「俗世(ぞくせ)」の意味は「世の中」です。「俗世を離れる」など耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。今回は「俗世」の正しい意味と使い方を例文付きで紹介します。「世俗」との違いや、類語・対義語も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「俗世」の読み方は「ぞくせ」または「ぞくせい」です。 「ゾク」は「俗」の音読みです。 「せ」は「世」の呉音(ごおん)です。 呉音とは、「漢字到来以前の漢字音の総称で、朝鮮半島を経由して伝わったもの」です。 仏教語によく用います。 「せい」は「世」の漢音(かんおん)です。 漢音とは「平安初期にかけて、遣唐使や日本に渡来した中国人によって伝えられたもの」です。
「俗世」の意味は、
です。 「俗」には「習わし」「ありふれた」「いやしい」という意味がある通り、「俗世」はネガティブなニュアンスで使います。 「(色欲や金銭欲などにまみれた・金や名誉などに執着する)下品な世界」という意味を含みます。 この「俗」を使った言葉には「通俗」「俗臭」などがありますが、これらも同じ意味合いです。 「俗世」はもともと仏教用語で、上記の2つ目の意味で使われており、そこから転じて1つ目の意味で使われるようになりました。 仏または僧侶が住む高尚な世界に対して、下劣な一般人が住んでいる場所といったニュアンスです。
「俗世」は「俗世間(ぞくせけん)」「俗世界(せかい)」ということもあります。 「世間」は「世の中の人」また、「交際・活動する範囲」です。 「世界」は「人間が住んでいたり、行って見ることができるすべての所」です。 「俗世間」は、自分の生活する範囲の世の中を指し、「俗世界」は、自分とは関係のない範囲も含むすべての世の中を言い表す言葉です。
「俗世」は、自分が生活している一般社会から離れたいう気持ちを言い表すときに使用されます。 例えば、仕事に追われるような社会で生きることに疲れてしまったり、人間の汚い部分を見て「このような世間とに関係を断ちたい」と思ったという場面です。 よく使用される言い回しは「俗世を離れる/捨てる」「俗世との関わりを断つ」です。 「俗世離れ」と名詞にして使用することも可能です。 類語には、「隠遁(いんとん)する」「世捨て人になる」があります。 「隠遁(いんとん)する」の意味は「世の中の俗事を捨て隠れて住む」という意味です。 「世捨て人になる」は「世の中を捨てた人になる」という意味です。 自分が生活している一般社会から離れ、ひとり静かに暮らすことを言い表します。
「俗世」の例文
「世俗を超越する」は「せぞくをちょうえつする」と読みます。 「世俗」も「世の中。世の中の人」を意味する言葉です。 「世俗を超越する」で「世間一般より高い位置にある」という意味になります。 考え方や態度などが世間一般の概念を飛び抜けていることを言い表します。
「俗世」の例文
「俗世的」は「ぞくせてき」と読みます。 「俗世的」の意味は「世間一般に見られるさま」です。 生活態度や考え方などが一般的であることを言い表します。 世間で「普通」と言われるような人を「俗世的な人」「彼は俗世的だ」などと言い表すことができます。
「俗世的」の例文
「俗世に染まる」は「ぞくせにそまる」と読みます。 「俗世に染まる」は「世間の思想や意見に感化される」です。 この場合の「染まる」は「思想・様式・行動などが、ある影響を受ける」という意味で使用されています。 「俗世に染まる」は、世間の影響を受けて地位や名誉、権力、お金を手にしたいなどの人間の欲が強くなってしまうなど悪い影響を受けている様子を言い表しています。
「俗世に染まる」の例文
「俗世に疎い」は誤用です。 正しくは「世事/俗事に疎い」です。 「世事に疎い(せじにうとい)」の意味は「世間一般の物事に関する知識がない」です。 「世事」は「世間のこと。世の中のこと」、「疎い」は「詳しくない。よく知らない」という意味です。 「俗事に疎い(ぞくじにうとい)」の意味は「世の中のわずらわしい事柄に関する知識がない」です。 「俗事」の意味は「世の中の雑事」「世の中のわずらわしいこと」です。 「俗事」は「俗事に疎い」の他にも、
