「お立ち寄りさせていただきます」は「立ち寄らせてもらう」という意味の敬語表現です。敬語の使い方としては正しいですが、意味的に目上の人に使うと失礼なので注意が必要です。今回は「お立ち寄りさせていただきます」の意味や正しい言い換え表現などを解説します。
「立ち寄る」は「たちよる」と読みます。 「立ち寄る」の意味は「目的地に行く途中で、ついでに訪れる」です。 よって「立ち寄る」という自分の動作を相手に対して使うと、相手を訪れることが主目的ではなく、ついでに訪れると伝えることになってしまうので失礼です。 目上の人を訪れるときは「訪問」などを使って、主目的として訪れることを伝えます。 正しい言い換え表現は後述します。
「させていただく」は「させてもらう」という意味です。 「させていただく」を使用する場合は、
の2つの条件が必要です。 「お立ち寄りさせていただきます」の場合は、相手に許可を得て訪れる必要があるので正しい使い方です。
「お立ち寄りさせていただきます」は品詞分解すると「お」+「立ち寄る」+「させていただく」+「ます」となります。 「立ち寄る」についている「お」は尊敬を表す接頭辞です。 接頭辞「お(ご)」は、尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。 この場合は自分の動作をへりくだり、相手に敬意を示すためにつけているので謙譲語です。 「させていただく」は「させてもらう」という意味の謙譲語です。 「ます」は丁寧語です。 「お立ち寄りさせていただきます」は、接頭辞「お」と「させていただく」の二つの謙譲語を使用していますが二重敬語ではありません。 二重敬語とは、一つの語に同じ種類の敬語を二つ以上重ねて使用してしまうことをいいます。 「お立ち寄りさせていただきます」に使われている謙譲語の接頭辞「お」は、「立ち寄る」を丁寧にするためにつけていて「させていただく」は、「させてもらう」を謙譲語にしています。 この場合はかかっている語が違うため二重敬語ではなく正しい敬語表現です。 したがって、「お立ち寄りさせていただきます」は正しい敬語表現ですが、意味的に目上の人に使うことはできないということになります。
「ご訪問させていただきます」は「訪問させてもらう」という意味です。 「訪問」の意味は「人を訪ねること」です。 「ご訪問させていただきます」は品詞分解すると「ご」+「訪問」+「させていただく」+「ます」となります。 「訪問」についている「ご」は謙譲語の接頭辞です。 「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語です。 「ます」は丁寧語です。 したがって、「ご訪問させていただきます」は謙譲語+謙譲語+丁寧語の正しい敬語表現です。 「ご訪問させていただきます」も、謙譲語を二つ使用していますが、かかっている語が違うので二重敬語にはなりません。 接頭辞「ご」をとって「訪問させていただきます」とすることもできます。
「伺わせていただきます」は「訪問させてもらう」という意味です。 「伺う」は「訪れる」の謙譲語です。 「伺わせていただきます」は品詞分解すると「伺う」+「させてただく」+「ます」となります。 「伺う」は謙譲語です。 「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語です。 「ます」は丁寧語です。 「伺わせていただきます」も謙譲語を二つ使用していますが、かかっている語が違うので二重敬語ではなく正しい敬語表現です。 ちなみに「お伺いさせていただきます」は、誤りです。 「お伺い」についている「お」は自分の動作に対して使っているので謙譲語です。 「伺う」がすでに「訪れる」の謙譲語なので「伺う」に謙譲語の接頭辞をつけると二重敬語になってしまいます。 二重敬語は慇懃無礼(いんぎんぶれい)になるで注意しましょう。
「参らせていただきます」は「行かせてもらいます」という意味です。 「参らせてただきます」は品詞分解すると「参る」+「させていただく」+「ます」となります。 「参る」は「行く」「来る」の丁重語です。 丁重語とは謙譲語Ⅱともいわれ、自分の動作をへりくだることで相手に敬意を示すという点で謙譲語と同じですが、通常の謙譲語とは違い聞き手・読み手に敬意を示す敬語です。 「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語です。 「ます」は丁寧語です。 したがって、「参らせていただきます」は丁重語+謙譲語+丁寧語の正しい敬語表現です。
「行かせていただきます」は、「行かせてもらう」という意味です。 「行く」の意味は「(目的を果たすべく)ある所に向かって進む」です。 「行かせていただきます」は品詞分解すると「行く」+「させていただく」+「ます」となります。 「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語です。 「ます」は丁寧語です。 したがって、「行かせていただきます」は謙譲語+丁寧語の正しい敬語表現です。 目上の人に使うこともできますが、「行く」よりも謙譲語の「伺う」や丁重語の「参る」を使った敬語表現のほうが丁寧です。