「社長」や「会長」という役職名は「敬称」であるということをご存知でしょうか。「社長様」「会長様」など敬称を重ねて使用するのは誤用です。今回は「社長様」「会長様」の正しい呼び方を解説します。また「様」以外の敬称も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「社長様」「会長様」は二重敬語です。 二重敬語とは、一つの語に同じ種類の敬語を重ねて使用してしまうことをいいます。 「社長」「会長」という役職名は「敬称」で、「様」も「敬称」です。 「敬称」とは相手に対して敬意を示す語のことをいい、 「敬称」には、 「様」「殿」のように人名・官職名の下につける語 「先生」「貴社」のように、相手の姓名や事物の名称に代えて用いる語 の二つあります。 したがって、「社長」「会長」は相手の名称を代えて敬意を示している敬称、「様」は人名につけて敬意を示している敬称なので「社長様」「会長様」は二重敬語で誤用であると言えます。 課長、専務といった役職も敬称なので、同じく「様」を重ねて使用することはできません。 ちなみに韓国語だと、「社長様」でも間違いではありません。 韓国で社長は「サジャン」、様は「ニム」、あわせて「サジャンニム」といいます。 韓国では、目上の人に対してはすべて「ニム」をつけて敬意を示します。 また、他社の人に社長の話をするときも、自社の社長を「サジャンニム(社長様)」といいます。 話している相手が誰であれ、自分より目上の人に対しては全員「ニム(様)」をつけて敬意を示すのが韓国の基本です。
正しくは「社長」「会長」です。 または「山田社長」「加藤会長」と名前と使うのが正しい呼び方です。 「社長」「会長」など肩書で呼ぶことに違和感があるという人は、「○○社長」「○○会長」と呼ぶか、「社長の○○様」「会長の○○様」の形にしましょう。
「殿」も敬称であるため、「社長殿」は二重敬語で誤用です。 また「殿」は、部下など目下の人に対して使用する敬称です。 目上の人には「様」を使用します。 したがって、目上の相手である社長に対して「殿」を使用することも誤用です。 ちなみに「様」は、目下の相手でも目上の相手でも使用することができる敬称です。
電話で、取引先の社長や会長を呼ぶときは
といいます。 ちなみに、知っている人も多いかと思いますが、取引先の相手など他社の人間に「加藤社長はいらっしゃいますか?」と言われたら、自分の会社の社長は名前を呼び捨てで「加藤ですね、少々お待ち下さい」などと答えます。 上述しているように「社長」は敬称なので、他社の人に自社の社長の話をするときは「社長」は付けずに呼び捨てにします。
例文
メールや手紙を社長に出す場合は、「会社名」+「役職名」+「名前」が基本です。 例えば、代表取締役に出す場合は、「株式会社ABCD 代表取締役社長 佐藤様」となります。 社長の名前がわからない時は、「株式会社○○ 御中」というように会社宛に出します。 もしくは、「株式会社○○営業部御中」というように部署名を入れてもよいです。 「御中」を使用する場合は「様」を使用することはできませんので注意してください。 また、「株式会社○○代表取締社長様」とする人もいます。 この場合、名前がわからないので「社長」を名称として「様」という敬称をつけています。 ただし、上述しているように「社長」は敬称なので、やはり誤用であることには変わりありません。 HPがある会社であれば社長の名前が書いていることも多いので、調べることができるようであれば調べて名前を書いたほうが良いでしょう。
例
「株式会社」は(株)と省略せずに書きます。 「代表取締役」「取締役」というのは法律で決められた役職名なので省略せずに書きます。 「社長」「会長」「CEO」「執行役員」などは法的な決まりはなく、会社によって使い方はまちまちです。 よって、ビジネスメールでも「代表取締役」「取締役」を入れる方が大切です。 税務署や市役所からくる正式な書類には、これらの記載しかありません。
社内の場合は、「社長」と呼びます。 もしくは「山田社長」など「名前+社長」で問題ありません。 自社の社長にメールをする場合も「山田社長」や「社長山田様」というように、敬称を重ねることのないように注意しましょう。 社内メールであっても、宛名と最後に送り主の部署と名前を忘れずに入れることが基本です。
