平家物語の「偏に風の前の塵に同じ」といった一節でも使われいてる「ひとえに」という言葉。感謝の言葉を述べるときなどに使うことが多いですが、謝罪の場面でも使われています。今回はそんな「ひとえに」について正しい意味と使い方を例文付きで解説します。言い換え表現や類語、英語も紹介しますので是非参考にしてみてください。
「ひとえに」の意味は「ただそれだけが理由であるさま、他に理由はないこと」「一途に、もっぱら」です。 「理由はそれだけ」ということを強調する表現です。
「ひとえに」は「ひとえに〜する」といった使い方をして「ただそのことだけをすること、ひたすらに」といった意味もあります。 古めかしい響きがあるので、日常会話はもちろんビジネスシーンでもあまり使う機会はありません。 誤用ではありませんが、堅すぎる印象を相手に与えてしまう可能性がありますので、注意しましょう。
「ひとえに」の漢字表記は、「偏に」になります。 「偏に」を「ひとえに」と読める人が少ないため、ひらがな表記で書くのが一般的です。 副詞「ひとえに」は「そのものだけで、重ならないこと」を意味する「一重(ひとえ)」に格助詞「に」が成り立ちですが、「一重に」と漢字表記するのは間違いになりますので注意してください。
「ひとえに」の語源は「ひとへに」です。 意味は同じで、古文の中でも「そのことだけで他に理由はないさま」となっています。
「偏に風の前の塵に同じ」は「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」で有名な「平家物語」の一節です。 直訳すると「もっぱら風に吹き飛ばされる塵と同じ」で「物事のもろく儚いこと」を例えた表現です。 前の節が「たけき者もついにはほろびぬ」で「勇ましく強い人もいつかは結局滅びる」となります。 これを繋げると「いくら強い人でもただもろく儚く滅びるものである」と、「いつまでも強いわけではない」と諸行無常を表しています。
「ひとえに」のフレーズで一般的によく使われているのが感謝の場面です。 「これもひとえに皆様方のおかげ」は「皆さんのおかげでしかありません」といった意味です。 何か成功した時やうまくいっている時など自分自身や会社が良い状態であることを「周りの支えがあったからこそ」ということを表しています。 他にも「ひとえに皆様のご支援とご協力のおかげ」「ひとえに○○様のお人柄のおかげ」など、感謝を伝える相手や状況によって言葉を変えて使われています。
例文
また、「ひとえに皆様方の」の後に続く言葉に敬語や丁寧な言葉を使うことで、よりフォーマルな表現をすることができます。 「皆様方のおかげ」ではなく、「ご尽力のおかげ」「お力添えがあったからこそ」「ご愛顧の賜物」などがよく使われています。
例文
「皆様方のおかげと、ひとえに感謝いたします」の場合は、「ひとえ」が感謝にかかるため「ただひたすら感謝します」といった意味になります。 そのため、「皆さんのおかげ」よりも「感謝している」ことを強調した表現となります。
例文
葬儀の場でも、「ひとえに」を用いた感謝の言葉を述べることがあります。 主に、遺族が列席してくれた人に対して故人が生前お世話になったことについて挨拶するときに使います。葬儀が無事に終えられたことを参列者に対して感謝することもあります。 また、故人に対するスピーチや挨拶で感謝を伝える場合にも使うことがあります。
例文
「ひとえに」は結婚式の挨拶でも使われています。 主に、新郎新婦もしくは新郎新婦が列席してくれた人に対する感謝の言葉を述べるときに使われています。特に挙式を終え、披露宴のウェルカムスピーチで使います。
例文
「ひとえに」は、感謝だけでなく謝罪やお詫びの場面でも使います。 主に、謝罪するべき事柄の説明をするときに「理由は○○だけ」といった意味で使います。 「ひとえに私の過失」とした場合は「私の過失である他はない」といった意味合いになります。 また、謝罪をするときは説明だけでなくしっかりと謝罪の言葉も述べるようにしましょう。
例文
謝罪の場面では他にも「ひとえに私の不徳のいたすところ」などとも使います。 「不徳のいたすところ」の意味は「自分の不徳が原因で、好ましくない事態になったこと」です。 「不徳」の意味は「人間としての常識やモラルが欠けていること」で、要するに事がうまく運ばなかったときに、自分の未熟な行いが原因として謝罪する言葉でもあり、自分が行ったことへの反省の意思を示す言葉でもあります。
