「遜色ない」とは「他と比べて見劣りしない」という意の慣用句。「遜」は、へりくだるの意。「色」は、表にあらわれるの意。「遜色」で「へりくだっているのが見てわかる」の意で、転じて「劣って見える」の意になった。「遜色のない」「遜色がない」と使うのが一般的。
「遜色ない」の読み方は「そんしょくない」です。 「遜色ない」の意味は「見劣りしていない」「引けを取らない」となります。 「遜色」の意味は「見劣りすること」です。
「遜色ない」の「遜色」の元の意味は「へりくだる」という意味です。 「遜」は「謙」と同義語で、「へりくだる」つまり「劣る」となります。 「色」は「色彩」の意味の他に「表にあらわれる様子」という意味があります。 例えば「秋の色が深まる」などとこの意で使います。 よって、「へりくだっている様子が見てわかる」の意から「遜色」で「見劣り。他人より劣る様子」という意味になりました。 それに否定「ない」が付いて、「見劣りしていない」となります。
「遜色ない」を「謙遜ない」とするのは誤用です。 「遜」という漢字が同じであるため、勘違いしやすいので注意しましょう。 ちなみに「謙遜」は「謙遜しない」とするのが正しい使い方です。
「遜色ない」を「損色ない」とするのも誤用です。 「損」も「そん」と読むため間違いやすいので注意しましょう。 「損色」は「そしき」と読みます。「麁色」とも表記します。 意味は「建物の修理についての見積もり、見積書」のことです。 ちなみに同音異義語には「遜職」という言葉もあります。 これは「官位を辞する」という意味です。
昔は「遜色ある」の形でも使用していたため、「遜色ある」という言い回しを誤用ということはできませんが、現代では不自然さが拭いきれません。 芥川龍之介『秋山図』には、 「しかし家蔵の墨妙の中でも、黄金二十鎰に換えたという、李営丘の山陰泛雪図でさえ、秋山図の神趣に比べると、遜色のあるのを免れません。」 という一文があります。 この文章は「絵画を比較して見劣りする」という趣旨です。
「遜色ない」は「ない」という否定の言葉が使われていますが、「見劣りはしない」というポジティブな意味なので褒め言葉として使えます。 本来は負けていておかしくないのに、他と比較しても同等に良い、というニュアンスです。 しかし、「優位なわけではない」というネガティブなニュアンスは残るので、使う相手によっては失礼になる場合もあります。 「〜と比べて」という表現と併用することが多くなっています。
例文
「遜色ない」の敬語はビジネスシーンでよく使われています。
などがあります。 「遜色ありません」は丁寧語になります。 「遜色ないと存じます」は謙譲語となるため、職場の偉い人やお客さんなどに対して使う事ができます。
例文
名詞を修飾する時は「遜色のない」 名詞を修飾する時に「遜色なき」も使えるが、古めかしい響きがある 文末で言い切る時は「遜色がない」 言い切る場面では「遜色なし」「遜色はあるまい」も使えるが、こちらも時代がかった表現 強調した表現には(名詞を修飾する場合も文末でも)「何の遜色もない」
例文
「遜色急行」は 鉄道ファンが使う用語です。 これは「急行列車として使用することを想定されていない車両を用いて運転された、車両が一段格落ちしている急行列車を揶揄した表現」です。
「引けを取らない」の意味は「負けない」「見劣りしない」「互角だ」となります。 「引けを取る」は「負ける」「劣る」といった意味です。 この「引け」は、戦場において退却を命じる際の「退け(ひけ)」から来ていると言われています。
例文
「負けず劣らず」の意味は「優劣がつけにくい様子」「互角であること」です。
などといった使い回しをされています。
例文
「大差ない」は「たいさない」と読みます。 意味は「同じように見える」「目立った相違点がない」となります。 「大差」は「大きな差」のことで程度や数値などが大きく開いていることを表します。
「匹敵する」は「ひってきする」と読みます。 意味は「同程度である」「肩を並べる」です。 「匹」は元々「馬のお尻が左右2つに分かれて一つを成している」ことから来ています。 そこから「対になっているもの」といった意味を持ち、「匹敵」=「2つでひとつとなる敵同士」となり、「肩を並べること」となりました。
「互角」は「ごかく」と読みます。 意味は「互いの力に優劣の差がないこと」です。 競い合う双方の力量が同じくらいであることを表します。 「互角」は元々「牛角」と書かれていたと言われています。 牛の角は左右に2本生えており、本来2本の大きさや長さが違わないことから優劣のつけ難い時のたとえとして牛の角が使われていたとされています。
例文
