「しじま」の意味は「何も言わない」「物音一つしない」です。今回は「しじま」の正しい意味や使い方を例文付きで紹介します。類語との違いや対義語、英語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「しじま」には2つの意味があります。
の2つです。 一つ目の意味では、口をつぐんで無言でいる様子を言い表します。 二つ目の意味では、物音一つしない静かな様子を言い表します。
「しじま」は大和言葉です。 大和言葉は、日本固有の言葉のことをいいます。 また、「しじま」は雅語(がご)に当てはまります。 雅語は、平安時代を中心とする古典で使用されている洗練された上品な言葉のことです。 「しじま」は、古語として「沈黙」を意味する言葉として多くの古典で使用されていました。 最も古い用例は、源氏物語の「幾そたび君がしじまに負けぬらむものな言ひそといはぬ頼み」という一文です。 これを訳すと「何度あなたの沈黙に負けてしまったことだろう(私に)ものを言うなと(あなたが)言わないのを頼みにして(つい、また話しかけてしまった)」となります。 もともとは、「口をつぐんでいること」を言い表していたのが転じて「静まり返っていること」という意味で使用されるようになったと言われています。
「しじま」は大和言葉であるため、漢字は当て字です。 「口を閉じて黙り込むこと」という意味のときは「無言」「沈黙」などの漢字を当てます。 漢字一文字で「黙」とする場合もあります。 「静まり返っていること」という意味のときは「静寂」という漢字を当てます。 「静寂」は「せいじゃく」と読むのが一般的ですが、「しじま」と読んでも静かである様子を言い表すことができる言葉です。
「しじまう」は全く別の言葉です。 「しじまう」は、動詞「しじむ」の未然形に反復、継続を表す助動詞「ふ」をつけた言葉です。 「しじまう」の意味は「一つのところをめぐりさまよう」です。 進むことも退くこともできないでいることを言い表します。 漢字表記は「蹙う」または「縮う」と書きます。 「しじむ」と非常によく似ていますが、混合しないように注意しましょう。
「しじま」は、静かな様子を伝えるときに使用します。 よく使用される言い回しは「夜のしじま」や「しじまに包まれる」です。 「夜のしじま」は、「夜の静かな様子」を言い表しています。 「夜のしじまに〜」という使い方をすることが多いです。 「しじまに包まれる」は、「静けさに包まれること」を言い表します。 シーンとした静かな様子の中にいることをいいます。 その他にも、
などの言い回しがあります。
例文
「静寂」の意味は、「静かでさびしいこと」です。 物音もせず静まりかえってひっそりとしていることを言い表します。 全く音が聞こえない状態というよりは、「しんとしていてどこか寂しい様子」という意味合いで使われる言葉です。 また、「心が落ち着いていて、ゆとりがある」という人の様子を表すこともあります。 「静寂」と「しじま」は、共に静かであることを言い表す言葉です。 ただし、「静寂」には「口をつむぐ」という意味はありません。 例えば、数人が集まっている場面で誰も言葉を発しない静かな様子であることを言い表す場合には「静寂」よりも「しじま」のほうが適しています。 また、「しじま」は大和言葉であるため、小説や歌詞などで使われる傾向があります。 「しじま」は詩的な美しい響きがあり、かつ「静寂」と直接的に表現するよりも読み手の想像力を膨らませる効果があります。
「静寂」の例文
「静粛」は「せいしゅく」と読みます。 「静粛」の意味は「静かに慎んでいること」です。 声や音を出さず、ひっそりとしている様子を言い表します。 「静粛」は、特に改まった場面で人の話を聞く時の態度や、秩序が重んじられる場所での態度について用いられる言葉です。 「しじま」は、静かな環境を言い表す言葉で、態度を言い表すときに使用することはできません。
「物静か」は「ものしずか」と読みます。 「物静か」の意味は
です。 静かな様子を言い表すので「しじま」と共通しています。 ただし、「物静か」は「ひっそりと静かな様子」と言い表すというよりは、人の態度や言葉が落ち着いていて静かな様子を言い表すときに使用されることが多いです。 例えば「物静かな人」「物静かに話す」という使い方をします。
