「万全を期す(ばんぜんをきす)」の意味は、「少しのてぬかりもないようにする」です。「万全を期す所存です」「万全を期して」などと使い、注意が行き届かないことがないようにすることを宣言して使います。「万端を期す」「万全を尽くす」はよくある誤用なので注意しましょう。
「万全を期す」の読み方は「ばんぜんをきす」です。 「万」は音読みで「バン」、「全」は音読みで「ゼン」、「期」は音読みで「キ」と読みます。 「万全を期する」ともいいます。
「万全を期す」の意味は「少しの手ぬかりもないようにする」です。 注意が行き届かないような場所がないように、完璧な状態にすることをいいます。 「万全」は「ありとあらゆる点で完全なこと」という意味です。 「期す」は「そうなるようにはかる」という意味です。
「万全を期す」は、ビジネスシーンで、ぬかりがないようにきちんと準備をすることを言い表すときに使用します。 ただし、「万全を期す」自体は敬語表現ではありませんので、ビジネスシーンで使用する場合は敬語表現にする必要があります。 例えば「万全を期す所存です」は、「万全を期す」に「思う」の謙譲語「所存」と丁寧語「です」を使用した敬語表現になります。 「万全を期して○○をします」と、丁寧語「ます」と組み合わせても、正しい敬語表現になります。
「万全を期す」の例文
「万全を期す」は、「体調管理に万全を期す」「万全を期し、身体検査を受ける」など体調に対しても使われます。 「体調管理に万全を期す」は、体調を崩さないようにぬかりなく注意を払うということを言い表します。 「万全を期し、身体検査を受ける」は、「健康管理をぬかりなくするために身体検査を受ける」という意味です。 新聞では首相や大臣の体調に対して使用されていることが多いです。 例えば、体調不良で公務を休んだというときに「万全を期すために閣議を欠席した」などといいます。
体調に対して使う「万全を期して」の例文
「万端を期す(ばんたんをきす)」は、よくある誤用なので注意しましょう。 「万端」は「ある物事についてのすべての事柄」という意味です。 「期す」は「そうなるようにはかる」という意味です。 よって「万端に期す」では「すべての事柄がそうなるようにはかる」という意味になってしまい不自然です。 「万端」を使用するのであれば、ただしくは「準備万端」または「諸事万端」といいます。 「準備万端(じゅんびばんたん)」の意味は「準備が整っていること」です。 「諸事万端(しょじばんたん)の意味は「さまざまなことすべて」です。 「万全」と「万端」が似ていることから混合されやすいので注意しましょう。
「万全を尽くす」もよくある誤用です。 「尽くす」は、
という意味です。 「万全」は「ありとあらゆる点で完全なこと」なので、「完全にするために精一杯の働きをする」という意味になりそうですが「万全を尽くす」という慣用句は存在しませんので注意しましょう。 正しくは「最善を尽くす」です。 「最善を尽くす」は「全力でことにあたる」という意味です。 最も善いと思われることをすべて行うという意気込みなどを伝えるときに使用します。
「完全を期す」は、「不足や欠点がないようにすること」を言い表す正しい日本語です。 「完全」の意味は「必要な条件がすべて整っていること」です。不足や欠点が全く無いことを言い表します。 「万全を期す」は不注意による失策をなくすこと、「完全を期す」は不足や欠点がないようにすることで、意味が違うので混同しないようにしましょう。
「万難を排して」の読み方は「ばんなんをはいして」です。 「万難を排して」の意味は「何が何でも」です。 どんなことがあったとしても、それらを受け入れずに押しのけてということを言い表す慣用句です。 「万難」には「多くの困難やあらゆる障害」という意味があり、「排して」には「障害となるものをしりぞけて、押しのけて」という意味があります。
「念には念を入れる」は「ねんにはねんをいれる」と読みます。 「念には念を入れる」の意味は「注意した上にもさらによく注意すること」です。 「念を入れる」は「間違いのないように気を配る」という意味で、「念には念を入れる」でさらに強めた言い方になります。 語源は江戸版いろはがるたの「念には念を入れよ」です。 「念にも念を入れる」は誤用なので注意しましょう。
