「とりとめのない」は「取り留めの無い」と漢字表記し、「まとまりのない」「重要ではない」という意味で、話や文章、議論などに対して形容詞的に使います。「とりとめもなく」の形では副詞的に「ずっと」という意味で継続しているさまを表します。それでは「とりとめのない」の詳しい意味と使い方、類語、対義語、英語表現を解説していきます。
「とりとめのない」の意味は「まとまりのない」「しまりがない」です。 人の話や文章、議論などが道筋なくバラバラであったり、結論や目的がはっきりしない状態を指します。 「とりとめのない◯◯」の形で名詞を修飾します。 「とりとめのない」という表現は芥川龍之介が『羅生門』『偸盗(ちゅうとう)』『女体』などの作品で使用している表現としても有名です。
「とりとめのない」を漢字表記にすると「取り留めの無い」です。 「取り留め」で「しまり」「まとまり」を意味する1つの名詞で、それに「のない」が付いて、「とりとめのない」は形容詞的に使います。 「とりとめのない」は組み合わさって成立する表現で、厳密には品詞が形容詞なわけではありません。 「とりとめ」を「取り止め」と表記することもありますが、「取り止め」は一般的に「とりやめ」と読み、「中止」という意味で使うので注意です。 「取り留め」の動詞形は「取り留める(とりとめる)」です。「おさえとどめる」という意味があり、「一命を取り留める」の形で使います。 「取り留める」の「おさえとどまる。ひきとめる」という意味から転じて「しっかり定める。はっきりさせる」の意味を持つようになり、「とりとめのない」で「まとまりのない」という意味に繋がります。 ちなみに「取り止め」の動詞は「取り止める(とりやめる)」ですが、「取り止む(とりとどむ)」とすると「おさえとどめる」という意味になり「取り留める」と同義になります。
「とりとめのない文章」とは「統一性のない文章」「何が言いたいのか理解できない文章」を指します。 内容に問題はないが、書式やフォント、引用方法などに統一性がない文章を指す場合もありますし、 内容自体に統一性がなく、主旨が理解しづらく、目的や結論が不明確な文章を指す場合もあります。 どちらにせよ、「思慮に欠けている」というネガティブなニュアンスを帯びます。 大学で論文やレポートを書くときや、会社でアジェンダを制作する時などに使われます。
例文
「とりとめのない話」「とりとめのない会話」という表現もよく使われます。 「とりとめのない話」「とりとめのない会話」は「単なるお喋り」という意味合いです。 「主旨が不明」という否定的な意味よりも、単に「重要ではない」という意味が強調され、「雑談」「世間話」という意味合いで使う場合が多いです。 ただし、「とりとめのない事を言う」とすると、「考慮に欠けた意味不明なことを発言する」という意味合いになるので注意しましょう。
例文
「とりとめのない日常」「とりとめのない日々」などの表現も小説などでよく見かけます。 「とりとめのない日常」「とりとめのない日々」とは「特に予定もなく、これていってすることのない日々」を指します。 「普段と変わらず穏やかな日常」というポジティブな意味でも、「退屈な日常」というネガティブな意味でも使うことができます。
例文
「とりとめのない」という表現は頭の中に浮かぶことに対しても使えます。
などです。 これらも小説などで見かける詩的な表現で、日常会話ではあまり使用機会がありません。 「とりとめのない考え」は「くだらない思い付き」という意味合いでネガティブなニュアンスで使うことが多いです。 「とりとめのない記憶」も「価値のない記憶」という意味で重要ではないというネガティブな意味です。
例文
「とりとめのない」は物理的にまとまっていない物に対して使うこともできます。
などと使います。 無数にあるものがバラバラと広がっている様子または音が不規則的に響き渡っている様子を指します。
例文
「とりとめのない人」は掴みどころなく何を考えているのか不明な人という意味です。 「重要ではない人。生きる価値がない人」という意味合いではありません。 一方で「とりとめのない存在」は「無価値な存在」という意味です。 説明してきた通り、「とりとめのない」は文脈によって意味合いがかなり違うので注意が必要です。
例文
「とりとめのない」は「の」を省略して「とりとめない」とする場合があります。 「とりとめない」としても意味は同じです。 口語で使われることがありますが、正式な表現ではないので、書き言葉で使う場合は「とりとめのない」を使いましょう。
「とりとめのない◯◯」という表現は上記で紹介しました。このように前から名詞を修飾するのを「限定用法」といいます。 「◯◯はとりとめがない」と表現する方法もあります。このように名詞を後から説明するのを「叙述用法」といいます。 「〜はとりとめがない」とするとほとんどの場合、否定的なニュアンスです。 例えば、「とりとめのない話」はただのお喋りという意味合いですが、「彼の話はとりとめがない」とすると、「彼は何が言いたいか不明だ」という意味になってしまいます。
「とりとめもない」とすると意味が変わるので注意です。 「とりとめもない」の形ではなく、「とりとめもなく」の形で副詞的に使います。 「とりとめもなく」で「終わらず」という意味です。
という違いがあります。
例文
「とりとめのない」の同義語に「たわいない」があります。 「重要ではない」ではないという意味です。 「たわいない」を「他愛もない」と漢字表記するは誤用です。ひらがな表記で使います。 「たわいない」は「たわいもない」の形で使うことが多いです。 「たわいもない話」などと使います。
「よしなしごと」は「つまらない」という意味の形容詞です。 「よしなしごと」は現代ではほとんど使用されない古語であり、竹取物語などでも使われています。 漢字は「由無し事」です。
「とりとめのない」の類語には「取るに足らない」もあります。 「取るに足らない」とは「話題にする価値もない」という意味です。 「取るに足りない」とも。
文章や話に筋道が立てられていない、という意味では「支離滅裂」も類語です。 「支離滅裂」はめちゃくちゃな状態を表します。 「支離滅裂な発言」「話が支離滅裂になる」などと使います。
「重要ではない」の意味で使っている「とりとめのない」の反対語は
です。 「とりとめのない話」⇔「重要な話」「大切な話」「有意義な話」 となります。
「統一性がない」という意味の「とりとめのない」の反対語は、
などになります。
「話や文章にまとまりがない」を意味する形容詞には
などがあります。
The principal made a long rambling speech in front of all the students.
校長は全校生徒の前でとりとめのない話を長くした。
「とりとめもなく話す」は、
などとなります。
いかがでしたか? 「とりとめのない」の意味と使い方はご理解いただけたでしょうか。 最後に「とりとめのない」についてまとめておきます。 ✔「とりとめのない」の意味は「まとまりのない」 ✔「とりとめのない」の漢字は「取り留めの無い」 ✔「とりとめのない会話」はただのお喋り ✔「〜はとりとめがない」は否定的な意味合いが強い ✔「とりとめのない」の英語は「rambking」