お通夜とは、死者を葬る前に親族や友人が集まって灯明と線香の火を絶やさず一晩中遺体と過ごす儀式です。本来お通夜は故人と関わりの深かった人のみで夜通し行うものですが、最近は一般弔問客も招き午後10時頃に切り上げる「半通夜」が一般的になっています。
「お通夜」の読みかたは「おつや」です。「通夜」という言葉に丁寧語の「お」がついた言葉です。 「通夜」には主に2つの意味があります。1つめは「神社や寺院に籠もって終夜祈願をすること」です。 そして2つめに「葬儀の前夜に故人とかかわりの深かった者が集まり終夜遺体を守ること、またその法要」という意味があります。 元々は、遺族や親しかった友人だけが集まって、故人の思い出話をしながら邪霊の侵入を防いで徹夜で遺体に付き添っていました。 しかし最近ではお通夜のスタイルも変わりつつあります。 通夜を徹夜で行うのではなく午後6、7時頃から始めて10時前後で終える(所要時間1〜3時間程度)「半通夜」が一般的となっています。 また、親族や関わりの深かった友人だけでなく、一般の弔問客も通夜に迎え入れることが多くなりました。 その理由としては、葬儀や告別式は午前中に開催されることがほとんどで、仕事の関係で参列できない人が多く、せめて通夜には参列したいという人が増えたことが背景にあります。 また親族やごく親しい人だけで行う通夜を「仮通夜」、一般の弔問客を迎えて行う通夜を「本通夜」ということもあります。 これは主に都市部に多く見られるお通夜のスタイルです。死亡当日の夜に納棺し仮通夜を行い、翌日に祭壇を飾って本通夜を行います。 通夜の翌日に葬儀・告別式と火葬を行うのが一般的なスケジュールとなります。 お通夜の弔問客が帰った後は遺族や親族だけで灯明と線香の火を絶やさないように一夜を明かすことが多いです。 しかし翌日に葬儀・告別式や火葬を控えているため、交代でしっかり休むようにしましょう。 故人が亡くなった時間帯が夜の場合は、通夜、葬儀・告別式の日程を1日ずつずらすこともあります。
お通夜の起源は「殯(もがり)」と考えられています。 殯とは、故人を本葬するまでの間、遺体を仮に置いておくことです。 西暦700年代に、既に現在の通夜のような儀式が行われていたのです。 昔は、故人を鳥獣や悪霊から守るために近親者が徹夜で遺体に付き添っていました。 また昔は死亡の見極めが困難で死者が息を吹き返す可能性もあり、遺体をそばで見守って夜を過ごしていたのです。 線香やろうそく火を絶やさず過ごすのは、それらが極楽浄土への道しるべや亡くなった霊の食べ物になると考えられているからです。 やがて近隣の人や知人などが通夜などに参列するようになり、現在のお通夜の形となりました。 上記でもご紹介しましたが、現在では夜通し遺体に付き添うことも少なくなり、夜の10時前後で通夜を終える半通夜が主流になっています。
「お通夜」の次に開催される儀式「葬儀(葬式)」「告別式」の違いを説明します。 「葬儀」は遺族や親族が中心となり故人の冥福を祈り成仏させる儀式です。 「告別式」は友人や知人、職場関係の人などを含めたすべての参列者が故人との最後の別れをする儀式です。 本来「葬儀」と「告別式」は全く別の儀式で、葬儀後に僧侶は一旦退場し、告別式の開式時にあらためて入堂して行うのが通例でした。 しかし最近では葬儀と告別式は続けて行われることがほとんどで、2つを合わせて「葬式」と呼ぶことが多くなりました。 葬儀・告別式は火葬の関係上、午前中もしくは午後の早い時間帯に開催されることがほとんどです。一般的には午前10時頃〜午後3時の間で行います。 一般の弔問客は告別式へ参列することが基本ですが、仕事の都合などで参列できないことが多いため、夜に開催されるお通夜に参列することが多いです。 そのため通夜と告別式のどちらに参列すべきか迷う場合は、仕事の予定をふまえ、都合の良い方に参列すれば問題ないでしょう。
最近は一般の弔問客もお通夜に参列することが多くなっていますが、お通夜を家族や近親者のみで行うこともあります。 例えば「通夜は近親者のみで執り行います」などの案内がある場合は、基本的には親族以外の通夜への参列は遠慮したほうがよいでしょう。 その場合は可能な限り告別式へ参列し、参列が難しい場合は後ほどご紹介する香典を別日でお供えするのがマナーです。 上記でご紹介したように、本来はお通夜と葬儀・告別式、火葬を2日間にわたって行うことが一般的です。 しかし最近ではお通夜を行わず葬儀・告別式、火葬を1日で行う「1日葬」を選ぶ遺族が増えています。 参列者の予定が合わない、費用を抑えたい、精神的・体力的な負担を軽減したいなどが1日葬が選ばれる主な理由です。
故人の供養また弔問客へのお礼としてお通夜の後に開かれる会食を「通夜ぶるまい」といいます。 通夜の後に2〜3時間ほど開かれますが、弔問客はそのうちの30分〜1時間ほどで帰るのがマナーとされています。 食べ物は肉類や魚類を避けた精進料理を用意するのが本来のしきたりでしたが、最近はあまりこだわらずに刺し身やお寿司などが用意されます。 またかつては世話人や近隣の人が喪家の台所で料理を手作りして夜通し食事をふるまうこともありましたが、「半通夜」が主流となった今はおにぎりやサンドイッチ、おつまみなど、食事が簡略化される傾向があります。 飲み物はお茶やジュースの他に「お清め」の意味で、ビールや日本酒などのお酒も用意します。
ここまでは仏教のお通夜についてご紹介しましたが、仏教以外にも「お通夜」に相当する儀式があります。 神道(神式)では「通夜祭」「遷霊祭(せんれいさい)」という2つの儀式があります。 神社では行わずに斎場や自宅で行い、仏教と同様に最近は半通夜が一般的となっています。 通夜祭の進行は仏教の通夜とあまり変わりませんが、祭壇の飾り方や儀式の呼び名が異なります。 通夜祭に続いて遷霊祭が行われます。「移霊祭」や「御魂移し」ということもあります。遷霊祭は故人の御霊を仏教の位牌にあたる「霊璽(れいじ)」に移す儀式です。 遷霊祭は夜間に部屋中の明かりを消して暗闇の中で行われるのが特徴的です。 通夜祭と遷霊祭の後には、仏教の通夜ぶるまいにあたる「直会(なおらい)」という会食が開かれます。 神道では、喪家では葬儀の間は火を使ってはいけないため、仕出し料理をお願いすることが一般的です。 キリスト教は宗派によって「通夜」の呼び名や内容が異なります。 カトリックでは「通夜の祈り」「通夜の集い」「通夜の儀」と呼びます。 仏教や神道のように決まったしきたりはなく教会によって進行が異なりますが、司祭(神父)とともに祈りを捧げ、聖歌斉唱、献花などで故人を偲びます。 儀式の後には軽食や茶菓をふるまう「茶話会」が開かれることもあります。 プロテスタントでは「前夜式」または「前夜祭」と呼びます。納棺を兼ねて行うこともあります。 賛美歌斉唱、聖書朗読、祈り、牧師の説教、献花などが行われます。 儀式の後にはカトリックと同様に茶菓などをふるまう「偲ぶ会」が開かれます。 キリスト教の「通夜」は故人が通っていた教会か斎場で行うこと一般的ですが、自宅で行うこともあります。 またキリスト教の会食は仏教や神道と比べると簡素で、献花用の花は白菊もしくは白いカーネーションを使用します。
お通夜では喪服を身につけることが正式なマナーとされています。 喪服には下記の3種類があり、それぞれの違いは格式です。 喪服には和装と洋装があります。和装と洋装で格式の差はないのですが、一般的に和装の方が格式が高いという印象を与えることが多いです。 正喪服以外では和装ではなく洋装を選ぶのが一般的です。
喪主や遺族は準喪服(準礼装)または略喪服(略礼装)を身につけることが一般的です。 一般の弔問客を迎え入れる場合は、準喪服(準礼装)の着用がマナーとされています。 準喪服(準礼装)は、冠婚葬祭用のブラックスーツのことを指します。 漆黒に近い黒色で光沢や艶がないスーツで、ビジネススーツとして売られている黒色のスーツは準喪服(準礼装)には該当しませんので注意が必要です。 略喪服(略礼装)は、 濃紺や濃いグレーなどの地味な色のスーツ、ワンピース、アンサンブルなどです。 色は黒以外に濃紺やグレーのもの、細いストライプ柄などのスーツも可です。 なお身内だけで通夜を行う場合は、喪服の着用は必須ではありません。 事前に僧侶に相談・確認をし、地味な服装で通夜に臨むことも可能です。