例文
「ひとえに〜する」は、「ただそのことだけをするさま」を表しています。 「ひとえにお願いします」と使った場合「ただただお願いします」といった意味になり、お願いすること以外はないほどとお願いすることを強調した表現となります。 ほかにも「ひとえにお詫びいたします」などがよく使われています。
例文
「ひとえに〜と言っても」とした場合は、「〜ばかりと言っても違うものもある」と否定的な意味で使います。 主に相手がある物事や事柄を一括りにして表現した場合に、「大抵はそうかもしれないが、違うこともある」と言う場合に使います。 たとえば「茶髪ってチャラいよね」と言われたときに「ひとえに茶髪はチャラいと言っても、真面目な人もいるよ」などと使います。
例文
副詞「ひとえに」は、文中のどこ配置するかによって修飾する言葉が変わり、文章全体のニュアンスが微妙に変化することがあります。 例えば、 ① この度のプロジェクトの成功は、ひとえに皆様のご協力のおかげと感謝いたします。 ② この度のプロジェクトの成功は、皆様のご協力のおかげとひとえに感謝いたします。
①の「ひとえに〜のおかげ」が一般的な使い方です。 副詞「ひとえに」は直後にくるフレーズを修飾するため、「皆様のご協力のおかげ」を修飾しています。 つまり「皆様のご協力」だけがプロジェクトの成功の理由である、ということを表しています。
②の「〜のおかげとひとえに」は「感謝いたします」を修飾しているので、「ただただ感謝のみをする」という趣旨の文章になっています。 この例文も文法的に誤りではありませんが、このように「ひとえに」を使うことはほとんどありません。主に、「プロジェクトが成功したのは皆様のおかげ以外の何でもない」から「感謝をする」といった意味で使います。
「単に」は「たんに」と読みます。 実は「単」という字も「ひとえ」と読みますが、副詞として使う場合は「たんに」となります。 意味は「とりたてて言うほどのことではない」ことを表します。 「単にそうしただけ」と言った場合「ただ言ってみただけ」といった意味合いになります。
例文
●ひたすらに 意味は「ただそればかり、ひとむき、すっかり」です。 例文
●ただただ 意味は「ただを強めていう言葉、それだけであって他でないこと、ひたすら」です。 例文
●他でもない 意味は「別のことではない」で、「まさにそれである」と内容を強調する言葉です。 例文
●専ら(もっぱら) 意味は「そのことばかり、それを主として」です。 例文
●一途に(いちずに) 意味は「ひとつのことだけで他を顧みずに、一筋に」です。 例文
●主に 意味は「中心となるところは、ほとんど」です。 例文
「ひとえに」の英語表現は少しむずかしいです。 「理由がひとつしかない」というニュアンスを表現するには、 「全て」を意味する英語である
と、 「理由」を意味する
などの言い回しを組み合わせて使います。
It's all thanks to you that I made it.
私が成功できたのもひとえにあなたのおかげだ。
I could pass the entrance exam entirely because you helped me out.
私が入試に合格できたのも、ひとえにあなたがご協力のおかげです。
I couldn't deal with that without your cooperation.
私がこの件を対処できたのも、ひとえにあなたのご協力のおかげです。
謝罪の気持ちを強調する副詞は「
I sincerely apologize for my mistake.
私の過失の件、ひとえにお詫び申し上げます。
I'm the one who is responsible for this failure.
この失敗は、ひとえに私の責任でございます。
「ひとえに」には「ひたすら」という意味があります。 「ただ一つのことだけをする」という意味ならば、
などを使います。
I was cleaning the room all day today.
今日はひとえに掃除のみをしていた。
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