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「前門の虎後門の狼」の本来の意味と誤用、語源、類語「四面楚歌」との違い

「前門の虎後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)」の意味は「一つの災いを逃れても、またもう一つの災いが襲ってくること」です。一つの問題を解決したら、他の問題が発生する場面で「まさに前門の虎後門の狼だ」というように使用します。「2つの問題に挟みうちにされる」という意味で使用することも可能です。

「前門の虎後門の狼」とは

読み方は「ぜんもんのとらこうもんのおおかみ」

「前門の虎後門の狼」の読み方は「ぜんもんのとらこうもんのおおかみ」です。 「前」は音読みで「ゼン」、「門」は音読みで「モン」、「虎」は訓読みで「トラ」、「後」は訓読みで「うしろ」、「狼」は訓読みで「おおかみ」と読みます。

意味は「一つの災いを逃れても、またもう一つの災いが襲ってくること」

「前門の虎後門の狼」の意味は「一つの災いを逃れても、またもう一つの災いが襲ってくること」です。 「虎」も「狼」も災いのたとえで、トラブルを解決したと思っていると、再びトラブルが襲いかかってくるという状況を言い表しています。

心理学ではコンフリクトの一種を指す

「前門の虎後門の狼」は、心理学ではコンクリフトの一種を指します。 「コンフリクト」とは「葛藤」のことです。 同定程度の強さの2つの欲求が存在する状態で、その選択をすることはできないためにどちらを取るかを決めかねる状態のことをいいます。 「コンクリフト(葛藤)」には、

  1. 接近=接近の葛藤
  2. (どちらもほしい・近づきたい) 例えば「チーズケーキも好きだけどモンブランも好きだから選べない」という状況。
  3. 回避=回避の葛藤
  4. (どちらも欲しくない・避けたい) 例えば「働きたくないけどお金に困るのも嫌だ」という状況。
  5. 接近=回避の葛藤
  6. (一つの対象に対して近づきたい・避けたいという気持ちが混在している) 例えば「ラーメンは食べたいけど太りたくない」という状況。

という3つの種類があります。 「前門の虎後門の狼」は「コンクリフト」でいう「回避=回避の葛藤」に該当します。

「前門の虎後門の狼」の語源

中国の『評史』「前門の虎を拒ぎ、後門の狼を進む」が由来

「前門の虎後門の狼」は、中国の元代の学者「趙 弼(ちょう ひつ)」の書いた 『評史(ひょうし)』に書かれている「前門の虎を拒ぎ、後門の狼を進む」が由来の故事成語です。 「前門の虎を拒ぎ、後門の狼を進む」は、「前の門から虎が入ってくることを防いだのに、後ろの門から虎が入ってこようとしている」という意味です。 これが語源で、災難が相次いで来ることのたとえとして「前門の虎後門の狼」という言葉が使用されるようになりました。

虎狼の入れ替え「前門の狼後門の虎」は誤用

語源が『評史』なので、虎と狼どちらが先でも言いような気がするが、「前門の狼後門の虎」は誤用です。 「前門の虎を拒(ふせ)ぎ、後門の狼を進む」という言葉に基づいているので、「虎」を先にもってくる必要があります。 「前門の狼後門の虎」としないように注意しましょう。

四字熟語だと「前虎後狼」

「前門の虎後門の狼」は、「前虎後狼」で四字熟語になります。 「前虎後狼」は「ぜんここうろう」よ読みます。 「前虎後狼」としても「前門の虎後門の狼」と意味は同じです。 ただし、上記と同じ理由で「前狼後虎」は誤りなので注意してください。

「前門の虎後門の狼」の使い方と例文

一つの問題を解決したら、他の問題が発生する場面

「前門の虎後門の狼」は、一つの問題を解決したら、他の問題が発生する場面で使用されます。 例えば、ビジネスシーンで納品が遅れてしまって取引先に謝罪をしにいくなどトラブルがやっと解決したと思ったら、突然社員が辞めてしまって人員不足になってしまうという状況に対して使用します。 「まさに前門の虎後門の狼だ」「前門の虎後門の狼とはこのことだ」というように引用する形で使用します。

