ビジネスシーンやメールで、敬語を上手く使いこなせないと思うことはありませんか。敬語は理解していても使い方が難しく、場面や相手によって使い分ける必要もあります。その中でも「くださいませ」という敬語は、様々なシーンで使われています。「くださいませ」はよく耳にする言葉ですが、使用する上での注意点があったりします。そこで今回は「くださいませ」の意味や使い方、注意点について解説していきます。
「くださいませ」は、
で成り立っています。 ”五段活用”の動詞に「ます」「ました」を付ける場合、通常「る」の部分が「り」に変化します。 「ください」といったような場合は「り」がさらに「い」が変化します。「り」が「い」に変化することを”イ音便”と呼びます。 「いらっしゃいませ」もこれと同じく、「来る」の尊敬語「いらっしゃる」の連用形「いらっしゃり」がイ音便に変化した「いらっしゃい」に「ませ」が付いた形です。 ですので、文法的に「くださいませ」は敬語として適切であると言えます。 「ください」は「相手に何かを要望・懇願する意」を表し、「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」「丁寧な気持ちを込めて挨拶する意」を表します。 したがって、「くださいませ」は「丁寧な気持ちを込めて相手に何かを依頼・懇願すること」を意味します。
上記でも触れたように、「くださいませ」は敬語として問題ありません。 「◯◯くださいませ」は相手に対して「◯◯をするように」と促すときに、丁寧な気持ちを込めて使います。 「ませ」とすることで、言葉を丁寧にするだけでなく、女性的な柔らかい印象を与えることができます。
「いらっしゃいませ」は、小売店や飲食店などの接客商売において定番の挨拶です。また、来客者が帰るとき「またお越しくださいませ」なども、同様に「ませ」の付いた敬語表現になります。 このように、接客の現場では当たり前となっている「ませ」の付いた挨拶は、男女問わず使われています。 しかし、「くださいませ」も「ませ」の付いた敬語表現ですが、本来は女性だけが使う”女性語”です。 ”女性語”とは、女性特有の言い回しや言葉のことを指します。”女性語”の例としては、「ざます」「ごきげんよう」「あたくし」などがあります。 上記のような、男性も普通に使用できる「ませ」の表現は例外であると言えます。 「くださいませ」は”女性語”なので、男性はなるべく使用を避けるのが無難です。 もし、使いたい場合は別の表現に言い換えるのが良いでしょう。 例えば「ご確認くださいませ」だったら、「ご確認のほどよろしくお願いいたします」などと置き換えられます。
「くださいませ」と「下さいませ」、どちらを使用するべきなのか迷ってしまいますよね。 結論から言うと、「くださいませ」とひらがなで表記するのが正しいです。 「下さい」と漢字表記にするときは、「飲み物をください」といったように「ください」を実質動詞として使う場合です。 「ください」とひらがな表記にするときは、「お越しください」といったように「ください」を補助動詞として使う場合です。 簡単に言うと、”何か物が欲しい”場合の「下さい」は漢字表記、”何かをしてほしい”場合の「ください」はひらがな表記にします。 「くださいませ」の場合は”〜をしてほしい”という意味で「ください」を使っているので、ひらがな表記になります。
「◯◯ください」というよりも「◯◯くださいませ」といった方が、丁寧で柔らかい印象を与えられます。 「◯◯ください」と言うと、何となく素っ気ない印象を受けますが、「◯◯くださいませ」とすると、やや優しい印象を受けます。 「くださいませ」は丁寧な言い方ですが、「ませ」が命令形の言葉なので、何度も使用したり、強い口調で使ってしまうと失礼に当たってしまいます。使用する際は気をつけましょう。
「くださいませ」はメールや手紙においても使うことができます。 ビジネスメールでの「ください」は、何かを確認してもらいたいときや何かを依頼するときに用いることが多いです。 「ご確認ください」だったり「ご連絡ください」などとしますが、これだと何だか催促していたり、強要しているような感じがでてしまいます。そこで使えるのが「くださいませ」という表現です。 「くださいませ」は柔らかい響きを持っているので、「ご確認くださいませ」「ご連絡くださいませ」などと、確認や連絡を促しているにも関わらず、相手に不快な印象を与えないという効果をもたらします。 ただ、基本的に、社内メールや文書において「くださいませ」はあまり使われません。しかし、会社によっては、稀に「くださいませ」が適当である場合もあります。 差出人が男性なのに「◯◯くださいませ」だと違和感があるという方が多いという理由から、ほとんどの会社で「くださいませ」は使用されません。社外メールでも同様です。 何かをお願いするときは、「お願いいたします」などの表現を用いることが多いでしょう。 手紙や挨拶状で「くださいませ」を使う場合は、相手の健康を気遣うときに用います。 例えば、「ご自愛くださいませ」「体調にお気をつけくださいませ」というように使います。 「くださいませ」とすることで、柔らかい感じをだすことができます。
「まし」も「ませ」と同様に、丁寧の助動詞「ます」の命令形です。 例えば「いらっしゃいまし」「くださいまし」と使うことができます。 違いとしては、「まし」の方が「ませ」と比べて、やや古く、少々くだけた言い方として用いられています。 一般的には「くださいまし」と使うことはほとんど少ないので、「くださいませ」を使った方が無難です。
「くださいませ」について理解できたでしょうか? ✔︎「くださいませ」は敬語として正しい表現 ✔︎「くださいませ」は「丁寧な気持ちを込めて相手に何かを依頼・懇願すること」を意味する ✔︎「〜ください」と言うよりも「〜くださいませ」と言った方が、丁寧な印象になる ✔︎「くださいまし」という言葉もあるが、少々古く、くだけた言い方なのであまり使わない