「お教えいただきたく存じます」は「教えてもらいたいと思う」という意味の敬語表現です。ビジネスシーンで相手に何かを教えてほしいときに使います。今回は「お教えいただきたく存じます」の意味や敬語、敬語の言い換え表現などを解説します。
「お教え」は「おおしえ」と読みます。 「お教え」の意味は「相手が知らない知識・技術・教訓など告げ知らせる」です。 「教え」についている「お」は尊敬を表す接頭辞です。 接頭辞「お(ご)」は、尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。 この場合は、相手の動作を高めて敬意を示すためにつけているので、尊敬語です。
「いただきたく」は、「してもらいたい」という意味です。 「いただきたく」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に願望を表す助動詞「たい」をつけた敬語表現です。 「お教えいただきたく」で、「教えてもらいたく」という意味になります。 「いただく」は漢字で「頂く」と書きますが、「頂く」と漢字で表記するのは「食べる」「飲む」という意味で使う場合と、「(物などを)もらう」の本動詞の謙譲語として使う場合です。 「いただきたく存じます」の場合の「いただく」は補助動詞なので平仮名で書くのが正しいです。
「存じます」は、「ぞんじます」と読みます。 「存じます」の意味は「思う」です。 「存ずる」は、「思う」の丁重語です。 丁重語とは、謙譲語Ⅱともいわれ、へりくだることで相手に敬意を示すという点で通常の謙譲語と同じですが、動作の対象ではなく聞き手・読み手に敬意を示す敬語です。 「存じます」の「ます」は、丁寧語です。 したがって「お教えいただきたく存じます」で「教えてもらいたく思う」という意味になります。
「お教えいただきたく存じます」は、ビジネスメールで何かを教えてほしいと依頼するときに使います。 例えば、上司に資料の作成方法を教えてほしいとお願いをするときなどです。 また、取引先の相手に予定を聞くときなどにも使います。 依頼をするときは、
などのクッション言葉と併せて使うとより丁寧になります。 クッション言葉とは相手に何かを依頼したり、お断りをする場合などに言葉の前に添えて使用する言葉のことです。ビジネスシーンでは様々な状況で使われます。 クッション言葉を使うことで直接的な表現をさせることができ、丁寧で柔らかい印象を与えることができます。 文中で使うことが多いですが、「お教えいただきたく存じます。よろしくお願いいたします」などの形で文末に使うこともできます。
【件名】 弊社製品に関する説明の日程に関して 【本文】 タチツテト株式会社営業部 三ツ谷様 いつもお世話になっております。 株式会社マミムメモ物産 営業部の麗日です。 先日お問い合わせいただきました弊社製品の取り扱いについて、ご要望いただいた通り、私どもから直接ご説明させていただきたく存じます。 私が担当者に同行し、2名で貴社へ伺います。 9月8日(水)11:00〜12:00 9月10日(木)14:00〜15:00 9月15日(水)14:00〜15:00 上記日程で、ご都合の良い日程をお教えいただきたく存じます。 差し障りがございましたら、お手数ですがご都合の良い日程をご提示くださいませ。 よろしくお願い申し上げます。 麗日
【件名】 商品値引についてのご相談 【本文】 林部長 お疲れ様です。営業部の遠藤です。 取引先である株式会社ABC様より、商品の値引きについての交渉がありました。 株式会社ABC様は、10%の値引きを希望されております。 承諾すれば月間の注文数を増やすというお話もいただいております。 このような場合、どうすれば良いのか先方への対応についてお教えいただきたく存じます。 お忙しい中ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます。 遠藤
【件名】 データ分析のご依頼 【本文】 静岡研究所 峯田涼子様 お世話になっております。 株式会社あいうえお開発部の竹本です。 先日お話させていただきました通り、気温変化についての実験結果をデータ資料にまとめましたので、添付いたします。 本件について何かお気づきの点がありましたら、お教えいただきたく存じます。 お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。 竹本
【件名】 貴社製品に関するお問い合わせ 【本文】 あいうえお株式会社 営業部 高田様 突然のご連絡失礼いたします。 株式会社かきくけこの丸山と申します。 この度貴社のカタログを拝見しご連絡いたしました。 貴社製品「△△△」の購入を社内で検討しております。 つきましては、使用方法など詳しくお教えいただきたく存じます。 お手すきの際にご連絡いただければ幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます。 丸山
「お教えいただきたく存じます」と似た敬語表現に「お教えいただければと存じます」があります。 「いただきたく存じます」は、上述したように「もらう」の謙譲語「いただく」に、「思う」の丁重語「存じる」と丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければと存じます」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「れば」と接続助詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただければ〜」は、「〜してもらえたら嬉しい・ありがたい」という願望を表す丁寧な言い回し です。 「お教えいただきたく存じます」と「お教えいただければと存じます」は、どちらも謙譲語、丁重語、丁寧語を使用した敬語表現であり丁寧の度合いは同じですが、「いただければと存じます」のほうが仮定のニュアンスが強く謙虚な響きがあります。
「お教えいただきたく存じます」は、「お教えいただけたらと存じます」ということもできます。 「いただけたらと存じます」は、「もらう」の謙譲語「いただく」に仮定を表す「たら」と接続詞「と」、「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「いただけたらと存じます」で、「してもらえたらと思う」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 「お教えいただきたく存じます」と「お教えいただけたらと存じます」は、どちらも謙譲語、丁重語、丁寧語を使った敬語表現なので丁寧の度合は同じですが、「いただけたらと存じます」の方が仮定の意が強く控えめな響きがやや大きいです。