本来、喪服は遺族側だけが着用するものでしたが、現在は一般の弔問客も喪服を身につけるようになりました。 喪服を着用する際は略喪服(略礼装)を着用します。略喪服(略礼装)とは、上記でもご紹介したように喪服の中で最も格式の低い服装です。 仕事帰りなどで急に通夜に参列することになった場合は、取り急ぎ駆けつけたという意味合いで正式な喪服ではなく地味な服装でも構いません。 男性の場合は白のワイシャツを着用し、ネクタイや靴下、靴などの小物は黒で統一します。ネクタイピンは不要です。 最近はコンビニやドラッグストアなどで弔事用のネクタイや靴下の購入が可能です。 女性の場合はブラウスやシャツは黒色を身に付け、ストッキングも黒が好ましいです(肌色でも可)。 女性は薄化粧にして髪が長い場合はまとめ髪にします。ネイルをしている場合は落として参列するのがマナーです。 男女共に派手なアクセサリーは外します。 光沢がある小物やブランド物などを身につけることも控えるべきです。 一般弔問客として子供が通夜に参列することは、特別な事情がない限りは避けるべきだといわれています。 それでも同伴する場合は、学校の制服の着用が正装となります。 制服がない場合は男児は白のワイシャツに黒のズボン、女児は白いブラウスに地味なスカートを身に着けましょう。 靴はスニーカーだとカジュアルになりすぎてしまうため、革靴が好ましいです。
「香典」の読み方は「こうでん」です。 「香典」の意味は「香の代わりに死者の霊前に供える金品」です。 「香典」は「香奠」と書くのが正式ですが、「奠」は常用漢字ではないため「香典」と代用して書くのが一般的です。 「香」には「仏前で焚く香料」という意味が、「奠」には「神仏などへの供え物」という意味があります。 お通夜や葬儀で渡す金品のこと「香典」といい、四十九日などの法要で渡す金品は「供物(くもつ)」や「供物料」といいます。 「香典」の語源は仏教用語に由来します。 「香典」の発生には諸説があり、元々は故人にお香を焚いて供えていた、お香は仏教的に「仏様の食べ物」とされており、それがが転じて食料になったという考えなどもあります。 昔は通夜や葬儀のために米や野菜、香などの品物は全て弔問者が持ち寄っていました。 現在では通夜や葬儀に関する全てのものを故人の遺族が用意するため、弔問客はその料金として現金を供えるようになりました。 現在でも地方や地域、人によっては米や線香などを贈る場合もあります。
香典(不祝儀)の金額は故人との関係性や立場、自身の年齢によって決まります。 特徴としては、自身の年齢が上がるにつれて、また血縁関係が近いほど香典(不祝儀)の金額が高くなります。 例えば故人が自身の親であれば5〜10万円、仕事関係の人であれば2千〜1万円程度が目安です。 金額に迷う時は自分と同じような立場の人と相談して決めると良いでしょう。 次の場合は、想定していた金額よりも多めに出した方が無難でしょう。
包む金額で「4」や「9」は「死」や「苦」を連想させるため避けましょう。 またかつては「奇数は吉、偶数は凶(数が割り切れることが縁が切れると連想させるため)」といわれていたため、金額やお札の枚数を偶数にするのも避けるべきです。 しかし最近では数字をあまり気にしない人も多くいるので、相手や状況に応じて判断しましょう。 金額の相場を下記の表にまとめましたのご参考にしてください。
贈り先 | 金額相場 |
---|---|
祖父母 | 1万〜3万円 |
親 | 5万〜10万円 |
子供 | 10万円前後 |
兄弟姉妹 | 1万〜5万円 |
子供の配偶者の親 | 3万〜5万円 |
孫 | 1万〜3万円 |
おじ・おば | 1万〜3万円 |
いとこ | 1万〜3万円 |
上記以外の親戚 | 5千円〜2万円 |
職場関係(上司、同僚、取引先) | 5千円〜1万円 |
友人・知人 | 3千円〜1万円 |
隣人 | 2千円〜1万円 |
宗教や宗教によって使用する不祝儀袋(香典袋)は異なります。 例えば仏教であれば菊もしくは蓮の花の絵柄で黒白もしくは双銀の水引きの香典袋(不祝儀袋)を使用します。 故人の宗教、宗派を確認した上で適切な不祝儀袋(香典袋)を用意しましょう。詳細は下記の表をご確認ください。 また、相手の宗教・宗派だけでなく、包む金額に見合った不祝儀袋を選ぶことも大切です。 不祝儀袋は大きく分けると2つの種類があり、水引きが印刷されている「印刷多当」タイプと、水引きが印刷でなく付属されている「金封」タイプがあります。金封タイプには4種類があり、これらの不祝儀袋の違いは、袋の大きさ、水引きの種類や色、そして包む金額です。 金額が1万円以下の場合は印刷多当を、1万円以上の場合は金封の袋を使用します。 1〜3万円の場合は水引金封、10万円以下の場合は中金封、10万円〜100万円以下の場合は大金封、100万円以上の場合は特大金封を使用します。 水引きの色は宗教や宗派によって異なりますが、〜3万円までは黒白、それ以上の額は双銀のものを使うのが一般的です。
宗教・宗派 | 柄 | 水引き |
---|---|---|
仏教(仏式) | 菊の花・蓮の花 | 黒白・双銀 |
神道(神式) | 無地 | 白一色 (黒白・双銀も可) |
キリスト教 | 百合の花・十字架 | つけない |
無宗教 | 無地 | 黒白・双銀・双白 |
「表書き」とは、上包みの表面に書く「御霊前」などの言葉で表書きは故人の宗教や宗派に合わせて書く必要があります。 仏教(仏式)では「御香典」や「御霊前」などと書くのが一般的です。 忌明けの四十九日法要まではまだ御霊(みたま)としてこの世にいらっしゃるという考えから「御霊前」を使います。 ただし仏教でも浄土真宗は、亡くなった人はすぐ仏様になるという考えから「御霊前」は使わず「御仏前(御佛前)」を使用します。 通夜や葬儀・告別式と合わせて初七日法要も営まれる場合の香典の表書きは、「御霊前」として初七日分もまとめて包む場合と「初七日忌 御霊前」として香典とは別に包む場合があります。 神道(神式)の表書きは「御玉串料」「御榊料」など、キリスト教のカトリックでは「御ミサ料」、プロテスタントでは「忌慰料」の表書きを使います。 無宗教や宗教が不明な場合は「御花料」や「御供料」と書くのが無難です。 香典袋に書く名前は、香典を包む人の名前です。送り先の名前(宛名)は書きません。 基本的にはフルネームで記入します。名前は表書きよりもやや小さめの字で書きます。 香典袋に書く連名は最大3名程度にしましょう。 氏名を並べる順番は、目上の人が一番右側です。特に上下の区別がない場合は五十音順で記載します。 連名が4名以上の場合は上包みに代表者のみ氏名を記載し、左側に「外一同」と書き添えます。全員分の情報は別紙に記入し同封します。 通夜や葬儀に参加できない場合、代理で不祝儀(香典)を渡してもらうこともできます。 その場合は香典袋には代理依頼人の氏名を記載し、受付で代理で来た旨を伝え、芳名帳には参列できない依頼人の氏名を記載し、氏名の下に配偶者の代理の場合は「(内)」、それ以外の人の代理は「(代)」と書きます。 香典袋の中包み(中袋)の裏面には包んだ金額を大字(だいじ)で書くのが正式なマナーです。 「大字」とは漢数字の「一・二・三…」などの代わりに用いる「壱・弐・参」などの漢字のことです。 金額を書く際は「お金」という意味を持つ「金」を添えて、「金 ○○○圓」という形で書きます。 金額を書く際に「金 ○○圓也」と「也」をつける人がいますが、現在は「也」は不要です。
