「天啓」は天や神からのお告げ、みちびき、教えを意味します。もとは宗教用語ですが閃きやインスピレーションという意味で日常会話で使われることもあります。「天啓」という言葉の意味と使い方を例文つきで解説していきます。
「天啓」とは主にキリスト教で用いられる宗教用語です。 「天啓」の原義は「神の示し」です。 「示し」とは「手本を見せて教える」という意味です。 「天啓教」とはユダヤ教・キリスト教・イスラム教など天啓に基づく宗教を指します。 「天啓教」と呼ばれる宗教は一神教です。 啓蒙主義の時代に、自然宗教に対して特にキリスト教を指して呼ばれました。 「天啓説」とは「天啓が宗教の起源とする考え」です。 天啓が超越者の側から人間に、人間の力では知ることができない内容を示してるとして、宗教が人間を超えたところに起源や根拠をもつと主張する説です。 「天啓史観」とは、神の人類に対する取り扱いの歴史(救済史)が、七つの時期に分割されるとする神学です。 「ディスペンセーション主義」とも呼ばれます。 「ディスペンセーション主義」は「dispensation(天の配剤。天啓法)」が語源です。
「天啓」という言葉は堅い語なので日常的に使うことは少ないですが、宗教とは関係なく使うこともできます。 単に「天の導き。天の教え」というニュアンスで使うことができます。 「閃き(ひらめき)」「インスピレーション」という言葉に置き換えてもよいかもしれません。 「天啓を受ける」「天啓を得る」などと「自分の想像力を超えたようなアイデアを手にする」という意味で使います。 「天啓にうたれる」「天啓が降りる」など使うとスピリチュアルな響きが強いです。 「天啓的」という表現もあります。 「天啓がひらめく」という表現は正しいか否か微妙なところです。 「ひらめく」の意味が「瞬間的に考えが脳裏に浮かぶ」なので、「ひらめく」単体で「天啓を受ける/得る」という意味と同じです。 そのため「天啓がひらめく」とすると二重表現でないと否定できません。 よって「天啓がひらめく」という表現は意味は通じますが、使用しないのが無難といえます。
「天啓」の例文
「天啓」の類語には、
「啓示(けいじ)」は「天啓」に最も意味が近く、言い換えが可能です。 「啓示」は主に宗教用語として使用し、「神自らが人知を超えた真理を人間にあらわし示す」という意味です。 「天啓教」は「啓示宗教」という方が一般的です。 「啓示」と似た言葉に「黙示」があります。 「黙示」は「もくし」または「もくじ」と読みます。 「黙示」とは象徴や幻などのしるしを用いて暗黙のうちに世紀末における神の救済の神秘が示されることです。 『新約聖書』の最後の聖典である「ヨハネの黙示録」が有名です。 「教化(きょうか)」の意味は「人を教え、よい影響を与えて善に導くこと」です。 「教化」の語源は仏教用語で、その場合「きょうけ」と読み、「説き教えて感化し、人々を仏道に導くこと」という意味になります。 「啓明(けいめい)」とは「明けの明星」の別名で、金星を指します。 それ以外に「啓明する」の形で「教え明らかにする」という意味があります。 現代ではこの意味で使うことは稀です。
「天啓」と同じく「天」を含む同音異義語に「天恵」「天刑」があります。 「天恵」は「天や神が人間に与える恵み」を意味します。「天恩」でも同義です。 「天刑」は「天がくだす刑罰。天の制裁」です。「天罰」が同義語です。
宗教用語の「天啓」の英語は「revelation」です。 「啓示」と和訳されることが多いです。 宗教用語から転じて「今まで知らなかったことを知る」という意味でも使います。
Ann wants divorce after the revelation that her husband is cheating on her.
旦那が浮気していると知って、アンは離婚したくなった。
「ひらめき」という意味合いならば「inspiration」を使うことができます。 上述しましたが、日本語で「インスピレーション」ともいいますよね。 英語「inspiration」の語源であるラテン語での意味は「息を吹き込まれたもの(blow into, breathe upon)」です。 英語でも1300年代までは「神からの即座の影響」=「霊感」という意味で使われていました。
He had an inspiration for starting his own business.
彼は起業するための天啓を得た。
「天啓」という言葉は中国で年号としても使用されていました。
上記の最後にある明代第16代皇帝は年号にちなんで「天啓帝」と呼ばれます。 「天啓元年」というと1621年を指します。
上記の天啓の時代に作られた、赤絵磁器を真似たものを「天啓」と呼びます。 白い陶磁器に赤をメインして、青や緑などで色彩豊かに自然や人物を描いたものが多いです。 日本の有田焼に大きな影響を及ぼしたといわれています。
イスラム教の聖典である『コーラン』の25番目の章は「識別」または「天啓」と呼ばれます。 「天啓」の章では、しっかりと信仰心を持てば、どんな大きな罪であっても許されないものはない、とうたわれています。
イエス・キリストは、十字架に架かるために生まれたのであろうか?全人類の罪を贖うために、生まれたのであろうか?本書の全てが神の啓示によって語られ聖書の真髄がいま証される―。
地図・絵画も満載。 人生に効く! 教養として、『聖書』の知識は欠かせない。
スティーブ・ジョブズの「生涯の師」で、iPhoneやiPodなどの革新的製品の設計思想にヒントを与えた日本人僧侶・乙川弘文。
いかがでしたか? 「天啓」の意味と使い方はご理解いただけましたか? 「天啓」はあまり聞き慣れない言葉かと思いますが、「天からの教え」つまり「閃き」と覚えておけば問題ありません。