「十二分に注意する」は「じゅうにぶんにちゅういする」と読みます。 「十二分に注意する」の意味は「十分すぎるほど注意をする」です。 物事が満ち足りて、不足・欠点がないことを言い表す「十分(じゅうぶん)」を強めた言い方が「十二分」です。 「充二分に注意する」は誤記なので注意しましょう。
熟語では「入念」「緻密」が類語になります。 「入念」は「にゅうねん」と読みます。 「入念」の意味は「念を入れること」です。 細かいところまで注意をかさねて念入りに物事を行うことをいいます。 「緻密」は「ちみつ」と読みます。 「緻密」の意味は「細かい所まで注意が行き届いていること」です。 「緻密な仕事」「緻密な作業」という使い方をします。 「万全を期す」は、ぬかりのないようにすることを言い表す言葉なので、「入念」「緻密」は類語です。
「石橋を叩いて渡る」は「いしばしをたたいてわたる」と読みます。 「石橋を叩いて渡る」の意味は「用心した上でもさらに用心して事を進めること」です。 用心の上に用心を重ねることを、丈夫な石橋でも叩いて安全を確かめてから渡るということに喩えた言葉です。 「石橋を叩いて渡れ」「石の橋も叩いて渡れ」ともいいます。
「転ばぬ先の杖」は「ころばぬさきのつえ」と読みます。 「転ばぬ先の杖」の意味は「しくじらないように前もって十分に用意しておくこと」です。 「ぬ」は、打ち消しの助動詞で、「先」は時間的にある基準より以前であるという意味です。 「転ぶ先の杖」と言っても「転ばぬ先の杖」と同義ですが、一般的には「転ばぬ先の杖」といいます。
「準備不足」は「じゅんびぶそく」と読みます。 「準備不足」の意味は「物事を行うにあたっての準備が足りないこと」です。 「万全を期す」は、注意が行き届かないような場所がないように、完璧な状態にすることを言い表す言葉なので、準備が足りないことを言い表す「準備不足」は対義語になります。
「見切り発車」は「みきりはっしゃ」と読みます。 「見切り発車」の意味は、「通勤・通学の混雑時に列車やバスなどが乗客を残して発車すること」です。 転じて、比喩的に議論や準備が十分になされないうちに物事を進めてしまうことを言い表す言葉としても使用されます。 完全ではない状態で進めてしまうことを言い表す言葉なので、「万全を期す」の対義語です。
「やっつけ仕事」の元の意味は「その場限りの仕事」です。 急ぎの用に間に合わせるために急いでする仕事のことをいいます。 転じて、単に「いい加減な仕事」という意味でも使うようになりました。 荒っぽく仕事をすることを言い表す言葉なので、「万全を期す」の対義語です。
「その場しのぎ」の意味は「その時だけ、なんとか切り抜けること」です。 なんとかその場だけをとりつくろって済ますことを「その場しのぎ」といいます。 例えば、その場を乗り切るために急いでする仕事を「その場しのぎの仕事」と言い表すことが可能です。 入念に注意を払って物事を行うのではなく、その時を乗り切るだけなので「万全を期す」の対義語になります。
熟語の対義語は「粗雑」「杜撰」「ぞんざい」などが当てはまります。 「粗雑」は「そざつ」と読みます。 「粗雑」は「おおざっぱでいい加減なこと」という意味です。 そまつであらいことを言い表す言葉です。 「杜撰」は「ずさん」と読みます。 「杜撰」の意味は「物事のやり方がいい加減で、手抜きが多いこと」です。 計画性のなさを批判したり、詰めの甘さを指摘する際に使われる言葉です。 「ぞんざい」の意味は「物事のやり方がていねいでない様」です。 やり方や取り扱いかたがいい加減なことを言い表します。
「万全を期す」を英訳すると「make sure I don't make any mistake」です。 「一つもミスをしないようにする」という意味です。
We made sure we will make no mistake on this.
この件に関して我々は万全を期した。
「万全を期す」は「make every possible effort」と表現することも可能です。 「可能なすべての努力をする」という意味です。
「万全を期す(ばんぜんをきす)」とは、不注意による失策がないようにするという意味です。 ビジネスシーンで「ぬかりがないようにきちんと準備をする」という意気込みを伝えるときなどに使用されます。 「万全を期して〜いたします」「万全を期す所存です」などと使います。 また、「体調管理に万全を期す」など体調に対しても使われます。