「お受け取りいただけますでしょうか」は、「受け取ってもらえるだろうか」という意味の敬語表現です。今回は「お受け取りいただけますでしょうか」の意味や敬語、敬語の言い換え表現などを解説します。
「お受け取りいただけますでしょうか」は「おうけとりいただけますでしょうか」と読みます。 「お受け取りいただけますでしょうか」の意味は「受け取ってもらえるだろうか」です。 「お受け取り」には「手渡されるものなどを手にとって収める」という意味があります。 「いただけますでしょうか」の意味は「~してもらえるだろうか」です。
「お受け取りいただけますでしょうか」を品詞分解すると「お」+「受け取る」+「いただく」+「ます」+「でしょう」+「か」となります。 「受け取る」についている「お」は尊敬を表す接頭辞です。 接頭辞の「お(ご)」は、尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにもなります。 この場合の接頭辞は相手の動作に対して使っているので、尊敬語です。 「いただく」は「もらう」の謙譲語です。 「お(ご)~いただく」で一つの謙譲語として解釈する場合もあります。 「ます」は丁寧語です。 「でしょう」は推量を表す「だろう」の丁寧語です。 「か」は疑問を表す終助詞です。 「お受け取りいただけますでしょうか」を二重敬語だと思う人も多いですが、正しい敬語表現です。 二重敬語とは、一つの言葉に対して同じ種類の敬語を使ってしまう事をいいます。 「お受け取りいただけますでしょうか」に使われている「ます」と「でしょう」は、どちらも丁寧語ですが、「ます」は「いただく」を丁寧にするために使われていて、「でしょう」は「だろう」を丁寧にするために使われています。 よってこの場合は、かかっている語が違うため二重敬語にはなりません。
「お受け取りいただけますでしょうか」は、何かを受け取ってほしいと依頼をするときに、主に口頭や電話で使います。 例えば、書類などを送付したあとに受け取ってほしいと伝えるときなどです。 依頼をするときは、
などのクッション言葉と併せて使うとより丁寧になります。 クッション言葉とは相手に何かを依頼したり、お断りをする場合などに言葉の前に添えて使用する言葉のことです。ビジネスシーンでは様々な状況で使われます。 クッション言葉を使うことで直接的な表現をさせることができ、丁寧で柔らかい印象を与えることができます。 ビジネスメールなど文章で使うときは「お受け取りいただきますようお願い申し上げます」など、より丁寧な敬語表現に言い換えることがほとんどです。 また、ビジネスシーンでは「受け取る」を「ご査収」など、より堅い言葉に言い換えることも多いです。 ちなみに、自分が受け取る場合は「拝受」「受領」などを使います。
例文
「お受け取りいただけますか」も正しい敬語表現です。 「受け取りいただけますか」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語「ます」、疑問の終助詞「か」をつけた正しい敬語表現です。 「お受け取りいただけますか」と「お受け取りいただけますでしょうか」の丁寧の度合いは同じですが、婉曲表現の「だろう」の丁寧語「でしょう」を使っている「お受け取りいただけますでしょうか」のほうが、控えめで謙虚な響きがあります。 しかし「お受け取りいただけますでしょうか」は、くどい印象があるため「お受け取りいただけますか」を使う人が多いです。
「お受け取りいただきますでしょうか」は、間違いです。 「お受け取りいただきますでしょうか」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」の連用形「いただけ」と、丁寧語「ます」、疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 丁寧語「ます」に接続するときは、連用形になる決まりがあるので、「いただきますでしょうか」でも文法上は問題ありません。 しかし、「お受け取りいただきますでしょうか」では、「受け取ってもらうだろうか」という意味になるので仮定のニュアンスがなくなって一方的になってしまいますし、不自然な日本語です。
「お受け取りいただけますでしょうか」の似た敬語表現には「お受け取りくださいますでしょうか」もあります。 「いただけますでしょうか」は、上述したように「もらえるだろうか」という意味で、「もらう」の謙譲語「いただく」に丁寧語「ます」と「だろう」の丁寧語「でしょう」、疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 「くださいますでしょうか」は、「くれるだろうか」という意味で、「くれ」の尊敬語「ください」に丁寧語「ます」と「だろう」の丁寧語「でしょう」、疑問の終助詞「か」をつけた敬語表現です。 まず「いただけますでしょうか」は謙譲語であり、「くださいますでしょうか」は尊敬語であるという違いがありますが、謙譲語と尊敬語に敬意の度合いの違いはありません。 自分の動作に対してなら謙譲語を、相手の動作に対してなら尊敬語を使います。 また、「いただけますでしょうか」は「もらえるだろうか」、「くださいますでしょうか」は「くれるだろうか」という意味の違いもありますが、これもどちらが丁寧ということはありません。 しかし、「くださいますでしょうか」が「くれ」の尊敬語を使用した命令形であるため「いただけますでしょうか」の方が丁寧な響きがあります。 ちなみに、こちらもシンプルに「お受け取りくださいますか」としても問題ありません。
「お受け取りいただけましたでしょうか」とすると、過去形になります。 「お受け取りいただけましたでしょうか」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけた「お受け取り」に、「もらう」の謙譲語「いただく」と、丁寧語「ます」の連用形「ませ」、過去を表す助動詞「た」、「だろう」の丁寧語「でしょう」、疑問の終助詞「か」をつけています。 例えば、荷物を郵送した後に受け取ってもらえたか確認する場面などで使います。
