「身の引き締まる思い」の意味は「気持ちが緊張してしっかりする」です。「身が引き締まる思い」でも意味は変わりませんが、「の」は連体節でしか使えないので「身の引き締まる」は誤りです。「気が引き締まる思い」も二重表現で誤りなので注意しましょう。
「身の引き締まる思い」の意味は「気持ちが緊張してしっかりする」です。 「身」とは、自分自身の心や気持ちのことです。 「引き締まる」は、心のたるみをなくすこと・緊張することです。 「思い」は、心の働きや状態です。 「身の引き締まる思い」で、しっかりと物事に取り組む姿勢を言い表すことができます。
「身の引き締まる思い」と「身が引き締まる思い」はどちらも正しい表現です。 ただし、「の」「が」はどちらも主格を表し、交換ができることが多いが、「の」は連体節でしか使えません。 身の引き締まる思い ◯ 身が引き締まる思い ◯ 身の引き締まる ☓ 身が引き締まる ◯ また「身が引き締まる」は「自然発生的に緊張すること」を指しますが、「身を引き締める」は「能動的に緊張感を持つようにする」という意味になります。
「身の引き締まる思い」は内定した新入社員などがよく使う表現です。 例えば、ビジネスシーンでは
といった場面で「改めて緊張感をもって真剣に取り組んでいきます」という気持ちを、新天地での自己紹介や挨拶などで述べます。 ビジネスシーン以外でも、結婚式の挨拶(新郎)で使用されます。 結婚式の挨拶では、新郎が一家の大黒柱になる覚悟として「身の引き締まる思いです」と述べることが多いです。
「身の引き締まる思い」の例文
「引き締まる」には、「物理的・肉体的なたるみがなくなる」という意味があります。 「体が引き締まる」「肌が引き締まる」「口元が引き締まる」というように、「物理的・肉体的にたるみがなくなる」という使い方をします。 例えば、「体が引き締まる」は、余計な贅肉や脂肪がとれてたるみがなくなることです。 体や肌、口元といった人体以外でも「引き締まった文体」といった使い方をすることもできます。 「引き締まった文体」は、論文のように余計なことを書かない文章の様式のことです。 「身の引き締まる思い」「身が引き締まる」という表現は「身」という言葉が使われていますが、精神的な意味です。 しかし「身の引き締まった肉」ならば物理的な意味になります。 また「身の引き締まるような朝の空気」「初秋の引き締まる感じ」などの表現も物理的なぴぴりとした寒さを表現しています。 「引き締める」とすると「強く引っ張ってしめる」という意味になります。
「引き締まる」(物理的・肉体的なたるみがなくなる)の例文
「引き締まる」は、「精神的・感情的なゆるみがなくなる」という意味でも使用されます。 例えば「表情が引き締まる」「心が引き締まる」という使い方です。 緊張感をもち、気持ちがしっかりする様子を言い表します。 「顔が引き締まる」は文脈によって、肉体的なことをいってる場合もありますが、精神的な意味合いが強いでしょう。 ただし「引き締まった顔つき」といった場合は、精神的な意味です。
「引き締まる」(精神的・感情的なゆるみがなくなる)の例文
取引用語の「引き締まる」の意味は「相場が上がり気味になること」です。 「締まる」と言い表すこともあり、程度が軽ければ「小締まる」といいます。 対義語は「引き緩む」で、「相場が下げ気味になること」を意味します。 「引き緩む」も「締まる」と同様に「緩む」と言い表すことができます。 「引き締める」とすると「財政・金融を緊縮する」という意味になります。 緊縮するとは、財政の基礎を固めるために支出をできるだけ抑えるということです。 「お財布を引き締める」なども、この意味で使用されています。
「引き締まる」(取引用語)の例文
「気が(の)引き締まる思い」は誤用です。 「気」には「心の働き」「精神の傾向」という意味があります。 なので、同じく「心の働きや状態」を意味する「思い」を使用してしまうと、二重表現になってしまうため誤用になります。 「気が引き締まる」であれば、問題ありません。 例えば「部長に活を入れられて気が引き締まる」といった使い方です。 気持ちがきりっと張り詰める様子を言い表すことができます。
「気を引き締める」は正しい日本語であり、「気持ちのゆるみをなくす」という意味です。 緊張感をもったり、気合を入れることを「気を引き締める」と言い表すことができます。 「気を引き締める」は「身を引き締める」と同様に「能動的に緊張感を持つようにする」という意味です。 似た慣用句に「気を引き立てる」があります。 「引き立てる」は「元気が出るようにする」「励ます」という意味で使われています。 なので、「気を引き立てる」で「沈んでいる気持を励まし、元気がでるようにする」という意味になります。
「気をひきしめる」の例文
「初心にかえる」の意味は「何かをはじめたときのひたむきな気持ちに戻ること」です。 例えば、入社したばかりの頃は緊張感をもって仕事に取り組んでいても、勤務歴が長くなってくると慣れてきて気持が緩んでミスが増えたりしてしまいます。 そういった場面で「初心にかえる」という言葉を使うと、「もう一度入社したばかりの気持ちに戻って緊張感をもって仕事をする」という意味になります。 つまり、「初心にかえる」は「はじめの頃の気持ちを思い出して身を引き締めること」なので、「気持ちが緊張してしっかりする」という意味の「身の引き締まる思い」の類語であるといえます。
「決意を改める」は、「自分の決めたことに対する意欲をそれまで以上に強めること」です。 「決意」の意味は「意志をきめること」です。 自分のとるべき行動・態度をはっきりさせて自分のするべきことを心に決めることを「決意」といいます。 「改める」は、「古いものを新しいものに変える」「悪い状態から良い状態に変える・よくする」という意味があります。 「○○しよう」と心に決めていたこと達成することができなかったりした時に、「決意を改める」という言葉を使います。 新しく決意をし直すというよりは、「決めたことをやり遂げられるように、より強い気持ちを持ち直す」という意味で使用されます。
「兜の緒をしめる」は、「かぶとのおをしめる」と読みます。 「兜の緒をしめる」の意味は、「気持ちを引き締めて用心する」です。 兜の紐を強く締め直す様子を、気持ちを引き締めることにたとえた慣用句です。 敵に勝っていたとしても「油断をするな」「用心をしろ」という戒めとして使用されます。 「兜を脱ぐ」ということは、降伏の意思表示でもあるため「兜の紐を強く締め直す」ということが、気を引き締めるということだったのだと考えられます。 「身の引き締まる思い」も、「緊張感をもって心のたるみがなくなること」なので、「兜の緒をしめる」は類語であるといえます。
「身の引き締まる思い」を英語に直訳することはできません。 和英辞書によっては「feel determined」などと載っていますが、不自然です。 直訳すると「確固たる気分だ」という意味になりますが、「determined」はこのようには使用しません。 「I am determined to...(...をしようと決心している)」「She is a determined person.(彼女はやると決めたらやる人だ)」などと使います。 「身の引き締まる思い」は下記のように表現するしかないでしょう。
I'll do my best.
最善を尽くします。
I won't let you down.
失望させません。
いかがでしたか? 「身の引き締まる思い」について理解を深めていただけましたか? 最後に「身の引き締まる思い」についてまとめます。