などの言い回しで使用されます。 「世事/俗事に疎い」の対義語「世故(せこ)にたける」です。 「世故」とは「世の中の事情や習慣」という意味です。 「たける」は「十分にそなえている」という意味です。 「世故にたける」で「世間の事情によく通じている」という意味になります。
「俗世にまみれる」も誤用です。 正しくは「世塵/塵垢にまみれる」です。 「世塵(せいじん)」の意味は「世の中の煩わしい雑事」です。 「まみれる」の意味は「あるものが一面にくっついて汚れる」です。 「世塵にまみれる」で「世の中の煩わしいことを多く抱えて困った状態」を言い表します。 「塵垢(じんこう)」の意味は「ちりとあか」「世俗の事柄」です。 「世塵にまみれる」と「塵垢にまみれる」は同義です。
「世俗」は「せぞく」と読みます。 「世俗」の意味は
です。 人々が暮らしている世の中、世間一般の人々の考え方や習慣を表します。 「世俗的」「世俗に染まる」「世俗化」「世俗権力」「世俗主義」という使い方をします。 「俗世」と「世俗」はほぼ同じ意味ですが、「世俗」は「世間一般の風習」という意味で使うことができるという点で「俗世」とは異なります。
「世俗」の例文
「浮世(ふせい)」の意味は「虚しくて儚い世の中、変化しやすい世間」です。 移り変わりが多くて、あっけない世の中を表します。 「浮世の波」「浮世の習い」といったように用います。 「浮世の波」は「世の中の浮き沈み、変化」、「浮世の習い」は「儚い世の中の慣習」を意味します。 「浮世」は「うきよ」と読むことも可能です。 「浮世(うきよ)」は、名詞について「現代的、好色的」という意味になります。 「浮世離れ」「浮世絵」「浮世話」などといいます。
「現世」は「げんせ」または「げんせい」と読みます。 「現世」は「現在世」の略です。 「現世」の意味は「現在の世の中」です。 仏教で「現世」は、前世・来世のなかの一つです。 「現世」と「俗世」は同義です。
「此岸」は「しがん」と読みます。 「此岸」の意味は「現在世界」です。 仏教で、悩み迷いに満ちた現代世界をいいます。 「此岸」も「俗世」も「現在のこの世」を言い表す言葉であるため類語です。 ただし「此岸」は「悟りの境地に達していない」とう意味が含まれます。 「此岸」の対義語は、悟りの境地を意味する「彼岸」です。
「娑婆」は「しゃば」と読みます。 「娑婆」は、仏教で釈迦が衆生(しゅじょう)を教化するこの世界を指します。 つまり、煩悩や苦しみに満ちた人間の世界です。 「娑婆」は「現世」を指す言葉なので、「俗世」と同義です。 「娑婆」は刑務所が出所したときにも使われます。
「浄土」は「じょうど」と読みます。 「浄土」の意味は「仏・菩薩(ぼさつ)が住む清浄な世界」です。 とくに阿弥陀(あみだ)仏の住む極楽浄土のことをいいます。 「俗世」はこの世を指す言葉なので、「浄土」は対義語です。
「冥界」は「めいかい」と読みます。 「冥界」の意味は「死後の世界」です。 「冥土」は「めいど」と読みます。 「冥土」は、仏教用語で「死後、死者の霊魂がだどっていく道」のことです。 「冥府」は「めいふ」と読みます。 「冥府」は「死後の世界」のことです。 「冥府」が指すのは特に「地獄」、閻魔(えんま)の庁です。
「天国」は「てんごく」と読みます。 「天国」の意味は「神や天使が住む天上の理想世界」です。 キリスト教やイスラム教では、信者の死後の霊が神から永遠の祝福を受けて迎えられる場所だといわれています。 「地獄」は「じごく」と読みます。 「地獄」の意味は「現世で悪事を行った者が、死後その報いによって責め苦を受けるところ」です。
「草葉の陰」は「くさばのかげ」と読みます。 「草葉の陰」の意味は「墓の下。あの世」です。 亡くなった人がいる場所を喩えた言葉です。 「俗世」は、この世を指す言葉なので、「草葉の陰」は対義語になります。
「俗世」の英語で「this world」とすることが多いです。 「この世界」という意味です。 「今自分が生きている、この世界」という意味合いです。 「the world」とすると「世界」という意味になってしまうので不自然です。
I want to escape from this world.
俗世から離れたい。
「今自分が置かれた状況ややらなければならないこと全て」という意味なら「all of this」と表現することもできます。
I just want to get away from all of this.
すべてから逃げ出したい。