「律儀」を褒め言葉だと思っていませんか?「律儀」は人を非難する時にも使うって知ってましたか?そこで今回は「律儀」の意味と使い方を例文付きで徹底解説していきます。類語や英語表現もしっかり紹介します。
「律儀」は「りちぎ」と読みます。 「りつぎ」「りっぎ」などと読まないように注意しましょう。
「律儀」の漢字は「律義」と書く場合もあります。 どちらも正しい表記ですが、「律儀」の方が一般的です。 「儀」は「礼法にかなった行い」という意味です。 「義」は「人として行うべき正しい道」です。 どちらも意味が似ているため、「律儀」も「律義」も正しいことが分かります。
「律儀」の意味は「他人との人間関係で恩義や体面などを非常に重んじること」です。 律儀のある人とは、交際する上で守らなければならないことをきっちり守る人を指します。 必ず挨拶をする、お誕生日を毎年忘れず祝う、待ち合わせの時間通りに毎回来る、お願いされた事は実行する、などがそれにあたります。 「律儀」は基本的によい意味で使う言葉です。
「律儀」はもともと仏教用語で、サンスクリット語「saṃvara」の訳語です。 その場合「りつぎ」と読みます。 仏教語「律儀」は「悪を制御する働きのあるもの」を指します。 「悪を防いで善を行うように導く戒律」という意味もあります。 そこから転じて「義理を固く守る」の意味になりました。 また、古語の「律儀」は「元気。壮健である」という意味もありましたが、現在はこの意味では使用しません。
「律儀」は「律儀な◯◯」「律儀に〜する」などの形で使います。 「律儀者(りちぎもの)」とすれば「律儀な人」という意味になります。 「律儀全い(りちぎまたい)」または「律儀全う(りちぎまっとう)」は、文字通り「全く律儀であるさま」を意味します。
「律儀」の例文
「律儀」は「自分の信念に忠実すぎて、融通がきかない」というネガティブな意味合いで使用されることもあります。 この意味の場合、「馬鹿正直」が類語です。 この意味で「律儀な奴」とすると「機転がきかない阿呆。臨機応変に対応できない馬鹿」という意味合いになります。 「律儀一点張り」という表現もあります。 口語表現なら「律儀すぎる」などとすると、明らかにネガティブな意味になります。 「律儀な奴」「律儀者」という表現は、よい意味でも悪い意味でも使用しますので、文脈でニュアンスを判断する必要があります。
ネガティブな意味の「律儀」の例文
「律儀」という言葉を含む慣用句に「律儀者の子沢山」があります。 「りちぎもののこだくさん」とよみます。 「律儀者は品行が正しく、家庭が円満なので、子どもが多い」という意味です。 『江戸いろはかるた』の一つです。 よい意味で使う慣用句ですが、現代において「子供の多さ」を語るのはデリカシーが問題視されかねません。 あまり使わない方がよいでしょう。
「律儀」の完全に同義語なのは「義理堅い」となります。 辞書によっては、「律儀」の意味に「義理堅い」と書いてあります。 どちらも「人間関係において他人への恩義を忘れない」という意味です。
「律儀」の類語には、
などもあります。 これらはすべて同義で、「真心をもっているさま。嘘偽りのないさま」を指します。 日常的に最もよく使われるのは「正直」「誠実」ですね。 「律儀」はこれらの意味を含みますが、これらの類語には「義理を固く守る」までの意味はありません。 「実体(じってい)」は「正直でまじめであるさま」の古い言い方です。 「謹直(きんちょく)」は「つつしみぶかくて正直なこと」を意味し、「生真面目」と同義です。
「謹厳」は「きんげん」と読みます。 「謹厳」とは「非常にまじめで浮ついたことを好まない」という意味です。 「チャラチャラしたことが嫌い」という意味合いが、上記の類語との違いです。 「謹厳実直」という四字熟語もあります。
「真面目」とは「うそやいいかげんなところがなく、真剣であること」という意味です。 「うそがない」という点では「正直」「誠実」などと似ていますが、これらには「真剣である」という意味合いはありません。 「律儀」と「真面目」は「うそがない」という点では共通していますが、微妙に意味が違います。
「謙虚」も「律儀」と意味が似ているようで違います。 「謙虚」は「自分を偉い者だと思わないさま」という意味です。 「謙虚」も「律儀」も人間関係において大切なものですが、意味は異なります。
「律儀」の反対語は「不義理」「恩知らず」です。 どちらも「義理を欠く」という意味です。
「律儀」の対義語には「不真面目」「狡猾」などもあります。 「狡猾」は「こうかつ」と読み、「ずる賢い」という意味です。
「律儀」という日本語に意味的に最も近いのは「dutiful」です。 「dutiful」は「すべきことをすべてやる」という意味の形容詞です。 名詞は「義務」を意味する「duty」です。 「dutifully」で「律儀に」という副詞になります。
Bill is such a dutiful husband that we never quarreled.
ビルは律儀な夫なので、今まで喧嘩したことがない。
My English professor dutifully reads every single page of her students' papers.
私の国語の教授は、生徒の論文を全ページを律儀に読む。
「faithful」も「律儀」と近い意味をもちます。 日本語では「忠実」と訳されますが、「人を裏切らない」という意味です。 名詞「faith」は「信念」「信仰」という意味です。
They are my faithful friends.
彼らは律儀な友人たちである。
「honest」は「正直。誠実」の意味です。 「本当のことを話し、嘘をついたり、盗みをはたらいたりしない」という意味です。 「honest」がこの3つの中では「律儀」の意味に最も遠いです。
He's completely honest.
彼は完全な正直者だ。
いかがでしたか?「律儀」の意味と使い方、類語を例文付きで解説してきました。 「義理」などと聞くと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、これは東アジア特有の儒教を基礎とした考え方です。 しかし語源はインドの古語サンスクリット語からきているのが、なかなか興味深いですよね。