「お見知りおき」は、敬語の接頭辞「お」と、「見知る」と「置く」が組み合わさった動詞の名詞形で構成されています。「記憶にとどめておく」という意味で、目上の人に自分を覚えておいてもらうよう依頼する時に使います。
「お見知りおき」とは動詞「見知りおく」の名詞形です。 「見知りおく」の意味は「見て覚えておく」「会った人を記憶にとどめておく」です。 「見知りおく」は、接頭語「お」と「見知る」、「おく」で成り立っています。 「見知る」は「面識がある」「見てわかる」「よく知っている」という意味です。 「見知らぬ人」などと使い、「見知らぬ人」で「面識がない」「知らない人」という意味になります。 「おく」は「その場にためておく」という意味で、この場合は「そのままの状態にする」という意味で使用されています。 例えば、
などの形で、相手に記憶してほしいと丁寧に言う場合に使います。
「お見知りおき」は、「見知りおく」に接頭語の「お」をつけた言葉です。 接頭語「お(ご)」の敬語の種類は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 目上の人の動作を高めて敬意を示すためにつく接頭語の「お」は尊敬語です。 自分の動作をへりくだることで相手に敬意を示す接頭語の「お」は謙譲語です。 物事をただ丁寧にいうだけの接頭語「お」は丁寧語です。 「お見知りおき」は、相手に「知っておいてほしい」「覚えておいてほしい」という意味で使用されるので「接頭語」の「お」は相手の動作を高めるために使用されています。 したがって、「お見知りおき」の敬語は尊敬語です。
「おみしりおき」の漢字表記は「御見知り置き」です。 接頭語の「お」は「御」と漢字にしてもよいが、ひらがなの方が柔らかい印象があり、ビジネスシーンにおいてもひらがなが一般的です。 「見知りおく」の名詞形が「見知りおき」です。 「おく」は、それ自体で動作的意味を持つ「本動詞」として使用する場合は漢字で表記します。 例えば「物を置く」という使い方をするときです。 「〜をしておく」というように、本来の独立した用法を離れ、他の語について補助的な役割をする「補助動詞」として使う場合はひらがなで表記します。 「おみしりおき」の「おく」は補助動詞であり、本動詞ではありません。 よって、ひらがなで表記するのが妥当です。
「お見知りおき」は、ビジネスシーンなどで目上の人とはじめて会った時の自己紹介で使用されます。 例えば、名刺交換をする場面などで自己紹介をしたときに「はじめまして営業部の○○と申します。以後お見知りおきください」と締めくくります。 「お見知り置き」は「自分のことを心に留めておいてほしい」という意味で使用されるので、相手の自己紹介に対して「これからあなたのことを覚えておきますね」という意味で使用することはできません。 「以後お見知りおきを」と相手に言われたら「よろしくお願い申し上げます」と返事をしましょう。
「お見知りおき」の例文
目上の人に、部下など自分より目下の立場の人を紹介する場面でも「お見知りおき」を使用することができます。 例えば、取引先の相手に新入社員を紹介するときに、「彼女は新入社員の○○です。今後私と一緒に営業を担当することになりましたので、以後お見知りおきのほどよろしくお願いします」などと使用します。 あくまでも、目上の人に自分より目下の人を使用する場合のみ使用できる表現であり、上司など目上の人を紹介する場合は使用できないので注意してください。
「お見知りおき」の例文
「お見知りおき」は、「会いたい」という気持ちを第三者に伝える場面で使用することもできます。 まだ会ったことはないけれど、話では聞いていて「会いたい」と思った人などに対して「ぜひお見知り置き頂きたい」というように使用することで「ぜひお会いしたい」というニュアンスになります。 本人に手紙などで「会いたい」と伝えるときに使用することもできます。 現代では「会いたい」という意味で「お見知りおき」を使用することはほとんどありませんが、1,941年刊行の「海音寺潮五郎」の長編歴史小説「茶道太閤記」に「会いたい」という意味で「お見知りおき」という言葉が使用されている一文があります。
「お見知りおき」の例文
「お知りおき」は「おしりおき」と読みます。 「知りおく」の連用形「知りおき」に尊敬を表す接頭語の「お」をつけて「お知りおき」となります。 「知りおく」は「知っている状態にしておく」という意味です。 前もって知っておいてほしいことや、理解をしておいてほしいことがある場合に「お知りおき」を使用します。
「ご承知おき」は「ごしょうちおき」と読みます。 「承知おきください」は「承知おきください」に尊敬を表す接頭語の「お」をつけた言葉です。 「承知」の意味は「事情などを知ること」「依頼を聞き入れること」「相手の事情を理解して許すこと」で、「ご承知おきください」の「おき」は「〜おく」の連用形で「前もって何かをする」「そのままにする」という意味です。 したがって、「ご承知おき」は「(これから行うことについて予め)承諾しておいてください・ご理解ください・そのための準備をしておいてください」という意味合いになります。
「お含みおき」は「おふくみおき」と読みます。 「お含みおき」は「含みおく」の連用形に尊敬を表す接頭語の「お」をつけた言葉です。 「含みおく」は「心に留めておく」「ある状況を考慮に入れる」「念頭におく」という意味です。 「お含みおきください」という使い方で、「(相手に対して)事情をよく理解してください」「心に留めておいてください」という意味になります。 「心に留めておいてほしい」という意味で使用するという点でいえば「お見知りおき」と同義です。 ただし、「お含みおき」は「自分を覚えておいてほしい」というより「〜であるということを覚えておいてほしい」「知っておいてほしい」という意味で使用されます。
「予めご了承」は「あらかじめごりょうしょう」と読みます。 「予め」は、「結果を見越して、その事が起こる前から」「前もって」「かねて」を意味する副詞です。 「了承」は、「承知すること」「相手の申し出や事情を理解し、聞き入れること」を意味しています。 例えば「予めご了承ください」という使い方で、「どうか前もってご理解いただき、受け入れてください」と意味になり、まだ始まっていない事や始める段階の事に対して、相手に了解・納得を得る際に用いることができます。
「お見知りおき」の類語は多くあるが、ビジネスシーンで頻繁に使用されるのは「ご留意ください」という表現です。 「ご留意」は「留意」に尊敬を表す接頭語の「ご」をつけた言葉です。 「留意」の意味は「ある物事に心をとどめること」「気をつけること」です。 相手に「気に留めておいてほしい・配慮してほしい」と依頼する場面で「ご留意ください」などという使い方をします。
その他にも「お見知りおき」の類語には、
などがあります。 しかし、これらはビジネスシーンではあまり使用されません。
「記憶にとどめておく」の英語は「keep in mind」です。 「keep ... in mind」「keep in mind that ...」のどちらの形でも使います。 「Please keep in mind」「Could you please keep in mind...?」などで依頼表現になります。 ただし、初対面の挨拶で「keep in mind」を使うのは、不自然です。 初対面の挨拶では「Nice to meet you.」を使いましょう。