「お召し上がりください」は、目上の人に食すことを促すときに使用する敬語表現です。今回は「お召し上がりください」の正しい意味と敬語、使い方を例文付きで紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「召し上がる」は「食べる」の尊敬語です。 尊敬語とは、相手の動作を高めることで相手に敬意を示す敬語表現です。 相手が食べるという動作をすることを言い表すときに使用し、自分自身が食べるということを言い表すときには使用することはできません。
「飲む」の尊敬語は「お飲みになる」と「飲まれる」です。 「お飲みになる」は「飲む」に接頭辞の「お」をつけています。 接頭辞の「お(ご)」は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 目上の人の動作を高めて相手に敬意を示すためにつける接頭辞は尊敬語。 自分の動作をへりくだり相手に敬意を示すためにつける接頭辞は謙譲語。 言葉をただ丁寧に言うだけなら接頭辞は丁寧語になります。 「お飲みなる」の場合、目上の人の動作を高めるためにつけているので接頭辞の「お」は尊敬語になります。 よって、「お飲みになる」は目上の人に使用できる敬語表現です。 「飲まれる」は、「飲む」に助動詞「れる」をつけた敬語表現です。 助動詞「れる」には「尊敬」「自発」「受身」「可能」の意味があり、目上の人の飲むという動作を言い表すためにつける「れる」は尊敬語になります。
「お召し上がり下さい」は二重敬語です。 二重敬語とは一つの語に同じ種類の敬語表現を二つ以上重ねて使用してしまうことです。 二重敬語は、過剰な敬語表現として相手に不快感を与えるため誤用とされています。 「お召し上がり下さい」は、「食べる」の尊敬語「召し上がる」に、さらに尊敬を表す接頭辞の「お」をつけているので尊敬語を重ねて使用した二重敬語です。 よって、厳密に言えば間違った敬語表現であるといえます。 ただし、昨今ではよく使われるのも事実で、使用しても問題はありません。 間違った敬語表現であっても使用する人が多いことで常用化されることはよくあります。
「お召し上がりください」は、パーティーや会食で目上の人に食すことを促すときに使用する言葉です。 例えば、出された食事などを目の前に「冷めないうちにどうぞ食べてください」など食べることを促す場面です。 主な言い回しには、
などがあります。
「お召し上がりください」の例文
「お召し上がりください」は、目上の人に食べ物を贈呈するときに使用することもできます。 例えば、ビジネスシーンで相手先の会社を訪れたときに手土産で食べ物を渡すときや、旅行に行ったときのお土産を渡すという場面です。 目上の人に食べ物を贈呈するときは
などの言い回しを使用すると丁寧で印象が良いです。
「お召し上がりください」(目上の人に食べ物を贈呈する)の例文
「お召し上がりください」は上述したように、尊敬語を二回重ねて使用している二重敬語です。 「召し上がってください」であれば正しい敬語表現になります。 「召し上がってください」は、尊敬語「召し上がる」に丁寧語「ください」で、目上の人に使用できる正しい敬語表現です。 そのまま「お」をとった、「召し上がりください」は少し不自然なので、「召し上がってください」を使用するのが一般的です。
「食べてください」は「食べる」に「くれ」の丁寧語「ください」を使用した正しい敬語表現です。 ただし、「ください」が命令形「くれ」の丁寧語であることから、一方的なニュアンスになってしまいます。 ですので、「食べてください」は目上の人に使うのはあまりお勧めできません。
「お食べください」「お食べになってください」は”尊敬を表す接頭語”「お」+丁寧語「ください」で成り立っています。 例えば、上司にお土産を渡す際に「旅行のお土産です。是非お食べください」などと言います。 ただ、「お食べください」「お食べになってください」は正しい敬語ですが、「召し上がってください」と比べてやや丁寧さに欠けるので、相手や状況によってはあまり相応しくない表現です。 目上の人にはなるべく「召し上がってください」を使うようにしましょう。
「いただく」は「もらう」の謙譲語です。 謙譲語は、自分をへりくだって相手を上げる敬語です。 ですので、「いただいてください」「いただかれてください」と相手の動作に対して使うことはできません。 例えば、「部長、どうぞお昼をいただいてください」「美味しいのでよかったら◯◯さんもいただかれてください」といったような使い方は間違いなので注意しましょう。 「お先にお昼をいただきます」というように、自分の動作に対して使用するのが正しい使い方です。
「られる」は上述したように”可能・受身・自発・尊敬”を表す助動詞です。 ”可能”の意味で使うとすると、「どんなに満腹でもお菓子だけは食べられる」「さっきご飯を食べたばっかりだが、もう昼食を食べられる」などとなります。 ”受身”の意味で使うとすると、「小さな魚が大きな魚に食べられてしまった」「冷蔵庫にしまったシュークリームを母に食べられてしまった」などとなります。 ですので、「食べられてください」だと「皆さん、食べられちゃってね!」と意味不明なことを伝えているので、非常に失礼です。 ただし、「られる」は”尊敬”という意味もあるので、「◯◯さんは朝食は食べられました?」などと使うのは問題ありません。
「賞味」は「食べ物をほめ味わうこと」を意味します。 ”単に味わうこと”ではなく、”褒めたたえながら味わうこと”というニュアンスです。 「ご賞味ください」といった場合は、「美味しいので、是非食べてみてください」という意味合いになります。 「ご賞味ください」は高飛車なイメージになるので、基本的に目上の人に対しては使用しません。 例えば、目上の人の自宅にお邪魔して、手土産を渡す際に「どうぞご賞味ください」と言うと、自分が差し出した物を「どうぞ褒めたたえながら、味わってください」という意味で渡したということになります。非常に失礼で上から目線なイメージを持たれてしまいます。 「ご賞味」はそもそも料理人や店員などが、自分・自社の商品をアピールするための言い回しで、「是非、しっかりと味わって、吟味してほしい」というときに使います。
「頂戴」は「もらう」の謙譲語です。 また、「頂戴」は、食べることをへりくだって言う言葉でもあります。 ですので、相手に対して「頂戴してください」と言うのは間違いです。 例えば、「こちらの果物を頂戴してください」「いくつかお菓子を頂戴してください」などという使い方は誤りです。 「先日は結構なお品を頂戴し、ありがたく存じます」「こちらのお菓子を頂戴します」などが正しい使い方です。