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「取り付く島もない」の意味と由来、誤用、類語、対義語、英語を例文つきで解説

「取り付く島もない(とりつくしまもない)」の意味は「頼ることができない」です。「取り付く島がない」ともいいます。頼み事や相談をしようとした相手に冷たくされてしまったということを言い表すときなどに使用します。「取り付く暇もない」「行き着く暇もない」は誤用なので注意しましょう。

「取り付く島もない」とは

「取り付く島もない」の意味は「頼ることができない」

「取り付く島もない」の意味は「頼ることができない」です。 頼み事や相談をしようとしても、相手の態度がとげとげしく冷淡で、話を進めるきっかけがつかめない、というニュアンスです。 「取り付く島」は「頼りにするところ」という意味で、多く打ち消し表現を伴って使います。 「取り付く島がある」と肯定文では基本的に使いません。

「取り付く島がない」とも

「取り付く島もない」は「取り付く島ない」ともいいます。 「取り付く島もない」の「も」は、強調を意味する副助詞です。 「取り付く島がない」の「が」は、格助詞で、この場合は下に存在や所有を意味する表現を伴って「存在するもの」を表しています。 どちらでも意味は同じです。 ちなみに漢字を「鳥つく島もない」とするのは誤りなので注意しましょう。

「取り付く島もない」の由来は航海

「取り付く島もない」は航海が由来です。 船に乗る人にとって、航海に出たときの休息をするための立ち寄れる島がないというのは非常に困ることです。 航海に出てもっとも頼れる場所が「島」だったということから、「頼れることができない」という意味で「取り付く島がない」というようになりました。 昔は「頼る島もない」の形でも使用されていました。

「取り付く島もない」の使い方と例文

相談や依頼をして相手にされない時に使う

「取り付く島もない」は、頼み事や相談をしようとした相手に冷たくされてしまったということを言い表すときなどに使用します。 例えば、両親にお金を貸してほしいと頼もうとしたのに話も聞いてくれない状態だったということを「取り付く島もなかった」などといいます。

「取り付く島もない」の例文

  • 彼女は私にけんもほろろで取り付く島もなかった。
  • 父親は最近更年期のせいか機嫌が悪く、まったく取り付く島もない。
  • 借金の相談に行ったが、取り付く島もない返事だった。
  • 取り付く島もない態度をとられて話す気がなくなってしまった。
  • 取り付く島もない人を説得するのは気力がいる。

「取り付く暇もない」は誤用

「取り付く暇もない」は間違いです。 「人にすがりつくわずかな時間もない」という意味で「取り付く暇もない」と誤用している人が多いです。 「取り付く」は「しっかりつかまる」という意味なので、取り付く対象は「暇」ではなく、「島」=「頼れるところ」です。 東京方言で「し」と「ひ」の混同して「取り付く暇もない」と誤用しているという説もありますが、単に「島」と「暇」を混同しているだけとみるのが一般的です。

「行き着く島もない」ではなく「息つく暇もない」

「行く着く島もない」もよくある誤用です。 「行き着く島もない」でも「頼れるところがない」という意味になりそうですが、「行き着く島もない」という慣用句はありません。 これは「息つく暇もない」と混同していると思われます。 「息つく暇もない」は「息をする時間もないほど忙しい」という意味の慣用句です。

「取り付く島もない」の類語

けんもほろろ

「けんもほろろ」の意味は「冷淡で取り付く島もないさま」です。 無愛想に人の相談などを拒絶する様子をいいあらわす言葉です。 「けん」も「ほろろ」もキジの鳴き声のことです。 キジの鳴き声が無愛想に聞こえるため、「けんもほろろ」と喩えて言われるようになったといわれています。 「剣もほろろ」や「けんもほろほろ」は誤用です。 「けんもほろろ」は「取り付く島もない」の類語ですが、「けんもほろろで取り付く島もない」というようによく一緒に使われます。

にべもない

「にべもない」の意味は「愛想がなくそっけない」です。 言葉に心がこもっていなかったり、相手に対して思いやりやあたたかさがなく、とりつきようがない様子を言い表した慣用句です。 「にべ」は、「人間関係を保とする粘り気」という意味で、「ない」は否定です。 例えば、何かに相手を誘ったときに冷たく断られたということ「にべもなく断られる」などと言い表すことが可能です。

木で鼻を括る

「木で鼻を括る」は「きではなをくくる」と読みます。 「木で鼻を括る」の意味は「無愛想にふるまう」です。 冷淡に人をあしらうことをいいます。 「木で鼻をくくる」は「木で鼻をこくる」ともいいます。 元々は「こくる」で、「くくる」と誤用されていたのが慣用化されて「木で鼻をくくる」といわれるようになりました。 「こくる」は「こする」という意味です。 つまり「木で鼻をこくる」は、「木で鼻をこする」という意味になります。 ティッシュが存在しなかった時代では、鼻水が出たときに木で鼻をかんでいて、これが心地よくなかったために「木で鼻をこくる」=「不愉快な気持ちになる対応」という意味で使用されるようになりました。

