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「師事」は誤用注意!意味と使い方、類語、対義語、英語を例文つきで解説

「師事(しじ)」の意味は「師として仕え、直接教えを受けること」です。履歴書などでも使用することのある言葉なので耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。今回は「師事」の正しい意味や使い方を解説します。「師事」の類語や対義語、英語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。

「師事」とは

「師事」の読み方は「しじ」

「師事」の読み方は「しじ」です。 「師」の読み方は音読みで「シ」、「事」は音読みで「ジ」と読みます。

「師事」の意味は「師として教えを受けること」

「師事」の意味は「師として仕えて、直接教えを受けること」です。 「師」は「教えを導く人。手本となる人」という意味です。 「事」は「仕える」という意味です。 相手を「師」とするということは、自分の立場は「弟子」になります。 師を尊敬し、その人から技術やセンスの教えを受けることを言い表します。

「師事」の使い方と例文

「〜に師事する」の形で使う

「師事」は、「〜に師事する」の形で使用されます。 「〜に師事する」で「〜に教えてもらう」という意味になります。 上述しているように相手を「師」としているということなので、その道に秀でた人や自分が尊敬している相手に教えてもらう場合にのみ使用することができます。 「師事す」は「師事する」の文語的表現(古い言い方)です。

例文

  • 著名な漫画家に師事する。
  • ピアノについては長年橋本先生に師事しています。
  • 留学先でオリバー教授に師事した。

「師事された」は受身ではなく尊敬

「師事された」の「された」は、「される」に過去の助動詞「た」をつけた言葉です。 「される」は「する」の未然形に助動詞「れる」がついた言葉で、助動詞「れる」には「自発」「受身」「可能」「尊敬」の意味があります。 「師事された」を受身としてはあまり使いません。 「カラヤンは小澤征爾に師事された」は文法的に正しいですが、このような言い方はあまりしません。 これだと小澤征爾に師事されたことがすごいことのような印象を与えてしまいます。 そもそもカラヤンが偉大な指揮者であったため、まだ実績がなかった小澤征爾が師事したわけです。 「師事された」は尊敬と解釈するのが自然です。 「小澤征爾はカラヤンに師事された」で、小澤征爾の行為に対する敬語となります。 当時は師事する側だった小澤征爾も現在ではマエストロなので、このように尊敬語を使うのは正しいと言えます。

「師事」は履歴書でも使う

「師事」は履歴書でも使用する言葉です。 「○○氏に師事」というように、自分が尊敬している師の名前を入れて経歴やプロフィールの欄に書きます。 例えば、自分の尊敬する人の弟子となるために上京し、実際に演技の指導を受けていたことがあるという場合です。 たまたま行ったスクールに、その道で有名な人が教師としていて教わることができたという場合には「師事」とはいえないので注意しましょう。

例文

  • 音楽教育システム専門コースにて斎藤和子氏に師事。
  • ○○大学で林氏に師事するため上京。

「師事」の誤用に注意

「師事を仰ぐ」ではなく「師と仰ぐ」or「指示を仰ぐ」

「師事を仰ぐ」という言い回しは誤用です。 「仰ぐ」には

  • 見上げる優れた者として尊敬する
  • 尊敬してある地位についてもらう
  • 下の者が上の者から働きかけを求める
  • 毒などを上をむいて一気に飲む
  • という意味があります。 「師事」は「教えを受ける側が、指導者に仕える」ということを意味する言葉なので、「師事を仰ぐ」は正しい表現ではありません。 正しくは「師と仰ぐ」「指示を仰ぐ」です。 「師と仰ぐ」は「師として尊敬する」と言う意味です。 「指示を仰ぐ」は、「指示をしてほしい」と下の者が上の者に求める表現になります。

    「指示を仰ぐ」の意味と使い方、敬語、類語、対義語、英語を解説

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    「師事を乞う」ではなく「教えを乞う」

    「師事を乞う」も、よくある誤用です。 「乞う」の意味は「あるものを与えてくれる、またはある事をしてくれるように相手に願いを求める」という意味です。 正しくは「教えを乞う」または「教示を乞う」です。 また、「乞う」を「請う」としないように注意しましょう。 「乞う」は「頼みねだる」という意味があり、「請う」は「許しを願う」という意味があります。 案内や添え、慈悲などを頼む場合は「乞う」を使用します。

    「師事を受ける」ではなく「教えを受ける」

    「師事を受ける」も誤用です。 「師事」は上述しているように「相手を尊敬し、その人から技術やセンスを教えを受ける」という意味で使用されるので「師事を受ける」という表現も不自然です。 正しくは「教えを受ける」です。

    「師事している先生」は二重表現(重言)

    「師事」は「先生としてその人に仕える」という意味なので、「先生」という言葉と併用した「師事している先生」は、二重表現になってしまいます。 二重表現とは、同じ意味のある言葉を重ねて使用してしまうことをいい、「重言」ともいいます。 例えば「頭痛が痛い」などが二重表現にあたります。 「師事している方」とするか、「師事している佐藤先生」などと人名+先生なら問題ないでしょう。

    「師事」と関係のない「従事」

    「従事」は、響きが似ている表現ですが「師事」とは関係ありません。 「従事」は「じゅうじ」と読みます。 「従事」の意味は「仕事に従うこと」「仕事に携わること」です。 ある物事に仕事として関係すること、仕事に就く、勤めることを表します。 「従事する」は「事に従う」と書きますが、この「事」とは「仕事」を指します。 例えば、「研究に従事する」「事務の仕事に従事する」「ある業種に従事する」などと使います。

