「ありがとうございました」と「ありがとうございます」の意味と使い方の違いについて解説していきます。それぞれの表現がどのような敬語なのか、についても説明したいと思います。
▶「ありがとうございました」・・・過去の出来事に対してのお礼の表現 ▶「ありがとうございます」・・・現在形のお礼の表現
「ありがとうございました」は、過去の出来事に対して、お礼の気持ちを伝える表現方法です。 例えば、「先日は、ご来店いただきありがとうございました」というのは、先日ご来店いただいたという、過去の出来事に対してのお礼になるので、「ありがとうございました」を使用しています。 一方、「ご来店いただきありごとうございます」というのは、今来店いただいたことに対するお礼であり、継続しているお礼になるので、現在形の「ありがとうございます」を使用することになります。
「ありがとうございました」の語源は、古語の「有難し(ありがたし)」と言われています。 古語の「有り難し」は「有ることが難しい」、つまり「珍しい」ということを意味していて、「滅多にない珍しいこと」ということから「感謝するようなこと」となり、「神や仏を褒めたたえる言葉」として使用されていました。 そして、室町時代に「有難く存じます」という言葉で人に対しても感謝の気持ちを表現する言葉として使われはじめました。
「ありがとうござしました」は、「丁寧語」であり「尊敬語」ではありません。 ビジネスシーンや、目上の人などに「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えたい場合は、「誠に」をつけて「誠にありがとうございました」という使い方をするなど、より丁寧な表現をすることを心掛けるとよいでしょう。
「ありがとうございました」は、過去の出来事や終了した物事に使うお礼の言葉です。 過去に起きた出来事に対して「先ほどはありがとうございました」といいったように使用します。 しかし、その場面や感謝の気持ちを終了させるようなニュアンスにもなるので、例えば飲食店などでお店を出るお客様に対して、本来「ありがとうございました」と伝えるところを、「これからのお付き合いを願う」といった意味で「ありがとうございます。またご利用くださいませ。」といったように、終了した出来事であっても「ありごとうございます」を使う場合もあります。 また、地域によってはどの場面においても「ありがとうございまいた」が最も丁寧だとされているところもあるので、そういったことも頭に入れておくと良いでしょう。
「先日は、お祝いをいただきありがとうございました」 「お忙しいところ、足を運んでいただきありがとございました」 「その説は大変お世話になり、誠にありがとうございました」 「三年間ご指導いただいた先生方、ありがとうございました」
「ありがとうございます」は漢字で「有難う御座います」と書きます。 しかし、ビジネスシーンなどで文章で「ありがとうございます」と伝える場面では、「有難う御座います」と漢字で使用することはほとんどありません。 「有難う御座います」と漢字で表記することは、決して間違いではありませんが、「こんにちは」を、「今日は」と漢字で表記することが少ないのと同様に、「有難う御座います」と表記することもあまりないということを覚えておくといいかもしれません。
「ありがとうございます」は、丁寧語ではありますが、尊敬語ではありません。 「ありがとうございました」と動揺に、ビジネスシーンや目上の人に使用する場合は、「誠にありがとうございます」といったような使い方をすることが望ましいでしょう。
「ありがとうございます」は、たった今起きた出来事に対してだけではなく、継続している出来事や関係性のときに使用します。 例えば、足を運んでいただいた方に対して、「本日はお足元の悪い中、足をお運びいただきありがとうございます」というのは、本来「足を運んでくれた」という「過去」になりますが、「来てくれている」という継続している出来事になるので、「ありがとうございます」を使用します。
「この度は、ご来店いただき誠にありがとうございます」 「アンケートにご協力いただきありがとうございます」 「このような素敵な場所に連れてきていただき、ありがとうございます」 「私に挑戦する機会をいただきありがとうございます」
「感謝いたします」は、「感謝」という言葉に「いたします」という謙譲語をつけ、相手への敬意を示した敬語です。 ビジネスシーンや目上の人の感謝の気持ちを伝える場合の「ありがとうございます」「ありがとうございました」を言い換えた表現になります。 「感謝いたしますとともに~」のような使い方をすることもあります。 また、「感謝いたします」より丁寧な言葉に言い換えると、「お心遣い感謝いたします」や「心より感謝申し上げます」というような言い回しになります。
「感謝いたします」を用いた例文 「沢山の方に手にとっていただけたことを感謝したします」 「この企画に携わってくれた方々に心から感謝いたします」 「素敵なご縁に恵まれたことを深く感謝します」
「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。 「心より」は「心の底から」を意味しているので、「心より感謝申し上げます」は「心の底からありがたくおもっています」という意味になります。 「心より感謝申し上げます」は、目上の相手や取引先の相手に対して使うことが多いです。 また「心より感謝申し上げます」の他にも、「心底から感謝申し上げます」や「深く感謝申し上げます」と言い換えることができます。 「心より感謝申し上げます」を砕けた言い方にすると、「感謝いたします」になります。
「心より感謝申し上げます」を用いた例文 「丁寧にご指導いただき心より感謝もうしあげます」 「関係者の方々に心より感謝もうしあげます」 「貴重な経験をさせてきただき、心より感謝もうしあげます」
「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。 「厚く御礼申し上げます」は、目上の相手に使うことができる表現で、手紙などで主にお祝いなどのときに、感謝の言葉として使われます。「厚く御礼申し上げます」は、年賀状や暑中見舞いで使用することが多いです。 「厚く御礼申し上げます」と共に使われるフレーズとしては、
といったようになります。
「厚く御礼申し上げます」を用いた例文 「この度はご協力いただきましたこと、厚く御礼申し上げます」 「お忙しい中ご来店いただきましたこと、重ねて厚く御礼申し上げます」 「関わってくださった全ての皆様にも厚く御礼申し上げます」
「感謝の念」は、「ありがたく思い、感謝したいと感じる心持ち」を意味しています。 「感謝」に思いや気持ちを表す「念」を付けることによって、相手に一層のお礼やありがたく思う気持ちを伝えることができます。「感謝の念」は少々堅い表現なので、ビジネス文書や手紙で使われることが多いです。 「感謝の念」の使い方としては、
といったようになります。 「感謝の念に堪えません」「感謝の念を禁じ得ない」は、「感謝の気持を抑えることができない」という意味で、非常に感謝していることを表しています。
「拝謝(はいしゃ)」は「感謝」の謙譲語になります。 「拝謝」は、本来の意味は、「拝礼して感謝の言葉を申し上げる」となるので、目上の相手に対して深い感謝を示すときに使います。 「拝謝します」は口語では使わず、主に手紙など書き言葉として使います。 「拝謝します」は、相応しくない相手に対して使用してしまうと、大袈裟な表現となってしまうので、気をつけましょう。
「ありがとうございました」「ありがとうございます」について理解していただきましたか? ✓「ありがとうございました」は過去の出来事にたいして使う言葉 ✓「ありがとうございます」は直近の出来事、継続している出来事や関係性に使う ✓「ありがとうございます」「ありがとうございました」は尊敬語ではない ✓「ありがとうございます」「ありがとうございました」の言い換えは、「感謝いたします」「厚く御礼申し上げます」など
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