まず、使うお札は古いお札もしくはわざと折り目をつけた新札のみにします。 新札だと前々から用意をされていたようで失礼な印象を与えるからです。 複数枚お札がある場合は、お札の向きを全て揃えて入れます。 お札は奉書紙や半紙などでの包むもしくは封筒に入れます。 中包みでの包み方は下のイラストを参考になさってください。 封筒にお札を入れる場合、弔事では「顔を伏せる」ように入れるのが一般的とされています。 封筒の「表」に対してお札が「裏」を向くように入れますが、その際人物の顔が底を向くように入れます。 お札の人物像を伏せるように入れることで、故人に対する悲しみやお悔やみなどの気持ちを表します。 上包みの折り方は弔事では「悲しくてうつむいている」という意味で上の折返しが上面にきます。(上の折返しを最後に折ります) 水引きの結び方は「結びきり」の基本の真結びです。水引きの色が2色の場合、右に濃い色、左に薄い色がくるように結びます。 香典袋(不祝儀袋)を持参する際は袱紗(ふくさ)という1枚の布を使います。 布を折る順番は右→下→上→左です。 袱紗が無い場合に風呂敷を代用する時も折り順は同じです。
香典は通夜や葬儀、告別式の受付で渡すのが基本です。香典とは別に供物を持参する場合も受付で渡します。 通夜や葬儀・告別式の両方に参列する場合、最初に弔問する儀式で香典を渡すのが一般的です。 受付で香典を渡す際は袱紗から取り出し表書きの正面を受付係に向けて両手で渡します。 その際「ご霊前にお供えください」「この度はご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」などお悔みの言葉を一言伝えます。 受付がない場合は、焼香の際に霊前にお供えするか遺族に直接渡します。 遺族に手渡しする時も相手に表書きの正面を向けますが、焼香時は表書きの正面を自分に向けます。 焼香の後に遺族が霊前に向けて香典を置き直すためです。 何かしらの事情で通夜や葬儀に参列できない場合は、後日弔問時もしくは郵送(現金書留)で香典を送ります。 訃報を知ったらなるべく早めに対応しましょう。
冒頭でご紹介した通り、本来通夜は家族や近親者など故人と特にかかわりの深かった人たちだけが集まるものでした。 したがって、特に関係が深くない友人や知人、職場関係の人は通夜ではなく故人に別れを告げる告別式に参列するのが正式なマナーとなります。 しかし最近は昼の時間帯に執り行われる葬儀・告別式よりも、夕方〜夜に行われる通夜の方が参列しやすいということもあり、通夜で弔問する人が多くなりました。 遺族側も、通夜で一般の弔問客を迎える準備をしていることも多いため、通夜に参列するのがマナー違反というわけではありません。(家族のみで行うという案内がない限り) 故人との関係がどれほどだったかにもよりますが、可能であればゆっくりとお別れができる告別式に参列すべきでしょう。 親しい仲であったならば、通夜と告別式の両方に参列できると良いです。
通夜に参列する場合は、開始時刻の定刻に出向き早めに会場を去るのがマナーです。 通夜開始時刻の30分前から受付開始な場合が多いです。 遅くても読経が始まる前までに到着するように会場へと向かいましょう。 万が一遅刻する場合でも、30分〜1時間程度の遅刻であれば間に合う可能性が高いので遅れてでも駆けつけましょう。 遅刻する場合は何のために斎場や遺族に連絡を入れておくとよいでしょう。 途中から参加する際は、進行の妨げにならないように気をつけましょう。
通夜や葬儀・告別式への子供の弔問は控えるべきです。目安としては、小学校低学年までは参列を避ける方が無難でしょう。 子供が故人の血縁者であっても、騒いでしまうような子供や赤ちゃんは参列を遠慮すべきです。 特に注意したいのが、子供を亡くした通夜や葬儀への参列です。 子供が参列することで遺族の気持ちを傷つけてしまう可能性もあるため十分な注意が必要です。 ただし子供の友人が亡くなった場合は、状況に応じて参列することも可能です。 子供を預けられないなど特別な事情で通夜に連れていく場合は、早めの時間に弔問しお焼香をすませます。通夜ぶるまいへの参加は遠慮し早めに帰宅するのがマナーです。 会場に出向く前に子供に通夜は悲しみの席であることや、騒いではいけないことを伝えておきましょう。
出産間近の妊婦も参列は避けるべきといわれています。 地域によっては妊婦が通夜に参列することが「縁起が悪い」と捉えることがあります。 また妊婦が通夜に参列する場合は、魔除けとなる鏡をお腹に入れて参列するとよい、という地域もあります。 どうしても通夜に参列したい場合は、体調が良好であれば参列しても良いですが、無理はしないようにしましょう。 無理して参列をするとかえって遺族に気を遣わせてしまう可能性もあります。 弔問を控える場合は、弔電を打って弔意を伝え香典は郵送します。 弔電の打ち方は後ほどご紹介します。
故人の霊を慰めるためにお供えする花を「供花(くげ)」、品物を「供物(くもつ)」といいます。 香典とは別に供物や供花を贈りたい場合は、必ず事前に遺族に贈ってもよいか確認を取りましょう。 置き場所に限りがある場合や、喪家が葬儀社が取りまとめて手配をしている場合があるからです。 供花や供物の金額相場は下記の通りです。
供花には生花と花環の2種類があります。生花は個人で、花環は会社などの団体で贈ることが多いです。 花の種類や色を統一するために、生花、花環ともに葬儀社が手配・配置することが多いです。 喪家や葬儀社がまとめて手配をする場合は、現金を「御花料」の表書きで包み、世話役や喪主に渡します。 自身で手配する場合は、葬儀社や生花店に予算などを伝え、通夜当日の午前中までに会場に届くように手配しましょう。 供物は故人が好きだったものや果物、干菓子、線香、ろうそくなどが定番の品です。 供物は宗教や宗派、地域による違いがあるため、葬儀社に手配を依頼するのが良いでしょう。 自身で供物を用意する場合は、百貨店や専門店などで弔事用の掛け紙をつけてもらいます。 掛け紙に「御供物」「御供」「御霊前」などの表書きと送り主の名前を書きます。 会場に持参する際は地味な色の風呂敷で包み、渡す時は風呂敷から供物を取り出してお悔やみの言葉を添えて手渡しをします。自分で祭壇にお供えはしません。 最近は遺族が供花や供物の受け取りを辞退することが多くなっています。 弔問客の負担を軽減したい、会場の関係で飾るスペースが限られているなどが主な理由です。 断られた場合は無理にお供えすることは避け、香典に準じる金額を「御供花料」や「御供物料」の表書きで包んで渡します。 供物や供花は宗教ごとに決まりがありますので下記の表で解説します。
供花 | 供物 | |
---|---|---|
仏教 | ・白菊、ユリ、カーネーションが一般的 ・最近は黄色の菊や胡蝶蘭、オンシジウムなども供花として選ばれる ・派手ないろや棘のあるバラは適さない ・花束の場合は白いリボンをかける。名札や名刺を差す。 |
・仏具(線香、抹香、ろうそくなど)や日持ちするお菓子、果物、缶詰など ・殺生を連想させる肉や魚、お酒は避ける ・表書きは「御供」「御供物」と書く。 |
神道 | ・仏教と同じように白や黄色の清楚な花 ・花束の場合は白いリボンをかける。名札や名刺を差す。 |
・魚などの海産物、お菓子、お酒、五穀など ・ろうそくはお供え可能な場合とそうでない場合があるので事前に確認する ・線香、抹香は避ける |
キリスト教 | 白一色、白い花の生花のかご盛りや花束 ・花束の場合は白いリボンをかける。メッセージカードを添える。 |
・供物はなし |
通夜ぶるまいとは、通夜の後に開かれる会食のことで弔問のお礼や故人の供養を目的としたものです。 遺族から通夜ぶるまいへの参加を勧められたら、お断りするのではなく少しの時間でもよいので出席するのがマナーです。 通夜ぶるまいは、全ての弔問客が焼香を終えたら始まる場合と、焼香を終えた人から順番に通夜ぶるまいの席につく場合があります。 故人の友人や知人、恩人や先般などの弔問客は上座に座り、遺族は末座に座ります。 一般の弔問客はあまり長居するのではなく、遅くても午後10時前には帰宅するのが礼儀です。 喪主もしくは世話役の挨拶を目安に帰宅するか、挨拶がない場合は他の人(特に重立った人)が席を立つタイミングで退席します。 予定があり通夜ぶるまいの途中で帰る場合は、あまり目立たないように席を離れ、世話役などに一言挨拶をしてその場を後にします。 世話役は裏方ですので、一部の係を除いて通夜ぶるまいには同席せず別室で食べるのが通例でした。 しかし最近では、遺族や弔問客と同席し、通夜での働きを労うことも多くなっています。
