「バイアス」という言葉をご存知でしょうか?あまり耳にしない言葉かもしれませんが、「バイアス」には「偏見」や「偏り」という意味があり、「偏見がある」ということを伝える場面では多く使用される言葉です。今回は、「バイアス」の意味について解説します。また、ビジネスでの使い方や種類、「バイアス」を使った熟語も紹介しますので参考にしてください。
「バイアス」は、統計学では「偏り(かたより)」という意味で使用されます。 統計学は、データの性質を調べたり、大きなデータから一部を抜き取って性質を調べることで、基になるデータの性質を推測したりする方法論であるため、様々なデータを使用します。 しかし、例えば「住人にアンケートをとる」というような場合に、「男性だけ」「女性だけ」というようにターゲットを絞ってしまうと意見に偏りが出てしまいますよね、 このように、分析に使用するデータに偏りがあるという場合や、推測した結果が事実とかけ離れていすという場合に、「バイアス」という言葉を使用して表現することがあります。
心理学では、「偏見」という意味合いで使用されます。 例えば、「これは絶対にこうだ」「こうなのだろう」という人間の抱く思い込みというような偏った考え方に対して「バイアス」という言葉を使用します。 例えば、「この人は髪の毛が長いので女の人だろう」というのは、「髪の毛が長いのは女の人」という偏った思い込みであるため、「バイアス」という言葉にあてはまります。
工学では、電化製品などを使用する場合の、最低限必要になる電圧や電流のことを「バイアス」といい、
というような使い方があります。 また、「かさ上げ」という意味もあり、ある数に特定の数を足してかさ上げすることを「バイアス」と呼ぶこともあります。
裁縫では、生地の布目に対して「斜め」であることを「バイアス」といいます。 例えば、布を斜めに切ることを「バイアスカット」、斜めに裁断した布のこと「バイアス布」「バイアステープ」といったように言い表します。
「バイアス」という言葉を使った熟語表現として「バイアスがかかる」という言い回しは最もよく使用されます。 この場合の「バイアス」は「偏見がある」「先入観にとらわれている」というニュアンスや、気に入った人を優遇するというような心理的な意味合いで使用されます。 例
「バイアスをかける」は、「バイアスがかかる」の逆の意味になります。 「バイアスがかかる」は、無意識に偏った考えをしてしまうことを言い表していましたが、「バイアスをかける」は意図的に「偏った考え方」で物事を見るというようなニュアンスになります。 例
ビジネスでのバイアスの具体例として、まず「学歴」が上げられます。 例えば、入社試験で書類審査があったという場面で、より偏差値の高い人が合格になるというような場合は学歴に対するバイアスがあることが考えられます。 つまり、「高学歴の人は有能である」という確証のない偏見があるということです。 現代では、採用の際に「履歴書不要」といったように学歴を見ない会社も存在しますが、「学歴社会」と言われるほど、卒業した学校名は非常に大切な時代があり、今も尚重視している会社もあります。
ビジネスにおいて、「この仕事は女性が向いている」「この仕事は男性が向いている」というように、男女の役割についての偏った固定概念もバイアスの1つとしてあげられます。 例えば、営業職は男性に向いていて、事務職は女性に向いているというような固定概念です。 また、職場において、女性が自分自身について男性よりも仕事ができない・必要とされていないと感じてしまうのも、バイアスがあるからであるといえます。
何かを決定する場合に、「過去の経験はこうだった」という固定概念により視野が狭まってしまうここともビジネスにおけるバイアスの1つです。 「今まではこうだったから」「前はこの方法で成功したから同じ方法をとるべきだ」というようなバイアスによって、的確に状況を判断できない・新しいことにチャレンジできないというような間違った判断に導かれてしまうことが経験によるバイアスです。
選択バイアスとは、試験や研究に組み入れる対象や条件を選択するときに生じる偏りのことをいいます。 例えば「独立すれば儲かる!」というのは、独立して成功した人を対象とした統計であるため偏りがある推測だといえます。 また、このような成功している人というような偏った統計が「生存者バイアス」です。
