「当て馬(あてうま)」の意味は「表面に出された仮の者」です。原義は「メス馬にオス馬を近づけて、発情の有無を確認すること」。ビジネスでは分が組織における実権を握っているのにも関わらず、あえて部下を代表取締役におき、自分はその下につくことを「当て馬にする」などといいます。政治や恋愛、スポーツなどでも使用されます。類語は「見せ掛ける」や「おとり」など。
「当て馬」の本来の意味は、「メス馬にオス馬を近づけて、発情の有無を確認すること」です。 また、発情を促すためのオス馬を「当て馬」といい「試情馬」といわれることもあります。 あくまでも発情を確認するための馬であり、実際に交尾をするのは「種馬」と呼ばれる馬です。 「種馬」は、「馬の繁殖・改良のために飼うオス馬」のことです。 正式には「種牡馬(しゅぼば)」といい、レースなどで優秀な成績を残した競走馬が子孫を残すために「種馬」になります。 「当て馬」は「当馬」と表記されることもあります。 どちらで表記しても間違いではありませんが、一般的には「当て馬」と表記されます。
原義から転じて、「当て馬にする」の形「仮の人を表に出す」という意味になりました。 「当て馬」は、「仮に表に出された人」を指します。 この意味の「当て馬(にする)」は、
など複数のニュアンスがあり、場面ごとに使い分ける必要があります。
「かませ犬」は、闘犬用語で「訓練のために噛み付く相手となる犬」のことです。 そこから転じて「主役を引き立てるために、一方的に負ける役目の者」という意味で使用されるようになりました。 例えばプロレスなどの格闘技では、引き立て役として対戦させる弱い相手のことを「かませ犬」といいます。また、漫画やアニメなどでも主役の強さを際立たせるためのやられ役を「かませ犬」ということがあります。 「当て馬」のように「仮の人を表に出す」という意味はありません。
「当て馬」はビジネスでは様々なニュアンスで使われます。 例えば、自分が組織における実権を握っているのにも関わらず、あえて部下を代表にアサインしたりします。 このトップに置かれた人物は「当て馬」です。「◯◯を当て馬にする」などと表現したりします。 組織内で自分の野心を隠したり、社外に存在を知らせないなどの目的があります。 また、あえて自分より仕事のできない人を表に出して、フォローしているところを見せることで自分の評価をあげようとする場合もあります。 この場合、表に出された人が「当て馬」にあたります。 人以外にも使用することができます。 例えば、自社の利益にならなくても競合社の利益を少しでも減らすために製品・サービス取り扱いした場合、これらの製品・サービスが「当て馬」です。
政治の世界では、選挙のときに候補者に選ばれなかった人に立候補をもちかけ当て馬にすることがあります。 もちろん選挙に当選させることを目的としているわけではありません。 相手の勢力を割く目的で、候補者に選ばれなかった人を当て馬にします。 当て馬となる人を「当て馬候補」といい「当て馬候補として選挙戦に挑む」などといいます。
「当て馬」は的屋の隠語で「恋愛の仲介者」という意味もありますが、この意味で日常的に使われることはほとんどありません。 一般的な恋愛での「当て馬」とは、本命を振り向かせるために利用される人のことです。 例えば、好きな人にヤキモチを焼かせるためだけに利用する異性が「当て馬」になります。 BLでいう「当て馬キャラ」は、主人公に思いをよせているのに、主人公と好きな相手の恋愛が成就するようなきっかけを作ってしまうキャラクターのことです。 当て馬キャラにとっては報われない悲しい結末を迎えますが、物語全体としては主人公の恋愛事情を盛り上げるための重要な役割を果たしています。 このように、物語を盛り上げるために主人公に振られてしまう「当て馬」は、恋愛ドラマなどでも欠かさせない存在です。
「当て馬」は、スポーツの世界でも使われます。 例えばプロ野球では、登板予定のない選手をスターティングメンバーに登録し、相手チームのメンバーが正式に発表された後に相手投手と好相性の選手に交代することがあります。 このように、「仮」で出される選手が「当て馬」です。 駅伝でも、あえて走力の劣る選手をエントリーし、当日に補欠として登録している選手と入れ替えるということがあります。 この場合も、仮にエントリーされている選手が「当て馬」になります。 このように、スポーツの世界では対戦相手の様子を伺うために当て馬を使うことがよくあります。
「見せ掛ける」は、「みせかける」と読みます。 「見せ掛ける」の意味は「実際はそうではないのに、うわべだけそう見えるようにする」です。 例えば、実際は強くないのにうわべだけ強そうに見えるようにすることを「見せ掛ける」といいます。 「目眩まし」は、「めくらまし」と読みます。 「目眩まし」の意味は、相手の目を一瞬見えなくさせることです。 また、相手の目を欺くことやその方法を「目眩まし」といいます。
「おとり」の意味は、
です。 「当て馬」には「誘い寄せる」という意味はありませんが、自分以外の人や物を使うという点で類語であるといえます。 「おとり」の同義語には「隠れ蓑(かくれみの)」があります。
「陽動作戦」は「ようどうさくせん」と読みます。 「陽動作戦」の意味は、「真の目的・意図をさとられないように、ことさら別の行動を起こして敵の注意をそらす作戦」です。 「仮の者を出す」という意味はありませんが、敵の判断を誤らせるためにわざとある行動に出るという点で、「当て馬」の類語であるといえます。
「カムフラージュ」の意味は
です。 「本心や本当の姿を知られないように人目をごまかす」という意味で「当て馬」と類語であるといえます。 ちなみに、「カモフラージュ」は誤用です。 「カムフラージュ」が正しい表記です。
「当て馬」の英語は「dummy」です。 日本語でもそのまま「ダミー」といいますよね。 「当て馬候補」は英語で「dummy candidate」です。
「stalking horse」は「隠れみの」という意味です。 「隠れみの」とは「実体を隠すための手段」のことです。 もとは「ハンターが獲物に近づくときに隠れられるよう訓練した馬」を指します。 「stalking horse」の類語には「dodge」があります。
「feeler」は、「感じる」を意味する「feel」に「er」を付いたもので、「(虫の)触角」を意味します。 「put out feelers」で「探りを入れる」という意味です。
「当て馬」の原義は「メス馬にオス馬を近づけて、発情の有無を確認すること」。 転じて「表面に出された仮の者」という意味で使用されている言葉です。 ビジネスでの「当て馬」は、例えば自分が組織における実権を握っているのにも関わらず、あえて部下を代表取締役におき、自分はその下につくこと。 政治の世界では、選挙のときに候補者に選ばれなかった人に立候補をもちかけること。 一般的な恋愛での「当て馬」とは、本命を振り向かせるために利用される人のことです。