通夜参列の際は、故人を偲ぶ気持ちを忘れないようにしましょう。 特に通夜ぶるまいではお酒が用意されているため、飲みすぎたり、騒ぎすぎたりしないように過ごしましょう。 会話の内容には十分な配慮をしましょう。故人の死(死の原因や死に際の様子)に関する話題は避けるべきです。 また故人と無関係の話は避け、故人との思い出話をするのが良いです。 遺族や世話係が準備や片付け等で忙しそうにしていたら、手伝う気遣いをするとより丁寧です。
どうしても通夜や葬儀に参列できない場合は、後日弔問に伺う、もしくは通夜や葬儀の日程に合わせて弔電や手紙で弔電を表します。 弔電は告別式で読み上げることが多いため、お通夜の日に届くように手配をしましょう。 弔電は電話(115番)やインターネットで申し込みが可能です。また郵便局の窓口でレタックスという電子郵便を送ることもできます。 弔電の宛名は喪主、差出人は自身のフルネームを書きます。 本文は定型文の用意がありますが、そのまま使用するのではなく参考して心のこもった文章を考えて打ちましょう。 弔電を打った場合は、後日あらためてお悔やみの手紙を書くのがマナーとされています。 手紙では冒頭語や時候の挨拶文は省略し、主文から書き出します。 弔電とお悔やみの手紙を書く際は忌み言葉や略語を使わないようにするのが注意点です。 忌み言葉とは、縁起が悪いとして使用を避ける言葉や忌み言葉の変わりに使う他の表現のことを指します。 忌み言葉の例は下記の通りです。
<弔電(電報)の例>
〈欠席する場合の手紙例〉 ○○様の通夜のご案内をいただきながら、出席できないこと、まことに心苦しく思っております。 父の体調が優れず、一日も家をあけられなくなってしまいました。どうかお許しください。 なお心ばかりのお香料ではございますが、同封いたしましたので、御霊前にお供えくださいませ。 当日はこの地より、皆様とともに心を込めて合掌させていただきます。
通夜で喪主が挨拶をするタイミングは主に3回です。
それぞれの挨拶は手短で構いません。 僧侶や参列者への感謝の気持ちや故人を偲ぶ気持ちを述べます。 挨拶の例は下記を参考にしてください。
<喪主の挨拶例>
参列者が喪主や遺族に挨拶をするタイミングは、会場に到着し受付で香典や供物などをお供えする時です。 袱紗から取り出し、一言あいさつを添えて渡します。 挨拶の例は下記の通りです。
挨拶で「ありがとうございます。」という言葉は避けるのがマナーです。 また仏教では四十九日法要の日をもって成仏すると考えられているため、挨拶で「御仏前」を使うのは誤りとなりますので注意しましょう。
お通夜の準備はお通夜の翌日に行う葬儀・告別式、火葬の準備と合わせて行うことが多いです。 そのためここでは、お通夜の準備に加えて葬儀・告別式、火葬にあたっての準備もご紹介しています。
通夜や葬儀・告別式の開催にあたり喪主を決めます。 喪主とは、葬式を行う当主のことで、遺族を代表して弔問を受ける立場にある人のことを指します。 故人と最も縁の深い人が喪主を務めるのが一般的です。 例えば夫婦どちらかが死亡した場合は配偶者が、配偶者が既に故人や高齢の場合は子供(長男、長女が一般的)がなります。 子供がいない場合は親や兄弟姉妹が喪主を務めます。 子供が死亡した場合は親が喪主を努め、親が死亡し幼い子供が喪主になる場合は成人の近親者が後見人となり喪主をサポートします。 喪主は通夜や葬儀・告別式を通じて故人のそばに付き添い弔問客の応対を行います。 弔問客が目上の人であっても、故人のそばを離れて出迎えや見送りはしないのがマナーです。
通夜や葬儀・告別式の準備や進行を手伝う人のことを「世話役」や「世話人」といいます。 主に親族や友人、知人、町内会の人たちに世話役を依頼します。 世話役の一人に世話役代表を務めてもらいます。通夜や葬儀・告別式の進行を任せるため、経験が豊かで統率力のある人が適任です。 一般的な葬儀では主に4つの係を設けます。
規模が大きい場合は上記4つの係をさらに細かく分けます。
上記でも少しご紹介しましたが、故人が死亡した翌日に通夜、翌々日に葬儀・告別式、火葬を行うのが一般的なスケジュールです。 故人が夜の時間帯に亡くなった場合は通夜、葬儀・告別式の日程を1日ずつずらすこともあります。(翌々日に通夜、明々後日に葬儀・告別式) 通夜や葬儀・告別式の日程を決める上での注意点は4つあります。 まず1つめが六曜の「友引」です。 本来大安、友引、仏滅などの六曜は仏教の考えにはないため気にする必要はありませんが、一般的に「友引」の日の葬儀・告別式は避ける風習があります。 「友引」の本来の意味は「何をしても良くも悪くもない日」ですが、漢字から「友を引く日(他人の死者を誘う日)」という意味が定着し、友引の日に葬儀・告別式を行うことを避けることが多いです。 そのため葬儀・告別式の日が友引と重なる場合は、日程を1日延ばします。(通夜の日程は友引と重なっても問題ありません。) 最近は友引の日に葬儀・告別式を行うことを気にしない人も増えていますが、トラブル回避のために身内に相談する方が良いでしょう。 2つめは火葬場の空き状況や休館日です。 火葬や埋葬は、法律上死後24時間以上経過した後でなければ行ってはいけません。(伝染病による死亡以外) 火葬は葬儀と告別式の日に行うのが一般的な流れですので、斎場の空き状況だけでなく火葬場の空き状況もしっかりと確認をする必要があります。 火葬場が混み合っている場合は、葬儀・告別式の日程をずらして火葬と合わせて執り行います。 また、先程ご紹介した六曜の「友引」にあたる日は、休館日にしている火葬場もあります。 3つめは年末年始です。「松の内」である1月1日〜7日の間は弔事は避ける方が良いとされています。 例えば12月30、31日、1月1日、2日に不幸がある場合の通夜や葬儀・告別式は、最低でも三が日を過ぎてから行うのが一般的です。 葬儀場や火葬場も三が日は休業になるところが多いため、火葬を行うまではドライアイスを詰めて遺体を保護します。 最後4つめは菩提寺や僧侶の予定です。 通夜や葬儀・告別式では僧侶による読経や法話があるため、僧侶の予定に合わせる必要があります。 不幸があったら必ず菩提寺に連絡をし、寺院や僧侶の都合を聞きましょう。
最近では通夜でも祭壇を飾ることが多くなりました。 その場合は通夜の前までに通夜や葬儀・告別式の形式を決める必要があります。 形式は大きく分けると2つで「宗教式」と「無宗教式」です。 「宗教式」では主に仏式、神式、キリスト教式の3つに分かれます。 日本では90%以上の通夜、葬儀・告別式が仏式で執り行われます。 同じ宗教でも宗派によってしきたりが異なりますので、宗派の確認が必要です。 故人が無信仰であったり宗教が不明の場合は、故人の生家の宗教(故人が既婚女性なら夫の生家の宗教)で儀式を行うのが一般的です。 しかし、故人の意志や遺族の希望により宗教にとらわれない形で「無宗教式」として通夜、葬儀・告別式を行うこともあります。 「無宗教式」では僧侶や神父、牧師を招く必要もなく、祭壇の形や飾り方も自由です。 自身の希望通りの通夜や葬儀・告別式を執り行いたい場合は、生前にプランを立てて契約書を作成する「生前予約」があります。 亡くなった際は遺族が契約書に従って故人の意思を尊重し、通夜や葬儀・告別式を行います。 また生命保険に加入し、葬儀費用を積み立てるタイプもあります。 宗教式と無宗教式のどちらかのみで通夜、葬儀・告別式を行わないといけないということはなく、両方を組合わせて行うことも可能です。 特定の宗教を持っていない、故人と遺族で宗教や宗派、希望が異なる場合などは、通夜や葬儀は宗教式、告別式や納骨などは無宗教式で儀式を執り行うこともできます。
仏式 | 香炉、燭台(しょくだい)、花立ての三具足が基本。祭壇の上に遺影、位牌、お供え、線香、一膳飯、水などを置き、両脇に供花を飾る。 |
