「判断を仰ぐ」は「目上の人に判断を求めること」です。ビジネスシーンでも上司に指示をしてもらいたいという場面で使用することができる表現です。今回は「判断を仰ぐ」の正しい意味と使い方を解説します。また「判断を仰ぐ」の言い換え表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「判断を仰ぐ」の読み方は「はんだんをあおぐ」です。 「判断」は「ある基準・情報手年論理などに基づいて考えを決めること」です。 また、その決めた内容を「判断」といいます。 この場合の「仰ぐ」は「下の者が上の者からの働きかけを求める」という意味で使用されています。 つまり、「判断を仰ぐ」は「目上の人に判断を求めること」です。
仰ぐの一つ目の意味は「見上げる」です。 頭を上に向けて下から上を見ることを「仰ぐ」といいます。 例えば、空を見上げるというような状態を「仰ぎ見る」と言い表すことができます。
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「仰ぐ」の二つ目の意味は「優れた者として尊敬する」です。 相手を手本とすべきとして尊敬し、敬うことを「仰ぐ」といいます。 「仰ぐ」に「下から上を見る」という意味があることから繋がり、「相手を尊敬する」という意味をもつようになりました。 例えば「○○として仰ぐ」という使い方で、「○○として尊敬する」という意味になります。
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「仰ぐ」の三つ目の意味は「尊敬してある地位に就いてもらう」です。 資格や権限を有する人、信頼できる人に最上の地位に就いてもらうことを「仰ぐ」といいます。
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「仰ぐ」の四つ目の意味は「下の者が上の者からの働きかけを求める」です。 「判断を仰ぐ」はこの意味で使用されています。 「◯◯に判断を仰ぐ」と、◯◯に目上の人を入れて使います。 「◯◯から判断を仰ぐ」ということもあるが稀です。 「◯◯の判断を仰ぐ」とは言わないので注意しましょう。 「仰ぐ」は、何を請うかによって色々な表現があります。 「指示を仰ぐ」「教えを仰ぐ」「指導を仰ぐ」「意見を仰ぐ」「協力を仰ぐ」「助力を仰ぐ」などが多いです。 他にも「裁量を仰ぐ」「臨席を仰ぐ」などがあります。
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「仰ぐ」には「毒などを上を向いて一気に飲む」という意味もあります。 自らの意思で、毒などを一気に飲むことを「仰ぐ」といいます。
「扇ぐ」「煽ぐ」は「仰ぐ」の同音異義語です。 「扇ぐ/煽ぐ」は「風を起こすこと」です。 また、うちわなどで風をおこして火の勢いを強める様子から、「人の気持ちをあおる」という意味でも使用されます。 「判断を煽ぐ/煽る」としてしまうと、「人を刺激して判断をするように駆り立てる」という意味になってしまうので注意しましょう。
「判断を仰ぐ」と近い意味を持つ熟語には「請訓」があります。 「請訓」の意味は「外国駐在の大使・公使などが本国政府に指示を求めること」です。 外国駐在の大使・公使が、自分の意見だけでは処理できない問題について、本国の政府に命令・指示を求めることを「請訓」といいます。
「仰ぐ」は「人を尊敬する」という意味がありますが、「仰ぐ」自体は尊敬語ではありません。 例えば、上司に「判断を仰ぐ」と言ってしまうと失礼にあたります。 上司など目上の人に使用する場合は、敬語表現に言い換える必要があります。
判断を仰ぐ上司を目の前に「判断を仰ぐ」という表現を使う場合は「ご判断を仰ぐ」とする必要があります。 「ご判断を仰ぐ」は、「判断」に尊敬を表す接頭語の「ご」をつけた敬語表現です。 「判断」に尊敬を表す接頭語の「ご」をつけることで、相手に敬意を示すことができるので、目上の人に使用することができます。
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「ご判断いただきたく存じます」は「判断してもらいたいと思います」という意味です。 「ご判断いただきたく存じます」は、「判断」に接頭語の「ご」と「もらう」の謙譲語の「いただく」と「思う」の丁重語の「存ずる」と丁寧語の「ます」を使用した敬語表現です。 目上の人などに判断してもらいたいとお願いをする場面で使用することができます。 また、「ご判断いただければと存じます」も同様に「判断を仰ぐ」と言い換えることが可能です。 「ご判断いただければと存じます」は、「判断」に尊敬を表す接頭語の「ご」をつけて、「してもらう」の謙譲語の「いただく」、仮定形の「れば」に、「思う」の丁重語である「存ずる」と丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。
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「ご教示」は「教示」という言葉に、接頭語の「ご」をつけた言葉です。 「教示」は「知識や方法などを教え示すこと」を意味しています。 例えば、ビジネスシーンなどのかしこまった場面で「やり方がわからない」というときに質問したり、対処の方法について尋ねる場合に使用される表現です。 「ご教授」は、「教授」という言葉に、接頭語の「ご」をつけた言葉です。 「教授」の意味は、学術、技芸などを教えること。養護、訓練とならぶ教育上の基本的な活動、作用のことです。 「ご教示/ご教授」は、「判断してほしい」という意味合いでは使用されませんが、判断を仰ぎたいときに「教えを請いたい」という意味で使用することができる言葉なので、「判断を仰ぐ」と言い換えることが可能であるといえます。
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「ご指導ご鞭撻」は「ごしどうごべんたつ」と読みます。 「ご指導ご鞭撻」は名詞の「指導」「鞭撻」にそれぞれ尊敬語の接頭語である「ご」がついたものです。 「指導」の意味は「ある目的に向かって教え導くこと」です。 「鞭撻」の意味は「鞭(ムチ)で打つこと」「怠らないように強く励ますこと」です。 この二つを組み合わせた「ご指導ご鞭撻」は「目上の相手からの自分に対する教育や指導のこと」という意味になります。 「ご指導ご鞭撻」は、目上の方や先輩、お客様・取引先などに敬意を持ち、今後も変わらないお付き合いをお願いする表現で、挨拶やスピーチの「結びの言葉」「締めの言葉」として使用されます。
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「自己判断」は、「自分自身で判断をすること」です。 「判断を仰ぐ」は、目上の人に「判断してしてください」とお願いをすることなので、自分自身で判断をすることを意味する「自己判断」は対義語であるといえます。
「上申」は「じょうしん」と読みます。 「上申」の意味は、「上の者に申し述べること」です。 上司や上部機関に意見や事情を申し述べることを「上申」といいます。 「判断を仰ぐ」は「意見を述べてもらうこと」なので、「上申」は対義語であるといえます。 「自ら問題や話題を持ち出す」という意味では、「提起」「建議」も対義語にあたります。
「判断を仰ぐ」の英語は「ask for a final decision」です。 「ask for instruction」なら「指示を求める」、「ask for advice」なら「助言を求める」という意味になります。
「request approval」なら「承認を求める」という意味になり、「判断を仰ぐ」に近いです。
いかがでしたか? 「判断を仰ぐ」について理解を深めていただけましたか? 「仰ぐ」には「尊敬をする」という意味がありますが、「仰ぐ」だけでは敬語表現にはならないという点に注意してください。 目上の人に判断を仰ぎたい場合は、「ご判断を仰ぐ」と尊敬語を使用して相手に敬意を示しましょう。