    「師事」の類語

    「入門する」「門下に入る」「弟子になる」に言い換え可

    「師事」は、「入門する」「門下に入る」「弟子になる」に言い換えることが可能です。 「入門する」「門下に入る」「師についてその弟子になること」を意味します。 「弟子になる」は、特定の師匠について学問・技術などの教えを受けるという意味です。 「師事する」は、「〜の門下に学ぶ」「弟子入りする」などと同義です。 また、「直門(じきもん)」という言葉も類語になります。 「直門」の意味は「師からじかに教えを受けること」です。 また、その人を「直弟子(じきでし)」と言いあらわすことができます。

    「私淑」は「密かに尊敬し、規範として学ぶこと」

    「私淑」は「ししゅく」と読みます。 「私淑」の意味は「密かに尊敬し、模範として学ぶこと」です。 「私」は「ひそか」、「淑」は「よしとする」という意味があります。 直接教えをうけたことはないが、尊敬する人を密かに師をして仰ぐことを言い表す言葉です。 「師事」の類語ですが、「私淑」は直接教えを受けるわけではなく、尊敬する人を密かに模範とすることを言い表すという点で「師事」とは異なります。

    「薫陶を受ける」は「人徳や品格のある人に影響され、人格が磨き上げられる」

    「薫陶」は「くんとう」と読みます。 「薫陶」の意味は

    • 自分の徳で他人を感化すること
    • すぐれた人格で教え育て上げること

    です。 これはただ教育するのではなく、人格面を含め道徳的な教育をし、また指導をせずに自分自身の徳の力によって人を感化し育てることを言い表します。 「薫陶を受ける」で、「人徳や品格のある人から影響され、人格が磨き上げられる」となります。 感化されたり、影響を受けたことを丁寧かつ重んじた表現になります。 目上の人や感銘を受けた人に対して使われます。

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    「ご教示賜る」はビジネスシーンで使う

    「ご教示賜わる」は、よくビジネスシーンで使用される表現です。 「ご教示」は「ごきょうじ」と読みます。 「ご教示」は「教示」という言葉に、接頭辞の「ご」をつけた言葉です。 「教示」は「知識や方法などを教え示すこと」を意味しています。 「賜る(たまわる)」は、「もらう」の謙譲語なので、「ご教示賜る」で「教えてもらう」の敬語表現になります。 例えば、「教えてほしい」と依頼をするときに「ご教示賜れば幸いに存じます。」などといいます。

    「師事」の対義語

    弟子取り

    「弟子取り」は「でしとり」と読みます。 「弟子取り」の意味は「先生や親方が、弟子入りを引き受けること」です。 「師事」は、「相手を尊敬し、その人から技術やセンスを教えを受ける」という意味なので、「弟子入り」は対義語になります。 「門弟(もんてい)」、「教え子」も「以前、または今教えている生徒や学生、弟子」を指す言葉なので対義語です。

    指導・指南・教示・教授・伝授・鞭撻など

    その他の対義語には、指導・指南・教示・教授・伝授・鞭撻などがあります。 「指導」は「しどう」と読みます。 「指導」の意味は、「知識・技術などを習得できるように教え導くこと」です。 例えば、目下の人に知識や技術を教えることを「指導する」と言い表します。 「指南」は「しなん」と読みます。 「指南」の意味は、「南を指すこと・教え示すこと。教え導くこと。また、その人」です。 「指南」は「武術・芸能などを教え示すこと」を意味していて、「剣道を指南する」というように使います。”教える”という意味でも、「ご指南」は武術や芸能などの教えを表る言葉です。 「教授」は「きょうじゅ」と読みます。 「教授」の意味は「学問・技術・技能などを教えること」です。 「教授」は、「教え授ける」という漢字からできている通り、「指し示す」という意味の「教える」ではなく、「専門的な知識や技術を教え授ける」というような意味で使用され、専門的な知識や技術をある程度の期間、継続的に教える場合に使います。 「伝授」は「でんじゅ」と読みます。 「伝授」の意味は「伝え授けること」です。 特に学問や宗教・芸道などの大事な事柄や秘伝を伝えることを「伝授する」といいます。 例えば「ハサミの使い方」を「教える」というよりは、師匠から弟子に教える「秘伝の技」というように歴史あるものや、技術を要するようなことを伝え授けるというニュアンスで使用されます。 「鞭撻」は「べんたつ」と読みます。 「鞭撻」の意味は「むちで打ってこらしめること」です。 「努力をするように励ますこと」を「鞭撻」といいます。 「指導」という言葉と合わせて「ご指導ご鞭撻」という「相手から自分に対する教育や指導を敬った表現」として使用されることが多い言葉です。

    「師事」の英語

    study under

    「study under 人」は直訳すると「(人)の元で学ぶ」で、「〜を師事する」という意味になります。

    As a young conductor, she studied under Karajan.

    若い時、その指揮者はカラヤンに師事した。

    take lessons from

    「take lessons from」だと「(人)から授業を受ける」という意味で、「師事する」というニュアンスで使うことが可能です。 大学など教育機関で師事する場合に使うことができます。

    She took lessons from Dr. Smith at Stanford University.

    彼女はスタンフォード大学でスミス教授に師事した。

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