「暗黙の了解(あんもくのりょうかい)」とは、「意思を言葉にしなくても当事者の間で理解されている様子」です。法律で決まっていなくても「守るべき」とされているマナーなども「暗黙の了解」にあてはまります。「不文律」ともいいます。
「暗黙の了解」は、「あんもくのりょうかい」と読みます。 「暗黙の了解」の意味は、「意思を言葉にしなくても了承されている様子」です。 「○○の時は▲▲をしましょう」などどわざわざ口に出さなくても、当事者間で理解し了承していることを「暗黙の了解」といいます。 個人間だけではなく、仲間内だけで通じていることや、社内の人全員がそうすることが当たり前だと理解しているルールなども「暗黙の了解」と言い表すことができます。 ちなみに「暗黙の了解」を意味する四字熟語はありません。
「暗黙の了解」は、「暗黙」と「了解」の熟語を組み合わせただけであり、語源は特にありません。 「暗黙」は「黙っていて何も言わないこと」です。 自分の意思や、わかっていること・承知していることを外面に出さないことを「暗黙」といいます。 「了解」は「理解して認めること」です。 物事の意味や内容・事情を理解し、さらに承知・承諾することを「了解」といいます。 この二つの熟語を組み合わせた言葉が「暗黙の了解」です。
一般的なマナーも、法律で定められているわけではありません。 しかし、その場にいる人達が不快な思いをしないためには必ず守らなければいけないルールとして認識されていることが多いので、「暗黙の了解」であるといえます。 例えば、
といったマナーです。 守らない人もいますが、一般的には全員に通じる「暗黙の了解」です。
会社などの組織においても様々な暗黙の了解があるでしょう。 社会人になって会社に勤めると誰もが身につけるビジネスマナーも「暗黙の了解」です。 例えば、
など、規則などできまっていなくても「そうするべき」とされているものです。 新入社員など、組織に入りたての頃はわからなくても周りを見ていればだんだんと「そういうものなんだな」とわかってきますよね。これが会社や組織における「暗黙の了解」です。
野球などのスポーツには、基本的に元々公式のルールがあります。 しかしそれ以外にも、
恋愛をしていく上でも、暗黙の了解ってありますよね。 例えば、
「暗黙の了解」は「暗黙のルール」とも言われます。 「ルール」とは、「規則・規定」という意味です。 つまり、「暗黙のルール」は「口に出さずとも誰もが了承している決まりごと」という意味になります。 「暗黙の了解」には特に「規則」という意味合いはありません。 ですので、特に「そうすると決まっている」という規則や決まり事に関しては「暗黙のルール」といわれます。 しかし「暗黙の了解」も「暗黙のルール」も共に「口に出さずとも互いに了承していること」なので、区別なく使用している人も多いです。
「不文律」は「ふぶんりつ」と読みます。 「不文律」の意味は、「お互いに暗黙のうちに守られている決まり」です。 「不文律」の「不文」は、「文」に打ち消しの「不」をつけて「文章に書き表していないもの」という意味になります。「律」は「おきて・定め」という意味がある漢字です。 「不文律」は直訳すると「書き記していない定め」という意味で、スポーツなどの各業界での「暗黙のルール」や「成文化されていない法律」を指し、「暗黙の掟」と言われることもあります。 つまり、規則や決まりごとに対して使用される言葉です。 「暗黙の了解」は、「規則」とまではいかなくても、お互いが口にせずとも了承している事柄に対して使用できる言葉です。
「阿吽の呼吸」は「あうんのこきゅう」と読みます。 意味は、「二人以上が一緒にある物事をするときに相互の気持ちの一致することやその微妙なタイミング、またその間合いを巧みにつかむこと」です。 例えば家族や恋人などで言えば、「メガネがないと思ってキョロキョロとすれば、さっと家族がメガネを渡してくれる」などが「阿吽の呼吸」です。 「言わなくてもわかり合えること」「言葉にしなくても通じ合うこと」というように、意思疎通ができているような状態を言い表す言葉です。 「暗黙の了解」は、「言葉に出さずともお互いが了承していること」なので「阿吽の呼吸」と意味は異なりますが、「言葉に出さなくてもお互いにわかりあっている」という意味では類語であると言えます。
「決まりごと」は「すでに決まっていること」です。 決まっていて従うべき規則を「決まりごと」といいます。 「暗黙の了解」は「言葉に出さずともお互いが了承していること」です。 したがって、口に出して「こうしましょうね」と決めたことは「暗黙の了解」とは言えなくなってしまいます。 「決まりごと」は、言葉に出しても、出さなくても「そうしよう」と決めたことなのであれば「決まりごと」と言えるので、「暗黙の了解」よりもっと意味が広いといえます。 「決まりごと」の中でも、わざわざ口に出さずともみんなが了承していることが「暗黙の了解」です。