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神式 | 遺影、霊璽、供物をのせるせん案を置き、手間に玉串を載せる玉串案を置く。両脇には榊と灯も置く。 |
キリスト教式 | 棺や遺影の周りを生花で飾る。棺は祭壇と平行に置くが、カトリックの場合は直角に置くこともある。 |
無宗教 | 棺の周りに故人の好きだった花をあしらうことが多いが、趣味のもの(ギター、ゴルフクラブなど)を飾ることもある。 |
本来は通夜から葬儀・告別式までを自宅もしくは寺院で執り行うのが一般的でしたが、最近は自宅で行うことが減っています。 自宅のスペースが限られていたり、冠婚葬祭サービスが充実してきたことが主な理由です。 例えば通夜だけは自宅で行い、葬儀・告別式は寺院や斎場などで行うといったことも可能です。 故人の意思や宗教によって会場を選びましょう。 中には宗教や宗派を制限している会場やマイク、焼香などを禁止している会場などもありますので、事前に確認が必要です。 上記で解説したように、友引や正月三が日は斎場や火葬場が休みであることが多いです。 また都市部の火葬場は混雑することが多いため、早めにスケジュールを確認しましょう。
一般的な通夜、葬儀・告別式には約200〜300万円の費用が必要といわれています。 予算に限りがある場合は、花や食事などのランクを下げたり、家族や身内だけで行う「家族葬」にするという方法もあります。 費用は主に3つで構成されています。
葬儀社への支払いは、基本セット料金+オプション料金で構成されています。 費用を抑えたい場合は、基本セットを最低ランクにし、オプション追加を避けると良いでしょう。 思わぬ出費が重なることが多いので、予算には余裕をもたせることが大切です。
<基本セットの内容例(セット料金:20〜300万円)> 枕飾り、死装束、棺一式、祭壇一式、位牌、焼香具一式、香典帳やテーブルなどの受付設備、骨壷等、会場の手配、僧侶の紹介、道順表示、式次第作成、葬儀進行などのサービス、火葬許可証の手続き、生花や供物の手配 <オプションの内容例(オプション料金:20〜100万円)> 式場使用料、遺影写真、ドライアイス、会葬礼状、お礼品、貸喪服、霊柩車、火葬場へのハイヤー等、火葬料、空調(扇風機、ストーブ等)、テント、火葬場控え室使用料、精進落しの飲食費など
儀式の形式や予算などが決まったら、通夜や葬儀・告別式の準備や進行を任せる葬儀社へ連絡をします。 葬儀社によってサービス内容や金額が異なりますので、葬儀の規模、予算、宗教宗派、日程、場所などを伝え見積もりやサンプルなどを見せてもらいながら慎重に決めましょう。 葬儀社は周りからの評判で選んだり、立地で選ぶと良いです。 ウェブサイトやパンフレットなどを見て遺族で話し合うのも良いでしょう。 限られた時間の中での準備になりますが、落ち着いて準備を進めましょう。 トラブルを防ぐために複数人で準備を行うことをおすすめします。
<主な葬儀業者の例>
故人が亡くなった際はその旨を家族や親族、友人、勤務先に伝えます。 遺族が全ての人に直接連絡をするのは難しいため、それぞれの代表者に他の人への連絡を頼むと良いでしょう。 通知方法は電話がほとんどですが、最近ではメールなどで知らせることも増えました。 伝える項目は下記の通りです。
電話やメール以外の通知方法としては、町内会や自治体の掲示板、死亡通知状、新聞での死亡広告などがあります。 死亡通知状は相手に届くまでに時間がかか可能性があるため、葬儀・告別式までに時間がある場合のみ出します。 故人が社会的に地位が高かった人や有名人であった場合は、葬儀社か新聞社、広告代理店に死亡広告の掲載を依頼します。 様式や文面はある程度決まっているので、詳細は依頼先に相談すると良いでしょう。 依頼の締め切りは、全国紙なら前日の午後5時まで、全国紙の地方版なら前日の午後10までが一般的です。 「死亡」の表現は宗教によって異なります。 仏教では「死亡」や「死去」、神道では「帰幽(きゆう)」と表現をします。 キリスト教のカトリックでは「帰天」、プロテスタントは「召天」、共通して使えるのは「昇天」です。 また故人が80歳以下の場合は「かねてから病気療養中のところ」などと書き、80歳以上の場合は「天寿を全うし」などと書くことが多いです。
<電話の例> 突然の電話で申し訳ありません。○○○○の妻でございます。 昨日、夕方に○○(故人名)が亡くなりました。 通夜は○月○日午後○時から、葬儀・告別式は○月○日午前○時から、○○にて【仏式・神式・キリスト教式】で行います。 <死亡通知状の例(葬儀・告別式の案内を入れる場合)> 亡妻 ○○○○儀 かねて病気療養中のところ ○月○日○時○分 ○○歳で急逝いたしました ここに生前のご厚誼を深謝し 謹んでお知らせ申し上げます 葬儀および告別式は仏式にて下記のとおり相営みます 記 葬儀 ○月○日(○)午後○時〜○時 告別式 午後○時〜○時 場所 ○○寺(○○バス停より徒歩○分) 令和○年○月○日 喪主 ○○○○ 外 親戚一同 <死亡通知状の例(葬儀・告別式の案内を入れない場合)> 母 ○○○○儀 天寿を全ういたし 去る○月○日 ○歳の生涯を閉じました 本来ならば早速お知らせ申し上げるべきところでございましたが ご通知が遅れました事を深くお詫び申し上げます なお 葬儀は○月○日近親者のみにて執り行いました ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます 令和○年○月○日 長男 ○○○○ <新聞死亡広告の例> 株式会社○○ 前代表取締役社長 ○○○○儀 かねて病気療養中のところ ○月○日 ○○歳にて永眠いたしました ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます なお通夜ならびに葬儀・告別式は下記のとおり相営みます 記 一、通夜 ○月○日(○)午後○時より○時 一、葬儀 ○月○日(○)午前○時より○時 一、告別式 ○月○日(○)午後○時より○時 一、場所 ○○○○寺 (住所) 誠に勝手ながらご香典ご供花ご供物の儀は固くご辞退申し上げます 令和○年○月○日 株式会社○○ 葬儀委員長 代表取締役社長 ○○○○
お通夜の後に会食の席を設ける場合は、料理や飲み物などの準備を行います。 仏教では「通夜ぶるまい」、神道では「直会(なおらい)」、キリスト教では「茶話会」「偲ぶ会」と呼びます。 冒頭でもご紹介した通り、仏教では昔は肉類や魚類の提供は避け精進料理がメインでしたが、最近では刺し身や寿司、サンドイッチやおにぎりなどが主流となっています。 基本的には大皿料理を取り分けて食べるので、オードブルなどの料理を仕出し料理店に依頼すると良いでしょう。 当日でも料理を追加注文できることが多いため、料理が足りなくなる心配は不要です。 神道ではけがれは火から移るといわれているため、喪家での料理は避け必ず仕出しの料理を用意します。 キリスト教の場合は料理よりもお茶とお菓子とシンプルに行うのが一般的です。 会食を設けない場合は、折詰と日本酒1合、あるいはお茶や砂糖、ギフト券などの品を用意し、礼状とともに弔問客が帰る際に渡します。
通夜の翌日に葬儀・告別式を控えている場合は、会場の近くに宿泊することもあります。 最近では葬儀場に宿泊できることも多いため、希望する場合は事前に確認を取りましょう。 会場によっては宿泊不可なところもあるため、その場合はホテルなどを予約しましょう。
自宅で通夜を執り行う場合は、祭壇の飾り付けや受付を設置し、弔問客や僧侶を招き入れる準備をします。 基本的に通夜は出入り口に近い部屋や仏間で行いますが、家が狭い場合は庭先などを使用することもあります。 貴重品や装飾品などは片付けておき、生前の故人を偲ぶ写真など儀式に必要なものは早めに出しておきましょう。 僧侶が待機する部屋や弔問客が着替えたりできる部屋も用意しておきます。 儀式を行う際は玄関は開け放しておくのが一般的です。 自宅の門か玄関に忌の期間であることを知らせる忌中札を貼ります。半紙に薄墨で「忌中」と書き、通夜や葬儀・告別式の日時が決まり次第余白に記入します。 必要に応じて自宅までの案内札を貼ったり、道路使用許可申請を行います。