「伯仲」は「はくちゅう」と読みます。 意味は「よく似ており、優劣がない」となります。 元々「伯仲」とは「長男と次男」を指します。 この2人に大きな差がないことから、力の優劣がないことを表すようになりました。 「実力伯仲」など、「○○伯仲」といった形でよく使われています。
例文
「比肩」は「ひけん」と読みます。 意味は「同等であること」です。 元は「肩を並べること」「並んで歩く」といった意味があり、そこから「同等」という比喩的な意味でも使われるようになりました。
「遜色ない」の対義語には「引けを取る」があります。 上記で「引けを取らない」を紹介したので、その反対語になります。 「引けを取る」は「負ける」「劣る」という意味です。
「敵わない」も「遜色ない」の反対語にあたります。 「力や能力が対抗できない。勝てない」という意味です。
「水をあけられる」「ビハインド」はレースなどでリアルタイムで差がある時に使うため、「負けている」という意味合いはあるものの、他の「遜色ない」の対義語とは少し使い方が違います。
「忌憚のない」は「きたんのない」と読みます。 意味は「遠慮のない」となります。 例えば「忌憚のない意見」と使い、「遠慮せずに、言いづらいことも言うありのままの意見」を意味します。よい意見だけではなく、悪い意見もしっかりと聞きますということを表します。
例文
「屈託のない」は「くったくのない」と読みます。 意味は「気がかりがなく心が晴れ晴れとしているさま」です。 「屈託のない笑顔」とよく使いますよね。 一切の曇りのない笑顔のことを指します。
「遺憾なく」は「いかんなく」と読みます。 意味は「心残りがないほど」「後悔しないほど」です。 前向きな言葉となります。 「遺憾」の意味は「思い通りにいかず心残りなこと、残念なこと」です。 よく謝罪会見などで聞く言葉ですが、「遺憾」という言葉自体には怒りや謝罪の意味は含まれていません。 ちなみに「遺憾無く」はほとんどの場合が「発揮する」と組み合わさって使われています。
例文
「途方もない」の読み方は「とほうもない」です。 意味は3つあります。 ①道理に合わない、途轍もない ②並々でない、ずばぬけている様 ③手段が尽き困り果てる となります。
「とりとめのない」の意味は「まとまりのない」「しまりがない」です。 人の話や文章、議論などが道筋なくバラバラであったり、結論や目的がはっきりしない状態を指します。 「とりとめのない◯◯」の形で名詞を修飾します。 「とりとめのない」を漢字表記にすると「取り留めの無い」です。
例文
「たわいもない」の意味は、 ①しっかりしていない。統一性がなく思慮に欠けた ②話題にする価値がない。重要でない です。 「たわいもない」は言葉や行動、考えを修飾して使います。特に発言に対して使うことが多いです。 「たわいもない話」には「筋道が通っておらず思慮に欠けた発言」という否定的な意味と、単に「世間話」「雑談」のような「まとまりのない会話」という意味があります。
例文
「如才ない」は「じょさいない」と読みます。 「如」は「如実」など「にょ」と読むこともありますが、「にょさいない」ではないので注意しましょう。 「如才ない」の意味は「気がきいていて抜かりがないさま、愛想がよいさま」です。 「ない」と否定されているので、なんとなくネガティブな意味合いの言葉と勘違いし誤用している方が多いですが、「如才ない」は良い意味の言葉です。誰かを褒めるときに使います。
「be inferior to...」で「...に劣る」という意味です。 それを否定「not」を使えば、「遜色ない」という意味合いで使うことができます。
This Japanese wine is not inferior to any French wine.
この日本製のワインはフランス製のどのワインと比べても遜色ない。
「stand comparison with...」または「bear comparison with...」でも「遜色ない」という意味になります。 これらは直訳すると「...との比較に我慢できる」です。つまり「匹敵する」というニュアンスです。 「比較されても問題ないほどよい」「比較対象物と同じくらいよい」という意味です。
Her singing stands comparison with the best singer in the country.
彼女の歌声は国内で最もうまい歌手と比べても遜色ない。
「遜色ない」とは「引けを取らない」「見劣りしていない」という意味の表現です。 「損色ない」はよくある誤記なので注意です。 また、「遜色のない」「遜色がない」などと使い「遜色ある」とはいいません。