「総花的(そうばなてき)」の意味は「すべての関係者にまんべんなく利益・恩恵を与えること」です。関係者全員の機嫌を取るため、というネガティブな意味合いがあります。「総花」とは元々すべての店員に配る祝儀のことを指します。
「総花的」は「そうばなてき」と読みます。 「総」は音読みで「ソウ」、「花」は訓読みで「はな」、「的」は音読みで「テキ」と読みます。 「そうかてき」と読まないように注意してください。
「総花的」の意味は「すべての関係者にまんべんなく利益・恩恵を与えること」です。 しかし「総花的」には、
という2つのネガティブな意味が含まれており、基本的には非難する時に使います。 現代ではこの意識が薄れ必ずしも非難するときに使うとは限りませんが、自分が他人に対して使う場合はニュアンスに注意しましょう。
「総花」とは「料亭や茶屋で客がその店の従業員すべてに与える祝儀」のことです。 料亭や茶屋などで、その家の総員に花(祝儀)をやることは、客にとっては見栄ないし示威厳行為でした。「総花」は、一種の習慣儀礼で総花を出す時機や金額は各場所で決められていて、総花を受けた側は客の名を掲示したり、客の元へ挨拶に出向くなどして返礼をしました。 使用人にいたるまですべての関わる人間に総花を与えていたことから、「全ての関わる人の機嫌をとるためにまんべんなく利益を与える」という意味で「総花的」という言葉が使われるようになりました。 語源がお金を指すことから、「総花的」という言葉は特に予算の配分を非難する時に使用されます。
「総花的」は「総花的な」「総花的に」という使い方をします。 例えば、「総花的な経営」という言い方があります。 これは、すべての関係者にまんべんなく利益・恩恵を与える、つまり予算配分が平等で集中と選択が実行できていない経営を指します。 また、「あれもこれもと全体に分散し具体性に欠けている」というニュアンスで、「総花的な計画」「総花的な話」といったりもします。 上述したように、非難をする意味で使用される場合が多いですが、必ずしもネガティブな意味で使用しているとは限らないので文脈で判断する必要があります。
例文
「総花」は「総花的」という形だけではなく、「総花式」「総花主義」「総花政策」という形で使うこともできます。 ビジネスでは、例えば「総花式な予算配分」というような使い方をします。 「総花式の予算配分」とは、平等に予算を配分するという意味です。 「総花主義」は、関わる人にまんべんなく利益・恩恵を与えるという主義を持っていることです。また、「誰にでも良い顔をする」という意味で使用されることもあります。
例文
「八方美人」は、「全員にいい顔をする」という意味での類語になります。 「八方美人」の意味は、「誰からも良く思われようと要領よく振る舞う人」です。 人に合わせてコロコロと意見や態度を変えたり、反対に誰のことも悪く言うことなくとにかく誰にでも良い顔をして自分の味方を多く作っているような人を「八方美人」といいます。 例えば、あの人は「総花的な人だ」を「あの人は八方美人だ」と言い換えることが可能です。 ただし、「八方美人」は良い意味で使用される言葉ではないので注意しましょう。
「網羅的」は、「関係のあるものを残らず集め収められていること」です。 「まんべんなく」という意味で「総花的」を使用すると「全体に分散していて具体性が欠如している」というネガティブな意味になってしまうので、「総花的」を良い意味で使う場合は「網羅的」に言い換えるのがベターです。
「ばらまき」の意味は、
です。 例えば、予算を均等に配る政治を「ばらまき政治」といいます。 意味や使い方としては「総花的」と同義であるといえます。
「手当り次第」は、「手にふれるもの、行き当たるものを区別しないで、何でも行為を及ぶさま」です。 中身が何であろうと全てを網羅していくことを「手当たり次第」といいます。 「総花的」には、「関わるものまんべんなく」という意味があるので「手当たり次第」は類語になります。
「片っ端から」は「かたっぱしから」と読みます。 「片っ端から」は、「かったぱし」に助詞「から」がついた言葉です。 「片っ端から」の意味は、「順序を問わず何でも行為を及ぶさま」です。 端のほうから次々と行為に及んでいくことを「かたっぱしから」といいます。 上述した「手当たり次第」と同義であり、「関わるものまんべんなく」という意味のある「総花的」の類語であるといえます。
「見境なく」の意味は、「物事を見分けたり、善悪・良否を見分けることなく」です。 相手を選ばずに物事行うことを「見境なく」といいます。 「分別がつかない」という悪い意味で使用される言葉です。 「満遍(まんべん)なく」 だと「行き渡らないところがない」「すべてにわたって」という良い意味での類語になります。 「遺漏(いろう)なく」は、「必要なところを漏らすことなく」「ぬかりなく」という意味です。
「選別的」の意味は「ある基準によって、より分けること」という意味です。 例えば「選別的な情報」は、「多くの情報の中からある基準によってわけて選ばれた情報」という意味です。 「総花的」は、選ぶことなくまんべんなく利益や恩恵を与えることなので「選ぶ」という意味のある「選別的」は対義語であると言われます。
「重点的」は「特に重要だと認めるところに力や資材を集中すること」です。 「集中的」は「特定の対象に対して何かが重点的におこなわれる様子」という意味です。 その他にも
など、力を方々に分散することなく重要な一点に集中することを意味する言葉が「総花的」の対義語になります。
「依怙贔屓」は「えこひいき」と読みます。 「依怙贔屓」の意味は「自分の気に入っている者だけの肩をもつこと」です。 「総花」は「すべての関係者にまんべんなく利益・恩恵を与えられる」という意味なので、ある特定の人だけを贔屓にし、不公平であることを言い表す「依怙贔屓」は対義語であるといえます。
「across-the-board」は形容詞で「(社会・組織内で)全ての物・人に及ぶ」という意味で、「総花的」に近いです。 「across-the-board」はポジティブとネガティブのどちらの意味でも使います。 「board」や「every」などの単語を使うだけでも「総花的」という意味を表現することもできます。
The management team has drawn up an across-the-board budget.
経営陣は総花的な予算を組んだ。
Her investment firm invests in almost every type of tech company.
彼女の投資会社は、テクノロジー企業に総花的に投資をする。
批判的に使う場合は「lack of focus(集中が欠如している)」などということができます。 「out of focus」だと「ピントがズレている」という意味になります。
The problem with his way of running a company is lack of focus.
彼の問題は総花的な経営方法だ。
「総花(そうばな)」とは、もともと花柳会や料亭などで客が全ての店員に配る祝儀のことです。 そこから転じて「総花的」で「すべての関係者にまんべんなく利益・恩恵を与えること」を意味します。 会社経営などに対して使い、悪平等・集中の欠如というネガティブな意味合いで使います。