お布施とは僧侶への謝礼のことを指します。 詳細は後ほど解説しますが、お布施は当日(もしくは後日)に現金でお渡しするため、新札の準備をしておきます。 お札が不足しないように多めに用意しておくと良いでしょう。 また世話役に対しても謝礼を渡すことがマナーとされているため、そちらの準備もしっかりと行っておきます。
通夜や葬儀・告別式に参列してくださった方には、弔問のお礼として返礼品を用意します。 本来は通夜の参列者に「御弔問御礼」を、葬儀・告別式の参列者に「会葬礼状」を郵送するのが礼儀でしたが、最近は儀式当日に手渡すことが多いです。 返礼品を礼状と合わせて清めの塩を入れることもあります。 返礼品や礼状は葬儀社が手配してくれるので事前に注文をしておきましょう。 返礼品とは別に香典返しも用意します。 香典返しは、通夜や葬儀・告別式で香典をお供えした方へ渡すお礼の品です。 当日に渡す場合と、四十九日法要後に渡す場合があります。 返礼品や香典返しに関しては後ほど詳しくご紹介します。
上記でご紹介したように、通夜当日は喪服を着用します。 一般的に、喪主や遺族は準喪服(準礼装)もしくは略喪服(略礼装)を着用します。 突然のことで準備が間に合わない場合は、喪服のレンタルを利用すると良いでしょう。 喪服一式が揃っているか、シワや汚れはないかなどを確認しましょう。 新たに喪服の用意が必要になる場合は、なるべく早めに呉服屋などで購入しましょう。
通夜での席順は、喪主が棺のそばに座るという以外特に決まりはありません。 最近では通夜にも一般の弔問者が参列するようになったため、焼香の順に合わせた席次にすることも多くなっています。 一般的には僧侶が祭壇の正面に座り、祭壇に向かって右側に喪主と遺族、左側に世話役代表や恩師、友人などが故人との縁が深い順番に座ります。 左右に分かれて座れない場合は、喪主や遺族は祭壇の近くに座り、その他の人は到着順に座ります。
弔問者からいただく供物や供花は祭壇付近に並べていきます。 全体のバランスを見ながら並べますが、並べ方が不明な場合は僧侶に相談してもよいでしょう。 飾れるスペースが限られている場合は、供物や供花の受け取りをお断りするという方法もあります。 その場合は、死亡通知をする際に電話やメールなどで伝えます。
戒名とは、僧侶が死者につける仏式の名前です。死後に仏の弟子となったことを意味して名付けられます。 本来、戒名とは生前に授かるものですが、現在は通夜の前までにいただくのが一般的です。 故人が死亡したら菩提寺に連絡し戒名をつけてもらいます。 菩提寺が遠方にあり、通夜や葬儀・告別式は自宅付近の寺院で執り行う場合でも、戒名は菩提寺につけてもらうのが通例です。 菩提寺がない場合や故人の宗派が不明な場合、また故人が戒名は不要と言い残した場合などは、俗名のまま通夜や葬儀・告別式を行うことができます。 ただし菩提寺に納骨をする場合は菩提寺からいただく戒名が必要になりますので、納骨予定がある場合は戒名を名付けてもらいましょう。 戒名をつけてもらう際は、戒名料を支払います。ただし対価ではなくあくまで謝礼です。 読経の謝礼である「お布施」と合わせて渡す場合や、お布施とは分けて「戒名料」として渡す場合があります。 いくら包めばよいか不明な場合は、菩提寺に聞いて具体的な金額を教えてもらうとよいでしょう。 金額目安は後ほどご紹介します。 「戒名」は宗派によって呼び方が異なります。 天台宗、真言宗、曹洞宗、浄土宗、臨済宗は「戒名」、浄土真宗は「法名」、日蓮宗は「法号」といいます。 戒名は「○○院□□△△✕✕」のように、院号、道号、法号、位号で構成されます。 詳しくは下記の表で解説をしていますので参考にしてください。 また神式では仏式の位牌にあたる霊璽(れいじ)に「零号」を「○○○○之霊」「○○○○霊位」などと書きます。 キリスト教では仏式の戒名に相当するものはありませんが、カトリックでは洗礼名が戒名に相当します。
院号 | 「院」は寺院という意味。生前の信仰や社会に大きな貢献をした人に与えられる。 | 院殿:社会的地位が高い人 院:徳を備えた信仰心の篤い人 |
---|---|---|
道号 | もともとは仏道から入り、仏教を極めた人に与えられる称号。 生前の雅号や別名を用いることもある。 |
優雲、妙華など |
法号 | 1字は経文や仏典から、1字は故人の俗名(名前)の文字から引用されることが多い。 | 浄智、日雅など |
位号 | 仏教徒としての位と性別を表す。 | 信士(信女):15歳以上の信仰心の篤い人(一般的につけられる位号) 清信士(清信女):仏教で悟りを開いた人 居士(大姉):徳を備えた信仰の篤い人 禅定門・禅定尼:仏門に入り剃髪した人 童子(童女):15歳未満 孩児(孩女):2〜3歳 嬰児(嬰女):2歳未満 ※(カッコ内)は女性 |
通夜や葬儀・告別式で必要となる備品の購入も忘れずに行います。 喪主や遺族は精神的に余裕がない場合もあるため、世話役などが代わりに購入してもよいでしょう。 その場合は、領収書を保管しておき記帳をします。 備品の例は下記の通りです。
ここではお通夜当日の流れをご紹介します。 お通夜の所要時間は約1時間〜です。
僧侶は通夜開始時刻の30分〜1時間前に会場に到着します。 僧侶が会場に到着次第、僧侶の控室へと案内をし、茶果でもてなします。 通夜が始まる前に祭壇飾りや供物の並べ方を確認してもらい、通夜や葬儀・告別式の打ち合わせを済ませます。 戒名をまだいただいていない場合は、この時間で位牌に戒名を書いてもらいます。 戒名の入った位牌は、通夜が始まるまでに祭壇に飾るようにしましょう。
通夜の受付は、開始時刻の30分前ほどから始まります。 弔問者は会場に到着次第、受付で芳名帳への記入や香典のお供えを終え、待機場など指定された場所で待ちます。 喪主と遺族は通夜開始時刻の15分程前になったら棺のそばに着席します。 一般の弔問者は指定された席に着くか、席が決められていない場合は先着順に座っていきます。 自身の席についたら携帯電話はマナーモードもしくは電源を切り、進行の妨げにならないようにします。 私語は慎み、通夜が始まるまで自席で静かに待機しておきましょう。
喪主や遺族、参列者が着席し次第、「僧侶のご入場です。一同、ご起立ください。」などの進行役の挨拶で通夜が開式となります。 僧侶が入場し席に着いた後は、僧侶もしくは進行役の合図で着席します。
僧侶による読経は、約30分〜1時間程度です。 読経が始まったら静聴します。僧侶が合掌礼拝するタイミングで参列者もそれにならって合掌礼拝をします。 僧侶が読経をしている間に参列者は焼香を行います。 詳しくは次でご紹介します。
焼香は血縁関係が濃い人から順番に行います。 喪主→遺族→世話役→恩師、先輩など→一般弔問客(職場関係、友人など)の順番です。 遺族の中の焼香の順番は、例えば故人が主人(喪主が妻)の場合の焼香の順番は、姓の変わらない子供→姓の変わった子供→故人の父母→故人の配偶者の父母→故人の孫→故人の兄弟姉妹→故人の配偶者の兄弟姉妹→故人のおじおば→故人の配偶者のおじおば→故人の甥姪の順番で焼香をします。 喪主や遺族に続いて上席から順番に焼香台に立ちますが、会場が狭い場合は回し焼香を行う場合もあります。 自分の順番が回ってきたら、次の人に「お先に」と一言声をかけて軽く会釈をして焼香をします。 主な焼香のやり方は、 合掌→一礼→お香を右手親指・人差し指・中指でつまんで香炉に落とす→合掌→一礼 となります。 お香を香炉に落とす回数は基本的には3回とされていますが、厳密には宗派によって異なります。
宗派に問わず時間に限りがある場合は司会者から「焼香は一回にしてください」などと指示あるので従いましょう。 焼香を終えた後は、通夜ぶるまいの席に移動する場合と、自席に戻り式が終わるのを待つ場合があります。 いずれにせよ世話役の案内に従います。