「空気を読む」は「その場の雰囲気を汲み取ること」です。 その場の雰囲気を汲み取って自分がすべき行動をとる、あるいは行動や発言を控えることを「空気を読む」といいます。 そもそも「空気を読む」は、「行為」を指す言葉なので「暗黙の了解」とは異なります。 しかし「空気を読む」は、言葉に出さなくても「こうするべき」と認識することを言い表した言葉なので「意思を言葉にしなくても了承されている」意味がある「暗黙の了解」の類語であると言えます。
「公然の秘密」は、「こうぜんのひみつ」と読みます。 「公然の秘密」の意味は「表向き秘密ということにはなっているが、実際には世間に知れ渡っていること」です。 例えば「社長がヅラである」と社員のみんなが知っているけれど、秘密ということになっているので口に出す人がいないというような、「みんなが知っている秘密」を「公然の秘密」と言います。 「秘密にすべきことなので、口には出さないけれど皆が知っている」ということなので、暗黙の了解の類語であるといえます。 「公然」の意味は「表だったさま」「一般的に知れわたっていること」です。 「秘密」の意味は「隠して人に知らせないこと」です。 このように、一見矛盾している熟語を使用した表現を「撞着語法(どちゃくごほう)」といいます。 「暗黙の了解」も、「黙っていて何も言わない」という意味の「暗黙」と「理解して認める」という意味の「了解」という一見矛盾している熟語を組み合わせた言葉です。
「あっ…(察し)」の意味は「何かを察したことを表すフレーズ」です。 察していることを表す「(察し)」を最後につけて使われています。 相手からの情報によってそれが意味しているものやその先にあることを感じ取り、あえて言葉にはしないけど状況を把握した時に使います。 例えば「あれ?今日デートじゃなかった?日にち変えたの?」と聞いた際に「変えたっていうか、もうないかな」と言われたら「(振られたのかな?)」と察しますよね。このような時に「あっ…(察し)」と使います。 「あっ…(察し)」を使った場合は「相手の事情を察したのでこれ以上は踏み込みません」「なんとなく事情は分かったから言わなくていいよ」といった気持ちも含まれます。 「言葉にして言われなくても、理解する」という点で、「暗黙の了解」の類語であるといえます。
「規定」の意味は「物事のやり方をきまった形に決めること」です。 はっきりと「○○は▲▲しましょう」と口に出し、話し合いなどをして決めたことを「規定」といいます。 「暗黙の了解」は、「口に出さずとも了承していること」であり「規定」としてはっきり決まっていることではありません。したがって、「規定」は「暗黙の了解」の対義語であるといえます。
「合意事項(ごういじこう)」の意味は「互いに意見が一致していること」です。 「合意事項」は互いに意見を出し合って意見が一致していることを確認していることなので、必ず話し合いが行われてます。 したがって「合意事項」は、「思いを口に出さずとも了承している」という意味の「暗黙の了解」の対義語です。
「契約」は「約束をすること・言いかわすこと」です。 また、法律上の効果を発生させる目的で、二人以上の当事者に対して承諾という意思表示の合意によって成立する法律行為を「契約」といいます。 きちんとお互いに了承していることを確認するだけではなく、書面などにもきちんと残す約束事なので、「暗黙の了解」の対義語であるといえます。
「成分法」は、「文章で表現されている法」のことを言います。 「法律」や、「条例」「条約」などが「成分法」にあたります。 文章にされているわけではない「暗黙の了解」とは反対に、文章にしてまとめてある法を指す言葉なので「成分法」も対義語であるといえます。
「暗黙の了解」の英語は「an unspoken agreement」「a tacit agreement」「silent understanding」などがあります。 「unspoken」は「話されない」、「tacit」は「直接表現されなくても理解される」、「silent」は「静かな」の意味です。 「agreement」は「合意」、「understanding」は「了解。理解」の意味です。
インフォーマルなイギリス英語では「on the nod」という表現があります。 「on the nod」とは直訳すると「うなずいて」となります。 「議論をせずに受け入れる」という意味です。
「暗黙の了解」について理解を深めていただけましたか? 「暗黙の了解」について最後にまとめます。