「お受け取りください」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「くれ」の尊敬語「ください」をつけた敬語表現です。 「お(ご)~ください」の形で、相手に~してほしいと要望・懇願することに対して相手を高めることができます。 正しい敬語表現ですが命令文なのでやや上から目線で、親しくない上司や社外の人に対して使うのは避けた方がよいでしょう。 「お受取りくださいませ」とすると柔らかいニュアンスになります。 「くださいませ」は、「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「お受け取り願います」は、「受けとる」に尊敬を表す接頭辞「お」と、「願う」に丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 「お受け取り願います」も正しい敬語表現ではありますが、「願います」が「願う」という言葉の丁寧語であるという点で丁寧さに欠ける(謙虚な態度が感じられない)表現であるため、親しくない上司や社外の人に対して使うは避けた方が無難です。 上司や社外の人に使用する場合は、「お願いいたします」などより丁寧な敬語表現を使用しましょう。
「お受け取りいただきたく存じます」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と「思う」の丁重語「存ずる」、丁寧語「ます」をつけた敬語表現です。 丁重語とは謙譲語Ⅱともいわれ、自分の動作をへりくだることで相手に敬意を示すという点で謙譲語と同じですが、通常の謙譲語とは異なり、聞き手・読み手に敬意を示敬語です。 「お受け取りいただきたく存じます」で、「受け取ってもらいたいと思います」と柔らかくお願いをする表現になります。 「お受け取りいただければと存じます」とするとより丁寧です。 「いただければ」は、上述した通り「してもらえたら〜」という仮定の表現で願望を表す丁寧な言い回しです。
「お受け取りいただけると幸いです」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」と「もらうと」の謙譲語「いただけると」と、「幸い」に丁寧語「です」をつけた敬語表現です。 「幸いです」は、そうしてもらえれると幸せですという気持ちを表します。 よって「お受け取りいただけると幸いです」は、「受け取ってもらえると嬉しい」という意味の丁寧な表現になります。 「お受け取りいただけますと幸いです」としても意味は同じですが、より丁寧になります。 「いただけますと」は、「もらう」の謙譲語「いただく」にさらに丁寧語「ます」をつけた丁寧な敬語表現です。 「お受け取りいただければ幸いです」とすると仮定のニュアンスが加わり柔らかい表現になります。 「いただければ〜」の「れば」は仮定を表し、「してもらえれば嬉しい」という願望を表す丁寧な言い回しになります。 また、「幸いです」は「幸甚です(こうじんです)」とすることもできます。 「幸甚」は、この上なく嬉しい気持ちやありがたく思っている気持ちを表すかしこまった表現です。
「お受け取りくださいますようお願いいたします」は、「受け取ってくれるようお願いする」という意味です。 「お受け取りくださいますよう」は「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語で、動作の対象を敬う接頭辞です。 「いたす」は丁重語、「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」の「いたす」も補助動詞なので「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「お受け取りいただきますようお願い申し上げます」は「受け取ってもらうようお願いする」という意味です。 「お受け取りいただきますよう」は、「受け取る」に尊敬を表す接頭辞「お」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語の「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「いただきますよう〜」で、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の丁寧の度合いはどちらも同じですが、「お願い申し上げます」の方が意味的に謙虚で、やや丁寧です。 そのため、ビジネスシーンなどでは「お願い申し上げます」が使われる傾向があります。
【件名】 見積書ご送付について 【本文】 株式会社HASEGAWA 営業部 後藤様 お世話になっております。 ○○コーポレーションの尾白結衣です。 この度は、弊社製品のお見積りをご依頼いただき、誠にありがとうございます。 12月12日(月)に弊社営業部の高橋様にお渡しいたしますので、お受け取りいただきたく存じます。 お忙しいところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。 尾白
【件名】 応募書類ご提出の件 【本文】 ABC株式会社 人事部採用担当 江田様 はじめまして。 三角大学経済学部観光経営学科の須藤直子と申します。 この度、貴社の求人を拝見し応募させていただきたく、応募書類をご送付いたします。 お受取りいただけますと幸いです。 送付内容 履歴書:1部 よろしくお願い申し上げます。 〒232-0000 神奈川県○○市○○区4丁目1番地3号 Mansion707号室 045-123-456 須藤直子
【件名】 サンプル品について 【本文】 Gravity株式会社 営業部 上田様 いつもお世話になっております。 株式会社ねじれの斎藤です。 ご連絡いただきました商品サンプルをご郵送いたします。 お手数をおかけしますが、お受け取りいただきますようお願い申し上げます。 何かご不明点があれば、お気軽に斎藤までご連絡ください。 斎藤
「ご査収」は「ごさしゅう」と読みます。 「ご査収」の意味は「物品・書類・金額などをよく調べて受け取ること」です。 また、「同意する、納得する」といった意味も含まれます。 単に「受け取ってほしい」という意味ではなく「しっかり内容を精査してほしい」という意味で使われます。 必ずしも「お受け取り」と言い換えられるわけではないので注意しましょう。 「査収」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。
「ご検収」は「ごけんしゅう」と読みます。 「ご検収」の意味は「納品された品の数量・品質などを確認して受け取ること」です。 注文された品物を納品したときに「商品に間違いがないかご検収ください」などと使います。 「検収」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。
「ご笑納」は「ごしょうのう」と読みます。 「ご笑納」は、贈り物をする際に「つまらない物ですが笑って納めてください」という気持ちを込め用いる語です。 比較的冗談を言い合える相手に対して使う言葉であるため、上司や社外の人に使うと軽々しい印象を与えてしまうことがあります。 「笑納」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。