参列者の焼香が終わり次第、僧侶の法話が始まります。 法話とは、仏教に関する話のことを指します。 僧侶が故人の人柄を偲びながら話します。 法話が終わったら参列者全員で合掌をし一礼をします。 法話の後、僧侶は一度退場をします。
法話が終わり次第、僧侶は退場し控室へと戻ります。 僧侶が退場する際に進行役から指示がある場合は一度起立をし僧侶を見送ります。 地域や家庭、通夜の規模などによっては僧侶が退場しない場合もあります。
下座に移動し、通夜が無事に終わった旨を手短かに述べます。 喪主のあいさつをもって通夜自体は終了となります。 通夜の後に通夜ぶるまいへと続く場合は、その案内も述べましょう。 参列者は喪主の案内に従って移動をします。 挨拶の例は上記でご紹介していますので参考にしてください。
通夜の後に通夜ぶるまいがある場合は、通夜の会場とは別室に食事が用意されています。 進行役や喪主の指示に従って移動し、指定された席へと着席をします。 僧侶が通夜ぶるまいに参加する場合は、最上席に着席します。 通夜ぶるまい終了時は喪主がお開きの挨拶をします。通夜ぶるまい後、遺族はひと晩中灯明や線香を絶やさないようにするのが一般的です。
「御布施」は「おふせ」と読みます。どの宗教でも、お札を半紙で包むか白封筒に入れます。 主に読経いただいく際に僧侶に差し上げるお礼の金品のことを指します。お布施の金額に戒名料(戒名の謝礼、仏教の場合)が含まれる場合もあります。 仏教の表書きは「御布施」や「御礼」、神道は「御祭祀料」、キリスト教は「献金」などと書きます。 御布施の金額の目安は3〜10万円といわれています。 宗教や地域、寺院などによって相場は異なりますので、事前に確認することを推奨します。 お布施は葬儀・告別式の当日もしくは翌日に渡すのが礼儀です。 ただし僧侶を葬儀社に紹介された場合は、通夜と葬儀・告別式を分けてその都度お渡しすることもありますので事前に確認をしましょう。
上記でご紹介した通り、戒名とは僧侶が死者につける仏名のことです。 戒名をつけていただいく謝礼として「戒名料」をお渡ししますが、お布施の金額と合わせて渡すこともあります。 戒名料の金額や渡し方は地域や宗派によって異なりますので、必ず事前に確認をしましょう。宗派によっては戒名料が不要な場合もあります。 戒名料の金額は、戒名のクラスや寺院によってかなり差があります。 おおよその目安は下記の通りです。
「御車代」は僧侶が自ら会場へ出向いた場合に渡す謝礼です。 自家用車で僧侶の送迎をする場合は不要です。 御車代の目安は5,000円〜10,000円程度です。 御布施とは別の奉書紙や白封筒に包み、通夜が始まる前に渡します。
「御膳料」は僧侶が会食を辞退する場合に渡します。 僧侶が会食に参加する場合は包む必要はありません。 御膳料の目安は御車代と同じ5,000円〜10,000円程度です。 通夜が始まる前、もしくは通夜が終わり僧侶が帰られる際に渡します。
通夜や告別式などを手伝ってくださった方にもしっかりとお礼をする必要があります。 世話役や弔辞を読んでくださった方、会場スタッフなどが該当者です。 金額相場は1人2千〜1万円が目安です。世話役には1〜2万円と多めにお渡しします。 現金以外にもプリペイドカードや商品券をお渡しすることもあります。 この場合の表書きは「御礼」もしくは「志」とします。
ここではよく混同される「返礼品」と「香典返し」について解説していきます。
返礼品とは、通夜や葬儀・告別式に訪れた参列者へお礼の気持ちとして渡す品物のことを指します。 お礼を述べた挨拶状(会葬礼状)と一緒に渡します。 本来は「通夜返礼品(通夜の弔問客で通夜ぶるまいに欠席する人渡す)」、「会葬返礼品(全ての弔問者に渡す)」、「香典返し(香典をいただいた人に渡す)」の3種類に分かれていました。 しかし最近では、共通の返礼品を渡すことが多くなっています。 お茶(紅茶)、海苔、ジャム、タオルやハンカチ、プリペイドカード、図書カードなど、金額にして1,000円前後のものを用意します。 万が一当日不足しても追加注文ができたり、余った場合は返品可能な場合があるため返礼品の手配は葬儀社に依頼すると良いでしょう。予想される弔問者の人数よりも多めに手配しておくと安心です。 清めの塩も合わせて渡しますが、宗教や宗派によっては不要な場合もあるため事前に確認をしましょう。 会葬礼状(お礼状、挨拶状)の文面は、定型文を葬儀社が用意しているのでそれらを参考に作成しましょう。 差出人の名前は喪主のみ、もしくは親戚代表や葬儀委員長の連名にすることもあります。 弔辞を依頼した人には一般の礼状とは別に、弔辞の内容に触れたものを用意し渡すのが礼儀です。 会葬礼状の文例は下記の通りです。
<会葬礼状の文面(仏式、神式の場合)> このたびは 亡父○○○○の葬儀に際しまして、ご多忙の折にもかかわらず 遠路わざわざご会葬くださいまして まことにありがとうございました そのうえご丁重なご厚志を賜り 厚く御礼申し上げます なお 故人が生前に賜りましたご懇情に対しまして あわせて深謝いたします さっそく拝眉のうえ 御礼を申し上げるべきところですが 略儀ながら書中をもってごあいさつ申し上げます 令和○年○月○日 葬儀委員長○○○○ 喪主○○○○ 外 親戚一同 <会葬礼状の文面(キリスト教の場合)> 先般父○○○○召天の際はお心の込もった御弔問をいただき またご丁重なるご厚志を賜り ありがたくお礼申し上げます おかげさまをもちまして 本日諸式滞りなく相すませました まずは略儀ながら書中をもってごあいさつ申し上げます 令和○年○月○日 喪主○○○○
「香典返し」とは、通夜や葬儀で渡した香典に対する御礼品のことを指します。 上記でご紹介した「返礼品」は弔問に対するお礼であるため、香典返しとは別物です。 香典返しとしての品物は挨拶状(礼状)とともに弔問者に贈られます。 しかし、故人の遺志や遺族の方針で香典返しをせずに団体や基金などに寄付することもあります。その場合品物は贈られず、挨拶状だけが弔問者へと送られます。 香典返しを贈るタイミングは通夜や葬儀・告別式当日の参列者が帰る際に渡す「当日返し・即日返し・その場返し」と、忌明け(喪に服する期間が終わること)に渡す「忌明け返し」の2種類があります。 本来香典返しは忌明けに贈るべきものだとされていますが、最近では発送の負担が軽減するなどの理由から当日返しをすることが多くなっています。 忌明けの時期は宗教によって異なり、仏式では三十五日もしくは四十九日法要後、神式では五十日祭後、キリスト教では死後30日目の追悼ミサや召天記念日となります。 香典返しの金額相場は香典の3分の1〜半額程度が目安で「半返し」ということもあります。 香典の額には幅があることが予想されるため、段階に応じた香典返しの品物を贈ると良いです。 しかし最近では、香典の金額に関わらず参列者全員に同じ品物を渡し、高額な方に関しては別途返礼することも多くなっています。 香典返しの品物にはあとまで残らない消耗品を選ぶのが基本とされています。 例えば、お茶、海苔、砂糖、菓子、タオル、洗剤、寝具、ギフトカタログなどです。 葬儀場や百貨店で手配します。当日返しをする場合は、返礼品と同様に多めに用意しておくと安心です。 香典返しには熨斗(のし)がない掛け紙と黒白、双銀、黄白(関西)のいずれかのむすびきりの水引きを使用します。 一般的な表書きは仏教の場合は「志(こころざし)」で、喪主の氏名(フルネーム)または姓のみを記載します。 仏教以外の宗教では、神道は偲草(しのびくざ)、キリスト教は追悼ミサ(※カトリック)、召天記念(※プロテスタント)などが表書きとなります。
