「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。目上の人に自分の意見を言うときなどに使用することができる敬語表現です。今回は「申し上げる」の敬語や使い方を例文付きで紹介します。「申し上げる」の類似表現との違いや類語も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「申し上げる」の読み方は「もうしあげる」です。 「申」は音読みで「もうす」、「上」は訓読みで「あげる」と読みます。
「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。 謙譲語とは、自分の動作をへりくだることで相手に敬意を示す敬語です。 したがって、「申し上げる」は自分の「言う」という動作をへりくだった表現になります。
「申し上げる」の「あげる」は漢字で「申し上げる」と表記します。 動詞は漢字表記にして補助動詞は平仮名表記にするという決まりがあります。 例えば「貸してあげる」「遊んであげる」などと補助動詞として使う場合の「あげる」は平仮名で表記するのが正しいです。 ただし、「申し上げる」の「上げる」は補助動詞ではなく、「申し上げる」で一つの動詞です。 したがって、「申し上げる」と漢字で表記するのが正しいといえます。
「まをす」は古語で「言う」の謙譲語「申しあげる」という意味です。 動詞の連用形の下について謙譲の意を表します。 万葉集には「秋さらば帰りまさむとたらちねの母にまをして」という一文があります。 さらに万葉集では、「寺々の女餓鬼をまをさく」というように、動詞「まをす」の未然形+接尾語「く」で「もをさく」の形で使用されています。 中世以降「まをさく」から「まうさく」に変化しました。
「申し上げます」は、「申し上げる」に丁寧語「ます」をつけた丁寧語です。 丁寧語は、文末につける「です」「ます」のように文章全体を丁寧にする敬語表現です。 「申し上げます」は、「言います」よりかしこまった表現で、目上の人に対してやスピーチなどフォーマルな場面で使用するのに適しています。
「申し上げたく存じます」の意味は「言いたいと思う」です。 品詞分解すると「申し上げる」+「存ずる」+「ます」で、
を使用した丁寧な敬語表現です。 丁重語とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用される敬語です。 丁重語は自分の動作をへりくだることで相手に敬意を示す「謙譲語」と同じ種類の敬語表現で、「謙譲語Ⅱ」ともいわれます。
「申し上げさせていただきます」は
を使用した敬語表現です。 「申し上げさせていただきます」は、「言う」の謙譲語「申し上げる」に「させてもらう」の謙譲語「させていただく」を重ねて使用しているため二重敬語で誤用です。 二重敬語とは、一つの語に同じ種類の敬語を二つ以上重ねて使用してしまうことをいいます。 二重敬語は過剰な敬語表現で相手に不快感をあたえてしまうため使用は避けるべきです。 また、「させていただきます」は相手からの許可が必要で、それを実行した場合こちら側に恩恵のある行為をさせてもらう時に使用します。 許可が必要というのは、許可を得てからではないと使えないという意味ではありません。 相手からの許可が必要なことを自分がするときに使用するということです。 したがって、「日程を変更させていただきます」などが正しい使い方です。 実際には許可を得ないことに対しても、相手を配慮し謙遜表現として「させていただきます」を使うことはありますが、「申し上げさせていただきます」は不自然です。
相手が「言う」ということを敬語にするには尊敬語にする必要があります。 尊敬語とは、相手の動作を高めることで相手に敬意を示す敬語のことです。 「言う」の尊敬語は「おっしゃる」です。 「部長が○○とおっしゃる」というように使用します。 また、「言われる」も「言う」の尊敬語です。 「言われる」は「言う」の未然形「言わ」に助動詞「れる」をつけた言葉です。 助動詞「れる」には
の4つの意味があり、この場合の「れる」は尊敬です。 例えば「Aさんは○○と言われました」でAさんの言ったという動作を高めて敬意を示すことができます。 ただし、「れる」には「尊敬」以外にも「自発」「受け身」「可能」の意味もあるので混乱しやすいです。 そのため、「言われる」よりも「おっしゃる」が使用されるほうが多いです。 ちなみに、「おっしゃられる」は、「言う」の尊敬語「おっしゃる」に尊敬の「れる」を重ねて使用しているので二重敬語です。誤用なので注意しましょう。
「申し上げる」は、目上の人に自分の意見を言うときに使用します。 例えばビジネスシーンで「その件について私の見解を申し上げます」と使用すると、「自分の見解を言わせてもらいます」という意味になります。 「申し上げます」が使用できるのは、「自分が目上の人に言う」という場合のみです。 「息子には私から申し上げます」という使い方は、息子を高めていることになってしまうので誤りです。
例文
「申し上げる」は補助動詞として使用することも可能です。 補助動詞的に使う「申し上げる」は、「する」「してさしあげる」と意味を変換すると分かりやすいです。 例えば、
などの使い方です。 「申し上げる」を使用することで自分の動作をへりくだり、相手に敬意を示すことができます。 補助動詞はひらがな表記がルールですが、「申し上げる」は漢字表記のまま使う場合が圧倒的に多いです。
例文
「よろしくお願い申し上げます」は、ビジネスシーンなど様々な場面で使用される定型句で、メールや手紙などの締めくくりにもよく使用されます。 「よろしくお願い申し上げます」は、「よろしくお願いします」「よろしくお願いいたします」よりも丁寧で、フォーマルな場面でも使用することができます。
例文
「申す」は「言う」の丁重語です。 「丁重語」とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用される敬語です。 丁重語は、自分の動作をへりくだることで相手に敬意をしめす謙譲語と同じ種類の敬語で「謙譲語Ⅱ」ともいわれます。 例えば、「申し上げる」は「言う」の謙譲語であるため「部下に申し上げます」という使い方をすることはできませんが、「部下に申す」という使い方をすることはできます。 なぜなら、「申す」は聞き手に敬意を示していて、「部下」に敬意を示しているわけではないからです。
補助動詞「いたす」は「する」の丁重語です。 例えば、「ご連絡申し上げます」を「ご連絡いたします」と言い換えることができます。 「いたす」も丁重語なので、動作の対象ではなく聞き手に敬意を示しています。
「申し上げる」以外の「言う」の謙譲語を紹介します。
「言上する」の読み方は「ごんじょうする」です。 「言上」の意味は「目上の人に申し上げること」です。 年齢や位が自分よりも上の人に申し述べることを「言上する」といいます。 例えば「お礼を言上する」は、自分よりも目上の人に対してお礼をするという意味です。 かなり身分の高い人に対して使用する言葉なので、日常生活で耳にすることはないでしょう。
「奏する」は「そうする」と読みます。 「奏する」は「言う」の謙譲語です。 天皇・上皇に対して言うことを「奏する」といいます。 また、「奏上(そうじょう)する」ともいいます。 天皇・上皇に対して使用する言葉なのでビジネスシーンなどで使用されることはありません。
「啓する」は「けいする」と読みます。 「啓する」は「皇太子や三后(太皇太后・皇太后・皇后)に申し上げる」という意味です。 「言う」の謙譲語ですが、「啓する」も日常生活で使用されることはありません。
「申し上げる」は「言う」という意味なので、直訳すると「say」です。
目上の人に意見する時に使う「お言葉ですが・・・」というニュアンスの表現は「with all due respect」です。
With all due respect, I disagree with you on that.
失礼ながら申し上げますが、その件ではあなたに反対です。