新年の挨拶などスピーチで、「社長様をはじめ〜」など「社長様」を使う人もいます。 口語だと違和感が薄まりますし、相手に不快感を与えることも少ないです。 しかし、誤用なのは間違いないので、スピーチであっても「社長様」を使用するのは避けましょう。 「山田社長をはじめ、社員の皆様には〜」であれば問題ありません。 ちなみに、「はじめ」の漢字は「始め」です。 この場合の「はじめ」は「物事のはじまり」「起源」という意味です。 したがって、「始め」が正しい漢字表記です。 「最初」という意味ではないので「初め」は誤用になります。
例文
「御中」は「おんちゅう」と読みます。 「御中」は”個人宛ではない郵便物を出すとき、その宛名の下に添える敬称”です。 「御中」は、企業・学校・病院・役所など組織や団体が宛先の場合に使います。 「御」は「御歳暮」や「御挨拶」といったように、名詞を飾るための接続語で、下につく「中」を丁寧に表現する役割があります。「中」には「会社や組織の中にいる人」という意味が含まれるので、「御中」はあくまでも組織や団体などの宛先を敬っている訳ではなく、正確には人に向けられた敬称になります。 「御中」は会社名や団体名の下に添えられ、「◯◯御中」という使い方をします。宛先に部署名や課名なども書く場合は、「会社名→部署名・課名→御中」の順に書きます。 「御中」と「様」を一緒に使用することはできません。 「株式会社○○御中様」や「株式会社○○営業部様御中」といった使い方は誤用です。 「株式会社◯◯ 御中」と書いた場合、「株式会社◯◯の方だったら誰でもいいので読んでください」といった意味になります。
「宛」は「あて」と読みます。 「行」は「ゆき」と読みます。 「宛」と「行」は、自分に使用する敬称です。 相手に何かを郵送して返信をしてほしいときに、返信用の封筒やはがきを同封して送ることがあります。 そういった場合に、同封する返信用封筒やはがきの宛名を「(自分の会社名)宛」もしくは「(自分の名)行」とします。 自分に使う敬称であり、相手の敬称としては使えないので注意してください。 例えば「○○社長行」「社長○○様宛」といった使い方は誤用です。 ちなみに、相手から送られてきたものに返信用封筒やはがきが入っていたときは、宛先が「(相手の会社名)行き」「(相手の名前)宛」となっているので、「宛」・「行」は二重線で消し「御中」または「様」と記入して返送をするのがマナーです。
「各位」は「かくい」と読みます。 「各位」は「大勢の人を対象にして、その一人一人を敬って言う語」です。 「各位」は複数人を相手にする際、一人一人に敬意を込めるために使います。 あくまでも「各位」は大勢の方へ宛てる場合に使うので、個人に宛てる場合は使いません。 「各位」は敬意を表す言葉ですので顧客や社外の取引先、社内の上司など、様々な目上の人に対して使用します。 例えば「◯◯各位」と使います。複数の人の中に数名だけ目上の人が含まれているときは、「◯◯部長 △△課長 及び 関係者各位」などと表記することもできます。 ただし、「各位」は複数の人にメールや手紙を送ったり、案内状やお知らせ、改まった場所での挨拶などに使われます。封筒の宛名ではなく、「各位」は文章の冒頭もしくは文中で用いるものなので、宛名に使用しないように注意してください。
「殿」は「どの」と読みます。 「殿」は”他人の氏名・官名の下に添えて敬意を表す語”です。 「殿」は「様」よりも敬意が軽いので、主に目上の相手が目下の相手に対して使います。 公用や商用の場合は「殿」を使うのが決まりとされているため「◯◯部長殿」や「◯◯専務殿」といった使い方ができます。しかし、目上の相手に使うと見下していると捉えられる可能性もあるので、ビジネスシーンでは「様」で統一するのが無難です。 「殿」は文書内で書き言葉として使うので、口語では基本的に使いません。
「社長」の英語は「president」または「CEO」です。 「会長」は「chairman」です。 ただい、メールを書く時に「Dear CEO」などと英語圏ではしません。 「Dear Mr. Smith」など人名を使うのが普通です。 カジュアルな関係ならば、「Boss」などとメールの冒頭に入れるのもアリです。