「ありがとう存じます」と聞いて違和感を覚える人は多いのではないでしょうか。実は「ありがとう存じます」は正しい敬語表現です。今回は「ありがとう存じます」について詳しく解説していきます。
まずは「ありがとう」の成り立ちをみていきましょう。 「ありがとう」は最頻出の日本語ですが、成り立ちを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか? 「ありがとう」の語源は「ありがたくございます」という言葉です。 形容詞「ありがたい」の連用形「ありがたく」に「ある」を丁重語+丁寧語の「ございます」をつけて「ありがたくございます」となっています。 「ありがたい」の漢字は「有難い」と書きます。 「有り難い」は「あることが難しい」という意味で、滅多にないことに感謝する気持ちを表す言葉です。 口語において、形容詞の連用形は語尾に敬語表現が付く際にウ音便化します。 例えば、「行きたくございます」が「行きとうございます」となるのが、ウ音便化です。 「ありがたくございます」もウ音便化され「く」が「う」の音になり、「ありがたうございます」となりました。 さらに「ありがたうございます」は「たう」の部分が発音しづらいので、「ありがとうございます」にさらに変化しています。 「ありがとう」という日本語は、この「ありがとうございます」を略したものだったのです!
「ございます」以外にも
なども語尾に付ける敬語表現です。 「候」は、話し方を丁重にして、聞き手を敬う丁寧語です。 「〜で候」といった使い方をします。 「ござる」は「ある」の丁重語で、さらに丁寧語の「ます」をつけると「ござります」となります。 「さん」は丁寧にいう時につける語で、「ご苦労さん」「お早うさん」も、実は正しい敬語です。 「存じます」は「思う」の丁重語です。 よって、「ありがとうございます」が正しいのと同様に「ありがとう存じます」も完全に正しい日本語なのです。
もともとウ音便が発生したのは口語において、発音しやすくするためです。 よって、ウ音便していない「ありがたく存じます」も、もちろん正しい日本語です。 書き言葉ではこちらの方が適切です。 ただし、「ありがとうございます」などは定型句として定着しているので、書き言葉でも問題ありません。 「ありがたく思います」も正しい日本語です。 ただし「ありがとう思います」は不適切なので注意しましょう。 目上の人など敬意を示すべき相手に使用するなら「ありがたく存じます」が適しています。 「ありがたく思います」は、「思う」が敬語ではないからです。
「ありがとう存じます」が不自然に感じる理由は2つ考えられます。 まず、1つ目の理由は「存じます」という言葉がかたい響きがあることです。 「存じます」は、「思う」の丁重語「存じる」に、丁寧語の「ます」をつけた言葉です。 ビジネスメールなど、かしこまった文章では使用される敬語表現ですが、口語としては使い慣れないという人が多いです。 「おめでとう存じます」など、やたらと「存じます」をつける「お嬢様言葉」というイメージがあるという人もいます。 2つ目の理由は、ウ音便化のルールを知らない日本人が多いからこそ「ありがとう存じます」に不自然さを感じ、使用する人も少ないということです。そのため、「聞き慣れない」という理由から「ありがとう存じます」を誤用だと判断する人が多くいるのです。しかし、「ありがとう存じます」が誤用だとすると「ありがとうございます」も誤用となってしまいます。 ちなみに「ありがとうございます」の「ございます」も丁重語+丁寧語です。 そのため、「ありがとう存じます」と「ありがとうございます」の敬意の度合いは全く同じです。
「ありがとう存じます」の英語には、もちろん「thank you」があります。 「thank you」以外にも感謝を表す英語表現はたくさんありますので、下記の記事を参考にしてみてください。