「認知バイアス」は、人が物事を判断するという状況で、個人の常識や環境による概念で非合理的な判断を行ってしまうことです。 この「認知バイアス」には「後知恵バイアス」や「認証バイアス」」といった様々な種類のバイアスがあります。 ・後認知バイアス 物事が起きたあとに、「そうなると思っていました」というような、予測できていたことであるというように振る舞う心理を「後認知バイアス」といいます。 ・確証バイアス 確証バイアスは、ある仮説や信念があった場合にそれを検証する場面で、肯定歴な意見ばかりをあつめて否定的な意見は無視してしまう傾向のことです。 例えば、「有名大学に入学すれば大手企業に入社することができる」というのも、有名大学に入学しても就職できない人もいるというようなマイナスな情報を無視し、肯定的な意見ばかりを集めたバイアスといえます。
「感情バイアス」とは、自分自身の感情で意志決定をしてしまうことをいいます。 例えば、証拠があったとしても自分にとって都合のいい結果を信じてしまう・自分にとって好ましくない事実は受け入れたがらないといったような作用が「感情バイアス」です。
「バイアス男子」は、「自傷癖がある・薬物である」というように、極端に偏った性格や思考・ライフスタイルの男子のことをいいます。 このように、性格や基質・思考・価値観が普通ではない男子をキャラクターとして取扱う二次世界(アニメや漫画)の作品を好み、それぞれの趣味趣向に合うバイアス男子を奏でるということを趣味としている人たちもいます。
「メディア・バイアス」は、テレビや雑誌、ラジオなどメディアが情報を伝えるときに、情報を取捨選択することにより生じる歪みのことです。 例えば、「○○○は危険!」とメディアが報じると、使用方法を守れば安全なものであっても、危険という情報ばかりが過剰に伝わり大きな影響を及ぼしてしまいます。 このように、偏った情報になってしまうことを「メディア・バイアス」といいます。
「出版バイアス」は、良い結果がでなかった研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されることが少ないという方よりのことをいいます。 肯定的な研究結果ばかり公表されることにより、根底にある有益または有害な効果が系統的に過小評価・過大評価されてしまいます。 このように否定的な研究結果が公表されないことを「公表バイアス」ともいいます。
「ジェンダー」は、「社会的文化的格差」という意味の言葉で、「ジェンダーバイアス」は、「社会的・文化的格差差別」という意味の言葉になります。 例えば、「男の人は外で働くべき」「女の人は専業主婦になって家庭をまもるべき」というような考えのように、男女の役割についての偏見や、評価による差別などを「ジェンダーバイアス」といいます。
「外集団同質性(がいしゅうだんどうせいしつ)バイアス」は、「自分に所属している集団が他の集団よりも多様性がある・優れている」とみなす偏見のことをいいます。 例えば、様々なメーカーの商品が存在する中で自社製品が一番であると思い込むというようなことを「外集団同性質バイアス」です。 これは、自分の所属している会社の製品だからこそ、製品に関する情報が豊富で他社との違いを認識しているという誤った解釈であるといえます。
「無意識(アンコンシャス)バイアス」は、無意識の偏見・無意識の思い込みという意味です。 「無意識」なので、自分自身も意図しない偏ったものの見方を事前にしてしまうということです。 例えば、「かわいい人は性格が悪い」「カッコいい人は女癖が悪い」というような、過去の経験や週間、周囲などから得た情報による固定概念で、確証のないことを無意識のうちに瞬間的に判断してしまうことを「無意識(アンコンシャス)バイアス」といいます。
「バイアスピリン」は今まで説明してきた「バイアス」とは異なります。 「バイアスピリン」は固有名詞で、薬の名前です。 血管を凝固させ出血を抑える役割のあるお薬です。
「バイアス」の語源は英語の「bias」です。 英語「bias」は必ずしもネガティブな意味ではなく、良い意味で使うこともあります。 逆に「prejudice」は、ネガティブな意味でのみ使います。
He has a strong bias against women workers.
彼は女性労働者に強い偏見を持っている。
↓ ビジネスパーソンにおすすめの英会話教室・オンライン英会話に関してまとめましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
「バイアス」という言葉について理解していただけましたか? ✓「バイアス」の意味は「偏見」や「偏り」 ✓「バイアス」は、工学で「電圧」裁縫では「斜め」という意味でも使用される ✓「バイアス」を使用した言い回しは「バイアスがかかる」「バイアスをかける」など