「お申し出ください」という敬語表現の意味と使い方を解説します。「お申し出ください」をより丁寧にした敬語表現や「お申し付けください」などの類似表現も例文付きで解説していきます。
「申す」は「言う」の謙譲語なので、目上の人に対する自分の行為をへりくだって使います。 ただし「お申し出ください」の「申し」は「申し出」という名詞の一部なので、謙譲語にはあたりません。 「申し出」とは「進んで言って出る」という意味です。 つまり「お申し出ください」は「進んで言って出てください」という命令文になります。 接頭語「お」は、文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどの敬語にもなりますが、「お申し出ください」は他人の行為に対して使っているので、尊敬語と解釈するのが正しいです。 「ください」はお願いする時の補助動詞です。 補助動詞なので「下さい」と漢字にしないのが正しい表記です。 したがって、「お申し出ください」は目上に使える正しい敬語ということになります。
「お申し出ください」は、
とするとより丁寧な表現になります。 「ご遠慮なく」「お気軽に」などの枕詞を添えると、より丁寧になるので目上の人に対して使うようにしましょう。
「お申し出ください」は「お申し出いただければ幸いです」「お申し出いただきたく存じます」だともっと丁寧になります。 「幸いです」は、「自分にとって嬉しいことです」「〜であれば幸せになります」といった意味になります。 「幸いです」を依頼をするときに使う場合は、「〜してくれるとありがたい」という意味になります。 そのため「お申し出いただければ幸いです」と使った場合「申し出てもらえるとありがたいです」と、謙った表現となります。 また「いただきたく存じます」は「◯◯してほしいと思います」という意味です。 「いただく」は「もらう」の謙譲語で、「たい」は希望を表す助動詞で、目上の人に対してお願いをする場合に使う言い回しです。 敬意が強いため、ビジネスシーンでも「お申し出いただきたく存じます」はよく使われています。
「お申し出くださいますよう、よろしくお願い〜」だとさらに丁寧となります。 「お申し出くださいますよう、よろしくお願いいたします」「お申し出くださいますよう、よろしくお願い申し上げます」といった言い回しとなります。 「お申し出くださいますよう、よろしくお願い申し上げます」は、「してくれる」の尊敬語である「お~くださる」という言葉に、丁寧語の「ます」と「よう(様)」を組み合わせた「くださいますよう~」という敬語を使用しています。 さらに、「お願い申し上げます」は「お~申し上げる」という謙譲語を組み合わせている為とても丁寧な言葉となっています。 職場の上層部の人たちや顧客や取引相手にも使用できる言い回しであると言えます。
「ください」は敬語ですが命令文なので、「何かございましたら、お申し出くださいますか」などと疑問形にすると、最も丁寧な表現になります。 「ください」と言い切ってしまうと「申し出なければならない」と、やや威圧的な印象を与えてしまう可能性があります。 これを疑問形にすることで、申し出るかどうかは相手次第となり柔らかい印象となります。
また「お申し出いただけます」「お申し出いただけますか」も使うことができます。 「お申し出いただけます」は「お申し出」と「いただけます」がどちらも謙譲語であることから「二重敬語」と思われがちですが「お申し出いただけます」は二重敬語ではありません。 例えば「拝見する」という動詞を「拝見させていただく」とした場合は、一つの言葉に対して「拝見」と「させていただく」の2つの謙譲語を使っているため二重敬語となります。 ただ「お申し出いただけます」は「申し出る」と「してもらえる」の2つの単語から成り立っており、それぞれ一つの謙譲語を用いているため正しい敬語となります。
お客様や取引先、社内の上司など目上の人に「質問してください」「聞いてください」と促すときに「お申し出ください」はよく使われます。 相手が質問や意見を言うことしやすいように、事前に伝えておきます。 相手が話しやすくなるだけでなく「私までお申し出ください」と言うことで、誰に質問や意見をすればいいのかも分かることが出来ます。
「お申し出ください」の例文
問い合わせをしてくれたことに対してお礼をする際には「お申し出くださいまして、ありがとうございます」「お申し出くださいまして、誠にありがとうございます」と使います。 また「お申し出くださり、ありがとうございます」と使うことも出来ます。
「お申し出ください」の例文
自分から申し出る場合は「申し出いたします」「お申し出いたしいます」と使います。 謙譲語となるため、目上の相手に使うことが出来ます。 「私がお申し出いたします」とした場合「私が言います」といった意味になります。
「お申し出ください」の例文
「お申し付けください」は、「申し付ける」「言い付ける」を丁寧にした言葉です。 「何でも言ってください」という意味になります。 しかし「お申し付けください」は謙譲語なので、相手の言動に対して使うのは失礼にあたります。 「言い付ける」のは相手の言動ですので、それを謙譲語にして「お申し付けください」というのは本来の敬語の使い方としては間違っています。 ですが、「お申し付けください」は慣用句として一般的に使われており、多くの人がビジネスシーンでも使っています。
「お申し付けください」の例文
「仰せ付ける」は、「言い付ける」の尊敬語になります。 「仰せ付けください」は、何か注文をしたい時や依頼をする時に使うことができる言葉になります。 「仰せ付けください」は尊敬語のため、敬語表現としても正しい使い方になります。 「お申し付けください」が謙譲語のため上司や顧客様など目上の人に対して使うことに抵抗がある場合は、「仰せ付けください」を使うと良いでしょう。
「仰せ付けください」の例文
「おっしゃってください」も丁寧な言い回しです。 「言う」の尊敬語は、「おっしゃる」「言われる」になります。 そのため相手が「言う」ことに尊敬を表しているので、とても丁寧な言葉となります。 ただし「おっしゃられる」は、「言う」の尊敬語「おっしゃる」+尊敬語「れる」になるので二重敬語になってしまいますので注意しましょう。
例文
他にも
などといった言い回しもあります。 「ご教示」の意味は「相手に教えてもらうこと・指導してもらうこと」です。 「ご教示ください」は「どうか教えてもらえるように願う」というニュアンスになり、自分が知らないことを相手に教え示してもらうときに使用します。
「お知らせください」「お声がけください」の例文
「お申し出ください」の英語表現は「Please do not hesitate to ask me...」です。 「hesitate」は「〜するのをためらう」という意味です。それの否定形で「ためらわないでください」=「遠慮しないでください」という意味になります。
Please don't hesitate to ask me anything if you have questions.
もし質問がありましたら、何でも私までお申し出ください。
もう少しカジュアルな表現には「Please feel free to ask me...」があります。 「feel free to...」は「自由に...して」という命令文です。
いかがだったでしょうか? 「お申し出ください」はビジネスシーンで重宝される言い回しです。 どんな場面でもその一言で相手に安心感を与えることができます。 おもてなしの心が表現できる「お申し出ください」を上手に使いましょう。