「万難(ばんなん)を排(はい)して」とは「何が何でも」という意味です。「万難」は「多くの困難」、「排す」は「取り除く」という意味で、「どんな困難があろうとも、それらを押しのけて」というニュアンスです。
「万難を排して」の読み方は「ばんなんをはいして」です。 「万難」を「まんなん」と読むのは誤用ですので注意しましょう。
「万難を排して」の意味は「何が何でも」です。 なぜそのような意味を持つのか、語源を説明すると、 「万難」の意味は「多くの困難やあらゆる障害」 「排して」の意味は「障害となるものをしりぞけて、押しのけて」 となります。 組み合わせると「多くの困難をしりぞけて」となります。 要するに「どんなことがあったとしても、それらを受け入れずに押しのけて」ということとなり「何が何でも」「何としてでも」といった意味になります。
「排して」の漢字を「廃して」や「配して」とするのは誤用です。 どれも「はいして」と読むため、間違えやすいのですが正しくは「排して」です。 「困難を排除して」といった意味であることを覚えておきましょう。
「万難を排して」と使う場合は、「行動を起こす」意味合いのある動詞と一緒に使います。 主な言い回しは
となります。 「どんな困難があったとしても、それらを押しのけて行動する」といった意味合いになります。 「何が何でも行いたい」「何としてでも行う」といった強い意思が感じられる表現です。
例文
相手に参加してほしいという気持ちを表す際に「万難を排してご参加ください」を使います。 「何としても参加してください」と懇願しています。 相手の参加を促す際の定型句ですが、強引な印象を与える可能性があるので使う際は注意が必要です。 本来は「懇願するほど来て欲しい人である」といった意味で、相手を立てて使われているのですが「断りづらいな…」「そこまで時間割けないのに…」「強引すぎる…」なんて思われてしまうこともあります。 また目上の相手に対して「なんとしても参加して」と使うのは失礼にもなりますので、注意しましょう。
例文
「万難を排して」に「でも」を付けることで「何が何でも」といった意味を強調することが出来ます。 「万難を排してでも」は、動詞の活用形「て形」に「でも」がついた形です。 「排す」のて形「排して」に「でも」で「排してでも」となります。 「動詞て形+でも」の意味は「普段はしないような手段を使う覚悟で○○する」となります。 例えば「いくら払ってでも」「仕事を休んででも」「無理してでも」などとよく使われる文法です。 要するに「万難を排して」は「普段は困難を押しのけてないが、今回は押しのける覚悟で」といった意味になります。
一般的には「万難を排して」がよく使われますが、「万難を排する」の形でも使います。 例えば「実現のために万難を排する」「成功のためなら万難を排する」などと使います。 意味は「実現のためにあらゆる困難を押しのける」「成功のためならどんな障害もしりぞける」となります。
「万難を排してご参加ください」と言ってもらっても、どうしても都合がつかず断らなければいけないことってありますよね。 「万難を排して」と言われているのに断ってもいいのだろうか…と思うかもしれませんが、きちんと丁寧な言葉で断れば問題ありません。 主に誘いを断る文章として使われているのが「せっかくのお誘いですが、都合により参加いたしかねます」です。 都合の詳細を相手に伝える必要もありません。 「参加できません」でも敬語なのですが、素っ気なくて冷たい印象を与えてしまうのでビジネスシーンでは使うべきではありません。 ただ「参加いたしかねます」のみでは、婉曲表現なので「もしかしたらできるのかもしれない」と相手に誤解される可能性があるため「せっかくのお誘いですが」「大変申し訳ありませんが」と文頭に置くことで、断っていることが明確に伝わります。
参加の意思表明をする場合は「万難を排してご参加ください」に対して「万難を排して」を使って返信すると丁寧です。 相手が「万難を排して」と言っているのに「参加します」だけだと、熱量の差を感じてしまうことがあります。 ですのえ「万難を排して参加いたします」「万難を排して参加させていただきます」とすると、丁寧で相手にも参加したい気持ちがしっかりと伝わります。
