「お立ち寄りいただけますか」は「立ち寄ってもらえるだろうか」という意味の敬語表現です。今回は「お立ち寄りいただけますか」の意味や敬語、使い方、敬語の言い換え表現などを解説します。
「お立ち寄りいただけますか」は「おたちよりいただけますか」と読みます。 「お立ち寄りいただけますか」の意味は「立ち寄ってもらえるか」です。 「立ち寄る」には「目的地に行く途中で、ついでに訪れる」という意味があります。 「いただけますか」の意味は「~してもらえるか」です。
「お立ち寄りいただけますか」は、品詞分解すると「お」+「立ち寄る」+「いただく」+「ます」+「か」となります。 「立ち寄る」についている「お」は尊敬を表す接頭辞です。 接頭辞の「お(ご)」は、尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。 この場合は、相手の動作を高めて敬意を示すためにつけているので尊敬語です。 「いただく」は本動詞の場合は「もらう」、補助動詞の場合は「~してもらう」という意味の謙譲語です。 この場合は補助動詞として使われています。 自分の動作をへりくだり、相手に敬意を示します。 「お(ご)~いただく」で一つの謙譲語として解釈する場合もあります。 「ます」は丁寧語です。 「か」は疑問を表す終助詞です。 よって「お立ち寄りいただけますか」は、尊敬語+謙譲語+丁寧語の正しい敬語表現です。 上司や取引先相手など目上の人に使うことができます。
「お立ち寄りいただけますか」は自分の引っ越しや、新しいお店のオープン、自社の移転などを知らせる場面や、誰でも参加可能なカジュアルなイベント開催を知らせる場面で「他に用事があって忙しいと思いますが、合間をぬって来てください」という依頼のニュアンスで使います。 その人が自分の場所に来てもらうことが主目的の時は使うことができないため、「訪問ください」との言い換えは不可です。 例えば「会議にお立ち寄りいただけますか」などの使い方はできません。 「お立ち寄りいただけますか」は主に口頭や電話で使います。 ビジネスメールなど文章で使う場合は「お立ち寄りいただきますようお願い申し上げます」など、より丁寧な敬語表現に言い換えることが多いです。
例文
「お立ち寄りいただけますでしょうか」は、品詞分解すると「お」+「立ち寄る」+「いただく」+「ます」+「でしょう」+「か」となります。 「立ち寄る」についている接頭辞「お」は尊敬語です。 「いただく」は「もらう」の謙譲語です。 「ます」は丁寧語です。 「でしょう」は推量の「だろう」の丁寧語です。 「か」は疑問の終助詞です。 「お立ち寄りいただけますか」に、推量の「だろう」の丁寧語「でしょう」をつけることで、より謙虚で丁寧な依頼表現になります。 「お立ち寄りいただけますでしょうか」を二重敬語だと思う人も多いですが、正しい敬語表現です。 二重敬語とは、一つの言葉に対して同じ種類の敬語を使ってしまう事をいいます。 「お立ち寄りいただけますでしょうか」に使われている「ます」と「でしょう」は、どちらも丁寧語ですが、「ます」は「いただく」を丁寧にするために使われていて、「でしょう」は「だろう」を丁寧にするために使われています。 よってこの場合は、かかっている語が違うため二重敬語にはなりません。
「お立ち寄りいただけますか」の似た敬語表現には「お立ち寄りくださいますか」もあります。 「いただけますか」は、上述したように「もらえるか」という意味で、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と、疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「くださいますか」は、「くれるか」という意味で、「くれ」の尊敬語「ください」に丁寧語「ます」と疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 まず「いただけますか」は謙譲語であり、「くださいますか」は尊敬語であるという違いがありますが、謙譲語と尊敬語に敬意の度合いの違いはありません。 自分の動作に対してなら謙譲語を、相手の動作に対してなら尊敬語を使います。 また、「いただけますか」は「もらえるか」、「くださいますか」は「くれるか」という意味の違いもありますが、これもどちらが丁寧ということはありません。 しかし、「くださいますか」が「くれ」の尊敬語を使用した命令形であるため「いただけますか」の方が丁寧な響きがあります。 ちなみに、こちらも「お立ち寄りくださいますでしょうか」とすることもできます。
「お立ち寄りください」は、「立ち寄る」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 正しい敬語表現ですが命令文であり、やや上から目線なので親しくない上司や社外の人に対して使うのは避けた方がよいでしょう。 「お立ち寄りくださいませ」とすると柔らかいニュアンスになります。 「くださいませ」は、「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「お立ち寄り願います」は、「立ち寄る」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「願う」に丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「お立ち寄り願います」も正しい敬語表現ではありますが、「願います」が「願う」という言葉の丁寧語であるという点で丁寧さに欠ける(謙虚な態度が感じられない)表現であるため、親しくない上司や社外の人に対して使うは避けた方が無難です。 上司や社外の人に使用する場合は、「お願いいたします」などより丁寧な敬語表現を使用しましょう。
「お立ち寄りいただきたく存じます」は、「立ち寄る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「お立ち寄りいただきたく存じます」で、「立ち寄ってもらいたいと思う」と柔らかくお願いをする表現になります。 「お立ち寄りいただければと存じます」とするとより丁寧です。 「いただければ」は、「してもらえたら〜」という仮定の表現で願望を表す丁寧な言い回しです。
「お立ち寄りくださいますようお願いいたします」は、「立ち寄ってくれるようお願いする」という意味です。 「立ち寄ってくださいますよう」は、「立ち寄る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語で、動作の対象を敬う接頭辞です。 「いたす」は丁重語、「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」の「いたす」も補助動詞なので「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「お立ち寄りいただきますようお願い申し上げます」は「立ち寄ってもらうようお願いする」という意味です。 「お立ち寄りいただきますよう」は、「立ち寄る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語の「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「いただきますよう〜」で、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の丁寧の度合いはどちらも同じですが、「お願い申し上げます」の方が意味的に謙虚で、やや丁寧です。 そのため、ビジネスシーンなどでは「お願い申し上げます」が使われる傾向があります。
「来る」の意味は「ある場所からこちらに近づくように動く」です。 「来てください」などと使うことができますが、丁寧さに欠けます。 目上の相手やビジネスシーンなどのかしこまった場面では「お立ち寄り」や「お越し」を使うことが多いです。
「お越しになる」は「来る」「行く」の尊敬語です。 相手が自分の元へ訪れてくれることを表すときに使い、「お立ち寄り」と言い換えることができます。 「おいでになる」よりも敬意の度合いが高いです。
「おいでになる」は「行く」「来る」「居る」の尊敬語です。 相手が自分の元を訪れることを表すときに「お立ち寄り」と言い換えることができます。