「お教えいただきたく存じます」は、「お教えいただきたく思います」ということもできます。 「存ずる」は、「思う」の丁重語なので「お教えいただきたく思います」としても意味は同じです。 しかし、「思います」は「思う」に「ます」をつけた丁寧語です。 丁寧語は、文末につけることで文章全体を丁寧にするためにつける敬語であり、相手に対して敬意を示すことはできません。 よって、「お教えいただきたく思います」よりも丁重語と丁寧語を使っている「お教えいただきたく存じます」のほうが丁寧です。
「お教えください」は、「教える」に尊敬語を表す接頭辞「お」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 正しい敬語表現ですが命令文なのでやや上から目線で、目下の人や同等の立場の人に対して使うのは問題ありませんが、親しくない上司や社外の人に対して使うのは避けた方がよいでしょう。 「お教えくださいませ」とすると柔らかいニュアンスになります。 「くださいませ」は、「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「お教えいただけますか」は、「教える」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「お教えください」では丁寧さに欠けますが、「教えてらえますか」と疑問形にすることで、柔らかい依頼の表現になります。 「お教えいただくことは可能でしょうか」という敬語表現もあります。 「お教えいただくことは可能でしょうか」は、「教えてもらうことはできるだろうか?」と可否を確認する表現で、依頼をするときに使用される正しい敬語表現です。 しかし、やや強意的であるためビジネスシーンでは使用を避ける人もいます。
「お教え願います」は、「教える」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「願う」に丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「お教え願います」も正しい敬語表現ではありますが、「願います」が「願う」という言葉の丁寧語であるという点で、目上の人に使用するには不適切です。 目下の人間や自分と同等の立場の人に使用するのであれば問題ありませんが、目上の人や社外の人に使用する場合は、「お願いいたします」などより丁寧な敬語表現を使用しましょう。
「お教えいただけると幸いです」は、「教える」に尊敬を表す接頭辞「お」と「もらうと」の謙譲語「いただけると」と、「幸い」に丁寧語「です」をつけた敬語表現です。 「幸いです」は、そうしてもらえれると幸せですという気持ちを表します。 よって「お教えいただけると幸いです」は、「教えてもらえると嬉しい」という意味の丁寧な表現になります。 「お教えいただけますと幸いです」としても意味は同じですが、より丁寧になります。 「いただけますと」は、「もらう」の謙譲語「いただく」にさらに丁寧語「ます」をつけた丁寧な敬語表現です。 さらに「お教えいただければ幸いです」とすると仮定のニュアンスが加わり柔らかい表現になります。 「いただければ〜」の「れば」は仮定を表し、「してもらえれば嬉しい」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 また、「幸いです」は「幸甚です(こうじんです)」とすることもできます。 「幸甚」は、この上なく嬉しい気持ちやありがたく思っている気持ちを表すかしこまった表現です。
「お教えくださいますようお願いいたします」は、「教えてくれるようお願いする」という意味です。 「お教えくださいますよう」は、「教える」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語で、動作の対象を敬う接頭辞です。 「いたす」は丁重語、「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」の「いたす」も補助動詞なので「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「お教えいただきますようお願い申し上げます」は「教えてもらうようお願いする」という意味です。 「お教えいただきますよう」は、「教える」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語の「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「いただきますよう〜」で、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の丁寧の度合いはどちらも同じですが、「お願い申し上げます」の方が意味的に謙虚で、やや丁寧です。 そのため、ビジネスシーンなどでは「お願い申し上げます」が使われる傾向があります。
「ご教示」は、「ごきょうじ」と読みます。 「ご教示ください」は「教示」尊敬を表す接頭辞「ご」をつけた言葉です。 「教示」は「知識や方法などを教え示すこと」を意味しています。 例えば、ビジネスシーンなどのかしこまった場面で、やり方がわからないというときに質問したり、対処の方法について尋ねる場合など「知識や方法などを教えてください」という意味で使われます。 また、「ご教示」は「指示を仰ぎたい」というようなアドバイスを求める場合にも使えます。
「ご教授」は、「ごきょうじゅ」と読みます。 「ご教授」は、「教授」に尊敬を表す接頭辞の「ご」をつけた言葉です。 「教授」の意味は、「学術、技芸などを教えること。養護、訓練とならぶ教育上の基本的な活動、作用」です。 「ご教授」は、「教え授ける」という漢字からできている通り、「指し示す」という意味の「教える」ではなく、「専門的な知識や技術を教え授けてください」というような意味で使用されます。 専門的な知識や技術をある程度の期間、継続的に教えてほしい場合に使います。
「ご指南」は「ごしなん」と読みます。 「ご指南」は、「指南」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけた言葉です。 「指南」の意味は「教えること。教え示すこと」です。 「指南」はただ「教える」ということではなく、剣道や華道などといった武術や芸能を教え示すことを意味しています。 使用できる場面が限られているので注意しましょう。
「ご指導ご鞭撻」は「ごしどうごべんたつ」と読みます。 「ご指導ご鞭撻」の意味は、目上の相手からの自分に対する教育や指導のことを敬っていう表現です。 「ご指導」も「ご鞭撻」のどちらも、「ご指導お願い申し上げます」や「ご鞭撻の程、よろしくお願いします」のように、単独でも用いられていますが「ご指導ご鞭撻」と合わせて用いられることが多いです。 ただし、「ご指導ご鞭撻」は挨拶やスピーチの「結びの言葉」「締めの言葉」として使う言葉なので必ずしも「お教しえ」と言い換えられるわけではないので注意しましょう。