「されていた」は動詞「される」と補助動詞「いる」に過去「た」でなりたっています。「されていた」は「した」の尊敬または受け身を意味します。今回は「されていた」の文法、正しい意味と敬語表現を詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
「されていた」は、「される」に「いた」がついた言葉です。 「される」は動詞「する」の尊敬と受け身の二つの意味を表す言葉です。 「いる」は補助動詞であり、その動作が習慣的に反復していることを表します。 「た」は助動詞で、動作・作用が過去の事柄であることを表しています。
「されていた」と「された」の違いは、「いる」がついているかいないかです。 「いる」は習慣的な反復=継続を表す補助動詞ですので、「されていた」とした場合は状態が続いていたことを表します。 受身の状態が続いていた、もしくは敬意を払う相手の状態が続いていたことを表します。 例えば「私は説明されていた」であれば、説明を受けている状態が継続していたことを示します。
「される」は「する」の未然形に助動詞の「れる」がついた言葉です。 助動詞「れる」の4つの意味は
です。 「される」の場合は可能と自発の意味は基本的に使いません。
上司など、目上の人の動作を表す際に「されていた」を使います。 「部長が説明されていた」「課長が会議の司会をされていた」「社長は休日ゴルフをされていた」などと使います。 「されていた」は書き言葉だけではなく口語でも使われます。 目上の人に直接話す時に「ゴルフをされていたんですね」「昨日は何をされていたのですか?」などと使うことも出来ます。
例文
また、「されていた」は、自分や他の人が何か受け続けていた様子を表す際にも使います。 例えば「私は昨日マッサージされていた」「彼が質問されていた」などと使います。 こちらも書き言葉だけではなく口語でも使われます。
例文
「〜とされていた」の形では個人的な考えではなく一般的な意見を提示します。 この「されていた」の用法も大別すると受身に含まれます。 「〜と言われていた」「〜と考えられていた」「〜と伝えられていた」「〜と噂されていた」などと言い換えることができます。
例文
上記でも説明した通り、「されていた」は文法的には可能または自発の意味でも使用することができます。 例えば、
などです。 古語では「される」も可能の意味で使われていましたが、現代ではこのような使い方はまずしません。 それは尊敬・受け身で使うことが一般化し、意味を混乱してしまうからです。 「勉強されていた」は「勉強できた」と言い換えます。 「宿題をされていた」は「自ら勉強した」「自発的に勉強した」と副詞と一緒に使うのが自然です。
日常生活では「されていた」を「されてた」と略して使われることも多くなっています。 しかし、「されてた」と略すことができるのは口語のみです。 書き言葉では「されていた」と表記する必要があります。 また、ビジネスシーンでは略した言葉は不適切なので注意しましょう。
例文
「されていた」に丁寧語の「ます」を付けた「されていました」は、目上の相手のことを第三者に話す際に第三者に対しても丁寧さを伝えることが出来ます。 「○○様はプロジェクトリーダーをされていました」「先日は課長が司会をされていました」などと使います。 話に出てくる人への敬意と、話し相手への敬意の両方が含まれています。
例文
「されておった」は「されていた」の「いた」を丁重語の「おった」にした表現です。 丁重語とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用されます。 例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している「丁重語」です。 また、自分以外の動作にも丁重語を使用することもできます。 例えば「寒い日が続いております」など、主語が「寒い日」でも「おります」と丁重語を使用することによって、聞いている相手に敬意を示すことができます。 「されておった」を使えば、「昨日」など過去表現を使用しなくても過去の内容であることが相手に伝わります。また、過去表現と「されておった」を併用しても問題ありません。 ただ、「されておった」は古めかしい響きがあるため、違和感を覚える人も多いです。 「昨日」「先日」などの過去表現が文中にあれば、「されておった」ではなく「されており」を使っても過去の内容であることが相手に伝わります。 基本的には「されており」を使った方が無難といえるでしょう。
「されていらっしゃった」は「していた」が原型の正しい敬語です。 本動詞「した」を敬語にして「された」、 補助動詞「いた」を敬語にして「いらっしゃった」、 つなげて「されていらっしゃった」となります。 2つの動詞をそれぞれ敬語表現にした場合は二重敬語にはなりません。 例えば「ゴルフをされていらっしゃった」と使うことが出来ます。 ただし「されていらっしゃった」は少しクドく感じる人もいます。 「していらっしゃった」<「されていた」<「されていらっしゃった」の順でより敬語が丁寧になります。 普段社内などで使う場合は「していらっしゃる」でも問題ありません。 また、するの尊敬語である「なさる」の過去形「なさっていた」を使用して「ゴルフをなさっていた」でも問題ありません。
「〜されていたことと存じます」は尊敬語「されていた」と謙譲語「存じます」です。 「されていたことと存じます」の「存じます」は「思います」の意味です。 「されていたことと存じます」は、相手が「何かしていたと思います」といった意味になります。 「存じます」には、「知っている」「承知している」という意味もあります。 「知っている」「承知している」の意味で使用する場合、丁重語になります。 「されていたことと存じます」は、「きっとこうであったかと思います」と憶測ではあるがほぼ確信を得ている内容について使います。 例えば「ご活躍されていたことと存じます」「お元気にされていたことと存じます」などと使います。 この場合の「存じます」は、丁重語ではありません。
「されていた」の類語は、受け身なら「行われていた」「実施される」などがあります。 「行われていた」は、「行う」の未然形に受け身の助動詞「れる」に過去の「た」をつけた表現です。 例えば、「昨日までスタンプラリーが行われていた」といった使い方をします。 「実施される」は、「実施する」の未然形である「実施さ」に、受け身の助動詞「れる」がついた表現です。 「実施される」は「イベントは予定通りに実施される」といった使い方をします。
「される」の類語、つまり「する」の尊敬語には他にも「なさる」「あそばす」があります。 「する」の尊敬語である「なさる」は「なさっていた」です。 例えば、「課長は昨日、外食をなさっていた」といった使い方で、「課長は昨日、外食をされていた」と同じ意味になります。 「あそばす」も「する」の尊敬語です。 例えば「お通りあそばせ」で、「お通りなさって」という意味です。 過去形にすると「あそばしていた」になります。 ただ、かなり古風な響きがあり、聞き慣れない人も多いため使用する人はほどんどいません。
尊敬の「されていた」は、「していた」と同義なので、「was doing」で問題ありません。過去進行形です。 継続していたことを強調したい場合は、「had been doing」を使います。過去完了形です。 過去の時点から、(現在により近い)過去の時点まで継続していた時に使います。 「had done」としても継続の意味になりますが、「had been doing」とした方が継続していたことがより強調できます。 「was doing」だと継続していたことにならないわけではないので、口語では「was doing」を主に使えば問題ないでしょう。
She was working in the office last night.
彼女は昨夜オフィスで仕事をされていた。
The author had been thinking about a new novel for even three years.
その作家は3年間もの間、新しい小説について考えを巡らされていた。
過去の受身の継続を意味する「されていた」の英語表現は「was being done」「had been done」です。 「is being done」の形で受身の継続を表すことができます。 継続していた強調するには「has been done」を使用します。
He was being beaten.
彼はボコボコにされていた。
That new building had been under construction for even five years.
あの新しいビルは5年もの間、建設されていた。(現在は竣工している)
いかがでしたか? 「されていた」について理解を深めていただけたでしょうか。 簡単にまとめると...