「市井」という言葉をご存知でしょうか。「市井」という言葉はあまりピンとこない方も多いのではありませんか。そもそも読み方がわからないという人もいると思います。日常会話ではほとんどと言っていいほど、使われることは少ないです。使われることがあまりない言葉だからこそ、意味をしっかり知っておきましょう。そこで今回は「市井」の意味や使い方、例文、類語、英語表現について解説していきます。
「市井」は「しせい」と読みます。 「しい」と誤読する人が多いので注意しましょう。 「市井」が名字を指す場合は「いちい」と読みます。 ちなみに市井さんの全国順位は5409位で、全国におよそ1900人いらっしゃいます。
「市井(しせい)」の意味は「人家の集まっているところ」です。 「井」は「井戸」、「市」は「人が集まる場所」を指しています。 昔、中国で井戸すなわち水のある所に、人が集まり市を形成したことが由来です。 「市井」は単に「民家が多く集まった場所」という地理的な意味でも使いますが、より抽象的に「社会」「世の中」という意味でも使います。 ただし「社会」といっても「庶民の社会」「一般人の世界」を指し、上位階級である官僚たちの世界・生活と対比されて使われる言葉です。
上述した通り「市井」はシンプルに「一般社会」という意味で使います。 「社会」の言い換え表現として使うことができます。
「市井」の例文
「市井」は「市井の人」「市井の巨」「市井の徒」などと使います。 「市井の人」は「街にいる普通の人」つまり「庶民」という意味です。 助詞である「の」を省略して「市井人」と表現する場合もあります。 庶民全体を指す場合は「市井の人々」とします。 「一般大衆」と同義語です。 「市井の巨(しせいのしん)」は「市井の人」の同義語で「庶民」の意です。 「臣」は「主君に仕える人」という意味があり、「(城に住む主君とは違い)市中に住んでいる一般庶民」というように為政者ではないことを強調した表現です。 「市井の民(しせいのみん)」でも同義語です。 「市井の徒(しせいのと)」は『旧唐書』が由来の語で、「まちにいるどうしようもない奴」という意味で、「市井の人」とは少しニュアンスが違います。 「無法者」「ごろつき」「ならず者」などが類語です。 その他にも「市井の生まれ」「市井の声」「市井の噂」などとも使います。
「市井の◯◯」の例文
「市井に下る(くだる)」「市井に身を置く」という表現があります。 これらはもともと官僚だった人が庶民になるという意味です。 「下る」という表現から、階級社会においてランクが下がることを意味しています。 「身を置く」も「ある環境や状況に囲まれた状態になる」という意味なので、同じ使い方をします。 「市井に生きる」「市井に暮らす」という表現もあります。 これらは必ずしももともと行政に従事していた人に使うわけではありませんが、一般人として普通の生活をするという意味です。
「市井に◯◯」の例文
「市井に埋もれる」という表現もあります。 「市井に埋もれる」とは「一般社会の中にいて、才能が認められない」という意味です。 「隠れた実力者」を意味する慣用句「埋れ木」と併用して、「市井の埋もれ木」などということもあります。
「市井」の同義語は「巷(ちまた)」です。 「巷」も同じく「大勢の人々が生活している所」という意味です。 「ちまたの声に耳を傾けてみる」などと使い、使い方も同じです。 「市井」の類語には他にも「町/街」「集落」「公の場」「世の中」「社会」などがあります。
「市井の人」の言い換えは「一般人」「万人」「庶民」「大衆」などが当てはまります。 特別な地位や莫大な財産などのない世間一般の人々を指す言葉はすべて類語になります。 世の中の9割を占めるのは「市井の人」です。
「市井」は英語で「town」「city」「village」「street」「community」などといいます。 「市井の人」は「ordinary people」「regular people」「common citizen」「common men」などといいます。 集合的に「general public」ということもできます。
She passed her life as an ordinary citizen.
彼女は市井の人として生涯を閉じた。
「市井の声」なら「what people say」「the voice of the people」などとなります。
Politicians must listen carefully to the voice of the people.
政治家は市井の声に耳を傾けなくてはならない。
I don't care what people say.
市井で言われていることなんて私は気にしない。
「市井の噂では」の英語は、あえて「市井」の部分を英訳する必要ありません。 「Rumor has it that...」で「噂によると」という意味です。 「it」は「それ」という意味ではなく、「that」以降の内容を指しています。