「食い下がる」の意味は「強い相手に粘り強く立ち向かう」ですが、「食い下がる」を「引き下がる」の意味で使用するなど誤用の多い言葉です。今回は「食い下がる」の正しい意味と使い方を例文付きで紹介します。また、対義語や類義語も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「食い下がる」の意味は「強い相手に粘り強く立ち向かう」です。 自分の納得がいく結果になるまで、へこたれない姿勢を「食い下がる」といいます。 例えば、口を固く閉じている人が真実を白状するまで質問をし続けるなど、手強い相手に対して屈することなく立ち向かっていく様子を表現する言葉です。 「諦めない」というポジティブな意味合いで使用されることもありますが、「しつこい」というネガティブな意味で使用されることもあります。
「食い下がる」の基本義は「食いついてぶら下がる」です。 たとえば、ライオンなど肉食の動物が獲物を捕らえて決して離さないようとしないことが、本来の意味の「食い下がる」です。 そこから転じて「どこまで食いついて離れない」というニュアンスが生まれました。 肉食の動物を人間に置き換えて、粘り強く立ち向かっていく姿勢を表現する言葉として使用されるようになりました。
「食い下がらない」を「食い下がる」の意味で使用するのは誤用です。 その原因としては「食い下がる」の「下がる」を「後ろの位置へ行く」という意味でとらえている人が多いことにあると考えられます。 「下がる」を「後ろの位置へいく」という意味だとらえて、「食い下がる」を「諦める・身を引く」という意味だと勘違いしている人が多いです。 だから、「食い下がる」を否定形にした「食い下がらない」が「強い相手に粘り強く立ち向かう」という意味になるという誤解が生まれてしまっていると言えます。 実際は「食い下がらない」という表現はありませんので注意してください。
「食い下がる」は、ビジネスシーンではあまり使用されません。 「部下が自分の意見を通そうと食い下がる」など、会話の中で使用することはあるかもしれませんが、「私は食い下がります」などとビジネスシーンで目上の相手に伝えることはまずないでしょう。
「食い下がり」は、相撲・麻雀用語でもあります。 相撲での「食い下がり」は、技の名前です。 相手のまわしを掴んで引き、頭を相手の胸につけて腰をさげることを「食い下がり」といいます。 麻雀用語の「食い下がり」は、相手の牌をもらうポンやチーをして役を完成させることで、点数が下がってしまうことです。
例文
「食い下げる」の対義語は、「下げる」の反対語である「上げる」を使用した「食い上がる」だと思われがちですが、「食い上がる」という言葉はありません。 ちなみに「食い上げ」という言葉はあります。 ただし「食い上げ」も「食い下がる」の対義語ではないので注意してください。 「食い上げ」は、「食い扶持(くいぶち)を取り上げられること」「生活の手段を失うこと」です。 また、釣り用語で「魚が餌をくわえて上向きに泳ぐ」という意味で使用される言葉です。
「食い下がる」の正しい対義語(反対語)は「引き下がる」です。 「引き下がる」の意味は「その場を去って離れる」「自分の間違いや負けを認めて、主張をひっこめること」「手を引くこと」です。 「食い下がる」を間違った意味で使う人が多い理由は、「引き下がる」という言葉と混同していると思われます。 「引き下がる」の「下がる」は「後ろに去る」という意味です。 「食い下がる」の「下がる」は「ぶらさがる」という意味です。 「下がる」という同じ言葉を使った言葉なので混同されやすいのですが、「食い下がる」の「下がる」が「ぶらさがる」という意味であるということは、「手を離すことなく掴んでいる」ということです。なので、「食い下がる」が粘り強い姿勢を表現している言葉であると判断できます。
「食って掛かる」は、「食いつくような勢いで相手に挑みかかる」という意味です。 激しい口調や態度で立ち向かうという様子を言い表わしている慣用句です。 「食って掛かる」には、「諦めない」「へこたれない」というニュアンスは含まれませんが、自分の意見を押し通すために激しい口調や態度で相手に挑むという姿勢を表現しているという点で「食い下がる」の類語であるといえます。
例文
「七転び八起き」は「ななころびやおき」と読みます。 「七転び八起き」の意味は「何回失敗しても、諦めずに立ち上がって奮闘すること」です。 いくら落ち込んでいたとしても、屈せずに再び挑戦することで良い事が起きることを表します。 結局上手くいかなかったという結論ではなく、諦めなかったことで最終的に成功した・上手く進んだという場合に使うことが多いです。
例文
「不撓不屈」の読み方は「ふとうふくつ」です。 「不撓不屈」の意味は「強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけないこと」です。 何があろうとも消して諦めないこと、志を曲げないことを表します。 よく使われる言い回しには「不撓不屈の精神」があります。 これは「どんな時も諦めず、強い志を持ち続ける精神」を表し、自分が掲げた夢や目標に向かって進み続けることを表します。仕事や人生の目標に対して使われています。 「食い下がる」は、「しつこい」「諦めが悪い」といったニュアンスで使用されることもありますが、「不撓不屈」は前向きな意味で使用される言葉です。
例文
「不退転」は「ふたいてん」と読みます。 「不退転」の意味は「気持ちをかたく維持して屈しないこと」です。 物事をするにあたって、信念を持ち絶対に屈しないこと・かたく信じて決心を変えないことを表します。 「不退転する」「不退転できる」などではなく、「不退転の+◯◯」という形で使います。 「不退転」は、ビジネスシーンなどでも自身の頑張る気持ちを伝えたい場合や、張り切っているという強い意思を伝えるために使用されます。 「諦めが悪い」というようなネガティブな意味合いでは使用されません。
例文
「食い下がる」をそのまま英語にすると「eat down」ですが、、、こんな英語表現は存在しません。 ちなみに「eat up」で「食べ尽くす」という意味になります。 「eat out」は「外食する」です。
「食い下がる」という日本語に一番近い英語は「persist」でしょう。 「persist」は「(非合理的だけど確固とした態度で)やり続ける」という意味の動詞です。 「persist in ...ing」「persist with ...」の形で使います。 「persistently」で「しつこく」という意味の副詞になります。 「ハラスメント」の語源である「harass」にも「一定期間不愉快のことをし続ける」という意味があり、文脈によっては「食い下がる」の英訳として使用可能です。 「食い下がる」の原義である「掴んで離さない」という意味の英語には「hold on to...」「tenacious」などがあります。
She asked questions persistently to find out what he is hiding.
彼が何を隠しているのか聞き出そうと彼女は食い下がった。