「前門の虎後門の狼」の例文

  • やっと退院できたと思ったのに職を失うとは、まさに前門の虎後門の狼だ。
  • この状況は前門の虎後門の狼とでもいおうか。
  • 去年の今事は前門の虎後門の狼のピンチに陥っていた。

2つの問題に挟みうちにされるで使うのは誤用でない

「前門の虎後門の狼」はしばしば「挟みうちになる」という意味で使うのは誤用といわれますが、誤用ではありません。 1つ目の問題が解決される前に2つ目の問題が発生する場合つまり挟み撃ちにされる場面で使うのは誤用とはいえません。 2つの問題がほぼ同時に発生している場合に使っても不自然ではないと言えます。 『評史』の話はそもそも「表門で虎を防いでいると裏門から狼が進んでくる」という虎と狼に挟み撃ちにされる話です。 本来は、1つ目の問題が解決される前に2つ目の問題が発生している状態を言い表している言葉であるといえます。

2つの問題に挟みうち意で使用する「前門の虎後門の狼」の例文

  • ぎっくり腰で療養中に風邪をこじらせて入院なんて前門の虎後門の狼だ。
  • 人員が減っている中でクレーム対応に追われまさに前門の虎後門の狼だが、全力を尽くすしかない。

「前門の虎後門の狼」の類語

一難去ってまた一難・虎口を逃れて竜穴に入る

一つの災難を逃れてまた一つくるの意味なら

  • 一難去ってまた一難(いちなんさってまたいちなん)
  • 虎口を逃れて竜穴に入る(ここうをのがれてりゅうけつにいる)
  • 禍去って禍また至る(わざわいさってわざわいまたいたる)
  • 追っ手を防げば搦め手へ回る(おってをふせげばからめてへがまわる)
  • 火を避けて水に陥る(ひをさけてみずにおちいる)

などがあります。

泣きっ面に蜂・踏んだり蹴ったり・弱り目に祟り目・八方塞がり

「同時に災難がくる」という意味なら

  • 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち)
  • 踏んだり蹴ったり(ふんだりけったり)
  • 弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ)
  • 八方塞がり(はっぽうふさがり)

などが類語になります。

四面楚歌は類語でない

「四面楚歌」は「しめんそか」と読みます。 「四面楚歌」の意味は「四方を敵に囲まれて孤立無援であること」です。 助けを求められないことを言い表した四字熟語です。 絶体絶命の状態を言い表すという点で類語だと思われがちですが、「四面楚歌」には、災難が続いたり同時に災難がくるという意味はないので、類語にはなりません。

「前門の虎後門の狼」の英語

A precipice in front, a wolf behind.

「前門の虎後門の狼」の英語に「A precipice in front, a wolf behind.」があります。 「前には崖、後ろには狼」という意味で、「前門の虎後門の狼」と非常に似た言い回しです。

between the devil and the deep blue sea

「between the devil and the deep blue sea」は「前門の虎後門の狼」とは少し意味が違うので注意です。 「between the devil and the deep blue sea」は直訳すると「悪魔と海の間」で、「どちらの選択肢を選ぶべきか迷う」という意味です。 「進退窮まる」というニュアンスです。

Trying to please my wife and mother puts him between the devil and the deep blue sea.

妻を喜ばせることと母を喜ばせることの難しい選択を彼はしなくてはならない。

まとめ

「前門の虎後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)」の意味は「一つの災いを逃れても、またもう一つの災いが襲ってくること」です。 「虎」も「狼」も災いのたとえで、トラブルを解決したと思っていると、再びトラブルが襲いかかってくるという状況を言い表しています。 「前門の虎後門の狼」は、中国の元代の学者「趙 弼(ちょう ひつ)」の書いた 『評史(ひょうし)』に書かれている「前門の虎を拒ぎ、後門の狼を進む」が由来の故事成語です。

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