<香典返しの挨拶状の文例(当日返しの場合> 本日はお心のこもったお悔やみの言葉をはじめ 過分なお心配りをいただきまして誠にありがとうございました つきましてはささやかではございますがご香典返しといたしいまして 心ばかりの品をご用意させていただきました 何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます 略儀ながら書面にて深く御礼申し上げます 喪主 <香典返しの挨拶状の文例(忌明け返しの場合)> 謹啓 先般 母○○永眠の際の際にはご多用のところご丁重なご弔詞(ご芳志)を賜りまして誠にありがとうございました 四十九日法要を営みました 供養のしるしまでに心ばかりの品をお届けいたしましたのでお納めくださいませ 書面にて失礼ではございますがお礼かたがた挨拶申し上げます 敬具 令和○年○月○日 涌井太郎
「法要」とは仏教用語で、死者の冥福を祈り霊を慰めるために行う儀式のことを指します。 法要は初七日から百回忌まで全18回です。 初七日から百か日までの法要を追悼(忌日)法要、一周忌から百回忌までの法要を年忌法要といいます。 「忌日(いみび)」とは、故人の命日から四十九日までの間にある、7日目ごとの法要を営む日のことです。 本来は初七日後、7日目ごとに追善供養を行うことが正式なのですが、初七日は葬儀・告別式と同じ日に済ませることが多く、また四十九日の法要までは省略されることも増えています。 法要の中でも初七日、七七日(四十九日)、一周忌、三回忌の4回の法要は、僧侶や近親者、友人、知人などを招いて盛大に行うのが一般的です。 最後の年忌法要を「弔い上げ(とむらいあげ)」といいます。最後の法要をもって故人の霊は先祖霊になるといわれています。 本来は百回忌まで法要を行うことが正式ではありますが、最近では三十三回忌や五十回忌で切り上げ「年忌明け」とすることが一般的になっています。 その背景には高齢化があり、故人が高齢で亡くなる場合施主も高齢になり法要の実施に負担がかかるためです。 仏教の法要(法事)は下記の通りです。
法要の名称 | 死後日数・年数 | 参列者 | 内容 | |
---|---|---|---|---|
追悼(忌日)法要 | 初七日(しょなのか) | 7日目 | 近親者・友人・知人 | 葬儀や告別式当日に繰り上げて行うことも多い。 |
二七日(ふたなのか) | 14日目 | 遺族のみ | 最近では省略することも多い。 | |
三七日(みなのか) | 21日目 | |||
四七日(よなのか) | 28日目 | |||
五七日(いつなのか) 三十五日 |
35日目 | 地域や宗派によってはこの日が忌明けとなるため僧侶に読経をしてもらう。 | ||
六七日(むなのか) | 42日目 | 最近では省略することも多い。 | ||
七七日(なななのか) 四十九日 |
49日目 | 近親者・友人・知人 | 追悼(忌日)法要で最も重要な法要で、この日をもって忌明けとなる。僧侶による読経や法話などを行う。四十九日法要と合わせて納骨式や会食(お斎)を行うことが多い。 | |
百か日 | 100日目 | 遺族のみ | 「卒哭忌(そつこくき)」ともいわれ、泣くことをやめ悲しみに区切りをつける日ともいわれている。 | |
年忌法要 | 一周忌 | 1年目の祥月命日 | 近親者・友人・知人 | 僧侶に読経してもらう。 |
三回忌 | 2年目の祥月命日 | |||
七回忌 | 6年目の祥月命日 | 遺族のみ | 僧侶に読経してもらうのが基本だが、身内だけで供養することも多い。 | |
十三回忌 | 12年目の祥月命日 | |||
十七回忌 | 16年目の祥月命日 | |||
二十三回忌 | 22年目の祥月命日 | |||
三十三回忌 | 32年目の祥月命日 | 近親者・友人・知人 | 僧侶に読経してもらう。 | |
三十七回忌 | 36年目の祥月命日 | 遺族のみ | 法要を省略することが多い。 | |
五十回忌 | 49年目の祥月命日 | |||
百回忌 | 99年目の祥月命日 |
神道では仏教の「追悼(忌日)法要」や「年忌法要」にあたるものを「霊祭(霊前祭)」「式年祭」といいます。 葬儀翌日の翌日祭から百日祭までを「霊祭」と呼び、五十日祭までは10日ごとに霊祭を行うのが正式です。 百日祭以降は「式年祭」と呼び、一年祭、三年祭、五年祭、十年祭と行い、十年祭以降は十年ごとに式年祭が行われます。 仏式と同様に一年祭や三年祭などは、近親者や友人、知人を招いて大々的に行います。 二十日祭、三十日祭、四十日祭、百日祭などは身内だけで供養したり、省略することもあります。 神式の忌明けは五十日祭とされています。仏式の四十九日にあたる法要で、霊祭のなかで最も重要な儀式です。 「清祓いの儀」といって、神棚を封じていた白紙をはがす儀式が行われます。 この儀式をもって遺族は平常の生活に戻ります。
祭の名称 | 死後日数・年数 | 参列者 | 内容 | |
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霊祭・霊前祭 | 翌日祭 | 2日目 | 遺族のみ | 葬場祭の翌日、葬式の無事終了を報告する儀式。 |
十日祭 | 10日目 | 近親者・友人・知人 | 仏式の初七日にあたる儀式。神官による祭儀が行われる。 | |
二十日祭 | 20日目 | 遺族のみ | 最近では省略することも多い。 | |
三十日祭 | 30日目 | |||
四十日祭 | 40日目 | |||
五十日祭 | 50日目 | 近親者・友人・知人 | 仏式の四十九日にあたり、神式の霊祭でもっとも重要な儀式。五十日祭後は忌明けとなる。 | |
合祀(ごうし)祭 | 50日〜100日目の任意 | 近親者・友人・知人 | 追悼(忌日)法要で最も重要な法要で、この日をもって忌明けとなる。僧侶による読経や法話などを行う。四十九日法要と合わせて納骨式や会食(お斎)を行うことが多い。 | |
百日祭 | 100日目 | 遺族のみ | 最近では省略することも多い。 | |
式年祭 | 一年祭 | 1年目の命日 | 近親者・友人・知人 | 神官に祭詞を奏上してもらう。 |
三年祭 | 2年目の命日 | |||
五年祭 | 4年目の命日 | |||
十年祭 | 9年目の命日 | 遺族のみ | 最近では省略することも多い。 | |
五十年祭 | 49年目の命日 | 近親者・友人・知人 もしくは遺族のみ |
五十年祭を最後に以降の式年祭を省略することが多い。 |
キリスト教の追悼儀式は、祈りや聖書朗読などを中心に簡素に営まれます。 仏式の法要に相当するものをカトリックでは「追悼ミサ」、プロテスタントでは「記念式」といいます。 カトリックの場合、死後3日目、7日目、30日目に追悼ミサが行われ、月命日と年命日に「命日祭」を行うこともあります。 教会に近親者や友人などが集まって、神父の司会進行のもと祈りや聖歌を捧げます。 追悼ミサの後は神父や参列者とともに茶話会が開かれます。 カトリックは毎年11月2日に「万霊節」という特別なミサを開きます。万霊節では教会で死者の霊を祈ります。 プロテスタントの場合は、死後1ヶ月目に「昇天記念日」が、死後1年目、3年目、7年目に「記念式」が行われます。 基本的には自宅に家庭祭壇を設けて牧師を招き、祈り、聖書朗読、説教、讃美歌が行われます。記念会の後は茶話会が開かれます。 プロテスタントは毎年11月の第1日曜日に「永眠者記念礼拝」を行い、家族や信者が参加し追悼ミサを行います。
追悼儀式の名称 | 死後日数・年数 | 参列者 | 内容 | |
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カトリックの場合 | 追悼ミサ | 3日目 | 近親者・友人・知人 | 聖歌、祈り、茶話会が行われる。 |
7日目 | ||||
30日目 | ||||
命日祭 | 月の命日と年の命日 | 近親者・友人・知人・信者 | ||
万霊節 | 毎年11月2日 | 教会で追悼ミサが行われる。 | ||
プロテスタントの場合 | 召天記念日 | 1ヶ月目 | 近親者・友人・知人 | 祈祷、説教、讃美歌斉唱などが行われる。 |
1年目 | ||||
3年目 | ||||
7年目 | ||||
永眠者記念礼拝 | 11月第1日曜日 | 近親者・友人・知人・信者 |
今回はお通夜に関する基礎マナーをご紹介しました。 主な内容は下記の通りです。