また参加をする際に「万難を排して馳せ参じます」だと謙遜した表現となります 「馳せ参じる」の意味は「大急ぎで駆けつける」です。 ただ大和言葉でありちょっと古い言い回しではありますが「参じる」は目上の人の所へ行くといった意味なので、敬意を表すことが出来ます。
「万障お繰り合わせのうえ」は「色々な不都合があるかもしれないが上手くやりくりして」という意味になります。 「万障お繰り合わせのうえ、ご出席ください」「万障お繰り合わせのうえ、ご参加お願いします」などと催し事への参加を促す言い回しです。 ただ「万難を排して」と同様に「上手く都合をつけて最優先で来てください」と参加や出席を強制する意味合いがあるため、高圧的であると捉える人もいます。用いる際には注意が必要となります。 「万難を排して」と混同し、「万障を排して」とするのは誤用ですので注意しましょう。
「是が非でも」は「ぜがひでも」と読みます。 意味は「良くても悪くても、何が何でも」です。 善悪に関わらず、何が何でもということを表しており、「良かろうが、悪かろうが」といったニュアンスです。 「否でも応でも」は「いやでもおうでも」と読みます。 意味は「承知でも不承知でも、何が何でも」です。 その内容を認めていようが拒否したかろうがどうしてもということを表しています。
「万難を排して」の対義語には
などがあります。 「都合がつけば」の意味は「予定が調整できれば」となります。 他に優先されるべき物事があれば、そちらに時間を割り当てるということを指します。 「気が向いたら」の意味は「その時その気になれば」となります。 現在やる気があるわけでもなく、そのためにわざわざ行うほどではないということを指します。
「万全を期して」は「ばんぜんをきして」と読みます。 意味は「少しの抜かりもなく完全な状態で」です。 「万全」の意味は「きわめて完全で、手落ちのないこと」 「期して」の原型「期する」の意味は「前もって期限や時刻を定める」「期待する」「約束する」です。 ここでは「前もって」の意味合いが強く「準備して」といった意味で用いられています。 類語には「満を持して」があります。 詳細は後述しています。
例文
「万感の思い」は「ばんかんのおもい」と読みます。 「一瞬で心にわき起こる様々な感情」を表現する言葉です。 嬉しい気持ちや悲しい気持ち、安心する気持ちや大変だった気持ちなど、いろんな感情が入り混じってわき起こる時に使われます。 嬉しい気持ちだけ、悲しい気持ちだけ、の時には使われません。 主に、何かを成し遂げた時や長い道のりを振り返った時などに使われます。
例文
「一事が万事」は「いちじがばんじ」と読みます。 意味は「一つの事柄を見れば、他のすべての事柄が推測できること」です。 「万事」の意味は「すべてのこと、あらゆること」です。 他にも「万事」を使った言葉には「万事休す」「万事限り」があります。 「万事休す」は「ばんじきゅうす」と読み、「万事限り」は「ばんじかぎり」と読みます。 どちらも意味は同じで「もはや施す手段がなく、何をしてもだめなこと」となります。
例文
「満を持して」は「まんをじして」と読みます。 意味は「十分に準備をして機会を待つ」です。 「満を持して」の原形は「満を持す」です。 「準備を十分にして機会を待つ」「物事が絶頂に達して、その状態を保つ」といった意味になります。 「万難を排して臨む」は意味的に間違いとは言えませんが、「満を持して臨む」の方が自然です。
例文
「万難を排して」の英語は「at any cost」です。 「cost」の原義は「費用」で、転じて「犠牲」という意味があります。 「at any cost」で「どんな犠牲を払っても」という意味です。 「at all costs」と表現することもできます。
We must carry it out at any cost.
我々は万難を排して実現しなくてはならない。
いかがだったでしょうか? 「万難を排して」について理解できたでしょうか? ✔読み方は「ばんなんをはいして」 ✔意味は「何が何でも」 ✔「行動を起こす」動詞と一緒に使う ✔ビジネスシーンでの「万難を排してご参加ください」は参加依頼の定型句