現になります。 社外の相手に対してや、かしこまった場面では「お時間を頂戴したく存じます」を使うことも多いです。
「存ずる」は、「思う」の丁重語なので「お時間をいただきたく思います」としても意味は同じです。 しかし、「思います」は「思う」に「ます」をつけた丁寧語です。 丁寧語は、文末につけることで文章全体を丁寧にするためにつける敬語であり、相手に対して敬意を示すことはできません。 よって、「お時間をいただきたく思います」よりも丁重語を使っている「お時間をいただきたく存じます」のほうが丁寧です。
「お時間をください」は、「時間」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 正しい敬語表現ですが命令文であり、やや上から目線なので親しくない上司や社外の人に対して使うのは避けた方がよいでしょう。 「お時間をくださいませ」とすると柔らかいニュアンスになります。 「くださいませ」は、「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「お時間をいただけますか」は、「時間」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「お時間をもらえますか」と疑問形にすることで、柔らかい依頼の表現になります。 「お時間をいただけますでしょうか」とすることもできます。 「お時間をいただけますでしょうか」は、「お時間をいただく」にさらに丁寧語「ます」と、「だろう」の丁寧語「でしょう」と疑問の終助詞「か」をつけています。 「お時間をいただけますでしょうか」は、丁寧語を2つ使用していますが、「いただく」と「だろう」のそれぞれ別の語にかかっているので二重敬語にはなりません。 二重敬語とは、一つの語に同じ種類の敬語を重ねて使用してしまうことをいいます。 しかし、「いただけますでしょうか」はクドいのでシンプルに「いただけますか」が使われる事が多いです。
「お時間をいただくことは可能でしょうか」は、「時間をもらうことはできるだろうか」という意味の敬語表現です。 「可能でしょうか」は、「可能」に推量の「だろう」と疑問の終助詞「か」をつけています。 「可能」には「〜そうすることができる」という意味があります。 正しい敬語表現ですが、「可能でしょうか」は上から目線に感じられることがあるためビジネスシーンでは使用を避けるのが無難です。
「お時間をくださいますようお願いいたします」は、「時間をくれるようお願いする」という意味です。 「お時間をくださいますよう」は、「時間」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語で、動作の対象を敬う接頭辞です。 「いたす」は丁重語、「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」の「いたす」も補助動詞なので「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「お時間をいただきますようお願い申し上げます」は「時間をもらうようお願いする」という意味です。 「お時間をいただきますよう」は、「時間」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語の「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「いただきますよう〜」で、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お時間をいただきますよう」と上述した「お時間をくださいますよう」は、言い方が違うだけで意味は同じです。 また、「いただきますよう」は謙譲語、「くださいますよう」は尊敬語、という違いもありますが、謙譲語と尊敬語の敬意の度合いも同じです。 どちらを使っても問題ありませんが、「くださいますよう」が命令形「くれ」の尊敬語を使っているという点で謙譲語の「いただきますよう」のほうが謙虚な響き強いです。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の丁寧の度合いはどちらも同じですが、「お願い申し上げます」の方が意味的に謙虚で、やや丁寧です。 そのため、ビジネスシーンなどでは「お願い申し上げます」が使われる傾向があります。