洟も引っ掛けない

「洟も引っ掛けない」は「はなもひっかけない」と読みます。 「洟も引っ掛けない」の意味は「相手を完全に無視する」です。 「洟」は「鼻水」のことです。 「洟も引っ掛けない」で、存在すら認めないという状態を言い表す慣用句になります。

歯牙にもかけない

「歯牙にもかけない」は「しがにもかけない」と読みます。 「歯牙にもかけない」の意味は「無視して問題にしない」です。 あえて相手にしないことを強調していう慣用句です。 「歯牙」は「歯と牙(きば)」のことで、転じて発声器官である口を指します。 取るに足りないこととして口に出して言わないことを「歯牙にもかけない」といいます。 「歯牙にかけるに足りない」ともいいます。 「歯牙にかける」は誤りです。

つっけんどんな○○

「つっけんどんな」の意味は「態度や言葉遣いが冷淡であること」です。 相手に敵意を抱いているのかと思われるほど、言動が冷淡であったりぶっきらぼうであることを言い表します。 「つっけんどんな○○」という使い方をします。 例えば、「つっけんどんな返事」「つっけんどんな対応」「つっけんどんな応対」「つっけんどんな態度」などといいます。

四字熟語の類語は「木鼻答弁」「他人行儀」

木鼻答弁

「木鼻答弁」は「きはなとうべん」と読みます。 「木鼻答弁」の意味は「相手を小馬鹿にして質問に答えること」です。 「答弁」には「質問に答えて弁明する」という意味があります。 相手に対して嫌な態度を取るという意味で「取り付く島もない」の類語です。

他人行儀

「他人行儀」は「たにんぎょうぎ」と読みます。 「他人行儀」の意味は「よそよそしく振る舞うこと」です。 「他人」は「身内のように親しくしてない人」、「行儀」は立ち居振舞です。 親しい人に対して、そうでない人に対する時のように、よそよそしい態度や行動をとることを言い表す四字熟語です。

「取り付く島もない」の対義語

如才ない

「如才ない」は「じょさいない」と読みます。 「如才ない」の意味は「愛想がよくて人をそらさないさま」です。 相手の気持ち・立場などを敏感に察し、相手に好意をいだかせる対応ができる様子をいいあらわします。

摩頂放踵

「摩頂放踵」は「まちょうほうしょう」と読みます。 「摩頂放踵」の意味は「自分を犠牲にして、他人に尽くすこと」です。 頭の先からかかとまでへり減らすほど、他人のために努力することを言い表す四字熟語です。 「魔」は「すり減らす」、「頂」は「頭」、「放」は「いたる。届く」、「踵」は「かかと」という意味です。

「取り付く島もない」の英語

never pay attention to

「取り付く島もない」の英語には「never pay attention to」があります。 「never pay attention to...」は「...に全く注意を払わない」という意味です。

I tried to talk to her, but she never paid attention to me.

彼女に相談しようとしたが、取り付く島もなかった。

never give her the time of day

「never give 人 the time of day」という慣用句があります。 「not give the time of day」は「不親切で口すらきかない」という意味です。

I discussed with Ann, but she won't give me the time of day.

アンと話し合ったが今では取り付く島もない。

「島」を含む慣用句

鹿島立ち

「鹿島立ち」は「かしまだち」と読みます。 「鹿島立ち」の意味は「旅に出ること」です。 鹿島の神に安全を祈って出発したということから、任務を背負って遠い所に旅立つことを言い表す慣用句として使用されるようになりました。

三十振り袖四十島田

「三十振り袖四十島田」は「さんじゅうふりそでしじゅうしまだ」と読みます。 「三十振り袖四十島田」の意味は「若作りをすること」です。 「三十歳になっても振り袖を着る」ということから、いい年をした女性が年齢不相応の若い服装を着たり、化粧をすることを言い表す慣用句として使用されるようになりました。

七尋の島に八尋の船を隠す

「七尋の島に八尋の船を隠す」は「ななひろのしまにやひろのふねをかくす」と読みます。 「七尋の島に八尋の船を隠す」の意味は「何をやっても無駄なこと」です。 「尋」は長さの単位です。 「七尋にしかない島に八尋の船を隠す」ということから、とうてい無理なことでも、なんとか工夫や努力をしてやりおおせようとすることのたとえです。 「七尋の島に八尋の船を繋ぐ」ともいいます。

まとめ

「取り付く島もない(とりつくしまもない)」の意味は「頼ることができない」です。 頼み事や相談をしようとしても、相手の態度がとげとげしく冷淡で、話を進めるきっかけがつかめない、というニュアンスです。 「取り付く暇もない」とよく誤用されるので注意しましょう。

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