「閑静」は「かんせい」と読みます。 「閑静」の意味は「静かで落ち着いていること」です。 「閑静」も静かなことを言い表すときに使用する言葉ですが、「閑静」は場所や住まいに対して使用する言葉です。 例えば「閑静な住宅街」という使い方です。 「閑静」のほうが「しじま」よりも使用できる場面が限定的であるといえます。
「粛然」は「しゅくぜん」と読みます。 「粛然」の意味は
です。 「粛然」には単に静かであるということではなく、厳かで心がひきしまるような様子を言い表す言葉であるという点で、「しじま」とは異なります。
「寂然」は「せきぜん」と読みます。 古風な言い方で「じゃくねん」ともいいます。 「寂然」の意味は「ひっそりと静かなさま」です。 また、「煩悩をはなれ、心の動揺を去って、心静かであること」という意味もあります。 「しじま」には、心が静かであるという意味はありません。 「寂然」を使用した四字熟語には「寂然静虚」があります。 「寂然静虚」は「せきぜんせいきょ」と読みます。 「寂然静虚」は、ひっそりとしずかでさみしげな様子であることを言い表します。
「水を打ったよう」は「みずをうったよう」と読みます。 「水を打ったよう」の意味は「大勢の人が誰も口もきかず、静まりかえる様子」です。 ほこりっぽい地面に水をまいたように静まりかえることに喩えた慣用句です。 ただし、「水をまいたよう」は誤用なので注意しましょう。 「静まりかえる」という意味で使用されるという点で、静かであることを言い表す「しじま」とは異なります。
「喧騒」は「けんそう」と読みます。 「喧騒」の意味は「物音や人声などでさわがしいこと」です。 話し声や大きな物音が入り混じっていて、ガヤガヤと騒がしい様子を言い表します。 さらに、「喧騒」には「人が多く集まる場所で、話し声や足音などによって生じるざわめき」という意味もあります。 都会や繁華街など比較的大きい場所で、人の声・足音・車のクラクション・店のディスプレイの映像音などが入り混じっていて騒がしいことを表します。
「騒音」は「そうおん」と読みます。 「騒音」の意味は「やかましくて、不快に感じる音」です。 例えば、上の階に住んでいる人の生活音など「とてもうるさい」と感じる音のことをいいます。 それを聞いた人がうるさいと思えば「騒音」になり、特に何も思わない場合は「騒音」とはなりません。
「騒然」は「そうぜん」と読みます。 「騒然」の意味は「騒がしいさま」です。 ガヤガヤと落ち着きがないこと、騒がしくて不穏である様子を言い表します。 例えば、「世界的に有名な歌手がサプライズで登場し、会場が一時騒然となった」と用います。これは「予想していないかった出来事に、ざわめき落ち着かない様子になること」を意味します。
「蝉騒」は「せんそう」とよみます。 「蝉騒」の意味は、
です。 元々「蝉騒」は「蛙や蝉などがうるさく鳴いていること」を表していました。 そこから、「蝉が鳴くように、騒がしいだけで何の意味もない」という意味でも使われるようになりました。 「蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)」という言葉が使われます。「蛙鳴蝉噪」とは「無駄が多くて内容が薄い議論や文章、意味のない口論」を意味します。
「静かな」を意味する最も一般的な英語は「quiet」です。 場所・人どちらに対しても使うことができます。
「silent」は「quiet」を強調した語です。 「物音一つしない」という意味です。 「silent」も場所と人どちらに対しても使うことができます。 名詞は「silence」です。
「calm」は「落ち着いた。穏やかな」という意味で、精神的な静けさを指します。 「せわしない雰囲気のない」というニュアンスで場所に対して使うこともできます。 「calm」は形容詞・動詞のどちらの品詞としても使うことができます。
「tranquil」は「calm」の同義語です。 少し難しい語なので、書き言葉で使われることが多いです。
「peaceful」も「calm」「tranquil」の類語で「穏やかな」という意味です。 「peaceful」は「平和」を意味する「peace」が語源なので、より温和で安らかな意味合いが強いです。